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第一部《魔王VS勇者》編
第68話【魔王山田、西進の準備を始める】
しおりを挟む魔王城の会議室には、山田を筆頭に禁軍総司令のダリス、第1軍団長のギギ、第2軍副団長のジーグ、第3軍副団長のドリス、諜報トップのワーグ、魔法大臣のセラ、親衛隊長のアイラ、そしてレイラが集まっていた。
「それでは軍議を始める。議題は、ファーレン王国への侵攻だ」
山田が切り出すと、会議室に緊張と興奮が走る。
「準備が整い次第、宣戦布告。侵攻を開始する」
「いよいよ大陸中央部への領土拡大ですね」
ギギが興奮気味に応じた。
「あぁ。まず現在の情勢から説明する。ランドア大陸南東部のここ魔王国、大陸東部のライエル王国、そして東の海沿いのブルーネは支配下にある」
山田が地図を指差すと、全員が真剣に見つめる。
「そして、海沿いを北上する形でサイリス総督が北部のノースランド連合に打撃を与えている。ドリス、説明を頼む」
呼ばれたドリスが前に出て報告を始めた。
「はっ! サイリス総督の指揮下で海賊の組織化・増強が進められ、ノルン共和国の商船への襲撃を続けております。又、港町のシーサイやシーモアはすでに支配下にあります」
会議室がざわつく。
「話には聞いていましたが本当に海賊を使っているんですね」
ダリスが苦笑した。
「あぁ。制服まで着せてるから実質海軍みたいなものだけどな。ドリス、続けてくれ」
「はい。ただ最近、軍船が出てくるようになりまして。情勢が緊迫した場合の対応を一度魔王様と協議したい、との伝言をサイリス総督とネイ軍団長から預かっております」
「わかった。今度ブルーネに行ったときに協議すると伝えてくれ。軍の再編状況は?」
「第3軍の再編とブルーネの陸海軍の編入を同時に進めておりまして・・・正直に申し上げましてまだ時間がかかるかと思います」
ドリスは少し言い淀みながらも率直に答えた。
「そうか。時間がかかるのは当然だからそのまま軍の再編を続けてくれ」
「承知しました!」
「ジーグ、王国の第2軍の状況も教えてくれ」
山田がジーグに目を向けた。
「はっ! ガイア軍団長の指揮下で王国軍の編入は完了しておりますが、再編を進めつつ大陸中央部への防衛を強化しております」
「了解だ。さて、現在の状況を踏まえた上で、ファーレン王国は親衛隊と禁軍のみで攻略する」
その言葉に皆が驚きの声を漏らす。
「いよいよ出番ですね。禁軍は魔王国で軍備を進めていましたのでいつでも動けます」 ダリスが胸を張る。
「親衛隊もいつでも出撃できます!」 アイラも力強く応じる。
「頼もしいな。それに今回は敵に勇者がいないから戦力は問題ないと考えている」
「報告を聞きましたが、見事な成果ですね。レイラ王女」 ギギが褒め称えた。
「あ、えっと……ありがとうございます……」 レイラが控えめに礼を言う。
「ところで魔王様。アリアン神聖国はどうされるのですか? 地理的には神聖国の方が近いと思いますが」
ダリスが疑問を呈する。
「神聖国はややこしいから後回しだ。ファーレン王国は神聖国の北に位置しているが、侵攻中に神聖国が南から殴ってくることはないだろう」
「私も同意見です。神聖国がこちらに攻撃してきたことはなく、偵察の情報でも容易く撃退可能な規模です」
ジーグも支持すると、ダリスを含め、皆が納得したように頷いた。
「ありがとう。さて、本題に入る。まずファーレン王国について共有しておきたい」
全員が資料に目を落とす。
「ファーレン王国は大陸中央の北側に位置する山岳国家だ。そして、鉄を始めとする豊富な資源を武器に君臨する強大な軍事国家だ」
会議室の空気がさらに引き締まる。
「バルロック王を筆頭に、直属の黒曜騎士団も精鋭揃いだそうだ。レイラは会ったことがあるのか?」
「はい。パーティーでお会いしたことがあります。豪胆な方でランドア大陸では勇者の次に強いと噂されていました」
「なるほどね。さて、ワーグ。潜入の報告を皆に頼む」
それまで静かにしていたワーグが立ち上がる。
「承知しました。すでに人間の工作員を使い、ファーレン王国への潜入工作が進んでおります。魔王様のご指示で王都サンロックからの山道の地図も集めております」
「そのまま続けてくれ。ちなみに頼んでいた情報収集はどうだ?」
「農産物の多くを頼っていたライエル王国との貿易量が減ったことで、物価が急上昇し、国民の不満が高まっております」
「そうか、予想通りだな。俺が支配するまでしばらく我慢してもらおう。それで王家の方は?」
「はい。バルロック王は内政には無頓着なようで、王妃を含め4人の王子と4人の王女はいずれもいい噂がないようです」
「なるほどね」
山田が顎に手を当てて考え込む。
「魔王様。いかがされましたか?」 ギギが声をかける。
「攻め落とした後にどうしようかと悩んでいるんだ。攻めながら考えるけどな。さて、もう1つ大事な連絡だ」
山田が皆を見る。
「今回の遠征はセラも連れて行く。セラ、例の説明を頼む」
「は、はい! 今回、魔王様の工房で開発した”魔導靴”を禁軍の皆さまに支給予定です。《ヒール》と《キュア》の効果がありますので魔力補充によって継続的な疲労回復と衛生向上効果があります」
「そりゃいいですね!」 ダリスが声を上げる。
「あの……魔王様。私がついて行く必要はないのでは?」
セラがおそるおそる山田に聞く。
「なにを言ってるんだ。ついて来たらまたロクでもないことを思いつくかもしれないだろ? ブルーネもセラのおかげで相手が全面降伏したんだし」
「そんな……」
セラがうなだれる。
「はは、ちゃんと自分らが護衛するんで大丈夫ですよ」
ダリスが笑うと、セラはさらに落ち込んだ。
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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