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第一部《魔王VS勇者》編
第53話【魔王山田、神聖国対策を練る】
しおりを挟むライエル王国・魔軍司令部。
山田たちの前で諜報を統括するワーグが報告を続けていた。
「ギレル王子は神聖国にいるのか」
「はい。神聖国に出入りさせている商人からの情報で間違いありません」
山田はため息をついた。
「どうせ王国の王家と信徒を救ってくれと喚いているんだろうなぁ」
「地方征伐は終わりましたが、軍の再編中ですので今攻めてくると少々厄介ですな」 ガイアが顔をしかめる。
「もうひとつ……重要な情報が」
山田が目で促す。
「勇者スランが神聖国に入り、教皇に謁見したようです。国民にも周知されています」
「最悪じゃないか。あいつ戻ってきたのか」
「なにかしらの方策があるのかもしれません」
(聖剣以外にもあるんだろうなぁ。転生時の選択リストに伝説の剣とかあったし)
「ただ、前回と違って王国軍を前に押し出せばあいつも人間を斬りまくるのは躊躇うだろう」
「そうなるとやはり魔王様を直接狙ってくる可能性が高いですな」 ガイアが言った。
「俺を誘い出す方法となると……魔王城を単騎で襲撃、は難しいか。王国にいるガイアやブルーネ総督のサイリスを襲撃、はありそうだな」
ガイアは静かにうなずく。
「警戒を強めておきます。のこのこやってきたら今度こそ返り討ちにしてやります」
「そうしてくれ。ワーグも引き続き神聖国の動向を追ってくれ」
「承知しました」
* * *
王城・執務室。
山田がライエル王とレイラに説明をしていた。
「そんなわけでギレル王子も勇者も大集合だ」
「そうでしたか……実はお伝えしなければいけないことがございましてな」
「なんだ?」
「先日、その神聖国から密使がやって参りまして、あれやこれやと言っておりましたが私の意向を探りたかったようですな」
(水面下で神聖国に助けを求めることもできただろうに。この様子だとなさそうだな)
「まさか斬ってないだろうな?」
「最後の方に山田殿のことを邪悪などとぬかしたので思わず剣を抜いてしまいましたが、そのまま追い返しましたぞ」
ライエル王が笑う。
(あぶねぇ。なんか会う度に剣が変わってるし……そもそもなんで王が剣をぶら下げてんだよ)
「そうか、良かった。レイラもいたのか?」
「はい。兄が心配しているので魔王様の許可を得て一度神聖国に来てはどうかと私も言われました」
「断ったのか?」
「はい。ライラ商会での販売も始まりましたし、トランプの認可や蜂蜜の増産、孤児院建設計画などもあって忙しいので……」
(こっちは仕事人間みたいになってるし)
「そうか。また接触があったら教えてくれ」
「もちろんです」 ライエル王がうなずいた。
* * *
王城・会議室。
山田が入ってくる。
「レイラ、待たせたな」
「わざわざすみません」
「さっきも思ったんだけど会う度に色んな服着てるな。それは売り出してる服なのか?」
「いえ、これはライラさんに頼んで……」
レイラは自分の袖をそっと見下ろし、少し不安げに山田の顔をうかがう。
「あの……似合ってますか?」
「似合ってるぞ。めちゃくちゃお洒落な感じだ」
「本当ですか! 良かったです」
レイラの顔がぱっと明るくなる。
「それで話って? 王様とかジーナスはいいのか?」
「はい。少し内密にご相談が……」
「なんだ?」
レイラがやや声を落とす。
「その……私に魔力譲渡をお願いできませんか?」
「え? なんで?」
「えっと……人前に出ることが多くなったのでプロテクトとか……他にも……」
「自分でかけなくても護衛がいるだろ?」
「それはそうですけど……」
「それに魔軍でもあくまで活躍した奴への報酬だからなぁ」
レイラは肩を落とし小さくうつむいたが、やがて意を決したように顔を上げる。
「そうですよね……。では私も成果を上げたらお願いできますか?」
「うーん、まぁ……」
(そもそも魔王から人間に譲渡ってできるのか? 試してみたいけど死んだりしないだろうな)
「私もサイリス様のように強くなりたいんです」
「え? それはさすがに。レイラは軍人じゃないだろ?」
「はい。でもこれからは魔法も頑張りたいです」
(どうしようか。珍しく切実な感じだし、サイリスも気にかけてやれって言ってたしなぁ)
「わかった。ブルーネでも助かったし、今回は特別に譲渡しよう」
レイラは一瞬きょとんとした後、ぱっと瞳を輝かせた。
「本当ですか! ありがとうございます!」
「先に言っておくけど、かなりキツイからな?」
山田は歩いていくと扉を開けてアイラに呼びかける。
「アイラ。少しの間だけ部屋から離れてあっちで離れて待機してくれ」
「はい。いつでもお呼びください」
山田が戻ってくる。
「じゃあ始めるぞ」
山田がレイラの額に手を当てる。
「うああああああっ!!」
レイラが絶叫し、その場にうずくまる。
(どうだ? かなり少なくしたつもりだけど)
しばらくしてレイラがふらふらと立ち上がる。
呼吸を整えると驚きと興奮の入り混じった表情で山田を見上げた。
「これは……すごいです……ありがとうございます」
「うまくいったみたいだな」
山田はアイラを呼びに行く。
「ちょっとレイラに温かい飲み物でもお願いできるか?」
「了解しました!」
「それで何の魔法を増やすんだ? プロテクトか?」
「そうですね……」
2人は楽しそうに話し始めた。
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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