白雪とギャル男

いっき

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土曜日。
通りを僕が歩くと誰もが振り返る。
それは、訝しい者を見る目ではなく、美しい者に見とれる目。
そう。
僕は、白雪姫に変身して歩いている。
服装は、電話で友美が来て行くと言っていた白色に水玉模様のワンピース。
待ち合わせ時間の一時間前に、待ち合わせ場所の噴水広場にいた。
広場にいるみんなの視線が僕に集まる。
今日一日は、僕は絶世の美少女、友美。
ギャルの友美に会おうという男、野崎の化けの皮を剥いでやるのだ。

しかし、早く着きすぎたのがよくなかった。
金髪のヤンキー二人が絡んできた。
「ねぇ、彼女、一人?」
「俺らと遊びに行こうぜ。」
明らかに野崎ではない。
「いえ、あの、待ち合わせしてるんで。」
「くぅ、可愛い。そんなの放っといて、俺らと遊ぶ方が楽しいぜ。」
これはダメだ。
正体を明かそう。
そう思った時、
「いてててて!」
一人のギャル男がヤンキーの腕を捻りあげた。
「俺の連れに、何するんだ!」
華奢な腕に似合わず、すごい怪力の持ち主だ。
そのギャル男が睨みつけるともう一人も怖じ気づき、悔しそうに逃げて行った。

「野崎…さん?」
僕は、華奢な見た目とは裏腹の怪力を持つ、そのギャル男に尋ねた。
「ああ。友美ちゃん、だよね?」
そう。
僕は、今日一日は友美だ。
こくりとうなづいた。
「待たせた…っていうか、まだ三十分前だけど。よっぽど早く来たんだね。」
そう、何としてでもギャルの友美より早く来なきゃならなかったんだ。
でも、そんなこと言えない。
「ええ、すごく楽しみで。」
言って、ニコッと笑った。
「友美ちゃん、可愛いなぁ!白雪姫みたい。」
ギャルの友美と同じことを言う。

デートコースの動物園へ向かう道中、野崎を観察する。
茶髪に切れ長の目、小さくて上品な口元。
いわゆる、『リア充』と呼ばれる部類のギャル男だろう。
どことなくギャルの友美に似ている。
それに、さっきのヤンキー達を追い払った強さ。
僕が本当の女の子だったら、コロっと惚れていただろう。
友美には、こういう男がお似合いなんだろうな。
そう思う。

動物園に入っても、野崎は僕…友美をリードする。
オロオロしている僕を引っ張り、ライオンの檻の前へ行き鳴き真似をしたり、ゴリラの檻へ行き威嚇のポーズを真似たり、ふれあい広場へ行き僕にウサギを抱かせたり。
飽きることのないトークを繰り広げ、面白さもある。
僕がギャルの友美とデートをする時も、友美がリードし、何も喋らない僕に話しかける。
もし野崎とデートしているのがギャルの友美だったら、どうなるだろうか?
きっと、意気投合して楽しんでいるんだろうな。
そう思っていると、やるせなくなって胸が締め付けられる思いがした。

お昼ごはんは、センスのいいレストランへ連れて来てくれた。
僕だったら、デートの時でもお昼は屋台のラーメン屋なんかへ連れて行く。
もう、僕は限界だった。
化けの皮を剥いでやろうと思っていた野崎は、ずっといい奴だった。
いい奴であればあるほど、こんなことをしている自分が惨めで、恥ずかしくて堪らなかった。
ここで本当のことを打ち明けよう。
そう思った。
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