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第一部《魔王VS勇者》編
第22話【魔王山田、王城に乗り込む】
しおりを挟む魔王城会議室。
「皆、よく集まってくれた。本題に入る前に──先日のバルト要塞では本当によくやってくれた」
山田がそう言うと、場の空気が引き締まる。
「俺達は見てただけで、最後まで出番なかったですが」
ダリスが苦笑混じりに言う。
「ネイ将軍と第3軍の功績ですわ」
ギギが隣のネイを見て言った。
「いえ、我々全員の勝利です」
ネイが控えめに返すと山田が続けた。
「その通りだ。決定打を与えた第3軍の功績は大きいが、要塞に集積地を築いていたことが大きかった。そういったことも含めて全員で掴んだ勝利だ」
「ありがとうございます。皆にも魔王様の言葉を伝えます」
ガイアが真っ直ぐに頭を下げた。
「そうしてくれ。さて、本題に入るが……勇者が襲撃してきたことで、予定を変更することにした」
「といいますと?」
ガイアが問い返す。
「俺はこの後、直接王都に乗り込んでライエル王と話をつけてくる。拒否すれば王都を焼くことになるが、多分そうはならないだろう」
会議室が大きくどよめく。
「いよいよですな!」
ガイアが身を乗り出す。
「ダリス、グランデ平野への侵攻は予定通り進めてくれ。恐らく軍は出てこないと思うが、確実に頼む」
「承知しました!」
「ガイア、それに合わせて王国軍が余計なことをしないように、第1軍は迅速に軍を進めて王都付近に集積地の構築を急いでくれ」
「なるほど、いつでも攻撃できる状態にするわけですな。承りました!」
「最後にひとつ大事な話がある。よく聞いてくれ」
全員が真剣な表情になる。
「近々、王国の人間を魔王城に連れてくる。好き勝手に出入りさせるつもりはないが、魔族繁栄のために今後も様々な人間が魔族領に来るだろう。これについて後々揉めないように幹部とは方針を共有しておきたい」
皆が一様に複雑な表情を浮かべる。
山田はしばらく様子を見てから口を開いた。
「もしどうしても納得できないなら、王都も含めて俺が人類の世界を焼き尽くしてきてやる。後は皆に任せて俺は魔王を辞める」
全員が驚愕する。
「そんな!」 ギギが声を上げる。
「冗談ではないから真剣に考えてくれ」
場が静まり返る。
しばらくして、ダリスが静かに口を開いた。
「最近、子どもがよく笑うようになったんです」
皆が彼に目を向ける。
「以前は暗い話題ばかりで我慢していたんでしょうね」
「そうだろうな」
ガイアが頷く。
「そりゃ、これまで散々仲間を殺されたことを思えば、人類なんて一人残らずぶちのめしたいです。ただ、魔王様がそれに代わる未来を見せてくれるというなら……俺は従います」
「私もです」 ギギが続いた。
ネイも山田を見て静かに頷く。
「ガイアはどうだ?」
「これまで倒れていった魔族の皆を思い浮かべていました。人類へのわだかまりが消えることはないと思いますが、皆も納得してくれるでしょう。私も魔王様についていきます」
「わかった。サイリスは?」
「私の心は魔王様と共に」
サイリスの言葉に、山田が微笑む。
「俺も皆の思いに全力で応えよう。それでは、手始めに王国を支配する」
* * *
「おーやっと王都が見えてきた」
上空を飛びながら、山田が声を上げる。
「帰りは荷物が増えるから、親衛隊のみんな、よろしく頼むぞー」
「魔王様の護衛はお任せください」
サイリスが答える。
「なんでも命じてください!」
アイラも張り切った声を出した。
「よし、では直接乗り込むぞ」
山田たちは王都の上空をそのまま飛び、王城へと進む。
サイリスが魔法を放つと、王城の壁が轟音と共に破壊された。
山田たちはそのまま壁の中へと入っていく。
「何だお前達は!」 「陛下をお守りしろ!」 「応援を呼べ!」
王城内の兵士たちが騒然とする。
「サイリス」
山田の合図でサイリスが魔法を放つ。 強烈な魔法が放たれ、兵士たちが次々に倒れていく。
「お、ちょうどよかった」
山田は悠々と玉座へ向かい、座っていたライエル王に近づいた。
「お、お前は……」
「魔王やってる山田だ。早く攻撃をやめさせないと死体が増えるぞ」
「魔王……そうか……お前達! 攻撃を止めろ! 全兵士に伝えろ!」
「し、しかし……」
「命令だ!」
「承知しました! 攻撃を止めろ!」
兵士が走り出していく。
そこへジーナスが慌てて走り込んできた。
「陛下! ご無事ですか! これは一体……」
「ライエル王、話がしたい。王子たちも呼んでくれ」
「わかった」
ライエル王はジーナスに目を向ける。ジーナスは頷くと、再び走り去った。
「魔王山田殿、場所を変えて話し合いたいがどうだろうか」
「いいぞ」
ライエル王は立ち上がると山田達と共に玉座の間を出ていった。
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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