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STAGE2
第22話 確かな救い
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『ほう……この男を助けようと決めたのは正解だったな』
『人助けってのはしとくもんだな』
アルに言われて俺は頷く。
情けは人の為ならずとはよく言ったものだ。
あとは長嶺に使命を全うしてもらえば送還完了。
(……ユグド大陸の時と同様に、他の転移者がいるという可能性もあるが)
今は長嶺を助けることが第一だ。
「ハザマ、もしかしてキミの探し人というのは?」
「ああ、女神がくれた幸運だ」
俺はルンドに肯定の意志を示すと長嶺に駆け寄った。
「怪我はないか?」
「ありがとう、狭間くん。ボクなら大丈夫」
長嶺は涙を拭う。
そして心から安心したような笑みを俺に向けた。
「一人でよくがんばったな」
「ぁ……も、もう、今、そんなに優しくしないでよ……」
再び長嶺の瞳に涙が溜まっていた。
そんな彼女の頭を俺は優しく撫でる。
もう大丈夫だからという意味を込めて。
「狭間くん、なんだか変わった……?」
「そうか?」
「うん……大人っぽくなったっていうか……なんだかもう随分と会ってなかったみたいな気がするね……」
恋に会った時も似たようなことを言われたっけ。
長嶺にとっては、一人で異世界に転移してしまったこの数日の間は、本当に長く感じたのだろう。
俺にとっては随分と会っていないどころの話ではないのだけど……それでも、学生時代の記憶はまだちゃんと残っている。
俺にとってはそれだけ、森羅や恋たちと過ごした日々は大切なものだった。
そして――その想いを忘れなかったからこそ今がある。
「狭間くんは、どうしてここに? ボクがいるって知ってたわけじゃないんだよね?」
「お前を助ける為にこの異世界に来たのは間違いないが、ここで会ったのは本当に偶然だ」
「異世界……やっぱりここは、ボクたちの世界じゃないんだね」
「……ああ。信じられないかもしれないがな。……長嶺、色々と聞きたいこともあると思うが、まずはここから脱出しよう」
「うん。狭間くん、助けに来てくれて、本当にありがとう。……でも……」
長嶺の視線が自身の腕と足の拘束具に向けられた。
彼女だけじゃない。
この場にいる少女たちは皆、束縛された状態にあるようだ。
「なんと非道な! こんな物で少女たちの自由を奪うなんて……」
それを見てルンドが不快感を示した。
この場にいる少女たちは疲弊して疲れ切っ表情を見せている。
食事すらも最低限しか与えられていないかもしれない。
「ハザマ、のんびりしている時間はないぞ。早く拘束を解除して――って、しまった!? 鍵が……」
こいつ山賊のアジトに潜入していたのに、何一つ用意してないんだな。
正義感は強いようだが、これでどう捕まった少女たちを解放するつもりだったのか。
「お前、準備って言葉知ってるか?」
「ぐっ……」
本気で申し訳なさそうに表情を歪めるルンド。
自分の不甲斐なさを実感しているようだ。
少し呆れもしたが――
「ほら」
――パチン。
親指と中指を重ねて弾いた。
「もう大丈夫だぞ」
「え……? ぁ……」
長嶺が目を丸めたのは、自身を束縛していた拘束具が消滅していたからだ。
彼女だけじゃない。
この場にいる少女たちを拘束は全て解いた。
少女たちの瞳に確かな希望が宿り、小さな歓声が室内を満たした。
「おおおおおっ!? 流石は賢者ハザマだ!」
ルンドはいちいちリアクションが激しい。
が、強い感動を覚えたのは間違いないらしく、俺に尊敬の眼差しを向けた。
「賢者……って、狭間くんのことなの?」
「あ~その辺りの事情はここを出てからな」
「う、うん……そうだ――」
カタン――と、背後から足音が響いた。
「あ~ん? なんだ? 騒がしいと思って来てみたら……どういうことだこりゃ?」
近付いてくる気配があることに俺は気付いていた俺は、ゆっくりと振り返る。
すると見るからに柄の悪い山賊たちがニヤついた笑みを浮かべていた。
「おいおいルンバ、お前……どういうこった?」
ルンバ……というのは、おそらくルンドのことで、山賊団での偽名だろう。
「こ、これは――」
「いいや、黙れ。何も言うな。当ててやる」
中央にいるモヒカン男が首を右に、左に、振り子のように動かす。
そして、ゴキッ――と首の骨を鳴って、止まった。
「ああ、ああああ~、そうか。お前がうちに入ったのは、こいつらを助ける為ってことだろ? なあ、そうだろ? ――って、実は知ってたんだけどさあ~!」
ぎゃはははははっ! と、男たちが下品な笑い声をあげた。
「ど、どういうことだ!?」
「俺様には未来が見えてんだよぉ~! だぁ~かぁ~らぁ~お前が仲間を連れて、こいつらを助けるってのもわかってんだよぉ~」
「なああっ!? そ、そんなバカな……」
未来予知?
それが本当なら山賊にはもったない能力だが……。
「さぁ~、お前らやっちまえ!」
モヒカン男が命令を下す。
だが山賊たちは動かない……何が起こるのか? と思えば、
「ハザマくん、逃げて――」
「うん?」
奴隷の少女たちが立ち上がり、俺とルンドを羽交い締めにしてきた。
「な、なにをしてるんだ、キミたちは! や、やめたまえ!」
「あ~無駄無駄。こいつらは俺様の命令を聞くしかないだんよ。おら、見せてやれ」
その声に呼応するように、長嶺がモヒカン男の傍に歩み寄っていく。
「や、や……だぁ……」
「無駄だ。ほら、さっさとやれ」
拒絶しているはずなのに、長嶺は自身の制服の裾を掴みたくし上げた。
すると――腹部に焼き付けられるような刻印が描かれていた。
「奴隷の契約――これが刻まれてる限り、こいつらは俺様の命令には逆らえない」
「や、やだぁ……ハザマくん、見ないで……」
悔しそうに唇を噛み、長嶺は羞恥に耐えている。
長嶺だけじゃない。
少女たちは皆、山賊たちにいいようにされていることに、悔しそうに涙を浮かべていたのだ。
「な、なんと非道な……! 許せん、オレはお前を許さないぞ!」
「あ~喚くなっての。それにどうせお前らは死ぬ。俺様には未来が――」
「未来が見えてるって、それ嘘だろ?」
バタバタバタバタバタ――。
「ぁ……? なっ!?」
その音に振り返るモヒカンは、取り巻きの山賊たちが一斉に倒れ伏しているのを目にして目を見開いた。
「な、なんで俺様の背後にいやがるっ!? い、いや、それよりも、なんでこいつらがぶっ倒れて――
「俺の友人を辱めたんだ。覚悟しろよ」
「え……」
俺はモヒカンの鼻っつらにデコピンをした。
もちろん全力ではやってしまったらデコピンといえど、男は跡形もなく消滅してしまう。
だから加減はした。
――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ
「うごおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
この爆音は俺のデコピンで男がぶっ飛び、洞窟の石壁を貫いていった音だった。
そして音が聞こえなくなった。
俺には見えていた。
男が石壁に埋まっている姿が。
殺してはいない。
そうなるように調整したから。
唖然としている少女たちがぽかーんとその光景を見ていた。
「これで本当にもう大丈夫だからな」
俺は少女たちにそう伝えた。
「わたしたち、助かった、の?」
「あっという間に、山賊たちを倒しちゃった!」
「すごい、すごいよ!」
「これで……自由になれるの?」
戸惑い、喜び、疑問、様々な感情が少女たちの中に渦巻いていただろう。
「ああ、俺が責任を持って直ぐに家に帰してやる。
俺の返事に、少女たちの大歓声が沸き起こる。
それは少女たちに芽生えていた希望が、確かな救いへと変わった証だった。
『人助けってのはしとくもんだな』
アルに言われて俺は頷く。
情けは人の為ならずとはよく言ったものだ。
あとは長嶺に使命を全うしてもらえば送還完了。
(……ユグド大陸の時と同様に、他の転移者がいるという可能性もあるが)
今は長嶺を助けることが第一だ。
「ハザマ、もしかしてキミの探し人というのは?」
「ああ、女神がくれた幸運だ」
俺はルンドに肯定の意志を示すと長嶺に駆け寄った。
「怪我はないか?」
「ありがとう、狭間くん。ボクなら大丈夫」
長嶺は涙を拭う。
そして心から安心したような笑みを俺に向けた。
「一人でよくがんばったな」
「ぁ……も、もう、今、そんなに優しくしないでよ……」
再び長嶺の瞳に涙が溜まっていた。
そんな彼女の頭を俺は優しく撫でる。
もう大丈夫だからという意味を込めて。
「狭間くん、なんだか変わった……?」
「そうか?」
「うん……大人っぽくなったっていうか……なんだかもう随分と会ってなかったみたいな気がするね……」
恋に会った時も似たようなことを言われたっけ。
長嶺にとっては、一人で異世界に転移してしまったこの数日の間は、本当に長く感じたのだろう。
俺にとっては随分と会っていないどころの話ではないのだけど……それでも、学生時代の記憶はまだちゃんと残っている。
俺にとってはそれだけ、森羅や恋たちと過ごした日々は大切なものだった。
そして――その想いを忘れなかったからこそ今がある。
「狭間くんは、どうしてここに? ボクがいるって知ってたわけじゃないんだよね?」
「お前を助ける為にこの異世界に来たのは間違いないが、ここで会ったのは本当に偶然だ」
「異世界……やっぱりここは、ボクたちの世界じゃないんだね」
「……ああ。信じられないかもしれないがな。……長嶺、色々と聞きたいこともあると思うが、まずはここから脱出しよう」
「うん。狭間くん、助けに来てくれて、本当にありがとう。……でも……」
長嶺の視線が自身の腕と足の拘束具に向けられた。
彼女だけじゃない。
この場にいる少女たちは皆、束縛された状態にあるようだ。
「なんと非道な! こんな物で少女たちの自由を奪うなんて……」
それを見てルンドが不快感を示した。
この場にいる少女たちは疲弊して疲れ切っ表情を見せている。
食事すらも最低限しか与えられていないかもしれない。
「ハザマ、のんびりしている時間はないぞ。早く拘束を解除して――って、しまった!? 鍵が……」
こいつ山賊のアジトに潜入していたのに、何一つ用意してないんだな。
正義感は強いようだが、これでどう捕まった少女たちを解放するつもりだったのか。
「お前、準備って言葉知ってるか?」
「ぐっ……」
本気で申し訳なさそうに表情を歪めるルンド。
自分の不甲斐なさを実感しているようだ。
少し呆れもしたが――
「ほら」
――パチン。
親指と中指を重ねて弾いた。
「もう大丈夫だぞ」
「え……? ぁ……」
長嶺が目を丸めたのは、自身を束縛していた拘束具が消滅していたからだ。
彼女だけじゃない。
この場にいる少女たちを拘束は全て解いた。
少女たちの瞳に確かな希望が宿り、小さな歓声が室内を満たした。
「おおおおおっ!? 流石は賢者ハザマだ!」
ルンドはいちいちリアクションが激しい。
が、強い感動を覚えたのは間違いないらしく、俺に尊敬の眼差しを向けた。
「賢者……って、狭間くんのことなの?」
「あ~その辺りの事情はここを出てからな」
「う、うん……そうだ――」
カタン――と、背後から足音が響いた。
「あ~ん? なんだ? 騒がしいと思って来てみたら……どういうことだこりゃ?」
近付いてくる気配があることに俺は気付いていた俺は、ゆっくりと振り返る。
すると見るからに柄の悪い山賊たちがニヤついた笑みを浮かべていた。
「おいおいルンバ、お前……どういうこった?」
ルンバ……というのは、おそらくルンドのことで、山賊団での偽名だろう。
「こ、これは――」
「いいや、黙れ。何も言うな。当ててやる」
中央にいるモヒカン男が首を右に、左に、振り子のように動かす。
そして、ゴキッ――と首の骨を鳴って、止まった。
「ああ、ああああ~、そうか。お前がうちに入ったのは、こいつらを助ける為ってことだろ? なあ、そうだろ? ――って、実は知ってたんだけどさあ~!」
ぎゃはははははっ! と、男たちが下品な笑い声をあげた。
「ど、どういうことだ!?」
「俺様には未来が見えてんだよぉ~! だぁ~かぁ~らぁ~お前が仲間を連れて、こいつらを助けるってのもわかってんだよぉ~」
「なああっ!? そ、そんなバカな……」
未来予知?
それが本当なら山賊にはもったない能力だが……。
「さぁ~、お前らやっちまえ!」
モヒカン男が命令を下す。
だが山賊たちは動かない……何が起こるのか? と思えば、
「ハザマくん、逃げて――」
「うん?」
奴隷の少女たちが立ち上がり、俺とルンドを羽交い締めにしてきた。
「な、なにをしてるんだ、キミたちは! や、やめたまえ!」
「あ~無駄無駄。こいつらは俺様の命令を聞くしかないだんよ。おら、見せてやれ」
その声に呼応するように、長嶺がモヒカン男の傍に歩み寄っていく。
「や、や……だぁ……」
「無駄だ。ほら、さっさとやれ」
拒絶しているはずなのに、長嶺は自身の制服の裾を掴みたくし上げた。
すると――腹部に焼き付けられるような刻印が描かれていた。
「奴隷の契約――これが刻まれてる限り、こいつらは俺様の命令には逆らえない」
「や、やだぁ……ハザマくん、見ないで……」
悔しそうに唇を噛み、長嶺は羞恥に耐えている。
長嶺だけじゃない。
少女たちは皆、山賊たちにいいようにされていることに、悔しそうに涙を浮かべていたのだ。
「な、なんと非道な……! 許せん、オレはお前を許さないぞ!」
「あ~喚くなっての。それにどうせお前らは死ぬ。俺様には未来が――」
「未来が見えてるって、それ嘘だろ?」
バタバタバタバタバタ――。
「ぁ……? なっ!?」
その音に振り返るモヒカンは、取り巻きの山賊たちが一斉に倒れ伏しているのを目にして目を見開いた。
「な、なんで俺様の背後にいやがるっ!? い、いや、それよりも、なんでこいつらがぶっ倒れて――
「俺の友人を辱めたんだ。覚悟しろよ」
「え……」
俺はモヒカンの鼻っつらにデコピンをした。
もちろん全力ではやってしまったらデコピンといえど、男は跡形もなく消滅してしまう。
だから加減はした。
――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ
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この爆音は俺のデコピンで男がぶっ飛び、洞窟の石壁を貫いていった音だった。
そして音が聞こえなくなった。
俺には見えていた。
男が石壁に埋まっている姿が。
殺してはいない。
そうなるように調整したから。
唖然としている少女たちがぽかーんとその光景を見ていた。
「これで本当にもう大丈夫だからな」
俺は少女たちにそう伝えた。
「わたしたち、助かった、の?」
「あっという間に、山賊たちを倒しちゃった!」
「すごい、すごいよ!」
「これで……自由になれるの?」
戸惑い、喜び、疑問、様々な感情が少女たちの中に渦巻いていただろう。
「ああ、俺が責任を持って直ぐに家に帰してやる。
俺の返事に、少女たちの大歓声が沸き起こる。
それは少女たちに芽生えていた希望が、確かな救いへと変わった証だった。
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