スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~

空松蓮司

文字の大きさ
81 / 113

第81話 怪盗ラビリンス登場!

しおりを挟む
 宝珠トライアドがガイドガールの手で運ばれてくる。ガイドガールがトライアドを展示台に置くと、会場内で唸り声が木霊した。
 手のひらサイズの、しずく型の結晶。琥珀色で、ダイヤモンドのように無数の断面ファセットを持ち、その中心には音符が浮かんでいる。このオークション、凄い物は色々あったけど……見るだけでわかる。これは『別格』だ。

『宝珠トライアド! 同名の宝珠があと2つあり、3つ全てを揃えると揃えた者にを与えると言われております!』

 強大な力って、大雑把な表現だ……。

『入札価格は……1億チップから!』

「い、1億!?」
「さすがは目玉商品だな」

 オークション会場の緊張感が外のここまで伝わってくる。
 ラビリンスに対する警戒、あるいは好奇心が様々な種類の緊張を生んでいる。怪盗を迎え撃つために構える軍警と、怪盗のショーを楽しみにする観客の緊張感が入り混じっている。

 トライアドそのものが強烈な存在感を持っていることが、さらにその緊張を煽っている。
 僕はなんとなく気配を感じ、塔を見上げた。

「……アレは」

 一瞬、ほんの一瞬だけど、イリスタワーの頂上に……黒い影が見えた。そしてすぐさま、会場で異変が起きる。

『え?』

 オークション会場の壇上、トライアドが入ったガラスケースの傍に進行役は立っていたのだけど、その進行役の頭上から……コツン、コツン、と手榴弾が壇上に降ってきた。

『きゃああああああああっっっ!!?』

 進行役は壇上から飛び降りる。同時に、手榴弾が起爆。壇上が爆発する。

「トライアドを爆撃!? 直撃ですよ! 壊れちゃうんじゃないですか!」
「それはない。トライアドのような宝珠は装甲値が馬鹿みたく高くつけられている。∞アーツでも1撃じゃ破壊できない程だ。手榴弾如きの威力じゃ無傷だろう」

 イヴさんの言う通りトライアドは破壊されず、爆発によって打ち上げられた。
 壇上は白煙に染まり、全員の視線は宙を舞うトライアドに集中する。

(トライアドが打ち上がるよう、計算して手榴弾を配置したのか!)

 オークション会場のシャンデリアの上にトライアドが打ち上がり、いつの間にかシャンデリアの上にいた怪盗の手元に宝珠は渡る。

『やぁやぁ迷える子羊たちよ。ようこそ遊楽の迷宮ラビリンスへ』
 
 高らかに怪盗は声を響かせる。

お代チップはいりません。手助けもいりません。声援も心配も結構。求めるのはただ1つ。光を惑わし、闇に消えた怪盗には――溢れんばかりの拍手喝采を……!』

 丁寧に、お辞儀をしながら怪盗は口上を並べた。

 桜のようなピンクと青空を思わせるブルーの2色の髪。Yシャツとミニスカートに赤いリボンタイという学生服のような衣服の上に、黒いマントを羽織っている。目元は猫を彷彿とさせるドミノマスクで隠していて、頭にはミニサイズの黒のシルクハットを乗せている。

『撃て! 撃てェ!!』

 現れた怪盗ラビリンスに対し、軍警は一斉にアサルトライフルを発砲する。ラビリンスはいとも簡単に蜂の巣にされる。

 しかし、

『な、なんだアレは!?』

 軍警が叫ぶ。
 ラビリンスは穴の空いた風船のように、風穴から空気を噴出し、オークション会場の上を飛んだ。

「ダミー人形!?」
「録音か、あるいは通話で喋っているように見せたのか。お辞儀程度の単純な動作なら人形にさせるのも可能だしな。しかし……」 

 ラビリンスの手からトライアドが落ち、軍警の手に渡る。

「トライアド、回収されちまったぞ」

 いや、形はそっくりだけど、あのトライアドからはさっきまでの存在感を感じない。

「!? イヴさん! アレを!」

 最上階の窓際に、ラビリンスの姿がある。左手にはトライアドが見える。

「どういうことだ!? だってトライアドはあそこに……」
「ミスディレクション。意識の誘導ですよ」
「はぁ?」
「あの爆発の時、ラビリンスはダミーのトライアドをシャンデリアに向かって投げたんです。本物のトライアドはきっと、壇上に転がったか舞台袖に飛んだ。全員がシャンデリアの方に集中している間に、ラビリンスは本物を回収して逃走した……のだと思います。きっと」

 さすがに手榴弾であそこまで正確に宝珠をパスするのは不可能だ。

「アレは……」

 ラビリンスはほしの形をした飛空機ワイバーンに乗り込み、夜空を飛ぶ。

「お前の予想が当たってるにしろ外れているにしろ、追わない選択肢はない! 行くぞ!」
「はい!」

 軽トラの荷台。
 イヴさんはグリーンシートを捲り、グリーンシートの下にあったある物を夜空の下へ曝け出す。

「こいつで飛ばすぜ」

 それは黒光りする大型バイク(イヴさんが乗るため座高は低め)。車体が長いため、2人で乗っても余裕がある。背面、テールランプの下にスラスターがあるからかなり速度が出そうだ。

「あたしが造った最高のバイクだ」

 当然イヴさんが前に乗り、僕が後ろに乗る。

「マジはえぇからしっかり捕まれよ!」
「はい!」

 バイクは荷台から勢いよく飛び出し、700mある橋をあっという間に渡り切る。

「はっはっは! どうだこの野郎! 6種の加速機構に加えて! 車体を構成する金属にはグロウメタルを採用し、走れば走る程加速していく特殊効果も搭載している! 無限の加速だ!!!」

 僕らは街の道路に出る。
 イヴさんは道路を走る車やトラックを軽やかに躱し、ラビリンスとの距離を詰めていく。

(は、速い! こんな速度域の乗り物をここまで器用に操作できるなんて……こ、この人、凄い……!!)

 空を飛ぶ怪盗の背を肉眼で捉える。

「十分近づいたろ! シキ!!」
「はい! ――必中距離です!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

無表情ドールマスター

けんはる
ファンタジー
無表情少女香月 ゆずが姉に誘われて始めたVRMMO〈Only Fantasy〉で十天聖の一人に選ばれてしまうが そんなことは関係なく自由に行動していく物語 良ければ 誤字・脱字があれば指摘してください 感想もあれば嬉しいです 小説を書こうでも書いてます

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...