バレンタインの後にさよなら~仲良し姉弟の最後のバレンタイン~

倉橋敦司

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バレンタインから十五日②

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 「姉さん」

 姉に声をかけた。

 「悠ちゃん。どうした?」
 
 僕、姉の顔、しっかりと見た。
 だって僕の一番大好きで大切な女性《ひと》だったから・・・
 僕、そっと顔を近づけた。
 姉の細い目・・・
 少し開いた・・・
 首をかしげるしぐさ・・・
 姉の小さくて可愛い唇・・・
 そっと見つめる・・・
 その横の白くて柔らかい頬に・・・
 そっと唇つけた・・・
 姉さんったら・・・
 ちょっとびっくりしたように・・・
 そして恥ずかしそうに・・・
 僕の顔見る。

 「姉さん。ありがとう」

 自分の心・・・
 この一言に・・・
 ぜんぶこめた・・・

 姉から離れて部屋を出た。

 「悠ちゃん!」

 姉が僕のこと、呼んでる。
 急いで階段を駆け下りた。 
 玄関の上がり口に父と母。
 玄関口には、この前見た女性がいた。隣にいる男性は弁護士だろう。
 父と母に頭を下げた。

 「お父さん、お母さん。これまでありがとうございました」

 父と母が顔見合わせてる。
 玄関口の女性に声をかける。

 「悠です」

 女性がぎこちない笑顔を向ける。たぶんこの笑顔、ずっと変わらないって思う。

 「これからお母さんって読んでいいですか?」

 女性のホッとした顔。
 
 「もちろんよ。よろしくね」

 背中に姉の声が聞こえた。

 「悠ちゃん」

 泣き出しそうな声。

 「お母さん。約束通り、姉の学費のこと、よろしくお願いします」
 「もちろん。お父さんの新しい仕事先のこと。わたしにまかせてください。
 いままでのお礼はきちんといたします」

 父と母の幸せな笑顔を背中で感じた。これからもずっと幸せだって思う。

 そして涙を浮かべた姉の顔・・・
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