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第112話 ボッチ式奇襲
しおりを挟むオケアノス軍とメーティス軍の艦隊戦は正念場を迎えていた。
さっきまでと打って変わり、ソニックも慎重に事を運ぶ。
ソニックはすでにシキの姿を見失っていた。だが一旦シキのことは意識の端に追いやる。
ソニックは強くシキを警戒している。それゆえに艦隊戦に集中する。
海を制すれば個人でどうこうすることはできない。出てこないならばこのまま押し切る。出てくるならヒューマノイドで足止めさせる。
盤石――
目に見えている手札だけならば盤石――
「ざっこい。結局、最初だけじゃんシキとかいうやつ――なーんてね。わかるわかる。狙ってるんでしょ? 何かきっかけを……」
ソニックは頭の中であらゆる想定をする。
しかし――オケアノス軍、否、シキが打ってきた手は想定の外のものだった。
「なんだ、あれ」
互いの艦隊の間を、最前線を、1機の戦艦が走ってきた。
ただの中型戦艦。今出ている平均的な戦艦と比べて一回りも二回りも小さい。
だが、その全身から放たれる攻撃は無視できるものじゃなかった。まるで台風……次々と大型戦艦を撃ち払っていく。
「な、なにしてるのさ! お前ら本気でやってるのか!? 早く撃墜しろって!!」
つい、艦長たちを責めるソニック。
『そ、それが速すぎて捉えられません!!』
「速い相手は進行方向に機雷を撒けってば!!」
『機雷も完全に回避されちゃって……!』
ソニックは映像を出し、乱入してきた戦艦を凝視する。
ソニックは戦艦の走行を見て、息を呑んだ。
(あの速度域で見て躱している……! どんなパイロットを積んでいる……!?)
戦艦は最短最速をいっていた。初見のコースを、タイムアタックするような速度で……。
RTA走者のソニックはつい、戦艦に見惚れてしまった。意識を囚われてしまった。
――乱入者が暴れているその時、自陣深くまで特攻艦が侵入しているとも知らずに。
ソニックがそれに気づいたのは、ヒューマノイド8機が狙撃で潰された後だった。
「なっ!?」
ソニックはすぐさまドローンカメラで自陣を上から見る。
自陣深くで大破している敵戦艦を見て、ソニックは冷や汗を浮かばせた。
「しまった……!? あのスナイパー、戦艦で特攻しかけて、戦艦の中から狙撃でコピー達を……! みんな! その特攻艦! 塵すら残さず破壊して!!」
せめてシキだけは確実に倒す。そうすれば、まだ立て直せる。
乱入してきた戦艦は暴れるだけ暴れて戦線を離脱した。シキさえ潰せば、元の御し易いオケアノス軍に戻る。
ソニックはドローンカメラのデータを漁り、ヒューマノイドが狙撃された瞬間の録画を見る。
「そういう道筋か……!」
ソニックは気づいた。敵の狙撃手が思い描いた顛末に。
ヒューマノイドは8機ともワイバーンに乗った状態で落とされた。
戦艦からワイバーン兵への狙撃は下からの狙撃になる。必然と、足下のワイバーンごと核を撃ち抜くことになる。だけど1機だけ、上手く角度をつけられヘッドショットを決められたヒューマノイドがいた。ワイバーンを通さずにヘッドショットを決められたヒューマノイドがいた。
つまり、ワイバーンが1機だけ、無傷なまま海に落下した。
もしも1機だけ意図して無傷で落としたのなら、もしも、そのワイバーンを回収されていたなら、すでに――
「……キングが警戒するのもわかる」
ソニックは2つの武装を展開する。
それは、どちらも巨大な鉄の拳。ツバサのアイギスのように脳波で操ることができる直径1.2mの拳だ。名を『ヘパイスト』という。
ソニックのいる船底部の壁が、溶かされ破壊される。
発光する紅蓮の衣を羽織った少女が、空中で縦回転しながら船底部屋に突入してくる。彼女が羽織る衣は『緋縅』。10秒だけ、触れる物を溶かす灼熱のエネルギーを纏う。彼女は緋威で船の鋼鉄の壁を溶かし、部屋にやってきたのだ。両者が対峙すると同時に、衣は燃えるように消えていく。
「こいつは危険だ」
「……当たり、ですかね」
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