スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~

空松蓮司

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第76話 古式レイ・9歳

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 僕がフルダイブ型ゲームを最初にやったのは小学3年生の時だ。
 昔から僕はコミュニケーションが得意では無かったけど、はじめてやったあのゲーム……『キッズ・ウォーター』では友達がいた。短い時間ではあったけどね。

 キッズ・ウォーターは水の出る武器を使い、対象に何度か水をぶつければ撃破というゲーム。13歳以下限定のゲームで、いわゆる知育ゲームだった。仮想空間に子供の脳を慣らすためのゲームだね。

 武器のほぼ全てが水鉄砲で、刃物の類はなく、子供にやらせても何も問題が無いゲームだった。
 そのゲームで出会ったのがあの子……千尋ちひろちゃんだった。ちなみに僕は『レイ』という名前でやっていた。子供ゆえに偽名を使うという発想が無く、お互い本名だった。

 最初の出会いはそう、僕が初心者だけが参加できる大会で優勝した時だった。

『ねぇねぇ! きみ、すごいね! 1人でみんな倒しちゃったね!』

 今でもあの時の彼女の笑顔はよく覚えている。
 一切の濁りの無い純粋で、眩しくて、見るだけで心が温まる……まるで太陽のような笑顔だった。

『う、うん。みんな、武器の使い方わからなくてボーっとしてたから……運がよかっただけ……』
『あのさ! わたしとペア組もうよ! わたしたちが組んだらきっと、だれにも負けないよ! わたしもこの前の大会優勝したんだ!』
『あ……い、いいよ』

 流されるまま、僕は千尋ちゃんとペアを組み、彼女と何度も共に戦った。

 千尋ちゃんは元気な子で、それでいてゲームが強かった。
 彼女と友達になれたのはプレイヤースキルが同等だったことが大きい。同じレベルの視点で語れるのは楽しかった。しかも、千尋ちゃんとは趣味も合った。

『え!? ちひろちゃん、ルパン三世が好きなの?』
『うん。将来はね、わたしも1流の大怪盗になって、ルパンのお嫁さんになるの。わたしね、ハツイクいいからきっと不二子ちゃんよりナイスバデーになるよ!』

 ……確かに、小学生にしてはすでに胸がふっくらしていたと記憶している。

『ぼ、ぼくもルパン好き……だけど1番好きなのは次元なんだ』
『鉄砲が上手い人が好きなんだ!』
『う、うん。ぼくも、銃好きだし……』
『じゃあさ! わたしは大怪盗になるから、レイちゃんは最高のガンマンになってよ! わたしがルパンで、レイちゃんが次元大介になるの!』

 千尋ちゃんは僕の手をぎゅっと握って、キラキラの目でそう言ってきた。

『い、いいよ……な、なるよ! ちひろちゃんと一緒に怪盗……たのしい……ぜったいたのしいよ!』
『やくそくだよ! レイちゃん!』

 僕と千尋ちゃんはそれからもコンビを組み続け、キッズ・ウォーターの頂点まで昇りつめた。

『わたしとレイちゃんのコンビはさいきょうだねっ!』

 あくまで13歳以下の中、あくまで知育ゲームの中の話だ。それでも僕らは確かに『最強』だった。

『わたし、このゲームはもうやめる! わたしより強い人がいないゲームはやらない!』
『ちひろちゃんがやめるならぼくもやめる。あ、あのさ、ちひろちゃんがよければ……また一緒におなじゲームやらない……?』
『いやだ!』
『え!?』
『だってレイちゃんと一緒にいたらわたし、レイちゃんに甘えてつよくならないもんっ! いつまでたってもルパンになれない。別々のゲームやって、それぞれでつよくなるのっ! そして、つよくなった後でまた会って、また一緒にあそぶの! それがきっと1番たのしいもん!』

 確かにと思った。
 僕と千尋ちゃんが組んでいる限り敵はいない。それでは上達しない。個々の能力は停滞してしまう。

『で、でも……また会えるかな?』
『会えるよ! だって、わたしとレイちゃんは赤い糸で結ばれてるもん!』

 それが最後の会話。それっきり千尋ちゃんとは会ってない。
 子供だった、の1言に尽きる。せめて『5年後に○○で会おう』と約束しておけばまた会えたはずだ。でも僕らは『運命』なんてものを信じて、それに任せて、約束をしなかった。


 正直、もう2度と会うことは無いと――そう思っていた。
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