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第81話 怪盗ラビリンス登場!
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宝珠トライアドがガイドガールの手で運ばれてくる。ガイドガールがトライアドを展示台に置くと、会場内で唸り声が木霊した。
手のひらサイズの、しずく型の結晶。琥珀色で、ダイヤモンドのように無数の断面を持ち、その中心には音符が浮かんでいる。このオークション、凄い物は色々あったけど……見るだけでわかる。これは『別格』だ。
『宝珠トライアド! 同名の宝珠があと2つあり、3つ全てを揃えると揃えた者に強大な力を与えると言われております!』
強大な力って、大雑把な表現だ……。
『入札価格は……1億チップから!』
「い、1億!?」
「さすがは目玉商品だな」
オークション会場の緊張感が外のここまで伝わってくる。
ラビリンスに対する警戒、あるいは好奇心が様々な種類の緊張を生んでいる。怪盗を迎え撃つために構える軍警と、怪盗のショーを楽しみにする観客の緊張感が入り混じっている。
トライアドそのものが強烈な存在感を持っていることが、さらにその緊張を煽っている。
僕はなんとなく気配を感じ、塔を見上げた。
「……アレは」
一瞬、ほんの一瞬だけど、イリスタワーの頂上に……黒い影が見えた。そしてすぐさま、会場で異変が起きる。
『え?』
オークション会場の壇上、トライアドが入ったガラスケースの傍に進行役は立っていたのだけど、その進行役の頭上から……コツン、コツン、と手榴弾が壇上に降ってきた。
『きゃああああああああっっっ!!?』
進行役は壇上から飛び降りる。同時に、手榴弾が起爆。壇上が爆発する。
「トライアドを爆撃!? 直撃ですよ! 壊れちゃうんじゃないですか!」
「それはない。トライアドのような宝珠は装甲値が馬鹿みたく高くつけられている。∞アーツでも1撃じゃ破壊できない程だ。手榴弾如きの威力じゃ無傷だろう」
イヴさんの言う通りトライアドは破壊されず、爆発によって打ち上げられた。
壇上は白煙に染まり、全員の視線は宙を舞うトライアドに集中する。
(トライアドが打ち上がるよう、計算して手榴弾を配置したのか!)
オークション会場のシャンデリアの上にトライアドが打ち上がり、いつの間にかシャンデリアの上にいた怪盗の手元に宝珠は渡る。
『やぁやぁ迷える子羊たちよ。ようこそ遊楽の迷宮へ』
高らかに怪盗は声を響かせる。
『お代はいりません。手助けもいりません。声援も心配も結構。求めるのはただ1つ。光を惑わし、闇に消えた怪盗には――溢れんばかりの拍手喝采を……!』
丁寧に、お辞儀をしながら怪盗は口上を並べた。
桜のようなピンクと青空を思わせるブルーの2色の髪。Yシャツとミニスカートに赤いリボンタイという学生服のような衣服の上に、黒いマントを羽織っている。目元は猫を彷彿とさせるドミノマスクで隠していて、頭にはミニサイズの黒のシルクハットを乗せている。
『撃て! 撃てェ!!』
現れた怪盗ラビリンスに対し、軍警は一斉にアサルトライフルを発砲する。ラビリンスはいとも簡単に蜂の巣にされる。
しかし、
『な、なんだアレは!?』
軍警が叫ぶ。
ラビリンスは穴の空いた風船のように、風穴から空気を噴出し、オークション会場の上を飛んだ。
「ダミー人形!?」
「録音か、あるいは通話で喋っているように見せたのか。お辞儀程度の単純な動作なら人形にさせるのも可能だしな。しかし……」
ラビリンスの手からトライアドが落ち、軍警の手に渡る。
「トライアド、回収されちまったぞ」
いや、形はそっくりだけど、あのトライアドからはさっきまでの存在感を感じない。
「!? イヴさん! アレを!」
最上階の窓際に、ラビリンスの姿がある。左手にはトライアドが見える。
「どういうことだ!? だってトライアドはあそこに……」
「ミスディレクション。意識の誘導ですよ」
「はぁ?」
「あの爆発の時、ラビリンスはダミーのトライアドをシャンデリアに向かって投げたんです。本物のトライアドはきっと、壇上に転がったか舞台袖に飛んだ。全員がシャンデリアの方に集中している間に、ラビリンスは本物を回収して逃走した……のだと思います。きっと」
さすがに手榴弾であそこまで正確に宝珠をパスするのは不可能だ。
「アレは……」
ラビリンスは☆の形をした飛空機に乗り込み、夜空を飛ぶ。
「お前の予想が当たってるにしろ外れているにしろ、追わない選択肢はない! 行くぞ!」
「はい!」
軽トラの荷台。
イヴさんはグリーンシートを捲り、グリーンシートの下にあったある物を夜空の下へ曝け出す。
「こいつで飛ばすぜ」
それは黒光りする大型バイク(イヴさんが乗るため座高は低め)。車体が長いため、2人で乗っても余裕がある。背面、テールランプの下にスラスターがあるからかなり速度が出そうだ。
「あたしが造った最高のバイクだ」
当然イヴさんが前に乗り、僕が後ろに乗る。
「マジはえぇからしっかり捕まれよ!」
「はい!」
バイクは荷台から勢いよく飛び出し、700mある橋をあっという間に渡り切る。
「はっはっは! どうだこの野郎! 6種の加速機構に加えて! 車体を構成する金属にはグロウメタルを採用し、走れば走る程加速していく特殊効果も搭載している! 無限の加速だ!!!」
僕らは街の道路に出る。
イヴさんは道路を走る車やトラックを軽やかに躱し、ラビリンスとの距離を詰めていく。
(は、速い! こんな速度域の乗り物をここまで器用に操作できるなんて……こ、この人、凄い……!!)
空を飛ぶ怪盗の背を肉眼で捉える。
「十分近づいたろ! シキ!!」
「はい! ――必中距離です!!」
手のひらサイズの、しずく型の結晶。琥珀色で、ダイヤモンドのように無数の断面を持ち、その中心には音符が浮かんでいる。このオークション、凄い物は色々あったけど……見るだけでわかる。これは『別格』だ。
『宝珠トライアド! 同名の宝珠があと2つあり、3つ全てを揃えると揃えた者に強大な力を与えると言われております!』
強大な力って、大雑把な表現だ……。
『入札価格は……1億チップから!』
「い、1億!?」
「さすがは目玉商品だな」
オークション会場の緊張感が外のここまで伝わってくる。
ラビリンスに対する警戒、あるいは好奇心が様々な種類の緊張を生んでいる。怪盗を迎え撃つために構える軍警と、怪盗のショーを楽しみにする観客の緊張感が入り混じっている。
トライアドそのものが強烈な存在感を持っていることが、さらにその緊張を煽っている。
僕はなんとなく気配を感じ、塔を見上げた。
「……アレは」
一瞬、ほんの一瞬だけど、イリスタワーの頂上に……黒い影が見えた。そしてすぐさま、会場で異変が起きる。
『え?』
オークション会場の壇上、トライアドが入ったガラスケースの傍に進行役は立っていたのだけど、その進行役の頭上から……コツン、コツン、と手榴弾が壇上に降ってきた。
『きゃああああああああっっっ!!?』
進行役は壇上から飛び降りる。同時に、手榴弾が起爆。壇上が爆発する。
「トライアドを爆撃!? 直撃ですよ! 壊れちゃうんじゃないですか!」
「それはない。トライアドのような宝珠は装甲値が馬鹿みたく高くつけられている。∞アーツでも1撃じゃ破壊できない程だ。手榴弾如きの威力じゃ無傷だろう」
イヴさんの言う通りトライアドは破壊されず、爆発によって打ち上げられた。
壇上は白煙に染まり、全員の視線は宙を舞うトライアドに集中する。
(トライアドが打ち上がるよう、計算して手榴弾を配置したのか!)
オークション会場のシャンデリアの上にトライアドが打ち上がり、いつの間にかシャンデリアの上にいた怪盗の手元に宝珠は渡る。
『やぁやぁ迷える子羊たちよ。ようこそ遊楽の迷宮へ』
高らかに怪盗は声を響かせる。
『お代はいりません。手助けもいりません。声援も心配も結構。求めるのはただ1つ。光を惑わし、闇に消えた怪盗には――溢れんばかりの拍手喝采を……!』
丁寧に、お辞儀をしながら怪盗は口上を並べた。
桜のようなピンクと青空を思わせるブルーの2色の髪。Yシャツとミニスカートに赤いリボンタイという学生服のような衣服の上に、黒いマントを羽織っている。目元は猫を彷彿とさせるドミノマスクで隠していて、頭にはミニサイズの黒のシルクハットを乗せている。
『撃て! 撃てェ!!』
現れた怪盗ラビリンスに対し、軍警は一斉にアサルトライフルを発砲する。ラビリンスはいとも簡単に蜂の巣にされる。
しかし、
『な、なんだアレは!?』
軍警が叫ぶ。
ラビリンスは穴の空いた風船のように、風穴から空気を噴出し、オークション会場の上を飛んだ。
「ダミー人形!?」
「録音か、あるいは通話で喋っているように見せたのか。お辞儀程度の単純な動作なら人形にさせるのも可能だしな。しかし……」
ラビリンスの手からトライアドが落ち、軍警の手に渡る。
「トライアド、回収されちまったぞ」
いや、形はそっくりだけど、あのトライアドからはさっきまでの存在感を感じない。
「!? イヴさん! アレを!」
最上階の窓際に、ラビリンスの姿がある。左手にはトライアドが見える。
「どういうことだ!? だってトライアドはあそこに……」
「ミスディレクション。意識の誘導ですよ」
「はぁ?」
「あの爆発の時、ラビリンスはダミーのトライアドをシャンデリアに向かって投げたんです。本物のトライアドはきっと、壇上に転がったか舞台袖に飛んだ。全員がシャンデリアの方に集中している間に、ラビリンスは本物を回収して逃走した……のだと思います。きっと」
さすがに手榴弾であそこまで正確に宝珠をパスするのは不可能だ。
「アレは……」
ラビリンスは☆の形をした飛空機に乗り込み、夜空を飛ぶ。
「お前の予想が当たってるにしろ外れているにしろ、追わない選択肢はない! 行くぞ!」
「はい!」
軽トラの荷台。
イヴさんはグリーンシートを捲り、グリーンシートの下にあったある物を夜空の下へ曝け出す。
「こいつで飛ばすぜ」
それは黒光りする大型バイク(イヴさんが乗るため座高は低め)。車体が長いため、2人で乗っても余裕がある。背面、テールランプの下にスラスターがあるからかなり速度が出そうだ。
「あたしが造った最高のバイクだ」
当然イヴさんが前に乗り、僕が後ろに乗る。
「マジはえぇからしっかり捕まれよ!」
「はい!」
バイクは荷台から勢いよく飛び出し、700mある橋をあっという間に渡り切る。
「はっはっは! どうだこの野郎! 6種の加速機構に加えて! 車体を構成する金属にはグロウメタルを採用し、走れば走る程加速していく特殊効果も搭載している! 無限の加速だ!!!」
僕らは街の道路に出る。
イヴさんは道路を走る車やトラックを軽やかに躱し、ラビリンスとの距離を詰めていく。
(は、速い! こんな速度域の乗り物をここまで器用に操作できるなんて……こ、この人、凄い……!!)
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