魔王山田、誠実に異世界を征服する

nexustide400

文字の大きさ
53 / 115
第一部《魔王VS勇者》編

第53話【魔王山田、神聖国対策を練る】

しおりを挟む

ライエル王国・魔軍司令部。

山田たちの前で諜報を統括するワーグが報告を続けていた。

「ギレル王子は神聖国にいるのか」

「はい。神聖国に出入りさせている商人からの情報で間違いありません」

山田はため息をついた。

「どうせ王国の王家と信徒を救ってくれと喚いているんだろうなぁ」

「地方征伐は終わりましたが、軍の再編中ですので今攻めてくると少々厄介ですな」 ガイアが顔をしかめる。

「もうひとつ……重要な情報が」

山田が目で促す。

「勇者スランが神聖国に入り、教皇に謁見したようです。国民にも周知されています」

「最悪じゃないか。あいつ戻ってきたのか」

「なにかしらの方策があるのかもしれません」

(聖剣以外にもあるんだろうなぁ。転生時の選択リストに伝説の剣とかあったし)

「ただ、前回と違って王国軍を前に押し出せばあいつも人間を斬りまくるのは躊躇うだろう」

「そうなるとやはり魔王様を直接狙ってくる可能性が高いですな」 ガイアが言った。

「俺を誘い出す方法となると……魔王城を単騎で襲撃、は難しいか。王国にいるガイアやブルーネ総督のサイリスを襲撃、はありそうだな」

ガイアは静かにうなずく。

「警戒を強めておきます。のこのこやってきたら今度こそ返り討ちにしてやります」

「そうしてくれ。ワーグも引き続き神聖国の動向を追ってくれ」

「承知しました」

 * * *

王城・執務室。

山田がライエル王とレイラに説明をしていた。

「そんなわけでギレル王子も勇者も大集合だ」

「そうでしたか……実はお伝えしなければいけないことがございましてな」

「なんだ?」

「先日、その神聖国から密使がやって参りまして、あれやこれやと言っておりましたが私の意向を探りたかったようですな」

(水面下で神聖国に助けを求めることもできただろうに。この様子だとなさそうだな)

「まさか斬ってないだろうな?」

 「最後の方に山田殿のことを邪悪などとぬかしたので思わず剣を抜いてしまいましたが、そのまま追い返しましたぞ」

ライエル王が笑う。

(あぶねぇ。なんか会う度に剣が変わってるし……そもそもなんで王が剣をぶら下げてんだよ)

「そうか、良かった。レイラもいたのか?」

「はい。兄が心配しているので魔王様の許可を得て一度神聖国に来てはどうかと私も言われました」

「断ったのか?」

 「はい。ライラ商会での販売も始まりましたし、トランプの認可や蜂蜜の増産、孤児院建設計画などもあって忙しいので……」

(こっちは仕事人間みたいになってるし)

「そうか。また接触があったら教えてくれ」

「もちろんです」 ライエル王がうなずいた。

 * * *

王城・会議室。

山田が入ってくる。

「レイラ、待たせたな」

「わざわざすみません」

「さっきも思ったんだけど会う度に色んな服着てるな。それは売り出してる服なのか?」

「いえ、これはライラさんに頼んで……」

レイラは自分の袖をそっと見下ろし、少し不安げに山田の顔をうかがう。

「あの……似合ってますか?」

「似合ってるぞ。めちゃくちゃお洒落な感じだ」

「本当ですか! 良かったです」

レイラの顔がぱっと明るくなる。

「それで話って? 王様とかジーナスはいいのか?」

「はい。少し内密にご相談が……」

「なんだ?」

レイラがやや声を落とす。

「その……私に魔力譲渡をお願いできませんか?」

「え? なんで?」

「えっと……人前に出ることが多くなったのでプロテクトとか……他にも……」

「自分でかけなくても護衛がいるだろ?」

「それはそうですけど……」

「それに魔軍でもあくまで活躍した奴への報酬だからなぁ」

レイラは肩を落とし小さくうつむいたが、やがて意を決したように顔を上げる。

「そうですよね……。では私も成果を上げたらお願いできますか?」

「うーん、まぁ……」

(そもそも魔王から人間に譲渡ってできるのか? 試してみたいけど死んだりしないだろうな)

「私もサイリス様のように強くなりたいんです」

「え? それはさすがに。レイラは軍人じゃないだろ?」

「はい。でもこれからは魔法も頑張りたいです」

(どうしようか。珍しく切実な感じだし、サイリスも気にかけてやれって言ってたしなぁ)

「わかった。ブルーネでも助かったし、今回は特別に譲渡しよう」

レイラは一瞬きょとんとした後、ぱっと瞳を輝かせた。

「本当ですか! ありがとうございます!」

「先に言っておくけど、かなりキツイからな?」

山田は歩いていくと扉を開けてアイラに呼びかける。

「アイラ。少しの間だけ部屋から離れてあっちで離れて待機してくれ」

「はい。いつでもお呼びください」

山田が戻ってくる。

「じゃあ始めるぞ」

山田がレイラの額に手を当てる。

「うああああああっ!!」

レイラが絶叫し、その場にうずくまる。

(どうだ? かなり少なくしたつもりだけど)

しばらくしてレイラがふらふらと立ち上がる。

呼吸を整えると驚きと興奮の入り混じった表情で山田を見上げた。

「これは……すごいです……ありがとうございます」

「うまくいったみたいだな」

山田はアイラを呼びに行く。

「ちょっとレイラに温かい飲み物でもお願いできるか?」

「了解しました!」

「それで何の魔法を増やすんだ? プロテクトか?」

「そうですね……」

2人は楽しそうに話し始めた。


【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

処理中です...