スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~

空松蓮司

文字の大きさ
73 / 113

第73話 天賦と凡夫

しおりを挟む
 ナドラ研究所・所長室。
 ナドラは巨大なモニターで戦況を確認していた。

「ふざけるな……なんだコレは!!」

 2人のアタッカーがスペースガールとヒューマノイドを蹂躙し、1人の狙撃手と8機の狙撃型ヒューマノイドが研究所や城門の兵装を次々と狙撃していく。

「押されているだと……!? 私が、2年かけて作った要塞が……あんな少人数に!!」

 特にナドラが注視するは敵ヒューマノイドの性能だ。
 狙撃の精度、反応の良さ、動きの流麗さ、いずれもヒューマノイドのレベルじゃない。

「なんなんだあのヒューマノイドは……!? 一体、誰をモデルにしている!!」

 その時、ナドラのメッセージボックスにある知らせが入る。

「なっ!?」

 ナドラはメッセージを開き、絶句した。

「召喚状!? 馬鹿な!! 召喚状を出せるのは軍の中でも上澄みの人間だけ……イヴにそんなパイプがあったのか! クソ!! ――マスター! 聞こえるか!? マスター・グリーンアイス!!」

 モニターが緑色に染まり、中心に『Green Ice』という歪んだ黒文字が浮かぶ。

『どうしたナドラ。何を慌てている』

 変声機で加工した機械的な声が響く。

「アンタが出した命令のせいでいま私は窮地だ。なんとかしろ!」

 グリーンアイスはあざけるような声色で、

『私に責任は無いよ。私は『グロウメタルを献上せよ』と言っただけだ。別に採掘権を握っている者から買い取ってもいいし、譲り受けても良かった。攻撃的な手段を取ったのはお前の判断だろう』
「アンタが提示した量を採掘するためには! 採掘権そのものを奪うしか無かったんだ!!」
『違うな。お前は私に提出する分だけでなく、自分が使える分も求めた。だから採掘権を取りにいったのだ。私が提示した量だけならば平和的に手に入れられたはずだ』
「くっ……!?」
『なぜグロウメタルを求めたかは問わんでやろう。最後のアドバイスだ。諦めて速やかにコロニーから出ることだ。その研究所から君の悪行全ての証拠を消すことは不可能。コロニーの中に、君の未来は無いよ』
「簡単に言いやがって! この研究所を作るために……私がどれだけ努力したと思っている! クソ!!」
『努力……か』

 機械質な笑い声が地下室に響く。

『それを言ったらおしまいだよナドラ。努力の尊さを認めろと言うなら、彼女たちの努力を踏みにじったお前こそが『悪』だ』
「黙れ……ちくしょう……!」
『しかし今回の顛末がどうであれ、君の努力は無駄にはならないと言っておこうか。最後の最後で君は大当たりを引いた。溢れんばかりの才能を持ち、さらに努力を努力と思わない存在を君は連れてきてくれた。最後に見せてくれナドラ、『頑張り屋』が『怪物』に踏みにじられるところを――』

 通信を切り、ナドラは爪を噛む。

「……逃げるしかない。宇宙船はある。金もある。知識もある。別のコロニーで再起して、今度こそ――∞アーツを作り上げてみせる……!!」

 ナドラは1人、宇宙船のある格納庫へ向かう。


 --- 


 勝敗はすでに決していた。
 ニコとクレナイは研究所外の敵を殲滅、レンとヒューマノイドは目に見えるTWを全て掃討した。
 後は研究所の中を押さえるだけ。しかし相手はもう戦力のほとんどを出し切っていた。もうできることは逃走のみ。

 勝敗を決めた大きな要因、それは8機の狙撃型ヒューマノイドだ。

「驚いたのう。こりゃ、そこらのスペースガールよりよっぽど強い」

 城門の上からレンは戦場を見渡す。
 ヒューマノイドは手を緩めず、未だに研究所を攻撃し続けている。レンが敵に同情してしまうほどに徹底している。

 ヒューマノイドの戦闘力はその基盤に置かれたアビリティデータによって大きく変わる。今回ヒューマノイド達にインプットされたのはシキのアビリティデータだ。

 所詮はコピー、シキの技能の45%程しか再現はできなかったものの、その狙撃は正確。判断は的確。あっという間に対空砲やガトリング砲を狙撃で破壊し尽くし、その後は地上部隊の援護射撃もおこなった。

 シキ・コピーはシキの技能を再現しつつ、シキの『人見知り』という弱点は排除しているため、滞り無く連携ができる。8人の疑似シキが連携を取って迫ってくるのだ。たとえ優秀なヒューマノイドやTWを所持していても、対応できるはずもない。

 レンを含めたこの空中部隊が制空権を握った時点でもう相手にできることは何もなかった。狙撃の雨がひたすらに攻め立てる。

「……あの四つ巴戦、40回やってシキを倒せたのは3回のみ。37回は奴が勝利した。改めて恐ろしい奴じゃ。わざわざここまで良かった」

 レンはアイテムポーチからデータディスクを出し、ニヤリと笑う。

「さてと、後はめを待つのみじゃな」

 狙撃型ヒューマノイドに自身のアビリティデータが一切使われなかったことに不満はあった。だが、これだけの力を見せられてしまえば、納得せざるを得ない。

 もう突入組にやることはない。
 後は狙撃組の1撃を待つのみ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

無表情ドールマスター

けんはる
ファンタジー
無表情少女香月 ゆずが姉に誘われて始めたVRMMO〈Only Fantasy〉で十天聖の一人に選ばれてしまうが そんなことは関係なく自由に行動していく物語 良ければ 誤字・脱字があれば指摘してください 感想もあれば嬉しいです 小説を書こうでも書いてます

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

兄貴のお嫁さんは異世界のセクシー・エルフ! 巨乳の兄嫁にひと目惚れ!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
ファンタジー
夏休み前、友朗は祖父の屋敷の留守を預かっていた。 その屋敷に兄貴と共に兄嫁が現れた。シェリーと言う名の巨乳の美少女エルフだった。 友朗はシェリーにひと目惚れしたが、もちろん兄嫁だ。好きだと告白する事は出来ない。 兄貴とシェリーが仲良くしているのを見ると友朗は嫉妬心が芽生えた。 そして兄貴が事故に遭い、両足を骨折し入院してしまった。 当分の間、友朗はセクシー・エルフのシェリーとふたりっきりで暮らすことになった。

処理中です...