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第二百三十六話
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「ねえフォリっち……あの子誰?」
困惑した顔で芽衣が背後をちらりと見る。
そこに居たのはカナリア。
ソファへごろりと横になり煎餅をかじり、時々思い出したかのようにストローからジュースを吸い上げている。
完全に初対面の芽衣がいるにもかかわらず挨拶はなし、相変わらず傍若無人を極めていた。
「なんだ琉希、そんなのも倒せないのか! 反応が遅れているぞ! あ、ほら、またやられとる!」
「うるさいですね……」
あ、首極められてる。
「あー……」
どうしたものか口籠る。
カナリアと私の関係は複雑だ。
何を話してもいいのか、何を話してはいけないのか、まずそこから考えなくてはいけない。
それに彼女が悪人ではないのは間違いないとしても、今後カナリアと私たちの目標が一致するとも限らないのだ。
私はただ、皆と一緒に居られるのならそれで良い。
ダンジョンシステムと世界の消滅についてカナリアは果たしてどう思っているのか。
どうしようもなく手が付けられず、このまま死を待つしか方法がないのか。
それともなにか対策があり、実は彼女は裏で手を回しているのか。
それとも……これはあまり考えたくないが、カナリアが実はダンジョンの崩壊と世界の消滅を、何らかの方法で悪用しているのか。
カナリアは私たちに何も話してくれない。
たった一つだけ、琉希曰く、彼女には倒さなければいけない男がいると、カナリアは彼を殺すために今日まで生きてきたと。
何故その人を殺さなければいけないのか、その先に何があるのか、何一つとして不明。
「なんだ貴様らじっと見て、煎餅はやらんぞ。これは私の物だからな!」
煎餅の袋へ手を突っ込むのをやめじろりとこちらを睨み、つんと顔を逸らすカナリア。
まあ敵になる云々については多分大丈夫な気がしてきた。
ともかく芽衣に真実を話すのは無しだ。
そもそも芽衣は私や琉希と違ってレベルも圧倒的に低いし、出会ってまだ数か月も経っていない。
もし本格的に巻き込まれてしまった時、彼女は真っ先に死ぬだろう。
ママの言う通り一人で抱え込まないというのは大事かもしれないが、節操なしに巻き込むのはまた別の話である。
「あ、もしかして親戚の人? 髪色とか金髪だし!」
「そ……そう! 事情で一緒に暮らすことになってさ」
「もしかしてアリアさんと喧嘩してたのって……」
「うん、あの人とちょっと色々あって。でも今はもう大丈夫、多分良い人ではあるから」
どう説明した物かと悩んでいたものの、何かを勘違いした芽衣の発言にこれ幸いと乗る。
そういえばカナリアも金髪だし成程、確かに最初から親戚ってことにしておけばよかった。
エルフの異世界人というイメージが先行していたせいで、こう、ぱっと思い浮かばなかったのだ。
とはいえ肩より高い所で切っている私と異なり、カナリアは随分と髪が長い。
いくらエルフの長い耳をしているとはいえ、腰ほどまである長い金髪が彼女の耳を……
「複雑な事情って奴やね……んじゃ詳しく聞くのはやめとくわ」
「おい、煎餅無くなったんだが。あとドクトルペッパー」
み……
耳が見えとる……!
煎餅を食べ終わった後、あくびをしながら髪を掻き上げた彼女。
同時に髪の奥へ隠されていた長い耳がピン、と現れ、ぴくぴくと激しく主張を始めた。
背中に冷や汗が流れる。
しかし私の慌てた様子に異変を感じた琉希は、カナリアの頭をみて全てを察すると……
「あんまり食べ過ぎると太りますよ」
「ふぁべっ」
スパンと頭を叩いた。
ちょっと荒っぽい気もするけど……まあ隠れたのでヨシとしておこう。
もう少し彼女には自分の正体を隠すことを意識してもらいたい。
「どしたん?」
「い、いや……何でもない」
安堵のため息を漏らした私を心配そうにのぞき込む芽衣。
大丈夫だと頷けば彼女も笑みを浮かべ……
「折角だしちょっと話してくるよ、仲良くなりたいしさ」
と、コントローラーをカーペットの上に置き、何か言う暇もなくカナリアの元へ歩いて行った。
「ウチは芽衣、呉島芽衣。よろしくねカナっち!」
「カナ……? おい、もしかしてソレ私のあだ名か?」
差し出された右手を訝し気に見る彼女。
大丈夫かな……?
「え? いかんかった?」
「いや、好きに呼べ。しかし、ふっ……あだ名、か」
何か起こるかもしれない。
そんな私の心配に反して案外すんなりと手を握り、ニヒルな笑みを浮かべ何かを思い返す様に目を瞑る彼女。
心配で立ち上がってしまった私へ芽衣は、大丈夫だと親指を立てる。
「カナっちって中二病っしょ? ウチの学校にもこういうタイプ居たから任せときなって!」
にっと犬歯をみせ笑うと……
「超天才カナっち最強! ふーふー!」
「中々分かってるではないか! フォリアも琉希も何故か私の扱いが悪いからな、貴様は見どころのある奴だ! フゥーーーハハハハハッ!」
なんとカナリアを手懐けてしまった。
なるほど。
ああやってカナリアには対処すればいいのか、勉強になる。
「マジ!? スキルじゃない魔法使えるの!?」
「うむ! この私にかかれば多少の事象を捻じ曲げることなど容易いぞ! 魔力さえあればだがな!」
「ウチにも今度教えてよ! パスタを一分で茹でる魔法とか!」
「うむ! うむ! 私に任せろ、貴様になら何でも教えてやるぞ!」
どうなるかと思った二人の出会いだけれど芽衣は会話が相当に上手いようで、あっという間にカナリアと仲良くなってしまった。
さっきまで退屈そうにゲーム画面を見てヤジを飛ばしていたカナリアも、彼女と弾む会話にいつの間にか自然な笑みを浮かべている。
これで私は……
「今日は勝つよ」
「おっ、やっと乗ってきましたねフォリアちゃん」
安心してゲームができる。
前回ぼこぼこのぼこにされてしまった私だが、様々な体験をして精神的に多分成長した。
勝てる。
なんだか行ける気がする、多分これは勝利待ったなしだ。
意気揚々とコントローラーを握ったその時。
「あーお前ら、料理はアタシ達がやっちまうが、クリーム泡立てたりケーキ飾りつけるくらいはやるか?」
丁度現れた琉希の母、椿さんによって試合は遮られてしまった。
困惑した顔で芽衣が背後をちらりと見る。
そこに居たのはカナリア。
ソファへごろりと横になり煎餅をかじり、時々思い出したかのようにストローからジュースを吸い上げている。
完全に初対面の芽衣がいるにもかかわらず挨拶はなし、相変わらず傍若無人を極めていた。
「なんだ琉希、そんなのも倒せないのか! 反応が遅れているぞ! あ、ほら、またやられとる!」
「うるさいですね……」
あ、首極められてる。
「あー……」
どうしたものか口籠る。
カナリアと私の関係は複雑だ。
何を話してもいいのか、何を話してはいけないのか、まずそこから考えなくてはいけない。
それに彼女が悪人ではないのは間違いないとしても、今後カナリアと私たちの目標が一致するとも限らないのだ。
私はただ、皆と一緒に居られるのならそれで良い。
ダンジョンシステムと世界の消滅についてカナリアは果たしてどう思っているのか。
どうしようもなく手が付けられず、このまま死を待つしか方法がないのか。
それともなにか対策があり、実は彼女は裏で手を回しているのか。
それとも……これはあまり考えたくないが、カナリアが実はダンジョンの崩壊と世界の消滅を、何らかの方法で悪用しているのか。
カナリアは私たちに何も話してくれない。
たった一つだけ、琉希曰く、彼女には倒さなければいけない男がいると、カナリアは彼を殺すために今日まで生きてきたと。
何故その人を殺さなければいけないのか、その先に何があるのか、何一つとして不明。
「なんだ貴様らじっと見て、煎餅はやらんぞ。これは私の物だからな!」
煎餅の袋へ手を突っ込むのをやめじろりとこちらを睨み、つんと顔を逸らすカナリア。
まあ敵になる云々については多分大丈夫な気がしてきた。
ともかく芽衣に真実を話すのは無しだ。
そもそも芽衣は私や琉希と違ってレベルも圧倒的に低いし、出会ってまだ数か月も経っていない。
もし本格的に巻き込まれてしまった時、彼女は真っ先に死ぬだろう。
ママの言う通り一人で抱え込まないというのは大事かもしれないが、節操なしに巻き込むのはまた別の話である。
「あ、もしかして親戚の人? 髪色とか金髪だし!」
「そ……そう! 事情で一緒に暮らすことになってさ」
「もしかしてアリアさんと喧嘩してたのって……」
「うん、あの人とちょっと色々あって。でも今はもう大丈夫、多分良い人ではあるから」
どう説明した物かと悩んでいたものの、何かを勘違いした芽衣の発言にこれ幸いと乗る。
そういえばカナリアも金髪だし成程、確かに最初から親戚ってことにしておけばよかった。
エルフの異世界人というイメージが先行していたせいで、こう、ぱっと思い浮かばなかったのだ。
とはいえ肩より高い所で切っている私と異なり、カナリアは随分と髪が長い。
いくらエルフの長い耳をしているとはいえ、腰ほどまである長い金髪が彼女の耳を……
「複雑な事情って奴やね……んじゃ詳しく聞くのはやめとくわ」
「おい、煎餅無くなったんだが。あとドクトルペッパー」
み……
耳が見えとる……!
煎餅を食べ終わった後、あくびをしながら髪を掻き上げた彼女。
同時に髪の奥へ隠されていた長い耳がピン、と現れ、ぴくぴくと激しく主張を始めた。
背中に冷や汗が流れる。
しかし私の慌てた様子に異変を感じた琉希は、カナリアの頭をみて全てを察すると……
「あんまり食べ過ぎると太りますよ」
「ふぁべっ」
スパンと頭を叩いた。
ちょっと荒っぽい気もするけど……まあ隠れたのでヨシとしておこう。
もう少し彼女には自分の正体を隠すことを意識してもらいたい。
「どしたん?」
「い、いや……何でもない」
安堵のため息を漏らした私を心配そうにのぞき込む芽衣。
大丈夫だと頷けば彼女も笑みを浮かべ……
「折角だしちょっと話してくるよ、仲良くなりたいしさ」
と、コントローラーをカーペットの上に置き、何か言う暇もなくカナリアの元へ歩いて行った。
「ウチは芽衣、呉島芽衣。よろしくねカナっち!」
「カナ……? おい、もしかしてソレ私のあだ名か?」
差し出された右手を訝し気に見る彼女。
大丈夫かな……?
「え? いかんかった?」
「いや、好きに呼べ。しかし、ふっ……あだ名、か」
何か起こるかもしれない。
そんな私の心配に反して案外すんなりと手を握り、ニヒルな笑みを浮かべ何かを思い返す様に目を瞑る彼女。
心配で立ち上がってしまった私へ芽衣は、大丈夫だと親指を立てる。
「カナっちって中二病っしょ? ウチの学校にもこういうタイプ居たから任せときなって!」
にっと犬歯をみせ笑うと……
「超天才カナっち最強! ふーふー!」
「中々分かってるではないか! フォリアも琉希も何故か私の扱いが悪いからな、貴様は見どころのある奴だ! フゥーーーハハハハハッ!」
なんとカナリアを手懐けてしまった。
なるほど。
ああやってカナリアには対処すればいいのか、勉強になる。
「マジ!? スキルじゃない魔法使えるの!?」
「うむ! この私にかかれば多少の事象を捻じ曲げることなど容易いぞ! 魔力さえあればだがな!」
「ウチにも今度教えてよ! パスタを一分で茹でる魔法とか!」
「うむ! うむ! 私に任せろ、貴様になら何でも教えてやるぞ!」
どうなるかと思った二人の出会いだけれど芽衣は会話が相当に上手いようで、あっという間にカナリアと仲良くなってしまった。
さっきまで退屈そうにゲーム画面を見てヤジを飛ばしていたカナリアも、彼女と弾む会話にいつの間にか自然な笑みを浮かべている。
これで私は……
「今日は勝つよ」
「おっ、やっと乗ってきましたねフォリアちゃん」
安心してゲームができる。
前回ぼこぼこのぼこにされてしまった私だが、様々な体験をして精神的に多分成長した。
勝てる。
なんだか行ける気がする、多分これは勝利待ったなしだ。
意気揚々とコントローラーを握ったその時。
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