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第73話 天賦と凡夫
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ナドラ研究所・所長室。
ナドラは巨大なモニターで戦況を確認していた。
「ふざけるな……なんだコレは!!」
2人のアタッカーがスペースガールとヒューマノイドを蹂躙し、1人の狙撃手と8機の狙撃型ヒューマノイドが研究所や城門の兵装を次々と狙撃していく。
「押されているだと……!? 私が、2年かけて作った要塞が……あんな少人数に!!」
特にナドラが注視するは敵ヒューマノイドの性能だ。
狙撃の精度、反応の良さ、動きの流麗さ、いずれもヒューマノイドのレベルじゃない。
「なんなんだあのヒューマノイドは……!? 一体、誰をモデルにしている!!」
その時、ナドラのメッセージボックスにある知らせが入る。
「なっ!?」
ナドラはメッセージを開き、絶句した。
「召喚状!? 馬鹿な!! 召喚状を出せるのは軍の中でも上澄みの人間だけ……イヴにそんなパイプがあったのか! クソ!! ――マスター! 聞こえるか!? マスター・グリーンアイス!!」
モニターが緑色に染まり、中心に『Green Ice』という歪んだ黒文字が浮かぶ。
『どうしたナドラ。何を慌てている』
変声機で加工した機械的な声が響く。
「アンタが出した命令のせいでいま私は窮地だ。なんとかしろ!」
グリーンアイスは嘲るような声色で、
『私に責任は無いよ。私は『グロウメタルを献上せよ』と言っただけだ。別に採掘権を握っている者から買い取ってもいいし、譲り受けても良かった。攻撃的な手段を取ったのはお前の判断だろう』
「アンタが提示した量を採掘するためには! 採掘権そのものを奪うしか無かったんだ!!」
『違うな。お前は私に提出する分だけでなく、自分が使える分も求めた。だから採掘権を取りにいったのだ。私が提示した量だけならば平和的に手に入れられたはずだ』
「くっ……!?」
『なぜグロウメタルを求めたかは問わんでやろう。最後のアドバイスだ。諦めて速やかにコロニーから出ることだ。その研究所から君の悪行全ての証拠を消すことは不可能。コロニーの中に、君の未来は無いよ』
「簡単に言いやがって! この研究所を作るために……私がどれだけ努力したと思っている! クソ!!」
『努力……か』
機械質な笑い声が地下室に響く。
『それを言ったらおしまいだよナドラ。努力の尊さを認めろと言うなら、彼女たちの努力を踏みにじったお前こそが『悪』だ』
「黙れ……ちくしょう……!」
『しかし今回の顛末がどうであれ、君の努力は無駄にはならないと言っておこうか。最後の最後で君は大当たりを引いた。溢れんばかりの才能を持ち、さらに努力を努力と思わない存在を君は連れてきてくれた。最後に見せてくれナドラ、『頑張り屋』が『怪物』に踏みにじられるところを――』
通信を切り、ナドラは爪を噛む。
「……逃げるしかない。宇宙船はある。金もある。知識もある。別のコロニーで再起して、今度こそ――∞アーツを作り上げてみせる……!!」
ナドラは1人、宇宙船のある格納庫へ向かう。
---
勝敗はすでに決していた。
ニコとクレナイは研究所外の敵を殲滅、レンとヒューマノイドは目に見えるTWを全て掃討した。
後は研究所の中を押さえるだけ。しかし相手はもう戦力のほとんどを出し切っていた。もうできることは逃走のみ。
勝敗を決めた大きな要因、それは8機の狙撃型ヒューマノイドだ。
「驚いたのう。こりゃ、そこらのスペースガールよりよっぽど強い」
城門の上からレンは戦場を見渡す。
ヒューマノイドは手を緩めず、未だに研究所を攻撃し続けている。レンが敵に同情してしまうほどに徹底している。
ヒューマノイドの戦闘力はその基盤に置かれたアビリティデータによって大きく変わる。今回ヒューマノイド達にインプットされたのはシキのアビリティデータだ。
所詮はコピー、シキの技能の45%程しか再現はできなかったものの、その狙撃は正確。判断は的確。あっという間に対空砲やガトリング砲を狙撃で破壊し尽くし、その後は地上部隊の援護射撃も行った。
シキ・コピーはシキの技能を再現しつつ、シキの『人見知り』という弱点は排除しているため、滞り無く連携ができる。8人の疑似シキが連携を取って迫ってくるのだ。たとえ優秀なヒューマノイドやTWを所持していても、対応できるはずもない。
レンを含めたこの空中部隊が制空権を握った時点でもう相手にできることは何もなかった。狙撃の雨がひたすらに攻め立てる。
「……あの四つ巴戦、40回やってシキを倒せたのは3回のみ。37回は奴が勝利した。改めて恐ろしい奴じゃ。わざわざここまでデータを取りに来て良かった」
レンはアイテムポーチからデータディスクを出し、ニヤリと笑う。
「さてと、後は締めを待つのみじゃな」
狙撃型ヒューマノイドに自身のアビリティデータが一切使われなかったことに不満はあった。だが、これだけの力を見せられてしまえば、納得せざるを得ない。
もう突入組にやることはない。
後は狙撃組の1撃を待つのみ。
ナドラは巨大なモニターで戦況を確認していた。
「ふざけるな……なんだコレは!!」
2人のアタッカーがスペースガールとヒューマノイドを蹂躙し、1人の狙撃手と8機の狙撃型ヒューマノイドが研究所や城門の兵装を次々と狙撃していく。
「押されているだと……!? 私が、2年かけて作った要塞が……あんな少人数に!!」
特にナドラが注視するは敵ヒューマノイドの性能だ。
狙撃の精度、反応の良さ、動きの流麗さ、いずれもヒューマノイドのレベルじゃない。
「なんなんだあのヒューマノイドは……!? 一体、誰をモデルにしている!!」
その時、ナドラのメッセージボックスにある知らせが入る。
「なっ!?」
ナドラはメッセージを開き、絶句した。
「召喚状!? 馬鹿な!! 召喚状を出せるのは軍の中でも上澄みの人間だけ……イヴにそんなパイプがあったのか! クソ!! ――マスター! 聞こえるか!? マスター・グリーンアイス!!」
モニターが緑色に染まり、中心に『Green Ice』という歪んだ黒文字が浮かぶ。
『どうしたナドラ。何を慌てている』
変声機で加工した機械的な声が響く。
「アンタが出した命令のせいでいま私は窮地だ。なんとかしろ!」
グリーンアイスは嘲るような声色で、
『私に責任は無いよ。私は『グロウメタルを献上せよ』と言っただけだ。別に採掘権を握っている者から買い取ってもいいし、譲り受けても良かった。攻撃的な手段を取ったのはお前の判断だろう』
「アンタが提示した量を採掘するためには! 採掘権そのものを奪うしか無かったんだ!!」
『違うな。お前は私に提出する分だけでなく、自分が使える分も求めた。だから採掘権を取りにいったのだ。私が提示した量だけならば平和的に手に入れられたはずだ』
「くっ……!?」
『なぜグロウメタルを求めたかは問わんでやろう。最後のアドバイスだ。諦めて速やかにコロニーから出ることだ。その研究所から君の悪行全ての証拠を消すことは不可能。コロニーの中に、君の未来は無いよ』
「簡単に言いやがって! この研究所を作るために……私がどれだけ努力したと思っている! クソ!!」
『努力……か』
機械質な笑い声が地下室に響く。
『それを言ったらおしまいだよナドラ。努力の尊さを認めろと言うなら、彼女たちの努力を踏みにじったお前こそが『悪』だ』
「黙れ……ちくしょう……!」
『しかし今回の顛末がどうであれ、君の努力は無駄にはならないと言っておこうか。最後の最後で君は大当たりを引いた。溢れんばかりの才能を持ち、さらに努力を努力と思わない存在を君は連れてきてくれた。最後に見せてくれナドラ、『頑張り屋』が『怪物』に踏みにじられるところを――』
通信を切り、ナドラは爪を噛む。
「……逃げるしかない。宇宙船はある。金もある。知識もある。別のコロニーで再起して、今度こそ――∞アーツを作り上げてみせる……!!」
ナドラは1人、宇宙船のある格納庫へ向かう。
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勝敗はすでに決していた。
ニコとクレナイは研究所外の敵を殲滅、レンとヒューマノイドは目に見えるTWを全て掃討した。
後は研究所の中を押さえるだけ。しかし相手はもう戦力のほとんどを出し切っていた。もうできることは逃走のみ。
勝敗を決めた大きな要因、それは8機の狙撃型ヒューマノイドだ。
「驚いたのう。こりゃ、そこらのスペースガールよりよっぽど強い」
城門の上からレンは戦場を見渡す。
ヒューマノイドは手を緩めず、未だに研究所を攻撃し続けている。レンが敵に同情してしまうほどに徹底している。
ヒューマノイドの戦闘力はその基盤に置かれたアビリティデータによって大きく変わる。今回ヒューマノイド達にインプットされたのはシキのアビリティデータだ。
所詮はコピー、シキの技能の45%程しか再現はできなかったものの、その狙撃は正確。判断は的確。あっという間に対空砲やガトリング砲を狙撃で破壊し尽くし、その後は地上部隊の援護射撃も行った。
シキ・コピーはシキの技能を再現しつつ、シキの『人見知り』という弱点は排除しているため、滞り無く連携ができる。8人の疑似シキが連携を取って迫ってくるのだ。たとえ優秀なヒューマノイドやTWを所持していても、対応できるはずもない。
レンを含めたこの空中部隊が制空権を握った時点でもう相手にできることは何もなかった。狙撃の雨がひたすらに攻め立てる。
「……あの四つ巴戦、40回やってシキを倒せたのは3回のみ。37回は奴が勝利した。改めて恐ろしい奴じゃ。わざわざここまでデータを取りに来て良かった」
レンはアイテムポーチからデータディスクを出し、ニヤリと笑う。
「さてと、後は締めを待つのみじゃな」
狙撃型ヒューマノイドに自身のアビリティデータが一切使われなかったことに不満はあった。だが、これだけの力を見せられてしまえば、納得せざるを得ない。
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