魔王山田、誠実に異世界を征服する

nexustide400

文字の大きさ
49 / 115
第一部《魔王VS勇者》編

第49話【サイリス、ブルーネ総督になる】

しおりを挟む

ブルーネ・首都ブルーネア。ギルド会館。

改めて集まった一同に山田が向き直る。

「まず大事な通達だ。本日からここにいるサイリスがブルーネの総督になる。以後彼女の命令に従うように」

室内がざわめき、レイラが目を見開く。

「サイリス、早速頼む」

山田に促され、サイリスが続ける。

「はい。まず島にいた海賊は従属させました。近々ブルーネに船で財貨を持ってくるので赤ギルドで責任を持って受け取りを。ライオネルギルド長」

「はい、承知しました!」 ライオネルが慌てて応える。

フェーネンが口を開く。

「サイリス総督、奴らに奪われて路頭に迷った連中もいるんだ。その……なんとかならないかい?」

「真偽を調べようがないので、返還要求には応じません。ただ、有能な者には再起の機会を与えますのであなたが推薦してください」

「わかった。恩に着るよ」

サイリスは一同を見渡し告げる。

「私は一度魔王城に戻りますが、戻ってくるまでに国民への周知をしておくように。戻ってきたら軍の再編に着手します」

ライオネル達が力強く返す。

「承知しました!」

 * * *

レイラがサイリスに近づく。

「驚きました、サイリス様……サイリス総督」

「公の場以外は今まで通りでいいわ。これからあなたとはやりとりが増えると思うけどよろしく頼むわね」

「はいっ!」

イリヤがやや戸惑いながら声を上げる。

「私も驚いたよ。一体何があったんだい」

山田がぞんざいに言い返す。

「うるさい。イリヤもこっちで商売したかったらサイリスにお伺い立てろよ。俺と違って超シビアだからな」

「こりゃ参ったね。お手柔らかに頼むよ、総督」

「海賊なんて震え上がって全員サイリスに土下座してたからな」

「山田様、やめてください」

「っ……」 レイラが山田とサイリスの変化に気づく。

そのとき軍団長のネイが部屋に入ってくる。

「魔王様、お呼びでしょうか」

「一旦魔王城に戻る。ドリスに軍の指揮を指示してくれ。追って伝えるがドリスはネイの副官にする」

「承知しました」

山田がレイラとイリヤに向き直る。

「2人は王都に戻ってくれ。今回は助かった。感謝する」

「はい、あの……私はもう少し滞在してもいいでしょうか。ギルドの皆様と相談したいこともありますので」

「いいぞ。頑張れよ」

「はいっ!」

 * * *

山田達が話しているとミリトンとリューシーが部屋に入ってくる。

「お呼びでしょうか、魔王様」

「二人とも来たか。少し大事な話があるんだ」

山田がサイリスのブルーネ総督就任を説明する。

「次の親衛隊長だが、アイラに任せたい」

指名されたアイラが驚いて山田とサイリスを見る。

「あなたなら大丈夫。私が推薦したわ」

サイリスがアイラに言うと、アイラは姿勢を正した。

「ありがとうございます! 親衛隊長の任、拝命いたします!」

「頼りにしてるぞ。ミリトンとリューシーは引き続き俺の護衛を頼む」

「了解しました!」 2人が敬礼する。

「じゃあ、一旦魔王城に戻るか」

山田達はブルーネを後にした。

 * * *

モルドラス都市国家・ソイルタウンの酒場。

酒場の一角で3人の客がグラスを傾けている。

「また飲んだくれてるぜ。スランの野郎」

「ったく、街の英雄が今じゃ恥さらしだぜ」

「勇者って嘘だったんじゃないの?」

「マジかよ。自称? ありえるな」

「町長が銅像撤去しようって言ってるらしいよ」

「酔っ払いの像に変えたらいいんじゃないか」

3人が爆笑する。

カウンターの隅でスランが苦い顔をしている。

(どいつもこいつも……)

「そういえばライエル王国に王女様が戻ってきたんだって」

「人質だったんだろ? ありえねーよ」

「それが魔王と直談判したらしいよ」

「はぁ? 人質が?」

「だって商人に見せてもらった新聞にも書いてあったし」

「魔王って話せる奴なのか?」

「あの酔っぱらいのせいで人類終わりだし私も魔王に助けてくれってお願いしようかな」

スランが歩いてくる。

「レイラ王女が戻ったって本当なのか?」

「なんだよ。話しかけてくるなエセ勇者」

「教えてくれ」

「なによ、あんたレイラ王女といい仲だったのに捨てたんでしょ? あんたのことなんかとっくに忘れてるわよ、このクズ」

「もしかして直談判って魔王の嫁にしてくれってことだったりして」

スランが男に睨みをきかせる。

「お前っ!」

「あ? やんのか? 魔王が怖くて逃げ出した腰抜けめ」

スランは悔しそうに唇を噛むと酒場から出ていく。

スランが酒場を出ると、店の前に一人の男が立っている。

「勇者様。お迎えに上がりました」

「……誰だ? 迎え?」

「はい、アリアン神聖国までお越しください。教皇聖下がお待ちです」

「聖剣は失ったんだ。消えたと言っただろう!」

「聖剣の件ではございません。実はライエル王国からギレル王子が亡命して参りまして、あなたに会いたいとのことで」

「王子? あのうるさい奴か?」

「王国を救って欲しいと」

「俺には無理だ。魔王だけならまだしも取り巻きも魔軍もかつてないほど強大だ」

「現在、神聖国では人類存亡の危機としてあらゆる策を練っています」

「いくら練っても無駄だ」

男が真剣な表情でスランを見つめる。

「無駄だとわかりながら皆必死に抗っているのに、あなたはこんなところで酒に溺れているのですか? それならせめて勇者の能力を他の者に譲ってください。あなたのような人間にはふさわしくありません」

「なんだと!」

「聖剣には劣りますが、神聖国の秘宝も準備が進んでいます。今すぐ決めてください。もう時間がないのです」

スランが悔しそうに下を向く。

「……わかった、行こう」


【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...