魔王山田、誠実に異世界を征服する

nexustide400

文字の大きさ
69 / 115
第一部《魔王VS勇者》編

第68話【魔王山田、西進の準備を始める】

しおりを挟む

魔王城の会議室には、山田を筆頭に禁軍総司令のダリス、第1軍団長のギギ、第2軍副団長のジーグ、第3軍副団長のドリス、諜報トップのワーグ、魔法大臣のセラ、親衛隊長のアイラ、そしてレイラが集まっていた。

「それでは軍議を始める。議題は、ファーレン王国への侵攻だ」

山田が切り出すと、会議室に緊張と興奮が走る。

「準備が整い次第、宣戦布告。侵攻を開始する」

「いよいよ大陸中央部への領土拡大ですね」

ギギが興奮気味に応じた。

「あぁ。まず現在の情勢から説明する。ランドア大陸南東部のここ魔王国、大陸東部のライエル王国、そして東の海沿いのブルーネは支配下にある」

山田が地図を指差すと、全員が真剣に見つめる。

「そして、海沿いを北上する形でサイリス総督が北部のノースランド連合に打撃を与えている。ドリス、説明を頼む」

呼ばれたドリスが前に出て報告を始めた。

「はっ! サイリス総督の指揮下で海賊の組織化・増強が進められ、ノルン共和国の商船への襲撃を続けております。又、港町のシーサイやシーモアはすでに支配下にあります」

会議室がざわつく。

「話には聞いていましたが本当に海賊を使っているんですね」

ダリスが苦笑した。

「あぁ。制服まで着せてるから実質海軍みたいなものだけどな。ドリス、続けてくれ」

「はい。ただ最近、軍船が出てくるようになりまして。情勢が緊迫した場合の対応を一度魔王様と協議したい、との伝言をサイリス総督とネイ軍団長から預かっております」

「わかった。今度ブルーネに行ったときに協議すると伝えてくれ。軍の再編状況は?」

「第3軍の再編とブルーネの陸海軍の編入を同時に進めておりまして・・・正直に申し上げましてまだ時間がかかるかと思います」

ドリスは少し言い淀みながらも率直に答えた。

「そうか。時間がかかるのは当然だからそのまま軍の再編を続けてくれ」

「承知しました!」

「ジーグ、王国の第2軍の状況も教えてくれ」

山田がジーグに目を向けた。

「はっ! ガイア軍団長の指揮下で王国軍の編入は完了しておりますが、再編を進めつつ大陸中央部への防衛を強化しております」

「了解だ。さて、現在の状況を踏まえた上で、ファーレン王国は親衛隊と禁軍のみで攻略する」

その言葉に皆が驚きの声を漏らす。

「いよいよ出番ですね。禁軍は魔王国で軍備を進めていましたのでいつでも動けます」 ダリスが胸を張る。

「親衛隊もいつでも出撃できます!」 アイラも力強く応じる。

「頼もしいな。それに今回は敵に勇者がいないから戦力は問題ないと考えている」

「報告を聞きましたが、見事な成果ですね。レイラ王女」 ギギが褒め称えた。

「あ、えっと……ありがとうございます……」 レイラが控えめに礼を言う。

「ところで魔王様。アリアン神聖国はどうされるのですか? 地理的には神聖国の方が近いと思いますが」

ダリスが疑問を呈する。

「神聖国はややこしいから後回しだ。ファーレン王国は神聖国の北に位置しているが、侵攻中に神聖国が南から殴ってくることはないだろう」

「私も同意見です。神聖国がこちらに攻撃してきたことはなく、偵察の情報でも容易く撃退可能な規模です」

ジーグも支持すると、ダリスを含め、皆が納得したように頷いた。

「ありがとう。さて、本題に入る。まずファーレン王国について共有しておきたい」

全員が資料に目を落とす。

「ファーレン王国は大陸中央の北側に位置する山岳国家だ。そして、鉄を始めとする豊富な資源を武器に君臨する強大な軍事国家だ」

会議室の空気がさらに引き締まる。

「バルロック王を筆頭に、直属の黒曜騎士団も精鋭揃いだそうだ。レイラは会ったことがあるのか?」

「はい。パーティーでお会いしたことがあります。豪胆な方でランドア大陸では勇者の次に強いと噂されていました」

「なるほどね。さて、ワーグ。潜入の報告を皆に頼む」

それまで静かにしていたワーグが立ち上がる。

「承知しました。すでに人間の工作員を使い、ファーレン王国への潜入工作が進んでおります。魔王様のご指示で王都サンロックからの山道の地図も集めております」

「そのまま続けてくれ。ちなみに頼んでいた情報収集はどうだ?」

「農産物の多くを頼っていたライエル王国との貿易量が減ったことで、物価が急上昇し、国民の不満が高まっております」

「そうか、予想通りだな。俺が支配するまでしばらく我慢してもらおう。それで王家の方は?」

「はい。バルロック王は内政には無頓着なようで、王妃を含め4人の王子と4人の王女はいずれもいい噂がないようです」

「なるほどね」

山田が顎に手を当てて考え込む。

「魔王様。いかがされましたか?」 ギギが声をかける。

「攻め落とした後にどうしようかと悩んでいるんだ。攻めながら考えるけどな。さて、もう1つ大事な連絡だ」

山田が皆を見る。

「今回の遠征はセラも連れて行く。セラ、例の説明を頼む」

「は、はい! 今回、魔王様の工房で開発した”魔導靴”を禁軍の皆さまに支給予定です。《ヒール》と《キュア》の効果がありますので魔力補充によって継続的な疲労回復と衛生向上効果があります」

「そりゃいいですね!」 ダリスが声を上げる。

「あの……魔王様。私がついて行く必要はないのでは?」

セラがおそるおそる山田に聞く。

「なにを言ってるんだ。ついて来たらまたロクでもないことを思いつくかもしれないだろ? ブルーネもセラのおかげで相手が全面降伏したんだし」

「そんな……」

セラがうなだれる。

「はは、ちゃんと自分らが護衛するんで大丈夫ですよ」

ダリスが笑うと、セラはさらに落ち込んだ。


【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

処理中です...