魔王山田、誠実に異世界を征服する

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第一部《魔王VS勇者》編

第69話【魔王山田、準備をする Part.1】

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ライエル王国・王城。

山田達が玉座の間へと足を踏み入れると、ライエル王がすぐに立ち上がり、笑顔で出迎えた。

「山田殿! お待ちしておりました。レイラも休暇は満喫できたかね?」

「はい、お父様。ただ今戻りました」

「早速だが、全員集まってるか?」

「もちろんです。こちらへどうぞ」

ライエル王はそのまま山田達を導き、大会議室へと案内した。

部屋の扉を開くと、王都の第2軍・軍団長ガイアと副軍団長ジーグが直立不動で敬礼しており、商人ギルドの代表者たちや新聞社の顔ぶれが整列し、山田達の姿を見て一斉に跪いた。

「皆、よく集まってくれた。座ってくれ」

山田の促しに応じて、全員が静かに腰を下ろす。

「まず、これからする話は全て機密事項だ。故意に漏洩させた場合は厳罰に処すので嫌なら降りてもらっても構わない」

張り詰めた空気の中、視線を交わす者たちもいたが、誰一人として席を立つ者はいなかった。

山田はその様子を確認しながら、本題に入る。

「それではファーレン侵攻にあたって協力してほしい内容について協議を始める。まずはイリヤ。事前に伝えていたと思うが調達はどうだ?」

問われたイリヤは、食品商会を束ねる者として顔を上げて答えた。

「他の商会にも声をかけてかき集めてるけど魔王様の想定だと正直、在庫が心もとないね。ブルーネのフェーネンに声をかけてもいいかい?」

「黒ギルドのフェーネンか。わかった。この後ブルーネに行くから俺からも伝えておく」

 「了解した。食料と水はバルガスに預けていいんだね?」

 「あぁ、バルガスに国境まで運んでもらってそこからは禁軍が運ぶ。バルガス、いけそうか?」

王国の流通を牛耳るバルガスが頷く。

 「はい、魔王様。荷馬車の確保はできております」

 「国境までは第2軍が護衛します」 と、ガイアが即座に応じた。

「頼んだ。さて、次にゲオルグ。ファーレン王国内のギルドの様子はどうだ?」

王国の鉄の取引を一手に担うゲオルグが、やや表情を曇らせながら報告を始めた。

 「実は、あちらから何度も接触がありましてライエル王国との貿易が減り、どのギルドも相当困っているようです」

「そうか。あまり時間をかけるつもりはないが、地方都市が陥落したタイミングで王都サンロックから一時的に脱出するように伝えてくれ。ライエル王国に来てもらっても構わない。鉱山を破壊する気はないから占領後はこれまで通りだと伝えてくれ」

 「承知しました」

「さて、次はボスコ達だ。ビラの方はどうだ?」

新聞社を代表してボスコが答えた。

「印刷は順調に進んでおります」

「さすがだな。もうひとつのファーレン王国への扇動は?」

「はい。こちらも全力であたっておりますがライエル王国の魅力をもう少し強く訴える必要があるかと」

「そうだな。レイラ、ジーナス。頼めるか?」

山田が視線を向けると、レイラと参謀長のジーナスが頷く。

「はい。それではジーナスと内容を検討します」

「承知しました。魔王様、レイラ様」

「さて、こればかりは予想が難しいんだがファーレン王国の内情を考えるとライエル王国にそのまま移住を希望する者が多いかもしれない。受け入れられそうか?」 山田はライエル王に問いかける。

「山田殿から打診頂いてから検討を進めておりました。ジーナス、説明を頼めるか?」

ライエル王に促されて、ジーナスが前へ出る。

「はっ。王都カレスタで大量の移民を受け入れるのは難しいため、フーシアを始めとする各都市で分散して受け入れる想定で進めております」

「了解だ。ゲオルグ、あくまで個人の感想で構わないんだがあちらのギルドの人間が王国に来たときの様子はどうだった?」

「はい。その……魔王様のお話も含めて、でしょうか?」 ゲオルグは慎重に問い返した。

「もちろんだ。俺をどう思ってるかが一番重要だからな」

「それでは。まず驚いたようです。魔王様の支配下で……その……もっと静かだと思っていたようです」

「遠慮せず言ってくれ。そうでないと意味がない」

「はい。流れてくるライエル王国の情報は嘘だと思っている人間が多いようです。実際に来てみると皆、考えが変わるようですが。王都内の市場や魔王横丁の活気に驚いておりました」

「山田殿は皆を幸せにする天賦の才をお持ちですからな。あちらの国民も来てみれば実感するでしょう」

ライエル王の賛辞に、出席者たちは深く頷いた。

「ありがとう。そうだといいな。それではこれで会議を終了する。各々の仕事を全力で進めてくれ」

 * * *

レイラが山田のもとに歩み寄ってきた。

「山田様。それでは私は仕事に復帰します。本当にありがとうございました」

レイラが笑顔でお礼を述べる。

「おう。これからも頼りにしてるぞ。あとヒールベッド購入の件ももちろん期待してるぞ」

「ふふ。わかりました」

そこで、彼女が神妙な表情になる。

 「どうした?」

 「実は……山田様がおっしゃっていた占領後の統治でアイデアがありまして、後ほど少しだけよろしいでしょうか」

 「お、ホントか? 是非聞きたいな。じゃあ後でな」

そこへイリヤが現れる。

「魔王様。私はすぐにでも出発してフェーネンに話をつけてくるよ」

「俺も行くから空路で運ぶぞ。その方が早いだろ」

「ホントかい? 助かるよ。それじゃ急いで準備してくる」

イリヤは踵を返して足早に去っていった。入れ替わるようにしてライラが現れる。

 「魔王様。マギア視察のご手配ありがとうござました」

 「工房の下見はできたのか?」

 「はい。親衛隊の皆さまがよくしてくださって。工房は副商会長のローエンに任せますので」

 「そうか。ところで、なんでライラが参加してるんだ?」

 「え?  私も商人ギルドの代表メンバーですので。これを機にファーレン王国にも進出、あ、いえ皆さまのお役に立てればと」

 「もうツッコミを入れる気力も起きないから聞かなかったことにする」

山田が呆れると、ライラは悪びれもせず満面の笑みを返した。


【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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