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第38話 約束の日
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※
翌日。
教室は大騒ぎになっていた。
その理由は飛世が逮捕されたからではない。
「あ~……突然だが、飛世が転校することになった」
担任の口から飛世の転校が伝えられたからだ。
やはり学校側としては、事件を表向きにすることはないらしい。
「は!? マジで!? オレ、なんも聞いてないんだけど!?」
「突然、決まったってことなんですか?」
驚きに声を上げたのは、飛世と親しくしていた山城や浦賀だけじゃない。
スクールカースト最上位にして、学年を問わず人気の高かった飛世の転校に、多くの生徒は衝撃を受けていた。
「クラスメイトの転校で騒ぎたくなる気持ちはわかるが、二十日から中間試験があるからな。
学生の本文は学業なのを忘れるなよ」
生徒たちの様子を気にしてか、真間先生は話題を変える。
「うえ!? マジで!?」
「勉強とか全然やってないよぅ……」
教室内には悲しい悲鳴が溢れ出した。
「テストに備えて日々励むように。
では、ホームルームは終わりだ。
直ぐに授業になるから、準備は済ませておけよ」
日々の生活を続ける中で、生徒たちの興味は次から次へと移っていくのだろう。
こうして、いつもの日常が始まっていくのだった。
※
それから何事もなく数日が過ぎた。
以前と同様に俺は、学校内で目立たずに過ごしている。
ちょっとした変化があったとすれば、岬が稀に俺と竜胆の関係をからかってくるくらいだろうか?
『いや、あんたらが付き合ってないとかないから……てかさ、凛華が、あんたのこと、いつも視線で追ってるの気付いてる?』
こんな感じで、今も俺たちの関係を疑われていた。
ちなみに竜胆とはふとした瞬間に目が合ってしまう。
それは互いを意識している証拠であることは理解していたのだが……それを正直に岬に伝えたら、
『やっぱラブくね?』
と、言われるに決まっている。
だから俺は、
『気のせいだろ?』
とだけ返していた。
最近では昼食を一緒に過ごすことも減っていたので、それも含めて誤魔化しが効いている。
というのも……竜胆とは夕食を共にすることになったので、彼女の負担を考えて俺の方から断ったのだ。
『気にしなくてもいいのに……』
竜胆は不満そうだったが、これで校内で多くの友人たちと一緒に過ごす時間が取れるので、彼女にとっては悪いことではないだろう。
小鳥遊などは特に竜胆と昼食の時間が取れて嬉しそうだった。
(……これでやっと当初の予定通りの高校生活が送ることができる)
竜胆との関係は深まり過ぎたくらいだが、これ以上は誰かと強い関係が生まれることは避けたい。
俺には、竜胆一人との関係を大切にしていくことだけで、精いっぱいなのだから。
※
さらに時間は過ぎて。
午後の授業が始まり教師の授業に耳を傾けていると……。
『この間の約束の事、覚えてる?』
竜胆からのメールが届いた。
『……日曜日、付き合ってほしいだけど、大丈夫かな?』
『連絡が取れたんだな』
『うん』
もしかしたら、コンタクトを取るのは難しいかもしれない。
そう考えていたのだが、こんなに早く会えることになるとは思っていなかった。
相手も竜胆と同じで……再会を望んでいたのだろうか?
『それで、待ち合わせ場所なんだけど……』
そして日曜日――俺は竜胆と、ある『施設』へ向かうことになった。
※
約束の日。
俺たちは今、電車に揺られて目的地を目指している。
心無しか竜胆の口数がいつもよりも少ない。
憂いを帯びた表情から、彼女が緊張しているのがわかる。
顔色もあまり良くないようなので、昨夜は眠れなかったのかもしれない。
「怖いか?」
「……怖くないって言ったら、嘘になっちゃうよ」
今から引き返すこともできる。
だが、竜胆はそんな選択はしないだろう。
今日を逃せばもう二度と、得られない機会かもしれないのだから。
「でも……怖いのはきっと、あの子も同じだと思う。
あたし以上に――不安を抱えてるはずだから……」
心の奥底にある決意は揺らぐことはない。
竜胆の優しく力強い眼差しを見ていれば、それは容易に理解できた。
この行動は竜胆を、そして――苦しんだもう一人の少女が過去を乗り越える為にも、必要な再会となるだろう。
「俺がいても出来ることはないかもしれないが……」
竜胆の手を握る。
すると、彼女も強く握り返して俺を見つめた。
「一緒にいてくれるだけで十分すぎるよ」
「なら、何があってもお前の傍にいる」
竜胆の選んだ選択は、彼女の心を深く傷つけるものになるかもしれない。
それをわかった上でこの勇気ある行動を取った竜胆を、俺は心から尊敬する。
「皆友くんのお陰で勇気を貰えるけど……同時に弱くなっちゃいそう」
「どうしてだ?」
「だって、優し過ぎるんだもん……。
あたし皆友くんがいてくれないと……ダメな女の子にされちゃってる」
「そんなことないだろ?」
真面目にそんなことを言ってくる竜胆に、思わず苦笑してしまう。
「そんなことあるよ……。
こうして皆友くんぶんを充電しておかないと……がんばれないもん」
言って竜胆は俺に肩を寄せてきた。
早朝の電車。
人はあまり乗っていない。
だから、恥ずかしくはないけれど……少しこそばゆい。
「俺がいなくても、竜胆は十分強いよ」
「そんなこと……」
まだ自分に自信を持ちきれないのかもしれない。
でも、竜胆は一つ勘違いしている。
俺たちは、互いに互いを必要としている。
「それに俺が傍にいることで、竜胆が強くいられるなら……いなくなった時のことなんて、考えなくていい」
遠回しになるけれど、これからも一緒にいると伝えたその言葉は、
「……うん」
しっかりと竜胆に伝わったのか、彼女は照れ笑いを浮かべた。
翌日。
教室は大騒ぎになっていた。
その理由は飛世が逮捕されたからではない。
「あ~……突然だが、飛世が転校することになった」
担任の口から飛世の転校が伝えられたからだ。
やはり学校側としては、事件を表向きにすることはないらしい。
「は!? マジで!? オレ、なんも聞いてないんだけど!?」
「突然、決まったってことなんですか?」
驚きに声を上げたのは、飛世と親しくしていた山城や浦賀だけじゃない。
スクールカースト最上位にして、学年を問わず人気の高かった飛世の転校に、多くの生徒は衝撃を受けていた。
「クラスメイトの転校で騒ぎたくなる気持ちはわかるが、二十日から中間試験があるからな。
学生の本文は学業なのを忘れるなよ」
生徒たちの様子を気にしてか、真間先生は話題を変える。
「うえ!? マジで!?」
「勉強とか全然やってないよぅ……」
教室内には悲しい悲鳴が溢れ出した。
「テストに備えて日々励むように。
では、ホームルームは終わりだ。
直ぐに授業になるから、準備は済ませておけよ」
日々の生活を続ける中で、生徒たちの興味は次から次へと移っていくのだろう。
こうして、いつもの日常が始まっていくのだった。
※
それから何事もなく数日が過ぎた。
以前と同様に俺は、学校内で目立たずに過ごしている。
ちょっとした変化があったとすれば、岬が稀に俺と竜胆の関係をからかってくるくらいだろうか?
『いや、あんたらが付き合ってないとかないから……てかさ、凛華が、あんたのこと、いつも視線で追ってるの気付いてる?』
こんな感じで、今も俺たちの関係を疑われていた。
ちなみに竜胆とはふとした瞬間に目が合ってしまう。
それは互いを意識している証拠であることは理解していたのだが……それを正直に岬に伝えたら、
『やっぱラブくね?』
と、言われるに決まっている。
だから俺は、
『気のせいだろ?』
とだけ返していた。
最近では昼食を一緒に過ごすことも減っていたので、それも含めて誤魔化しが効いている。
というのも……竜胆とは夕食を共にすることになったので、彼女の負担を考えて俺の方から断ったのだ。
『気にしなくてもいいのに……』
竜胆は不満そうだったが、これで校内で多くの友人たちと一緒に過ごす時間が取れるので、彼女にとっては悪いことではないだろう。
小鳥遊などは特に竜胆と昼食の時間が取れて嬉しそうだった。
(……これでやっと当初の予定通りの高校生活が送ることができる)
竜胆との関係は深まり過ぎたくらいだが、これ以上は誰かと強い関係が生まれることは避けたい。
俺には、竜胆一人との関係を大切にしていくことだけで、精いっぱいなのだから。
※
さらに時間は過ぎて。
午後の授業が始まり教師の授業に耳を傾けていると……。
『この間の約束の事、覚えてる?』
竜胆からのメールが届いた。
『……日曜日、付き合ってほしいだけど、大丈夫かな?』
『連絡が取れたんだな』
『うん』
もしかしたら、コンタクトを取るのは難しいかもしれない。
そう考えていたのだが、こんなに早く会えることになるとは思っていなかった。
相手も竜胆と同じで……再会を望んでいたのだろうか?
『それで、待ち合わせ場所なんだけど……』
そして日曜日――俺は竜胆と、ある『施設』へ向かうことになった。
※
約束の日。
俺たちは今、電車に揺られて目的地を目指している。
心無しか竜胆の口数がいつもよりも少ない。
憂いを帯びた表情から、彼女が緊張しているのがわかる。
顔色もあまり良くないようなので、昨夜は眠れなかったのかもしれない。
「怖いか?」
「……怖くないって言ったら、嘘になっちゃうよ」
今から引き返すこともできる。
だが、竜胆はそんな選択はしないだろう。
今日を逃せばもう二度と、得られない機会かもしれないのだから。
「でも……怖いのはきっと、あの子も同じだと思う。
あたし以上に――不安を抱えてるはずだから……」
心の奥底にある決意は揺らぐことはない。
竜胆の優しく力強い眼差しを見ていれば、それは容易に理解できた。
この行動は竜胆を、そして――苦しんだもう一人の少女が過去を乗り越える為にも、必要な再会となるだろう。
「俺がいても出来ることはないかもしれないが……」
竜胆の手を握る。
すると、彼女も強く握り返して俺を見つめた。
「一緒にいてくれるだけで十分すぎるよ」
「なら、何があってもお前の傍にいる」
竜胆の選んだ選択は、彼女の心を深く傷つけるものになるかもしれない。
それをわかった上でこの勇気ある行動を取った竜胆を、俺は心から尊敬する。
「皆友くんのお陰で勇気を貰えるけど……同時に弱くなっちゃいそう」
「どうしてだ?」
「だって、優し過ぎるんだもん……。
あたし皆友くんがいてくれないと……ダメな女の子にされちゃってる」
「そんなことないだろ?」
真面目にそんなことを言ってくる竜胆に、思わず苦笑してしまう。
「そんなことあるよ……。
こうして皆友くんぶんを充電しておかないと……がんばれないもん」
言って竜胆は俺に肩を寄せてきた。
早朝の電車。
人はあまり乗っていない。
だから、恥ずかしくはないけれど……少しこそばゆい。
「俺がいなくても、竜胆は十分強いよ」
「そんなこと……」
まだ自分に自信を持ちきれないのかもしれない。
でも、竜胆は一つ勘違いしている。
俺たちは、互いに互いを必要としている。
「それに俺が傍にいることで、竜胆が強くいられるなら……いなくなった時のことなんて、考えなくていい」
遠回しになるけれど、これからも一緒にいると伝えたその言葉は、
「……うん」
しっかりと竜胆に伝わったのか、彼女は照れ笑いを浮かべた。
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