魔王山田、誠実に異世界を征服する

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第一部《魔王VS勇者》編

第5話【魔王山田、環境を破壊する】

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会議を終えた後、山田、サイリス、ネイ、アイラの4人は城の廊下を歩いていた。

(あー……やっとシミュレーションっぽくなってきたな)

(部隊編成と指示出しとか、俺が一番好きなヤツじゃん……)

(……クソ女神にも、ちょっとは感謝しとくか。ほんのちょっとだけな)

山田がアイラに話しかける。

「アイラも親衛隊に配属だ。頼りにしてるぞ」

「はいっ!私は隅で聞いていただけですが、魔王様は……すごいです。あんなに次々と指示を……!」

アイラが目を輝かせて言う。

「本当にその通りです。ご指示内容が明確ですので軍全体も動きが円滑になっていく気がしています」

ネイも冷静に補足し、後ろを歩くサイリスも頷いた。

山田は歩きながら、城の壁を見渡した。

「しかしぼろぼろだな。この城」

「御身にふさわしい城をご用意できず申し訳ございません」

サイリスが頭を下げる。

「責めてるわけじゃない。落ち着いたら金をなんとかしないとな。城下町も活気なさそうだし」

「魔族も今では100万を下回ってしまいました。皆、日々を生き抜くので精一杯です」

ネイが静かに言った。

「財務のキンバリに聞いたけど、ほとんど軍事に使ってるみたいだしな」

「でも、前回の勝利でみんな喜んでいます! 魔族の将来は明るいって!」

アイラの声は明るい。

「そっか。それは良かった」

(ポジティブは大事だけど勝って喜んでも腹がいっぱいになるわけではないから、やっぱメシと金は必要だなぁ)

山田は心の中でぼやく。

「さて、作戦会議の前に……三人とも腹減っただろ。パン食うか?」

 * * *

「それじゃ始めようか。ネイ、まず第3軍は敵軍の食料の集積地と補給ルートを特定しろ」

「交戦は……するなと?」

「多少削っても意味がない。最優先は“兵站の把握”だ。飛行兵に対する敵の対抗手段は?」

「魔法と弓です」

「なるほど。決死の作戦になるが、第3軍が勝敗を決すると考えて臨んでほしい」

「お任せください」

山田は続けて振り返る。

「サイリス。偵察に長けた部隊に指示を出して、増援の状況は常に報告してくれ」

「承知しました」

そのとき、元気な声が響く。

「魔王様、セラ様をお連れしました!」

アイラが駆け込んでくる。セラも息を切らしている。

「ちょうどよかった。セラ、第3軍の兵士に可能な限り《ファイア》を習得させろ」

「は、はい! 了解いたしました!」

山田は少し顎に手を当て、思案するように目を細めた。

「とはいっても、集積地は狙えばあのバリアを出してくるよな……。サイリス、俺の魔力を瓶に封じるとか、そういう手段はないか?」

「魔王様の魔力を……ですか? 残念ながらそれは難しいかと。お命じいただければ、私が第3軍に同行し、無効化してまいります」

「できるのか?」

「はい。魔王様のお力で数段強化された今の私なら、可能だと思います」

(やっぱり……譲渡し続けると危ないな)

「あと……あいつら水の補給どうしてるんだ。水を出す魔法とかあるのか?」

「水魔法はございますが、そこまで大量には出せません」 セラが応える。

「となると、敵軍の主力はこのあたりだからこの川か?」

山田が地図を指すと、ネイが指で位置を示して説明する。

「はい。こちらからこちらに流れております」

(昨日、本で見たあの魔法がうまくいけばほぼ勝ちだな)

(それにしてもネイが地図持ってきたけど、大雑把とはいえ飛行のメリットだよな。敵よりかなり精度高そう)

「サイリス、今晩出る。飛べる奴を何人か連れてついてきてくれ」

「承知しました」

「第3軍が少しでも動きやすくなるように嫌がらせしてくる」

「ありがとうございます」

ネイが頭を下げる。

「セラ、ちょっと本で見た魔法で聞きたいことがあるから残ってくれ」

「了解しました」

「それと、アイラ。頑張って《フライ》を習得してくれ。親衛隊は他の魔法も必要になるだろうけど、アイラは《フライ》を頼む」

「わかりました、必ず期待に応えてみせます!」

アイラの元気な声が部屋に響いた。

 * * *

「このあたりでいいか」

川の上流に到着した山田とサイリスたち。

「念のため周辺に兵士がいないか探索してきてくれ」

山田の命令により、兵たちが一斉に散っていく。

「……さて、始めるか」

「川を破壊されるのですか?」

サイリスが静かに問いかける。

「まぁ、見ててくれ」

山田は無造作に川へ手を突っ込む。

(魔法……魔法……《ロット》……。ここから下流まで可能な限り腐らせる。魔力も出し惜しみなしだ)

念じると、水の色が見るもおぞましい色に変色していく。

「これはまさか……腐食の……」

サイリスが顔をしかめた。

「よし、うまくいったな」

(セラが浄化の魔法や魔具があるって言ってたけどこれだけ汚染すればしばらく追いつかないだろう)

「じゃあ、上から破壊するか」

「承知しました」

(……川を汚染したあげく破壊とか、色々もったいないけど今はそんな贅沢言えないか)

山田は上空へ飛び上がると、静かに《ファイア》を放った。火球が落下し、爆発する。

 * * *

連合軍の駐屯地。

森と川に囲まれた天然の要地に設営された本陣は、無数の天幕と木製の柵で囲われ、見張り塔からは薄く煙が上がっている。

突然、遠くから爆音が響いた。

地鳴りのような振動と共に、山の方から黒煙が立ち昇る。

司令部の天幕で地図を睨んでいたレイナード将軍が顔を上げる。

その直後――司令部の天幕をめくり、ひとりの兵士が飛び込んできた。

「レイナード将軍! 大変です! 川が突然変色して、水を飲んだ兵士が次々と倒れています!」

「なんだと!? 早く浄化させろ! 増援も続々来ているんだぞ!」

兵士が慌てて駆け出していく。直後、大きな爆発音が鳴り響いた。

「敵襲! 敵襲です!」

「今度は何だ!!」

別の兵士が駆け込んでくる。

「東の上空から魔法による砲撃です!!」

あちこちで爆発が起き、混乱が広がる。

「まさか……魔王か!? 障壁の展開を急がせろ!!」

ひときわ大きな爆発が起き、地面が揺れる。

「ええいっ! 魔法で応戦しろ!!」

そこへさらに別の兵士が飛び込んできた。

「将軍!! 橋が落とされました!!」

「なに……!? なんだと!!」

各所に障壁が展開されていく。

魔法の砲撃が何度も障壁を破るが、爆発は次第に小規模になっていった。

しばらくして砲撃が止み、代わりにあちこちで火の手が上がり、断末魔の叫びが響き始める。

レイナード将軍は震える拳で机を殴った。


【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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