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第一部《魔王VS勇者》編
第49話【サイリス、ブルーネ総督になる】
しおりを挟むブルーネ・首都ブルーネア。ギルド会館。
改めて集まった一同に山田が向き直る。
「まず大事な通達だ。本日からここにいるサイリスがブルーネの総督になる。以後彼女の命令に従うように」
室内がざわめき、レイラが目を見開く。
「サイリス、早速頼む」
山田に促され、サイリスが続ける。
「はい。まず島にいた海賊は従属させました。近々ブルーネに船で財貨を持ってくるので赤ギルドで責任を持って受け取りを。ライオネルギルド長」
「はい、承知しました!」 ライオネルが慌てて応える。
フェーネンが口を開く。
「サイリス総督、奴らに奪われて路頭に迷った連中もいるんだ。その……なんとかならないかい?」
「真偽を調べようがないので、返還要求には応じません。ただ、有能な者には再起の機会を与えますのであなたが推薦してください」
「わかった。恩に着るよ」
サイリスは一同を見渡し告げる。
「私は一度魔王城に戻りますが、戻ってくるまでに国民への周知をしておくように。戻ってきたら軍の再編に着手します」
ライオネル達が力強く返す。
「承知しました!」
* * *
レイラがサイリスに近づく。
「驚きました、サイリス様……サイリス総督」
「公の場以外は今まで通りでいいわ。これからあなたとはやりとりが増えると思うけどよろしく頼むわね」
「はいっ!」
イリヤがやや戸惑いながら声を上げる。
「私も驚いたよ。一体何があったんだい」
山田がぞんざいに言い返す。
「うるさい。イリヤもこっちで商売したかったらサイリスにお伺い立てろよ。俺と違って超シビアだからな」
「こりゃ参ったね。お手柔らかに頼むよ、総督」
「海賊なんて震え上がって全員サイリスに土下座してたからな」
「山田様、やめてください」
「っ……」 レイラが山田とサイリスの変化に気づく。
そのとき軍団長のネイが部屋に入ってくる。
「魔王様、お呼びでしょうか」
「一旦魔王城に戻る。ドリスに軍の指揮を指示してくれ。追って伝えるがドリスはネイの副官にする」
「承知しました」
山田がレイラとイリヤに向き直る。
「2人は王都に戻ってくれ。今回は助かった。感謝する」
「はい、あの……私はもう少し滞在してもいいでしょうか。ギルドの皆様と相談したいこともありますので」
「いいぞ。頑張れよ」
「はいっ!」
* * *
山田達が話しているとミリトンとリューシーが部屋に入ってくる。
「お呼びでしょうか、魔王様」
「二人とも来たか。少し大事な話があるんだ」
山田がサイリスのブルーネ総督就任を説明する。
「次の親衛隊長だが、アイラに任せたい」
指名されたアイラが驚いて山田とサイリスを見る。
「あなたなら大丈夫。私が推薦したわ」
サイリスがアイラに言うと、アイラは姿勢を正した。
「ありがとうございます! 親衛隊長の任、拝命いたします!」
「頼りにしてるぞ。ミリトンとリューシーは引き続き俺の護衛を頼む」
「了解しました!」 2人が敬礼する。
「じゃあ、一旦魔王城に戻るか」
山田達はブルーネを後にした。
* * *
モルドラス都市国家・ソイルタウンの酒場。
酒場の一角で3人の客がグラスを傾けている。
「また飲んだくれてるぜ。スランの野郎」
「ったく、街の英雄が今じゃ恥さらしだぜ」
「勇者って嘘だったんじゃないの?」
「マジかよ。自称? ありえるな」
「町長が銅像撤去しようって言ってるらしいよ」
「酔っ払いの像に変えたらいいんじゃないか」
3人が爆笑する。
カウンターの隅でスランが苦い顔をしている。
(どいつもこいつも……)
「そういえばライエル王国に王女様が戻ってきたんだって」
「人質だったんだろ? ありえねーよ」
「それが魔王と直談判したらしいよ」
「はぁ? 人質が?」
「だって商人に見せてもらった新聞にも書いてあったし」
「魔王って話せる奴なのか?」
「あの酔っぱらいのせいで人類終わりだし私も魔王に助けてくれってお願いしようかな」
スランが歩いてくる。
「レイラ王女が戻ったって本当なのか?」
「なんだよ。話しかけてくるなエセ勇者」
「教えてくれ」
「なによ、あんたレイラ王女といい仲だったのに捨てたんでしょ? あんたのことなんかとっくに忘れてるわよ、このクズ」
「もしかして直談判って魔王の嫁にしてくれってことだったりして」
スランが男に睨みをきかせる。
「お前っ!」
「あ? やんのか? 魔王が怖くて逃げ出した腰抜けめ」
スランは悔しそうに唇を噛むと酒場から出ていく。
スランが酒場を出ると、店の前に一人の男が立っている。
「勇者様。お迎えに上がりました」
「……誰だ? 迎え?」
「はい、アリアン神聖国までお越しください。教皇聖下がお待ちです」
「聖剣は失ったんだ。消えたと言っただろう!」
「聖剣の件ではございません。実はライエル王国からギレル王子が亡命して参りまして、あなたに会いたいとのことで」
「王子? あのうるさい奴か?」
「王国を救って欲しいと」
「俺には無理だ。魔王だけならまだしも取り巻きも魔軍もかつてないほど強大だ」
「現在、神聖国では人類存亡の危機としてあらゆる策を練っています」
「いくら練っても無駄だ」
男が真剣な表情でスランを見つめる。
「無駄だとわかりながら皆必死に抗っているのに、あなたはこんなところで酒に溺れているのですか? それならせめて勇者の能力を他の者に譲ってください。あなたのような人間にはふさわしくありません」
「なんだと!」
「聖剣には劣りますが、神聖国の秘宝も準備が進んでいます。今すぐ決めてください。もう時間がないのです」
スランが悔しそうに下を向く。
「……わかった、行こう」
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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