5 / 115
第一部《魔王VS勇者》編
第5話【魔王山田、環境を破壊する】
しおりを挟む会議を終えた後、山田、サイリス、ネイ、アイラの4人は城の廊下を歩いていた。
(あー……やっとシミュレーションっぽくなってきたな)
(部隊編成と指示出しとか、俺が一番好きなヤツじゃん……)
(……クソ女神にも、ちょっとは感謝しとくか。ほんのちょっとだけな)
山田がアイラに話しかける。
「アイラも親衛隊に配属だ。頼りにしてるぞ」
「はいっ!私は隅で聞いていただけですが、魔王様は……すごいです。あんなに次々と指示を……!」
アイラが目を輝かせて言う。
「本当にその通りです。ご指示内容が明確ですので軍全体も動きが円滑になっていく気がしています」
ネイも冷静に補足し、後ろを歩くサイリスも頷いた。
山田は歩きながら、城の壁を見渡した。
「しかしぼろぼろだな。この城」
「御身にふさわしい城をご用意できず申し訳ございません」
サイリスが頭を下げる。
「責めてるわけじゃない。落ち着いたら金をなんとかしないとな。城下町も活気なさそうだし」
「魔族も今では100万を下回ってしまいました。皆、日々を生き抜くので精一杯です」
ネイが静かに言った。
「財務のキンバリに聞いたけど、ほとんど軍事に使ってるみたいだしな」
「でも、前回の勝利でみんな喜んでいます! 魔族の将来は明るいって!」
アイラの声は明るい。
「そっか。それは良かった」
(ポジティブは大事だけど勝って喜んでも腹がいっぱいになるわけではないから、やっぱメシと金は必要だなぁ)
山田は心の中でぼやく。
「さて、作戦会議の前に……三人とも腹減っただろ。パン食うか?」
* * *
「それじゃ始めようか。ネイ、まず第3軍は敵軍の食料の集積地と補給ルートを特定しろ」
「交戦は……するなと?」
「多少削っても意味がない。最優先は“兵站の把握”だ。飛行兵に対する敵の対抗手段は?」
「魔法と弓です」
「なるほど。決死の作戦になるが、第3軍が勝敗を決すると考えて臨んでほしい」
「お任せください」
山田は続けて振り返る。
「サイリス。偵察に長けた部隊に指示を出して、増援の状況は常に報告してくれ」
「承知しました」
そのとき、元気な声が響く。
「魔王様、セラ様をお連れしました!」
アイラが駆け込んでくる。セラも息を切らしている。
「ちょうどよかった。セラ、第3軍の兵士に可能な限り《ファイア》を習得させろ」
「は、はい! 了解いたしました!」
山田は少し顎に手を当て、思案するように目を細めた。
「とはいっても、集積地は狙えばあのバリアを出してくるよな……。サイリス、俺の魔力を瓶に封じるとか、そういう手段はないか?」
「魔王様の魔力を……ですか? 残念ながらそれは難しいかと。お命じいただければ、私が第3軍に同行し、無効化してまいります」
「できるのか?」
「はい。魔王様のお力で数段強化された今の私なら、可能だと思います」
(やっぱり……譲渡し続けると危ないな)
「あと……あいつら水の補給どうしてるんだ。水を出す魔法とかあるのか?」
「水魔法はございますが、そこまで大量には出せません」 セラが応える。
「となると、敵軍の主力はこのあたりだからこの川か?」
山田が地図を指すと、ネイが指で位置を示して説明する。
「はい。こちらからこちらに流れております」
(昨日、本で見たあの魔法がうまくいけばほぼ勝ちだな)
(それにしてもネイが地図持ってきたけど、大雑把とはいえ飛行のメリットだよな。敵よりかなり精度高そう)
「サイリス、今晩出る。飛べる奴を何人か連れてついてきてくれ」
「承知しました」
「第3軍が少しでも動きやすくなるように嫌がらせしてくる」
「ありがとうございます」
ネイが頭を下げる。
「セラ、ちょっと本で見た魔法で聞きたいことがあるから残ってくれ」
「了解しました」
「それと、アイラ。頑張って《フライ》を習得してくれ。親衛隊は他の魔法も必要になるだろうけど、アイラは《フライ》を頼む」
「わかりました、必ず期待に応えてみせます!」
アイラの元気な声が部屋に響いた。
* * *
「このあたりでいいか」
川の上流に到着した山田とサイリスたち。
「念のため周辺に兵士がいないか探索してきてくれ」
山田の命令により、兵たちが一斉に散っていく。
「……さて、始めるか」
「川を破壊されるのですか?」
サイリスが静かに問いかける。
「まぁ、見ててくれ」
山田は無造作に川へ手を突っ込む。
(魔法……魔法……《ロット》……。ここから下流まで可能な限り腐らせる。魔力も出し惜しみなしだ)
念じると、水の色が見るもおぞましい色に変色していく。
「これはまさか……腐食の……」
サイリスが顔をしかめた。
「よし、うまくいったな」
(セラが浄化の魔法や魔具があるって言ってたけどこれだけ汚染すればしばらく追いつかないだろう)
「じゃあ、上から破壊するか」
「承知しました」
(……川を汚染したあげく破壊とか、色々もったいないけど今はそんな贅沢言えないか)
山田は上空へ飛び上がると、静かに《ファイア》を放った。火球が落下し、爆発する。
* * *
連合軍の駐屯地。
森と川に囲まれた天然の要地に設営された本陣は、無数の天幕と木製の柵で囲われ、見張り塔からは薄く煙が上がっている。
突然、遠くから爆音が響いた。
地鳴りのような振動と共に、山の方から黒煙が立ち昇る。
司令部の天幕で地図を睨んでいたレイナード将軍が顔を上げる。
その直後――司令部の天幕をめくり、ひとりの兵士が飛び込んできた。
「レイナード将軍! 大変です! 川が突然変色して、水を飲んだ兵士が次々と倒れています!」
「なんだと!? 早く浄化させろ! 増援も続々来ているんだぞ!」
兵士が慌てて駆け出していく。直後、大きな爆発音が鳴り響いた。
「敵襲! 敵襲です!」
「今度は何だ!!」
別の兵士が駆け込んでくる。
「東の上空から魔法による砲撃です!!」
あちこちで爆発が起き、混乱が広がる。
「まさか……魔王か!? 障壁の展開を急がせろ!!」
ひときわ大きな爆発が起き、地面が揺れる。
「ええいっ! 魔法で応戦しろ!!」
そこへさらに別の兵士が飛び込んできた。
「将軍!! 橋が落とされました!!」
「なに……!? なんだと!!」
各所に障壁が展開されていく。
魔法の砲撃が何度も障壁を破るが、爆発は次第に小規模になっていった。
しばらくして砲撃が止み、代わりにあちこちで火の手が上がり、断末魔の叫びが響き始める。
レイナード将軍は震える拳で机を殴った。
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
2
あなたにおすすめの小説
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
