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第一部《魔王VS勇者》編
第9話【勇者、孤軍奮闘する】
しおりを挟む翌朝。
居並ぶ連合軍の先頭にスランは立っていた。
(……もう連合軍はガタガタだ。水を汚染されたのは致命的だった。昨晩の失態で、軍内部には俺を責める声もある。水魔法を習得していないし、優先的に浄化水が俺に回されたことで、反感も増している)
(状況を打開するには今日ヤツと魔軍を滅ぼし、要塞周辺の河川を奪うしかない! 人類の明日のためにも!)
スランは剣を掲げ、雄叫びを上げて馬を駆け出した。連合軍もそれに続き、進軍を開始する。
(こちらの兵士は動きが鈍い……当然か)
魔軍と衝突すると、スランは聖剣を振るって次々と敵兵を斬り倒していく。
(今日は空からの魔法が多い!)
「魔王!どこにいる!出てこい!」
叫ぶスランの目に、左翼で上がる大きな火の手が映る。見上げると、上空には魔王の姿。
(要塞から射線を外して……撃ってみろってか。魔力切れを見られたのは失敗だったな)
兵士が駆け寄ってくる。
「勇者様!やはりどんどん押されています!左翼の指揮官も倒れ、まもなく突破されます!」
「レイナード将軍に報告して立て直せ!」
そのとき、要塞の門が開き、四体の巨大な魔獣が進み出る。連合軍の兵士たちが恐慌状態に陥る。
(まだあんなものを温存してたのか、ならば……)
「ディバインソード!」
スランの剣から伸びた光が正面の魔獣を貫き、轟音を立てて倒れる。
再び剣を構えるスランの上空から、ネイが急降下し、魔法を乱射してくる。
「邪魔だ!」
スランはファイアを連発するが、ネイのスピードが速すぎて命中しない。
今度は、ダリス率いる第4軍が突撃してくる。
「ストーンバースト!」
スランの魔法が無数の石を弾き出し、兵士たちが次々と倒れていく。
「勇者!!覚悟しろ!!」
走ってきたダリスが斬りかかり、スランとの激しい斬り合いが始まる。
「ははっ!どうした、勇者!」
(くそっ、仕留められない! だが!)
「アクセル!」
スランの動きが急激に加速し、アリアンデが閃いてダリスを切り裂く。ダリスは血飛沫を上げて地に伏した。
その直後、地を這うような無数の氷の柱がスランを襲う。
「プロテクト!」
防御魔法で防ぎながら視線を向けると、ギギが構えて再度氷を放ってくる。
(なんなんだ一体……昨日こんな連中いたか!?)
防御しながら周囲を見渡すと、連合軍は総崩れとなり、すでに敗走を始めていた。
動きが止まったスランに第4軍の兵士が四方から殺到する。
「舐めるな!!ディバインフルバースト!!」
スランの絶叫と共に、光の衝撃波が突き抜け、広範囲の魔軍兵士が地面に崩れ落ちる。
上空のネイにも直撃し地面に墜落すす。ギギも仰向けに倒れて動かなくなる。
肩で息をしながら膝をつくスランの前に、ガイアが部隊を率いて猛然と駆けてくる。
「勇者! 覚悟!」
スランは再び立ち上がり、ガイアの剣を受け止める。激しい剣の応酬の合間に他の兵士たちからスランに魔法が放たれる。
次々斬り倒しても一向に怯む様子もなく襲いかかる兵士の波にスランの魔力と精神がすり減っていく。
「これで終わりだ!」
一瞬、動きが止まったスランにガイアが剣を振り下ろす。
「舐めるなと言っただろうが!!ディバインフルバースト!!」
再び光の衝撃波が広がり、魔軍兵士が倒れ、ガイアも地面に倒れ込む。
スランは剣を取り落とすと両膝をついた。
全身から力が抜け、肩が小刻みに震える。浅い呼吸を繰り返し、視界は霞み、遠くで誰かが叫んでいるような気がした。
(もう……立てない……)
意識が断続的に途切れ、地面がぐらりと揺れているように感じる。
だが、敵は待ってはくれなかった――
サイリスが魔力を収束させながら上空から飛来した。その姿はまるで死神のようだった。
「魔王様に仇なす者に死を」
囁くような声と共に、無数の漆黒の刃が空を裂く。
スランの肩や脇腹に刃が突き刺さり、鮮血が散る。続けざまに魔力弾が降り注ぎ、地面が何度も揺れる。
身体が地に叩きつけられ、意識が完全に途切れたその瞬間――
魔軍の大歓声が轟いた。
だが次の瞬間、空気が変わった。
スランの身体から白い光がふわりと立ち上り、周囲の魔族たちが一斉に息を呑む。
倒れていたスランが、まるで操り人形のようにゆっくりと起き上がる。
顔には血が流れ、片目はすでに閉じている。
それでも、その腕はまっすぐ山田を指していた。
光の矢が放たれ――
山田の肩から先が、閃光とともに吹き飛んだ。
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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