狂愛

いっき

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「何で……どういうこと?」
その家は六階。私はエレベーターに乗り込もうとした。だけれども……
「ま……真奈美……」
こちらに到着したエレベーターから降りて来たのは真奈美。
「いや~~!」
どういうこと!?
だって真奈美は私が『消した』はずなのに。
私は何が何だか分からなくなって……マンションのエレベーターとは反対側に向かって駆け出した。
すると……
「うそ……」
私の進行方向……ある部屋のドアを開けて出て来たのも真奈美で。
私の顔からさぁーっと血の気が引いて。
何が何だか分からない……兎に角、逃げなければ! 
そんな気持ちが、私から正常な判断力を奪って。ここが六階だということも忘れ、飛び降りたのだった。





突然の女子高校生の飛び降りに家の外が騒然としている中……悟は一人、静かにDVDレコーダーからDVDを取り出した。
「真奈美……お前を死に追いやったあいつに復讐してやったぞ」
そっと、そう呟いた。

そう……悟は真奈美のことを愛していた。彼らは相思相愛で、だけれども悟は真奈美が里菜にいじめられていたことは知らなくて。彼女の死後に自分だけに宛てた遺書を読み、そのことを知った。
そのことで彼は自分を責めていたのだ。

悟が取り出して見つめるDVDにはサブリミナル効果が仕掛けられていた。
サブリミナル効果とは、意識と潜在意識の境界に働きかけることで現れる暗示のような効果で、映像を媒体とする場合には視覚として認識できないほどの短時間の刺激を繰り返しその映像に混ぜ込むことで発現する。
そのDVD映像を見ることで、視聴者が「自らが最もやましく思っている出来事が映像としてフラッシュバックすること」、そして「その映像を見て以降、全ての人間を真奈美と認識すること」……悟はその二つのサブリミナル効果を仕掛けていたのだ。
それは本来なら、普通の高校生が仕掛けることのできないトリックだった。だがしかし、映像研究部に所属しており、かつ学年一の成績を誇る彼は、真奈美への狂おしいほどの愛ゆえに、それを可能にしたのだった。

「だから……もう、この世界はお前だけ。真奈美……俺がこの世界でこれから出会う人間はもう、お前だけなんだ……」
悟は狂気とも思えるほどの深い悲哀を秘めたその瞳から、サブリミナル効果を遮断するためにはめた黒色のコンタクトレンズを外して。改めて、そのDVDを再生したのだった。
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