魔王山田、誠実に異世界を征服する

nexustide400

文字の大きさ
26 / 115
第一部《魔王VS勇者》編

第26話【魔王山田、魔王国と名付ける】

しおりを挟む

魔王城に一行が降り立つ。

「やっと城に帰ってきた」

山田は深呼吸をした。

(なんだかんだでこの城にも愛着沸いてきたな)

バルガスたちは目を丸くしながら城を見上げ、あたりをキョロキョロと見回していた。

「ようこそ魔王城へ。感想は?」

「歴史の重みを感じさせる、まさしく魔王様にふさわしいお城かと」

バルガスが感嘆の声を上げる。

「そうかい?……ぼろぼろの城じゃないか」

「貴様はもう王都に帰れ!」

バルガスがイリヤに食ってかかる。

「ちょっとずつ修繕してるんだけど後回しだからな。安く資材を回してくれる商会あったら紹介してくれ、バルガス」

「はい、もちろんです」

「三人は城の近くに警備付で宿を用意してるから、今夜はそこで泊まってくれ」

兵士が商人ギルドの三人を案内していく。

山田は城の中を歩いていき、部屋の前で立ち止まった。

「レイラ王女はここだ。今日は慣れない飛行で疲れただろうから休んでくれ。なにか必要なものがあったら親衛隊によろしく。じゃあまた明日」

「え……」

残されたレイラ王女が小さく声を漏らす。親衛隊員が敬礼をして部屋の扉を開ける。

「さーて、あとはガイアたちとの会議だな。ちょっと休憩しよう」

山田とサイリスは食堂へと向かった。

食堂では魔王の登場にざわめきが広がったが、山田が「気にするな」と手を振ってサイリスとともに席につく。

料理長のポンスが姿を見せる。

「魔王様、いらっしゃいませ」

「おう。この前の包み焼きメニューに加えたんだな」

「はい、おかげさまで大変人気です」

「それはよかった。王都から面白い奴を連れてきたから明日の朝、ダリオのところに行ってくれ」

「承知しました。本日は?」

「温かい飲み物を頼む。サイリスは?」

「魔王様と同じもので」

ほどなくして飲み物が2つ運ばれてくる。

「領土も広がるし、イリヤと取引したらメニューが増えていくかな」

「はい」

「サイリスはなにか希望ないのか? 新メニュー」

「いえ、私は特に……」

「遠慮せずに。なにかないか?」

サイリスが考え込む。

「トトラトぶどうなどはいかがでしょうか。元々北東のトトラト地方で穫れていたのです。魔王様が領土を取り戻されましたので、また採れるようになるかと」

「いいね。ダリオにも言っておくよ」

そのまま二人は静かに談笑を続けた。

 * * *

魔王城・会議室。

第1軍のガイアと三人の兵士、第2軍のギギと三人の兵士がそれぞれ控えていた。

山田が席に着くと、ガイアとギギが腰を下ろす。

「遠路お疲れ様でした。ライエル王国を魔王様の支配下に置かれたとのことで、配下一同を代表してお祝い申し上げます」

ガイアが笑顔で言った。

「ありがとう。魔族全員の成果だ」

「今後も我々をお導きください」

ギギが深く頭を下げた。

「さて、本当はみんなが集まったときに伝えるつもりだったが、保留になっていた国の名前は『魔王国』、首都は『マギア』と名付ける」

全員がどよめき、サイリスの目が輝く。

「以後それで頼む。早速だが全員に大事な話があるんだが、その6人か?」

「はい、ご命令のあった大隊長を集めております」

ガイアが報告する。

「助かる。今後領土を拡大するつもりだが、魔族全体が増えるには時間がかかるから基本的に現地の人材と軍を運用する必要がある」

ギギが頷いた。

「ライエル王国がその最初のケースになるが、ガイアに管理を任せたい」

ガイアが驚いて目を見張る。

「内政は参謀長のジーナスに仕切らせるから、ガイアは軍の掌握と再編に専念してほしい」

「必ずや大任を全ういたします!」

「私はいかがいたしましょうか」

ギギが尋ねた。

「ギギはこのマギアで第2軍の指揮と合わせて全体の指揮をしてほしい。大陸中央との最前線はガイアに担ってもらうが、今後ひたすら西に拡張する気はない。あくまでここを中心にするつもりだ」

「承りました」

「さて、大隊長の6名に命じる。近々王国の地方都市の制圧作戦を予定している。他の者より高い才能を見せた者には、副軍団長として大きな仕事を任せていく。俺からの魔力譲渡も行うから全力で勝ち取れ」

6人の大隊長が色めき立つ。

「魔王様にアピールする絶好の機会だぞ!」

ガイアが声を上げると「期待に応えてみせます!」「頑張ります!」と口々に声が上がる。

「皆の奮戦を期待しているぞ」

全員が「はっ!」と声を合わせた。


【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...