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第一部《魔王VS勇者》編
第20話【勇者、聖剣を探す】
しおりを挟むスランは馬上で目を閉じて集中していた。
(今回の目的はあくまで聖剣を取り戻すことだ。俺以外は持ち上げられないから必ず残っているはずだ)
「勇者様、進軍の準備が整いました! 作戦通りに我々も聖剣を捜索しつつ、魔軍を迎え撃ちます」
「お願いします。それでは行きます!」
スランが馬を走らせて平原を進んでいく。
(なんだ? 魔軍が攻撃してこない?)
「勇者様!まもなく目的地付近です!」
スランは馬を止め、周囲を探し始める。
大勢の兵士たちが辺りを捜索する。
「勇者様! それらしき剣が見当たりません。このあたりで合っていますか?」
「あぁ。要塞からの距離で、このあたりのはずだ……」
(ない……なぜないんだ?! どこにいった?!)
スランが懸命に走り回る。
(魔王が持ち去ったのか? 俺以外も持てるのか?)
途方に暮れて立ち尽くしていたそのとき──地鳴りのような音と共に土煙が上がる。
その後、連続して音が鳴る。あちこちから絶叫が聞こえる。
さらにスランの視界で大きな土煙が上がる。
「なんだ?!」
目をこらすと、大きな石が地面に突き刺さっている。
「……石?」
再び轟音が鳴り、絶叫が重なる。
スランがゆっくりとそちらを振り返る。
(は……?)
目に入った凄惨な光景を見て、スランの思考が止まる。
「勇者様! 空から! 空から次々と!」
隊長が叫びながら駆け寄ってくる。
「……空?」
空を見上げても……何も見えない。
その間にも轟音と絶叫が止まない。
「勇者様! 撤退を!」
スランは呆然として動けない。
「撤退だ! 撤退しろ!」
そのとき、スランの近くでひときわ大きく地面が爆発した。多くの兵士が巻き込まれ、地に伏す。
スランは砂ぼこりにまみれながら呆然とその光景を見つめていた。
そして突然、我に返る。
「うわあああああああああああ!!」
叫びながらスランは走り出し逃げ出していく。
その背後では、なおも轟音と絶叫が続いていた。
* * *
バルト要塞後方の拠点。
「その後、第3軍がロックフォールを実行。勇者は恐慌状態で逃げていったとのことです」
報告を受けた山田が目を細める。
「ご苦労。兵たちによくやったと伝えてくれ。サイリスもご苦労だった」
「ありがとうございます」
山田が黙って座っている。
「魔王様?」
サイリスが不安げに声をかける。
山田は立ち上がる。
「……ちょっと外の空気を吸ってくる。ミリトンたちもこなくていいぞ」
そう言って外に出ると、山田は空に飛び立つ。
ひたすらに上昇していき、上空で止まる。
「──はーっはっはっはっは! はーはっはっはっは!」
(ざまあみろ! チート野郎! 散々手こずらせやがって!)
(プロテクトかけて突っ込んでくるかと思ったらビビって逃げるとは! 豆腐メンタルめ!)
「っはっはっはっは……ゲホッゲホッ……あー、笑いすぎた」
「……魔王様……?」
唖然とした表情のサイリスが、近くに来ていた。
「え? ちょ……なんできたんだ?」
「魔王様が心配で……」
「あー、今のは忘れてくれ」
サイリスが微笑む。
「魔王様の意外な一面が見られて、嬉しく思います」
「そうか……サイリス、喜べ。最大の脅威を排除したんだ。これで魔族も大きく前進だ」
「はい」
二人は並んで、地上へと降りていった。
* * *
拠点に戻るとネイが控えていた。
「ネイ、ご苦労だったな」
「ありがとうございます」
(最初は攻撃せず観察するように指示したけど……やはり聖剣レーダーみたいなものはないのか。埋めて正解だな)
「インパクトを習得した部下に狙わせましたが、残念ながら勇者には的中しませんでした」
「聞いた様子だと、それがトドメになって逃げ出したんだろ? 大成功じゃないか。それに倒すとまた前みたいに妙なことになりかねないからな」
山田は立ち上がると大きく伸びをする。
「さーて、やることがいっぱいだぞ。一旦魔王城に戻るか」
そういって全員が拠点を後にした。
* * *
王都 王城執務室。
「……去った?」
「はい。恐らくモルドラス都市国家に帰ったのではないかと」
ジーナスが淡々と答える。
「軍は?」
「半数以上は帰還しましたが、精神的に参っている者が多く……。報告によれば、空から岩が降ってきて兵士が次々潰されたと。報告の最中に錯乱状態になる者もおりました」
ライエル王がふらつく。
「陛下!」
ジーナスが慌てて駆け寄り、支える。
「すまない……」
そのとき、ノック音がする。
「入れ」
レイラ王女が静かに入ってくる。
「お父様……スラン様は……?」
部屋に沈黙が漂った。
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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