バレンタインの後にさよなら~仲良し姉弟の最後のバレンタイン~

倉橋敦司

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バレンタインから十日②

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 学校が終わってひとりで帰る。
 大学が決まってから、姉ってほとんど学校に行っていない。
 ひとりで家を出て、ひとりで学校を出る。
 ひとりで歩く。
 玄関前。
 横開きの玄関の奥から姉の大声。

 「すっごく自分勝手と思いません?」

 姉のつりあがった目が頭に浮かぶ。

 「悠を手離したのが、相手の男の人とそのお母さんが勝手に決めたってのは分かりました。
 だけど悠のこと、すぐに取り返そうってしなかったんでしょ。
 なにもかも忘れたかったかなんか知らないけど、ひとりで外国行ったんでしょ。
 悠のことなんて、なにも考えずに・・・
 外国で成功して、会社経営して、お金持ちになって、だから日本に帰って悠を引き取りたい。
 それってすっごく勝手だって思いません」

 姉の声が僕に真実を伝えてくれた・・・
 僕、そんなに驚かなかった・・・
 僕が考えてたのって、引き取るって言葉の意味・・・
 それってつまり・・・
 この家を出るってことなんだから・・・

 なにもできないまま、玄関の外に立ってる。
 
 「おっしゃるとおりです。いままで育てて下さったこと、本当に感謝しております。
 先ほど弁護士がお見せした文書、ご検討願えますか?
 悠のことが決まりましたら、すぐご指定の口座にお支払いします」

 女性の声。
    
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