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王城
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こちらは、国の王城。マジスクとは渓谷を隔てた、大きな山の麓に位置している。マキの家からは遠いけれど、シルバーに乗って飛行すると、到着に然程の時間はかからない。
王城ではヤルク国王が綺麗な翡翠色の水晶玉を眺めていた。
その水晶玉はマジスクでのドラゴンレースの模様を詳細に映して。断然トップを走っている、銀色に輝くドラゴンに乗る美しい少女が一際目立っていた。
ヤルク国王はそのドラゴンレースを、愛おしいものを見るかのように優しく目を細めて眺めていた。
その時だった。
「国王陛下! お城を訪れて来た者がおります!」
家臣のその言葉で、ヤルクは現実に引き戻されて……厳粛な面持ちで応じた。
「この城にか。どんな奴だ?」
「はっ。少女と老婆にございます」
「少女と老婆?」
「はい、マキという少女とサラという老婆……あっ、丁度今、水晶玉に映っている少女です。その銀色のドラゴンも引き連れています」
すると、ヤルクは驚いたように目を見張って呟いた。
「マキ……」
「国王陛下?」
暫し放心状態になった自分に不思議そうな顔をする家臣に、ヤルクは再度厳粛な面持ちを向けた。
「その二人、こちらへ通せ」
「し、しかし、国王……。どこの誰とも分からぬものでは……」
「構わん。通すのじゃ」
予期せぬ対応に慌てる家臣に、ヤルクは荘厳な声色で命じた。
「うっわー。本当に通されちゃったよ。どうしよう……」
「しっ、サラ。静かに!」
お城の応接間に通された二人は、大きなシャンデリアや壁画に圧倒されていて。老婆のサラは元より、あれほど挑戦的だったマキもガチガチに緊張していた。
その時だった。
「ヤルク国王の御成り!」
家臣がゆっくりとドアを開けて……赤いコートに金色のマントを身にまとったヤルクが現れた。王様らしい豪華な衣装の彼は、厳粛な顔を崩さずにサラとマキの向かいに座った。
「はじめまして、マキ・シャルデンと申します」
「は……はじめまして、サラ・アミラーと言います」
落ち着いた様子の少女、マキと挙動不審な老婆、サラ……国王の前にあっても、二人の様子は対照的だった。
「マキ……」
ヤルクはマキを見つめて……その目は少し、潤んだかに見えた。
「国王陛下?」
マキはそんなヤルクの様子に不思議そうな顔をした。
「あ……いや、すまない。して、子供と老婆が、こちらに何の用があって訪れたのだ?」
「はい。この娘……サラ・アミラーを元に戻して欲しいのです」
「娘? この老婆がか?」
「はい」
マキとサラは頷いて、事情を説明し始めた。
*
「ほう……それで、そなたが『時間を巻き戻す魔法』を使い、その反動によってその姿になったのか」
「はい。サラは、私を助けるために……。だから、私はどうしても、サラを元に戻さなければならないんです。国王……どうか、サラを元に戻す方法を教えて下さい」
マキはヤルクに必死に訴えた。
「マキちゃん……」
サラはマキのその姿に、胸にジーンとくるものを感じた。
だが……
「サラ・アミラー」
ヤルクは荘厳な顔をサラに向けた。
「そなたは、『時間を巻き戻す魔法』が禁忌の術であることは知っていたのか?」
「えっ?」
サラはヤルクの言葉に青ざめた。
「いや、国王。サラは私の命を守るために……! それに、その禁忌の術をサラに教えたのも、あなたしか考えられません」
マキも予想しないヤルクの発言に、慌ててサラを擁護した。
だけれども……ヤルクはさらに険しい表情をした。
「確かに、時間を巻き戻す前の私は、絶対にそんなことをしていない……とは言い切れない。だが、今、ここにいる私は絶対に禁忌の術を市民に教えたりなどしていない。それに……どんな理由があったにせよ、この国で禁忌の術を使った者は捕える。そんな決まりなのだ」
「そ、そんな……」
ヤルクの言葉にマキも青ざめた。
「そこの老婆を捕えよ。国の禁忌を破った者として、取り調べるのだ」
「はっ!」
ヤルクの命に従い、家臣はサラを捕縛した。
「国王、お待ち下さい! サラは、私のために……私のために、禁忌を破ったのです。捕えるなら、私を捕えて、サラのことは解放して下さい!」
マキはヤルクに、涙ながらに訴えた。
「残念ながら、それはできん。この国ではそういう決まりなのだ」
「そんな……」
ヤルクの言葉に、サラは茫然とした。
しかし……家臣に捕縛されたサラは、涙を浮かべてマキに微笑んだ。
「マキちゃん……ありがとう。私を庇ってくれて、そんなに私なんかのこと……。でも、悪いことをしたのは私だから」
「サラ……」
マキは涙を流してサラを見つめた。
「私は落ちこぼれだから……捕まってもどうなってもいいんだ。でも、マキちゃんは……絶対にシルバーに乗って、世界一のドラゴンライダーになってね」
「サラ! サラー!」
サラの元に駆け寄ろうとするマキも、ヤルクの家臣に押さえられ……サラはヤルクに連れられて応接間を出て行った。マキは、声にならない声を振り絞って叫んだけれど……その声は、その部屋に虚しく響くだけであった。
こちらは、国の王城。マジスクとは渓谷を隔てた、大きな山の麓に位置している。マキの家からは遠いけれど、シルバーに乗って飛行すると、到着に然程の時間はかからない。
王城ではヤルク国王が綺麗な翡翠色の水晶玉を眺めていた。
その水晶玉はマジスクでのドラゴンレースの模様を詳細に映して。断然トップを走っている、銀色に輝くドラゴンに乗る美しい少女が一際目立っていた。
ヤルク国王はそのドラゴンレースを、愛おしいものを見るかのように優しく目を細めて眺めていた。
その時だった。
「国王陛下! お城を訪れて来た者がおります!」
家臣のその言葉で、ヤルクは現実に引き戻されて……厳粛な面持ちで応じた。
「この城にか。どんな奴だ?」
「はっ。少女と老婆にございます」
「少女と老婆?」
「はい、マキという少女とサラという老婆……あっ、丁度今、水晶玉に映っている少女です。その銀色のドラゴンも引き連れています」
すると、ヤルクは驚いたように目を見張って呟いた。
「マキ……」
「国王陛下?」
暫し放心状態になった自分に不思議そうな顔をする家臣に、ヤルクは再度厳粛な面持ちを向けた。
「その二人、こちらへ通せ」
「し、しかし、国王……。どこの誰とも分からぬものでは……」
「構わん。通すのじゃ」
予期せぬ対応に慌てる家臣に、ヤルクは荘厳な声色で命じた。
「うっわー。本当に通されちゃったよ。どうしよう……」
「しっ、サラ。静かに!」
お城の応接間に通された二人は、大きなシャンデリアや壁画に圧倒されていて。老婆のサラは元より、あれほど挑戦的だったマキもガチガチに緊張していた。
その時だった。
「ヤルク国王の御成り!」
家臣がゆっくりとドアを開けて……赤いコートに金色のマントを身にまとったヤルクが現れた。王様らしい豪華な衣装の彼は、厳粛な顔を崩さずにサラとマキの向かいに座った。
「はじめまして、マキ・シャルデンと申します」
「は……はじめまして、サラ・アミラーと言います」
落ち着いた様子の少女、マキと挙動不審な老婆、サラ……国王の前にあっても、二人の様子は対照的だった。
「マキ……」
ヤルクはマキを見つめて……その目は少し、潤んだかに見えた。
「国王陛下?」
マキはそんなヤルクの様子に不思議そうな顔をした。
「あ……いや、すまない。して、子供と老婆が、こちらに何の用があって訪れたのだ?」
「はい。この娘……サラ・アミラーを元に戻して欲しいのです」
「娘? この老婆がか?」
「はい」
マキとサラは頷いて、事情を説明し始めた。
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「ほう……それで、そなたが『時間を巻き戻す魔法』を使い、その反動によってその姿になったのか」
「はい。サラは、私を助けるために……。だから、私はどうしても、サラを元に戻さなければならないんです。国王……どうか、サラを元に戻す方法を教えて下さい」
マキはヤルクに必死に訴えた。
「マキちゃん……」
サラはマキのその姿に、胸にジーンとくるものを感じた。
だが……
「サラ・アミラー」
ヤルクは荘厳な顔をサラに向けた。
「そなたは、『時間を巻き戻す魔法』が禁忌の術であることは知っていたのか?」
「えっ?」
サラはヤルクの言葉に青ざめた。
「いや、国王。サラは私の命を守るために……! それに、その禁忌の術をサラに教えたのも、あなたしか考えられません」
マキも予想しないヤルクの発言に、慌ててサラを擁護した。
だけれども……ヤルクはさらに険しい表情をした。
「確かに、時間を巻き戻す前の私は、絶対にそんなことをしていない……とは言い切れない。だが、今、ここにいる私は絶対に禁忌の術を市民に教えたりなどしていない。それに……どんな理由があったにせよ、この国で禁忌の術を使った者は捕える。そんな決まりなのだ」
「そ、そんな……」
ヤルクの言葉にマキも青ざめた。
「そこの老婆を捕えよ。国の禁忌を破った者として、取り調べるのだ」
「はっ!」
ヤルクの命に従い、家臣はサラを捕縛した。
「国王、お待ち下さい! サラは、私のために……私のために、禁忌を破ったのです。捕えるなら、私を捕えて、サラのことは解放して下さい!」
マキはヤルクに、涙ながらに訴えた。
「残念ながら、それはできん。この国ではそういう決まりなのだ」
「そんな……」
ヤルクの言葉に、サラは茫然とした。
しかし……家臣に捕縛されたサラは、涙を浮かべてマキに微笑んだ。
「マキちゃん……ありがとう。私を庇ってくれて、そんなに私なんかのこと……。でも、悪いことをしたのは私だから」
「サラ……」
マキは涙を流してサラを見つめた。
「私は落ちこぼれだから……捕まってもどうなってもいいんだ。でも、マキちゃんは……絶対にシルバーに乗って、世界一のドラゴンライダーになってね」
「サラ! サラー!」
サラの元に駆け寄ろうとするマキも、ヤルクの家臣に押さえられ……サラはヤルクに連れられて応接間を出て行った。マキは、声にならない声を振り絞って叫んだけれど……その声は、その部屋に虚しく響くだけであった。
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