ポッケのふくろ

いっき

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一 . 一 学 期 最 後 の 悲 し い 出 来 事

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 一学期最後の日、僕のクラス三年ニ組は深い悲しみにつつまれていた。
 クラスで飼っていたジャンガリアンハムスターのポンが死んだんだ。昨日まではケージのフタを開けるとのんびり動きだしたおじいちゃんハムスターが、今日は何をしても動かず、冷たくなっていた。
 上田さんが泣きながら同じ生き物係の菅野君を責めた。
「菅野がエサをやり忘れるから、ポン、死んじゃったじゃん」
 菅野君は顔を真っ赤にして言う。
「上田だって、ポンをさわりすぎだったんだ。ハムスターは、あんまりさわったらストレスで死んじゃうんだよ」
「二人とも、ケンカはやめてよ」
 僕は言った。
「ポンはもう五歳で、寿命だったんだ。みんなでポンのお墓をつくってあげようよ」
 冷静にそう言ったものの、心の中では実は僕が一番悲しんでいた。
 ポンは、僕が幼稚園の時におじいちゃんに買ってもらった。おそるおそるケージに手を入れると、ヒゲを動かしながら、ポンもおそるおそる手の平に乗ってくれた。それ以来、ずっと僕の親友だったんだ。いなくなるなんて、考えたこともなかった。
 生き物係になって、たいくつな学校もポンと一緒なら楽しいと思って連れてきた。こんなことなら家でずっと一緒に暮らせばよかった。
 クラスのみんなで、校舎裏にポンのお墓をつくった。安らかに眠っているポンの横に、大好物だったヒマワリの種ときれいなタンポポの花をおき、みんなで手を合わせた。
 女子はみんな泣いていた。僕の友達の佐野君と生き物係の菅野君も泣いていた。
 いつもはやんちゃな原田君たちも「夏休み前なのにしんきくさくて、いやになる」とそっぽをむきながらも目に涙を浮かべていた。
でも、そんな中で、どういうわけか僕は落ち着いていられた。
「こんなにみんなから愛されて、ポンは幸せだったんだ。やっぱり、ポンを連れて来て、このクラスの一員として一緒に暮らせてよかった」
 僕は思った。
 明日から夏休みだ。他のクラスとは全くちがう悲しい表情でクラスのみんなが帰った後、僕も通知簿や図工で描いた絵、ポンの住んでいたケージの家を持って帰る。
 校舎はキラキラと明るく、花だんに咲くヒマワリは金色のタテガミをなびかせてお日さまとにらめっこしている。そんな晴れた空の下で、僕の目から雨が降り始めた。
 ヒマワリの種をほほぶくろにパンパンに詰める食いしん坊のポン。授業の間中ずっと寝ていた寝ぼすけのポン。クラスのみんなの手の平に喜んで乗る人なつっこいポン。
 とめどなく可愛いかったポンの思い出がよみがえり、僕の足は止まって、次から次へ涙があふれだした。
 ポンの家は、主人がいなくなってがらんとしている。みんなが明日からの夏休みにうきうきしている一学期最後の日が、僕にとっては今までで一番悲しい日になった。
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