ぼくらのトン太郎

いっき

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「ペット、何を飼ってる?」
友達からそう聞かれたら、ぼくは『太郎』って答える。
本当は『トン太郎』って名前なんだけど……そう答えた方が、みんなはぼくの家に来てからびっくりするんだ。だって、『太郎』って名前からだったら、みんな、犬だと思うから。
そのトン太郎はミニブタで、ぼくが三歳の時からずっといっしょにいる。はだ色の毛の中にところどころ黒いブチのある、とってもかわいいやつなんだ。
「トン太郎、ほら。ごはんだよ」
ぼくは学校から帰ったら、トン太郎にごはんをあげるのが日課だ。ごはんは、大根やさつまいもなんかと、専用のフードをあげるんだ。
するとトン太郎は空色のソファーからおりてきて。鼻をひくひくしながら、ぼくのあげたごはんを食べるんだ。
「ははっ、トン太郎って、やっぱりかわいいよな。黒いブチのあるところが犬みたいだけれど、顔をよく見るとやっぱり豚なんだよな」
今日も友達の浩介(こうすけ)くんが学校の帰りにより道してぼくの家に来てくれて、トン太郎を見て目を細めている。浩介くんの家はマンションでペットを飼うことができないから、ぼくの家でトン太郎と会うのをとても楽しみにしてくれているんだ。
「でも、大輝(だいき)のトン太郎って、本当にお利口さんだよな。おしっこはいっつもトイレに行ってするし」
「まぁね。トン太郎はトイレを覚えているし、すごくきれい好きなやつだから」
浩介くんにほめられると、飼い主のぼくも得意な気分になる。
トン太郎は体重は五十キロくらいでぼくよりも大きい。だから、家の中に柵を置いて、その中に空色のソファーとトイレを置いて飼っている。ぼくらが学校にいる間はソファーでねていて、学校から帰ってきてごはんをあげると起き出してくるんだ。
「よし……トン太郎。今日も運動をしよっか」
「マジで? やった!」
 ぼくが言うと、トン太郎よりも浩介くんの方が目をかがやかせてよろこんだ。
トン太郎が運動する時は、柵の近くのガラス戸の向こうのうら庭に出してやって、歩き回る。それがトン太郎にとっても浩介くんにとっても、楽しみでならないのだ。
「ほぉら、トン太郎。いいお天気だよ」
 僕の家のうら庭は日当たりも良くて、特に秋晴れの日には出たらとっても気持ちいい。トン太郎は鼻をひくひくとして床の様子を探りながら、ガラス戸のレールをまたいでうら庭に出た。黒いブチのあるトン太郎がこんなことをすると、本当に犬に見えてくる。
 今は十月。やわらかな太陽の光をあびたピンクや白のコスモスが、風にゆらされてほほえんでいる。
 お利口さんなトン太郎は、そんなきれいなコスモスはほり返さずに、何も咲いていない柿の木の下をほり返しはじめた。
「今日も鼻ほりだな」
「うん。ほりたくてウズウズしていたんだよ、きっと」
 浩介くんは、いつものように鼻を使って土をほるトン太郎を見て、にっこりと笑った。
 ミニブタには鼻で土をほる習性がある。一日一回はそれをしないと、ストレスがたまるみたい。ぼくはずっと前からトン太郎を見てきたから不思議ではないけれど、みんな、初めて見た時には犬とはちがうってびっくりしていた。犬にはない習性みたいだ。
「ほぉら、トン太郎。いもをうめたよ。ほり返してみて」
これがいっつもやっている宝探しゲーム。でもトン太郎はいっつも簡単に探し当てる。においにびんかんな所はやっぱり犬みたいだな、なんて思う。
そうやってトン太郎と遊んでいるうちに、空はすっかりオレンジ色。夕陽に照らされた赤とんぼもゆらゆらと飛び回って、ちょっとさむくなってきた。
「よし、トン太郎。今日も楽しかったなぁ。家に上がって、きれいにしよう」
 トン太郎も浩介くんもちょっとなごりおしそうだったけれど、ぼくはトン太郎のおしりを押して、ぐいっと家の中に上げた。
トン太郎を家に上げたらまずは足をふいて、体にブラシをかけてやる。これもぼくたちの楽しみだ。ブラシをかけてやったらトン太郎は気持ち良さそうに目を細めて。トン太郎のよろこぶことをしてあげるのが、ぼくも浩介くんも楽しみなんだ。
こうやって毎日ブラシをかけてやったら、黒いブチのあるトン太郎の毛はつやつやときれいになっていくような気がする。きれい好きなトン太郎だから、それがとってもうれしそうだ。
「じゃあな、大輝。明日も来るよ」
「うん。トン太郎も待ってるよ」
「おう。ぼく、トン太郎に会うのが毎日の楽しみなんだ」
そう言って、浩介くんはにっこりと笑ってバイバイした。
浩介くんは動物が大好きで、学校でも飼育委員としてウサギたちの世話をしている。ウサギをだいている時のキラキラとした笑顔をトン太郎と遊んでいる時にも見せてくれるから、ぼくはうれしくなる。
トン太郎はだれでも家に来てくれるとよろこんでいるみたいだけれど、浩介くんが来てくれるととてもうれしそうだ。
柵にもどったトン太郎は、ソファーに上がって気持ち良さそうにねむりはじめた。
「大輝! ごはん、できたわよ」
二階からお母さんがぼくを呼ぶ声が聞こえて。ぼくは、気持ち良さそうにねむるトン太郎に、そっとバスタオルをかけてやって階段を上がった。
それがぼくとちょっと変わったペット、トン太郎の、いつも通りの日常だった。
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