スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~

空松蓮司

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第39話 ましゅまろスマイル

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 チャチャさんに案内されたのは事務所から繋がる格納庫、ましゅまろスマイル専用の格納庫だ。
 そこにある縦型のカプセルに体を固定された僕は、四肢と胴体を分解はずされた。今は首だけである。

「これがメンテナンス……ですか」

 チャチャさんは僕の部品を削ったり、逆に部品を取り付けたりしている。

「そ。隠しマスクデータの1つでさ、ステータスを上げると部品の重量が上がるんだよ。ほんのちょっぴりだけどね。スラスターの能力を上げるとスラスターが重くなる。装甲値を上げると装甲が、レーダーを上げると頭部が重くなる」

 確かに、最初期に比べて体が重くなった気はしていた。
 だが本当に多少である。気のせいで済ませられる程のレベル。

「チャチャさんはそういった加重によって生まれたアンバランスさを修正できるのだ。ロール『メカニック』の本領発揮だね~。戦闘能力は皆無に等しいけど、スペースガールの加工においてはあたし達の右に出る者はいないのだ!」

 待つこと10分ほど、チャチャさんは全ての部品の調整を終え、僕に部品を戻す。
 僕は新しくなった体を動かしてみて、驚いた。

「――凄い。体が軽い……安定している!」
「シキっちょの戦闘データを元に、シキっちょが動きやすい重量バランスになるよう全体的に修正したよん」

 うん。まさに言う通り。僕にしっくりくる。これまでの体がサイズの1cm大きいローファーだったとしたら、今の体はサイズピッタリの運動靴だ。

「最後にさ、システムの中にある『モデル設定』を選択して、『モデルの確定』っていうところを押して」
「はい。――押しました」
「これでシキっちょがキルされてもそのモデルで復活するようになるから。逆にこのモデルの確定をしないとキルされた時、調整前の体に戻っちゃうんだよね」

 なるほど。そんな仕様があったとは。まだまだ知らないことばかりだ。

「ところでチャチャさん、僕が発注していたアイテムはできましたか?」
「あ、すっかり忘れてた!」
「え!? もうランクマッチ明日ですよ!?」
「違う違う。渡すのを忘れてたってだけ。作ってはあるよ」

 チャチャさんはおもちゃ箱のような紙の箱の中からある物体を出す。

「じゃじゃーん!」

 チャチャさんが掲げたのはサファイアのような青い宝石、拡張パーツだ。

「『精密レーダー』。要望通りに作っておいたよ」
「ありがとうございます!」

 『精密レーダー』、レーダーで捉えた相手の情報を詳しく表示してくれる拡張パーツだ。
 通常、レーダーで敵機を捉えると相手の位置がマップに映る。自分との距離と高度差を教えてくれる。しかし対象の姿勢や身長などは教えてくれはしない。
 そのせいで、レーダー頼りで撃つとヒットはしても急所から外れることが何度もあった。身長の高い相手と低い相手、立っている相手と座っている相手では急所の位置がずれるのは当たり前の話。だから僕は金兵党狩りの合間にチャチャさんにレーダーの解析機能を拡張する『精密レーダー』を発注したのだ。

 この僕仕様の『精密レーダー』は対象の身長・体勢を教えてくれる。さらに通常のレーダーだと距離や高度は1m刻みで表示するが(相手が自分より1m高い位置にいたら『+1』と表示される)この精密レーダーは0.01mm単位で表示してくれる。距離・高さ・方角含めた全ての座標を細かく数値で表示してくれる。視界に入る情報が9倍増になるとチャチャさんは指摘してくれたけど、大した問題じゃない。数的処理は得意だ。

 これで『レーダー撃ち』の精度が格段に上昇する。

 ちなみに製作費はきちっと全部払ってある。チャチャさんはいらないって言ってくれたけど、こういう部分も曖昧にすると良くないと思ったのでちゃんと払った。額は7万チップ。性能の割には安い製作費だと思う。

「早速装備する?」
「はい!」

 拡張パーツは自分では装備できない。メカニックに頼むか、専門のショップに頼んで着脱してもらうのだ。スラスター内部に拡張パーツを装備できる場所があり、そこを開いてもらって、取り外ししてもらう。

「オッケー! おしまい」
「ありがとうございます」

 これで拡張パーツもOK。後は、

「もう1つの方はどうですか?」
「そっちは秒で終わったよ。ほいこれ」

 僕はチャチャさんからある武装を受け取る。

「うわ! 完璧です! これが欲しかった……」
「そんなの作るぐらい朝飯前だよ。でも一体何に使うのそれ」
「奥の手を外した時のための保険です」

 僕は受け取った武装を装備する。
 準備は完了した。

(……ツバサさんに勝つ。次のランクマッチで優勝して、ましゅまろスマイルを勝たせる……!)

 ここで1つの疑問が頭を過る。

「ちなみにチャチャさん、どうしてこのチームの名前ってましゅまろスマイルなんですか?」
「ぬっふっふ~、それはね~、みんなの笑顔がましゅまろみたいにあまーいからだよぉ~」

 よく意味がわからない。

「……すみません。普通に適当です」

 と、格納庫に入ってきたシーナさんが言う。横にはニコさんもいる。

「チャチャにネーミング任せたのが失敗だったわね」
「え~、いい名前じゃん。ましゅまろスマイル! ほらほらみんな~、一斉に~……ましゅまろスマイル~~~!」

 チャチャさんの合図で、皆さん渾身の笑みを作る。

 チャチャさん→満面の笑み。
 シーナさん→冷笑。
 ニコさん→嘲笑。

 ましゅまろスマイルと呼べるのはチャチャさんだけだな……。

「ちょっと、アンタもやりなさいよ」
「え!? ぼ、僕ですか!?」
「当然でしょ。アンタもましゅまろスマイルの一員なんだから」
「いっくよシキっちょ~! ましゅまろスマイル~!!」

 僕はなんとか、笑みを作ってみる。

「ま、ましゅまろスマイル……」

 僕が笑顔を作ると、なぜかニコさんとシーナさんが噴き出した。

「あ、アンタなにそのゆるっゆるの顔……スケベおやじみたい……ははっ!」
「すみません……つい、笑ってしまいました……」

 ニコさんはともかく、シーナさんにまで笑われるとは……顔中が熱い。

(で、でも、笑って貰えて良かった……よね?)

 ……ログアウトしたら笑顔の練習しよう。
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