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第四章 アルテミス
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「ちょっと、オリオン。早く起きなって」
「あ、あぁ……」
「もう朝陽も射してるわよ」
「すまん、もう少しだけ寝かせてくれ……」
「もう~……」
初対面のオリオンの、あれだけ怖いイメージはどこへやら。もうすっかり、彼のだらしない面が目につくようになって……私はまるで、世話女房だ。
一週間くらいは経っただろうか……この世界での生活もすっかり板についてきて、この頃では朝も私の方が早く起きる。
そして火を焚いて、朝食を一緒に摂って。私はオリオンが狩りへ出掛けるのを見送るのだ。
魚を釣ることは覚えたのだけれど。食べ物が魚ばかりでは飽きがくるし、やっぱり栄養も偏る。だから、オリオンは朝早くから狩りへ行って……私に気を遣ってか、私の目の触れない所で獲物をさばく。
そして私はその間、木の実や果物を摘んだり、薪を拾ったりする。
そんな生活を送っていた。
「まったく……狩りに出てないお前には分からんのだ。とんでもなく過酷な労働なのだぞ」
「はい、はい。分かってる。でも、毎日、早寝早起きしないと! リズムが崩れるでしょ」
私に叩き起こされたことにぶつくさと文句を言う彼をなだめる。それが、私達の毎朝になっていた。
正直、彼がこんなにも子供っぽいだなんて思っていなかった。会ったばかりの頃なんて、刺すようなその眼光を見ただけで、厳粛なその声を聞いただけで、怖くて怖くて。身が縮こまりそうだった。
それが今ではこんなに普通に会話して、世話を焼いたりなんてしてしまってる。
本当のオリオンに触れるにつれて……彼に親しみを感じて、愛しくさえ思うようになっていたのだ。
「ねぇ、オリオン」
「ん?」
「あなたって本当に……海の神、ポセイドーンの子なの?」
「ああ。何回もそう言ってるだろう」
「ふーん……」
来たばかりの頃は混乱しまくってて……何言われても真っ白になっていたけれど、今では少し冷静になって彼の言うことを受け止められるようになっていた。
もし彼の話が本当なら、私が今いるのはギリシャ神話の中の世界。そう……小さい頃、お父さんからよく聞かされていた。
ゼウスの王権のもと世界の一部を掌握する、オリンポスの十二の神々。その中の一人……海の神であるポセイドーン。
そして、そのポセイドーンの息子……彼こそが、ギリシャ神話一の狩人であるオリオン。
そんな神話、空想の中だけの話だと思っていた。だけれども……鹿の毛皮一枚だけの彼のこの格好。荒涼とした砂漠の広がる土地。お洒落な服も可愛いスイーツも……街を彩るものが何一つない、この世界。
私が今いるこの世界こそ、まるでその神話の中の世界、そのものなんだ。
でも、そうだとしたら、これから先……どうなるんだろう?
オリオン座の星座伝説には諸説ある。
一説には、ギリシャ神話一の狩人だったオリオンは、その力を自慢するようになった。その様子を見かねた神は、彼を懲らしめるためにサソリを放った。そしてオリオンは、そのサソリに刺されて命を落とした……。
その説を思い出して……私は思わず目を瞑って首を振った。
そんなの嫌だ! オリオンがそんな目に遭うなんて……命を落として私の前から消えるだなんて。
でも……
私は改めてオリオンを見た。
彫りの深いその顔は紛れもなく美青年で、筋肉が隆々としたその体は逞しくて。ギリシャ神話一の狩人……その肩書きも信じることができる。
だがしかし、オリオンはそんな肩書きをおごったり、自慢したりなんてしていない。狩人としての腕は確かかも知れないけれど、優しくて温かくて……私は知っている。彼は、狩りの後は必ず、自分が殺めた動物に黙祷を捧げているんだ。
そんな人が、女神の怒りを買うほどにおごり高ぶるなんて、私には思えなかった。
じゃあ……私はさらに思い出す。
私の覚えているもう一つの説では……
「セナ。何を百面相しているのだ?」
幼い頃のお話を思い出していた私に、オリオンの厳粛な声が向けられた。
一緒にいるうちに、彼は私のことを下の名前……「セナ」って呼んでくれるようになっていた。
それは本当に自然な流れで。改めて自己紹介した覚えもなかったけれど、一緒に過ごすうちにいつの間にかそうなっていた。そして、私も彼のことを「オリオン」って、前よりもずっと親しみを込めて呼ぶようになっていたんだ。
でも……それはそうと。
「百面相って、何よ。人の気も知らないで」
私は頬を膨らませた。
だって、私はあなたの未来を憂いてこんなに色々と考えを巡らせているのに……。
「何を怒ってるんだ、お前は?」
「別に」
眉間に皺を寄せるオリオンに、私も不機嫌に答える。すると、彼は深く溜息を吐いた。
「まぁ、いい。セナの機嫌など気にしている場合ではない。狩りに出かけてくる」
オリオンはおもむろに立ち上がろうとして……
「待って!」
私は思わず、そんな彼を止めた。
「何だ、セナ?」
「今日は私も……連れて行って」
私はすがるようにオリオンの腕を掴んだ。
すると彼は……さらに顔に皺を寄せ、怪訝そうに私を睨んだ。
「どうしたんだ、急に? お前は動物を殺めるのが嫌なのだろう?」
「でも、あなたと一緒に暮らすのなら慣れないといけないし。それに……」
そこまで話して涙ぐむ私に……彼はすっと目を閉じて。
「分かった。勝手にしろ」
いつも通り、無愛想に言い放った。
私には、どんな気候なんだか未だにつかめていなかったんだけど……この世界には荒涼と広がる砂漠地域と、まるでジャングルのように鬱蒼と木や草の生い茂る地域があるようで。
狩りは当然、ジャングルの方で行う。
オリオンは裸足のくせに、慣れているかのようにずんずんと、そのジャングルの中を突き進んで行って。その手に重い弓と矢を持っているなんて、信じられないくらいで。
「いたっ! オリオン、ちょっと待ってよ……」
日中に彼と出歩くなんて魚釣りの日以来のことだったけれど、そんな感傷に浸っている場合でなく……私はただ、オリオンに付いて行くのが精一杯だった。
人間離れした動きをするオリオンに、息を切らしながら必死で付いて行って……だがしかし、彼は急に立ち止まって茂みの裏に隠れた。
「え、オリオン?」
「しっ!」
オリオンは私の口を塞いだ。
その茂みから見えたのは二匹の鹿だった。
それも大きい鹿と小さい鹿……母子なのだろうか。その、子鹿の顔をペロペロと舐めている母鹿に向かって、オリオンがギリギリと弓を引く……!
「ちょっと……やめてよ! お母さんが死んじゃったらあの子鹿、どうやって生きていくのよ!」
思わず……自分の感情を堪えることができずに叫んでしまって。鹿は母子ともにこちらを見て、私達に気付いた。
「たわけ! お前、何を叫んで……」
オリオンがそう叫ぶやいなや、その鹿の母子は木々の間をすり抜けて、力の限り疾走した。
「こら! くそ……」
「ちょっと、待ってよぉ!」
オリオンは鹿を追って走り出して。私もそんな彼を追った。必死に走って追ったのだけれど……彼の速いこと、速いこと。
(あいつ……私を一緒に連れて行こうという気がないな)
息を切らしながら、そんなことを思った。
しかし、不思議なことに私はオリオンを見失うことはなく、辛うじてだけれど彼の足並みに付いてはいけて。
もしかしたら、私が迷子にならないように……少しは合わせてくれているのかも知れなかった。
結局、鹿の母子を見失って……森の中の広場に出ると、オリオンは鋭い眼光を私に向けた。
「お前……何のつもりだ! 狩りの邪魔をするのなら、付いて来るな!」
「だ……だって……」
ずっと全力で走っていた私は、汗でビショビショ、息も切れ切れで……
呼吸を整えるのに、暫しの時間を要した。
「あの鹿、親子だったじゃない!」
「それがどうした?」
「だから……お母さんを殺しちゃったら、あの子鹿、どうやって生きていくのよ!」
私は力の限り怒鳴って、オリオンを睨みつけた。
オリオンは初めて会った時のような、恐ろしい……刺すような眼光を瞳に灯して私を睨んだ。でも、私は負けなかった。
だって、このことだけは絶対に譲れない。お母さんがいなくなってしまった後の子鹿の気持ち、私は分かるんだもの。
そう……考えるだけで心が痛くて、苦しくって仕方がない。
だから私は絶対に目を離さずに、彼を睨み続けたんだ。
「……下らない。残された獣のことなど、考えるな」
オリオンは私から目を逸らし、呟くように言った。でも、私は食い下がる。
「違う。オリオン……あなたの考えていることは。獣も、私達と同じ感情を持っているの。あなたは……好き勝手に動物を殺しているわけじゃないことは私も知っている。殺した後には必ず黙祷を捧げていることも。でも……お願い。子から親を奪うことだけは、やめてあげて」
懇願する私の目からは熱い涙が溢れ出して、オリオンの厳つい顔が滲んで揺れた。でも……それでも私は彼を睨み続けた。
分かって欲しかった、私のこの想いを。オリオンにも……いや、オリオンだからこそ。
だって……厳しいけれど優しくて温かい彼は、何処か私のお父さんと重なるんだから。
私は体全体が熱くなって……オリオンの腕を掴んで、じっと彼の顔を見つめた。
彼は眉をひそめ、困惑したような表情を浮かべたけれど。
やがて、諦めたように大きな溜息を吐いた。
「……お前は強情だな。分かった。親子はもう、狩らぬ」
「本当?」
オリオンから目を離さず尋ねた。
「ああ。お前がそんなに必死で言うのに逆らって狩ったところで、肉が美味くも感じられんだろうからな」
「よかった……ありがとう」
「別に、礼を言うことでもないだろう」
照れ隠しなのか何なのか、オリオンは不貞腐れてそっぽを向いたけれど……
私は嬉しかった。真剣に話したことを彼が受け止めて、ちゃんと聞き入れてくれて。
だから、思わず私の顔が綻んだ。
「何を笑っているのだ?」
オリオンはまた、怪訝そうに私を見たけれど。
「ううん。何でもない」
私はそんな彼に、目を細めた。
「それはそうと、今日の飯はどうするのだ? 鹿を取り逃がしたし、獲物はないぞ」
「そ……そうね。今から頑張って、魚を釣る……とか?」
「なら、こうしている場合ではない。一刻も早く戻らないと、日が暮れるぞ」
気がつけばいつの間にやら、空は薄っすらと赤みがかっていて。本当に、急がなければ暗くなりそうだった。
「そうね。急いで戻りましょう」
二人して、来た道を戻る。私はどこを通ったかなんて全然覚えていなかったんだけど、オリオンは迷わずに突き進んで。私はただ、ひたすらに付いて行った。
足元に気をつけながら、森の中を歩いていた時だった。
「あれ? あの子達……」
私達の逃した母子鹿が並んで歩いていた。木々や蔓なんかを縫って歩く二頭は、何だか目的地に向かって進んでいるように見えて……
「何処に向かっているんだろう?」
私はその二頭が気になって、付いて行った。
「こら! 勝手なことをするな」
オリオンはまた、不機嫌に怒鳴ったけど。
「いいじゃん。気になるんだもの」
私は母子鹿を追って……オリオンも渋々、彼らを追う私に付いて来た。
鹿は森の奥の泉に辿り着き、二匹してその水で喉を潤していた。
その時にはもう、空を夕陽が真っ赤に染めて……泉もそれを反射して、オレンジ色にキラキラと輝いていた。
そして、その夕陽の少し上。ほんのりと藍色に染まっている空には、美しい……白色に輝く三日月が昇りかけていて。
「わぁ。綺麗……」
私は思わず、煌びやかさと静けさの共存した、その神秘的な美しさに見惚れた。
「お前……勝手なことはするなと言っているだろう」
「あら? でも、そんな私に付いてきたのも、あなたの勝手じゃない?」
私達は鹿に気付かれないよう、ひそひそとそんな言い合いをしていた。
そんな時だった。泉に、透き通るほどに美しい女性が現れたのは。
「あれ……誰?」
金色の長い髪に、吸い込まれるような碧い瞳。そして……白く透き通るような肌をした彼女は、翡翠色をしたシルクの衣装を身に纏っていて。そっとその素足で泉から上がった。
母子鹿はそんな彼女に逃げる様子もなく、子鹿はそっと近づいて。
見惚れるほどに綺麗な微笑みを浮かべて屈んだ彼女は子鹿を優しく抱いて……まるで美しい自然の息吹と一体となっているようだった。
オリオンが制したような気がしたけれど……私は思わず、茂みから出て彼女の前に立った。
「あなたは誰……?」
会話をして……できれば親しくなりたかった。
だって、私は迷い込んだこの世界では、今まで人間はオリオンしかいなくって。まさか、こんなに綺麗な女性がいるとは思っていなくて……少しだけでもいい。お話をしたかったんだ。
すると、彼女もまるで意外なように、碧い瞳の目を丸くして私を見た。
「あなたは……」
「私はセナ。異世界からこの世界に迷い込んで……オリオンと一緒に暮らしているの」
私が言うと、オリオンも仕方なく観念したように、隠れていた茂みの裏から出てきた。
すると彼女はさらに意外そうな顔をした。
「えっ、オリオン。あなたが、この娘を?」
「えっ……」
今度は私が驚いた。
彼女のその反応……まさか、二人は知り合い?
しかし、オリオンはブスッとしてそっぽを向いて。そんな彼と私を交互に見た彼女は、丸くなっていた目を細めた。
「セナ。オリオンは、あなたのことをいたく気に入っているみたいよ」
「えっ?」
状況をよく飲み込めずに首を傾げる私に、彼女はにっこりと微笑んだ。
「私は、アルテミス」
「アルテミス……」
「ええ。月の女神よ」
アルテミス……その名前も、幼い頃によく聞いていた。
アポロン神の妹で、月の女神……それと同時に狩猟の女神でもある。
オリオンは狩猟の女神アルテミスと一緒に狩りをするようになった。いつしかアルテミスはオリオンに惹かれるになり……それを聞いた兄のアポロンは止めるよう言ったが、彼女は従わなかった。
だから、アポロンは一計を講じて、アルテミスの放つ矢でオリオンを射殺すよう仕組んだ。
自らの手でオリオンを殺してしまったアルテミスはひどく嘆き悲しみ……父であるゼウス神に訴え、オリオンを空の星座にした。
これがギリシャ神話での、オリオンにまつわるもう一つの説。
その説を思い出した途端、私の顔からはサァっと血の気が引いた。
このアルテミスが、オリオンを射殺す女性……そんなの、嫌だ。
だってオリオンは、この世界で私を救ってくれた。それに、怖くて粗野で無骨だけれど……でも実は、優しくて温かくて。
彼がこのアルテミスの手にかかって殺される。そんなことを考えただけで、まるで身を引き裂かれるように辛かったんだ。
しかし、そんな私の心の内に構うことなく……顔に深く刻まれた皺を寄せて、オリオンはアルテミスに尋ねた。
「アルテミス。お前、今はこんな所に住んでいるのか?」
「ええ、そうよ。私はこの子達……鹿とかウサギとか、弱いけれど優しくて温かい動物達と一緒に暮らしているの」
にっこりと微笑むアルテミスを、オリオンは睨んで……深く溜息を吐いた。
「狩猟の女神が……そんなことでは、形無しだな」
「あら、狩猟の女神? そんなこと……言われていたこともあるけど。もう、狩りなんてやめたのよ。こんなに可愛い動物達を殺したくないし。あなたも知ってるでしょ?」
えっ……どういうこと?
狩猟の女神が狩りをやめた……動物を殺したくないから?
いや、それよりも何よりも……この二人って一体、どういう関係なのよ!?
オリオンとアルテミス……その二人の会話の内容に理解が追いつかず、私はひたすら混乱しながら聞いていた。
「ふん。狩猟を捨てたお前なぞに用はない。さっさと立ち去れ」
オリオンがぶっきら棒にそう言うと、アルテミスはクスッと笑った。
「あら、昔の恋人に対して、その言い草はないんじゃない? オリオン」
「えっ……」
彼女のその言葉に……私は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
えーー! オリオンとアルテミスが……恋人だった!?
粗野で無骨でぶっきら棒なオリオンと、こんなに綺麗で素敵な女神様が?
そりゃあ、オリオンも優しくて温かくて……可愛いところもあるけれど。私には俄かに信じがたかった。
「所詮は昔話だ。もう、お前になぞ興味はない。行くぞ、セナ」
オリオンは不機嫌に踵を返した。
「えっ、でも……」
そんな二人の様子に狼狽えていると……アルテミスは私を見てにっこりと笑った。
「セナさん。お茶を用意しますし、いつでも、私とお話しましょうね。ずっとオリオンと一緒だと、息も詰まるでしょうし」
「え、ええ……」
そんな私達に、オリオンはさらに不機嫌そうに言った。
「セナ! 置いて行くぞ」
「あ……ちょっと、オリオン。待ってよ!」
ムスッとして立ち去る彼を、私は必死で追いかけた。オレンジ色の夕焼け空は薄っすらと紺色に染まり始めていた。
『グーーー……』
もう何度目だろう……オリオンのお腹から鳴るその音に、私は眉をひそめた。
「もう……オリオン。うるさい!」
そんな私に、彼は苛立った声を上げた。
「お前……誰の所為で! 明日は絶対に連れて行かんからな」
「いいもん。やっぱり私には、狩りなんて向かないから」
「……ったく」
そう言って彼は、ゴロンと寝返りをうった。
結局、その日の晩飯は蓄えていた燻製の肉と木の実の残りで乗り切った。私の腹はそれでも充分に満たされたんだけれど、オリオンはそうはいかなかったらしい。
腹が満たされない彼は、今日は不機嫌にさっさと寝床についたのだけれど……今、私の隣で寝ているのは、さながら腹をペコペコに空かせた狼だ。ずっとグーグーお腹を鳴らして、まるで取って食われそうで。でもそんな彼は何だか可笑しくて可愛くて、私の顔は自然と綻んだ。
でも、食われるといえば……
私はそっと、隣のオリオンを見た。
一緒に住んでいるのに、彼は私には一切、手を出さない。いや、それは私にとってはすごくありがたいんだけど……私に全く興味がないようにも思える。
昨日までは、私に……というか女性全般に興味がないんだと思っていたんだけれど、あのアルテミスとは恋人同士だったんだよな。
それって、私がアルテミスに比べて魅力がないから?
私は子供だし……そりゃあまぁ、昔から可愛いとは言われてきて、男子からも何度も告られてきたけれど、アルテミスのあの美しさに比べたら全然、見劣るし。
そんなことを考えていたら、何だか私の中ではモヤモヤとしたものが渦巻いていた。
こんな気持ち、初めてだ。今までは火の粉を振り払うように男子からの告りを断ってきたのに……今の私はオリオンから相手にされないのが悔しい。
(あ~、もう!)
整理もつかないそんな気持ちに苛立って、私もオリオンと反対方向に寝返りを打った。
翌朝になってもオリオンの機嫌は直らず、仏頂面だった。
「お前のその肉もよこせ。これだけじゃ、狩りで体が動けん」
「何、言ってるのよ。私の食い分がなくなるでしょ」
「お前は今日は動かんでいい。ここでずっと寝ていろ」
「もう……」
私がか弱い女の子だということを分かっていないようなオリオンに、渋々と燻製の肉を渡した。食料がないのは私の所為なんだけど……何だか彼の苛立ちは、子供っぽい感情を含んでいるような気がする。
「狩りに出る」
その肉をさっさと口に放り込み、彼はやっぱりムスッとした顔で洞窟を出て行った。
*
「お腹……空いたなぁ」
もうそろそろお昼。
燻製にしていた肉は朝に全部、オリオンが食べ尽くしてしまったし。数少ない木の実を齧りながら、私はぶつくさ呟いていた。
全く……あいつ、私を女だと思ってない。食べ物を取り上げられるし、今まで男からこんな仕打ちを受けたことはなかった。
だけど……私はふと、考える。
今まで私が、男からされてきた扱いって?
誰も彼も、私のご機嫌を伺って、変に優しくしてきて。
だけど、そいつらの考えていることなんて……ただ、一つ。私と付き合って、あわよくばヤリたいって。それだけだった。
そんな男達に比べたら、オリオンは全ての言動に嘘はないし正直だ。最初は怖くて何考えてるか分からなかったけれど、実のところはその言動の通りのことしか考えていない。一緒に暮らしていて、そのことはよく分かっていた。
だけれども一つだけ、よく分からないことがある。それは、私には全く興味もなさげなのに、私を置いてくれて、一緒に暮らしてくれていること。
まぁそりゃあ、いくら奴でも、異世界から来て怖がっている女子を無下に追い出す気にはならないのかも知れないけど。
そう言えば……私はアルテミスの言ってたことを思い出した。
「オリオンは、あなたのことをいたく気に入ってるみたいよ」
彼女はそう、言っていた。
あれって、どういう意味だったんだろう?
オリオンが私を気に入ってる……少なくとも、私は彼の言動にそんな素振りを感じない。
でも、彼の元恋人でないと分からない何かがあるんだろうか?
そんなことを考えていたら、彼女……アルテミスのことが気になって。会って話をしたくなった。
彼女は帰り際、いつでもお話をしましょうって言ってくれた。じゃあ……今からでも。昨日のあの場所に行ったら会えるのかな?
私は思わず洞窟を出て、朧げな記憶を頼りにアルテミスに会った泉に向かった。
森の中を、昨日の帰り道を辿りながら歩いた。オリオンは全然迷わずに進んでいたけれど、私は茂みをガサゴソとする音や鳥の鳴き声なんかに一々、ビクッとなって。
「やっぱり……じっとしておくべきだったかなぁ」
森の中で一人、不安になった。
考えてみたら、昼間とはいえ武器も何も持ってきていなくって。狼か……猛獣なんかに襲われたら一たまりもない。
「引き返そっか……」
何をしているのか分からないけれど。取り敢えず、今来た道を帰ろうとした時だった。
私の体はビクッと強張った。
(何……?)
引き返す先の茂みがガサゴソと動いていて。
(何か、いる?)
正体の分からないそれに、私の顔からはさぁっと血の気が引いた。
『ガサッ……』
「きゃっ!」
茂みから飛び出したそれに一瞬、目を瞑った。
けれども……恐る恐る、目を開けて。真っ先に目に飛び込んできたその小動物に、私の顔は思わず綻んだ。
「まぁ……可愛い!」
それは目が大きく、くりっと輝かせた可愛い野ウサギだったのだ。
その野ウサギは鼻をひくひくさせて、私の方をうかがうかのようにこちらを見て。すぐに方向を変えて獣道を走って行った。
「あ、ちょっと。待って!」
私は思わず、野ウサギを追いかけた。
野ウサギってもっとすばしっこいかと思っていたけれど、案外、私でも付いて行けた。
野ウサギが案内してくれているような気がする……私は何だか、そう思ってしまうほどだった。
「え、ここって……」
野ウサギを追って着いた先は、あの綺麗な泉だった。そう……昨日、アルテミスと会ったあの泉。
野ウサギは、泉に口を付けてその水を飲んでいた。
茫然として泉を見ていると……
「あら、セナさん」
背後から声を掛けられた。
振り返って目に入ったのは、金髪に透き通るような白い肌。吸い込まれるような碧い瞳……。
「アルテミス……」
私がまた会って……オリオンのことを色々と聞きたいと思っていた、その女神だった。
*
アルテミスに案内されたのは森の中の小屋で……それは外装内装ともに、この世界の森の中にあるとは思えないほどにアンティークでお洒落だった。
「ハーブティーでいいかしら」
「あっ……ありがとうございます」
ハーブティーなんて、この世界にもあったんだ。それは、小さなカップに注がれて、アルテミスが私のもとに運んでくれた。
いつもオリオンと一緒に飲食していたのはもっと原始的な肉とか魚とか……沸かした水とかだったので、久しぶりに匂うその香りはとても新鮮だった。
「それで……オリオンの話かしら?」
「えっ……」
「あなた。今日、早速来てくれたのは、オリオンについて聞きたいことがあるんでしょ?」
「え、えぇ……」
アルテミスには、私の考えていることはお見通しのようだ。
そして、目を細める彼女は美しく、キラキラと輝いているように見えて。私はドキドキして、タジタジだった。
驚いた……少し話すだけで、こんなにドキドキする女の人がいるだなんて。流石は女神様、というべきなのかも知れない。
私はおずおずと口を開いた。
「あの……昨日、言って下さいましたよね」
「えっ?」
「オリオンは、私をいたく気に入ってるって。その……あれはどういう意味なんでしょうか?」
ちょっと唐突すぎるかも知れないのだけれど……私の口からは、一番気になっている疑問が出た。
すると、彼女はふわっと笑った。
「何だ、そんなこと。そのまんまの意味よ」
「いや、そのまんまの意味って……彼が私のことを気に入ってくれているようには見えないんですけど」
そう……オリオンの私に対する態度からは、どうも気に入っているという言葉は結びつかなかった。
しかし、アルテミスは碧い瞳の目をニーっと横に細めた。
「あいつ……オリオンは、猛獣よ」
「も……猛獣!?」
その言葉に私は目を丸くした。
「そう。触れたら噛み付く。そして……バラバラにする。本来なら、あいつに会った時点であなたもただじゃあすまないわよ」
「ただじゃあすまないって……」
私はその言葉に震え上がった。
するとアルテミスは、少し顔を曇らせた。
「オリオンはね、自分以外を信じていないの。昔……ちょっと酷い目に合って、それからなんだけどね。だから、自分に近づく奴には絶対に心を許さないし、追い払うか……最悪、殺してしまうこともあるの。でもね、あなたのことは何も言わずに側に置いて、一緒に暮らしているでしょ?」
「それは……」
私は呟いて……思い出した。初めて会った時、狼達から助けてくれた時の、オリオンのあの瞳。まるで私を突き刺すように鋭いあの眼光は未だに忘れることができず、恐ろしくて。私はブルッと身震いをした。
しかし、それ以上に。私は気になったことがあった。
「あの……酷い目って。オリオンは一体……過去に何があったんですか?」
するとアルテミスはさらに顔を曇らせて、遠い目をした。
「そうね。これからも、あいつと一緒に暮らしていくのなら……あなたに話しておく必要はあるわよね」
そして……彼女はゆっくりと話し始めた。
「あれは、私がまだ、オリオンと一緒に暮らしていた時のことだった……」
「ちょっと、オリオン。早く起きなって」
「あ、あぁ……」
「もう朝陽も射してるわよ」
「すまん、もう少しだけ寝かせてくれ……」
「もう~……」
初対面のオリオンの、あれだけ怖いイメージはどこへやら。もうすっかり、彼のだらしない面が目につくようになって……私はまるで、世話女房だ。
一週間くらいは経っただろうか……この世界での生活もすっかり板についてきて、この頃では朝も私の方が早く起きる。
そして火を焚いて、朝食を一緒に摂って。私はオリオンが狩りへ出掛けるのを見送るのだ。
魚を釣ることは覚えたのだけれど。食べ物が魚ばかりでは飽きがくるし、やっぱり栄養も偏る。だから、オリオンは朝早くから狩りへ行って……私に気を遣ってか、私の目の触れない所で獲物をさばく。
そして私はその間、木の実や果物を摘んだり、薪を拾ったりする。
そんな生活を送っていた。
「まったく……狩りに出てないお前には分からんのだ。とんでもなく過酷な労働なのだぞ」
「はい、はい。分かってる。でも、毎日、早寝早起きしないと! リズムが崩れるでしょ」
私に叩き起こされたことにぶつくさと文句を言う彼をなだめる。それが、私達の毎朝になっていた。
正直、彼がこんなにも子供っぽいだなんて思っていなかった。会ったばかりの頃なんて、刺すようなその眼光を見ただけで、厳粛なその声を聞いただけで、怖くて怖くて。身が縮こまりそうだった。
それが今ではこんなに普通に会話して、世話を焼いたりなんてしてしまってる。
本当のオリオンに触れるにつれて……彼に親しみを感じて、愛しくさえ思うようになっていたのだ。
「ねぇ、オリオン」
「ん?」
「あなたって本当に……海の神、ポセイドーンの子なの?」
「ああ。何回もそう言ってるだろう」
「ふーん……」
来たばかりの頃は混乱しまくってて……何言われても真っ白になっていたけれど、今では少し冷静になって彼の言うことを受け止められるようになっていた。
もし彼の話が本当なら、私が今いるのはギリシャ神話の中の世界。そう……小さい頃、お父さんからよく聞かされていた。
ゼウスの王権のもと世界の一部を掌握する、オリンポスの十二の神々。その中の一人……海の神であるポセイドーン。
そして、そのポセイドーンの息子……彼こそが、ギリシャ神話一の狩人であるオリオン。
そんな神話、空想の中だけの話だと思っていた。だけれども……鹿の毛皮一枚だけの彼のこの格好。荒涼とした砂漠の広がる土地。お洒落な服も可愛いスイーツも……街を彩るものが何一つない、この世界。
私が今いるこの世界こそ、まるでその神話の中の世界、そのものなんだ。
でも、そうだとしたら、これから先……どうなるんだろう?
オリオン座の星座伝説には諸説ある。
一説には、ギリシャ神話一の狩人だったオリオンは、その力を自慢するようになった。その様子を見かねた神は、彼を懲らしめるためにサソリを放った。そしてオリオンは、そのサソリに刺されて命を落とした……。
その説を思い出して……私は思わず目を瞑って首を振った。
そんなの嫌だ! オリオンがそんな目に遭うなんて……命を落として私の前から消えるだなんて。
でも……
私は改めてオリオンを見た。
彫りの深いその顔は紛れもなく美青年で、筋肉が隆々としたその体は逞しくて。ギリシャ神話一の狩人……その肩書きも信じることができる。
だがしかし、オリオンはそんな肩書きをおごったり、自慢したりなんてしていない。狩人としての腕は確かかも知れないけれど、優しくて温かくて……私は知っている。彼は、狩りの後は必ず、自分が殺めた動物に黙祷を捧げているんだ。
そんな人が、女神の怒りを買うほどにおごり高ぶるなんて、私には思えなかった。
じゃあ……私はさらに思い出す。
私の覚えているもう一つの説では……
「セナ。何を百面相しているのだ?」
幼い頃のお話を思い出していた私に、オリオンの厳粛な声が向けられた。
一緒にいるうちに、彼は私のことを下の名前……「セナ」って呼んでくれるようになっていた。
それは本当に自然な流れで。改めて自己紹介した覚えもなかったけれど、一緒に過ごすうちにいつの間にかそうなっていた。そして、私も彼のことを「オリオン」って、前よりもずっと親しみを込めて呼ぶようになっていたんだ。
でも……それはそうと。
「百面相って、何よ。人の気も知らないで」
私は頬を膨らませた。
だって、私はあなたの未来を憂いてこんなに色々と考えを巡らせているのに……。
「何を怒ってるんだ、お前は?」
「別に」
眉間に皺を寄せるオリオンに、私も不機嫌に答える。すると、彼は深く溜息を吐いた。
「まぁ、いい。セナの機嫌など気にしている場合ではない。狩りに出かけてくる」
オリオンはおもむろに立ち上がろうとして……
「待って!」
私は思わず、そんな彼を止めた。
「何だ、セナ?」
「今日は私も……連れて行って」
私はすがるようにオリオンの腕を掴んだ。
すると彼は……さらに顔に皺を寄せ、怪訝そうに私を睨んだ。
「どうしたんだ、急に? お前は動物を殺めるのが嫌なのだろう?」
「でも、あなたと一緒に暮らすのなら慣れないといけないし。それに……」
そこまで話して涙ぐむ私に……彼はすっと目を閉じて。
「分かった。勝手にしろ」
いつも通り、無愛想に言い放った。
私には、どんな気候なんだか未だにつかめていなかったんだけど……この世界には荒涼と広がる砂漠地域と、まるでジャングルのように鬱蒼と木や草の生い茂る地域があるようで。
狩りは当然、ジャングルの方で行う。
オリオンは裸足のくせに、慣れているかのようにずんずんと、そのジャングルの中を突き進んで行って。その手に重い弓と矢を持っているなんて、信じられないくらいで。
「いたっ! オリオン、ちょっと待ってよ……」
日中に彼と出歩くなんて魚釣りの日以来のことだったけれど、そんな感傷に浸っている場合でなく……私はただ、オリオンに付いて行くのが精一杯だった。
人間離れした動きをするオリオンに、息を切らしながら必死で付いて行って……だがしかし、彼は急に立ち止まって茂みの裏に隠れた。
「え、オリオン?」
「しっ!」
オリオンは私の口を塞いだ。
その茂みから見えたのは二匹の鹿だった。
それも大きい鹿と小さい鹿……母子なのだろうか。その、子鹿の顔をペロペロと舐めている母鹿に向かって、オリオンがギリギリと弓を引く……!
「ちょっと……やめてよ! お母さんが死んじゃったらあの子鹿、どうやって生きていくのよ!」
思わず……自分の感情を堪えることができずに叫んでしまって。鹿は母子ともにこちらを見て、私達に気付いた。
「たわけ! お前、何を叫んで……」
オリオンがそう叫ぶやいなや、その鹿の母子は木々の間をすり抜けて、力の限り疾走した。
「こら! くそ……」
「ちょっと、待ってよぉ!」
オリオンは鹿を追って走り出して。私もそんな彼を追った。必死に走って追ったのだけれど……彼の速いこと、速いこと。
(あいつ……私を一緒に連れて行こうという気がないな)
息を切らしながら、そんなことを思った。
しかし、不思議なことに私はオリオンを見失うことはなく、辛うじてだけれど彼の足並みに付いてはいけて。
もしかしたら、私が迷子にならないように……少しは合わせてくれているのかも知れなかった。
結局、鹿の母子を見失って……森の中の広場に出ると、オリオンは鋭い眼光を私に向けた。
「お前……何のつもりだ! 狩りの邪魔をするのなら、付いて来るな!」
「だ……だって……」
ずっと全力で走っていた私は、汗でビショビショ、息も切れ切れで……
呼吸を整えるのに、暫しの時間を要した。
「あの鹿、親子だったじゃない!」
「それがどうした?」
「だから……お母さんを殺しちゃったら、あの子鹿、どうやって生きていくのよ!」
私は力の限り怒鳴って、オリオンを睨みつけた。
オリオンは初めて会った時のような、恐ろしい……刺すような眼光を瞳に灯して私を睨んだ。でも、私は負けなかった。
だって、このことだけは絶対に譲れない。お母さんがいなくなってしまった後の子鹿の気持ち、私は分かるんだもの。
そう……考えるだけで心が痛くて、苦しくって仕方がない。
だから私は絶対に目を離さずに、彼を睨み続けたんだ。
「……下らない。残された獣のことなど、考えるな」
オリオンは私から目を逸らし、呟くように言った。でも、私は食い下がる。
「違う。オリオン……あなたの考えていることは。獣も、私達と同じ感情を持っているの。あなたは……好き勝手に動物を殺しているわけじゃないことは私も知っている。殺した後には必ず黙祷を捧げていることも。でも……お願い。子から親を奪うことだけは、やめてあげて」
懇願する私の目からは熱い涙が溢れ出して、オリオンの厳つい顔が滲んで揺れた。でも……それでも私は彼を睨み続けた。
分かって欲しかった、私のこの想いを。オリオンにも……いや、オリオンだからこそ。
だって……厳しいけれど優しくて温かい彼は、何処か私のお父さんと重なるんだから。
私は体全体が熱くなって……オリオンの腕を掴んで、じっと彼の顔を見つめた。
彼は眉をひそめ、困惑したような表情を浮かべたけれど。
やがて、諦めたように大きな溜息を吐いた。
「……お前は強情だな。分かった。親子はもう、狩らぬ」
「本当?」
オリオンから目を離さず尋ねた。
「ああ。お前がそんなに必死で言うのに逆らって狩ったところで、肉が美味くも感じられんだろうからな」
「よかった……ありがとう」
「別に、礼を言うことでもないだろう」
照れ隠しなのか何なのか、オリオンは不貞腐れてそっぽを向いたけれど……
私は嬉しかった。真剣に話したことを彼が受け止めて、ちゃんと聞き入れてくれて。
だから、思わず私の顔が綻んだ。
「何を笑っているのだ?」
オリオンはまた、怪訝そうに私を見たけれど。
「ううん。何でもない」
私はそんな彼に、目を細めた。
「それはそうと、今日の飯はどうするのだ? 鹿を取り逃がしたし、獲物はないぞ」
「そ……そうね。今から頑張って、魚を釣る……とか?」
「なら、こうしている場合ではない。一刻も早く戻らないと、日が暮れるぞ」
気がつけばいつの間にやら、空は薄っすらと赤みがかっていて。本当に、急がなければ暗くなりそうだった。
「そうね。急いで戻りましょう」
二人して、来た道を戻る。私はどこを通ったかなんて全然覚えていなかったんだけど、オリオンは迷わずに突き進んで。私はただ、ひたすらに付いて行った。
足元に気をつけながら、森の中を歩いていた時だった。
「あれ? あの子達……」
私達の逃した母子鹿が並んで歩いていた。木々や蔓なんかを縫って歩く二頭は、何だか目的地に向かって進んでいるように見えて……
「何処に向かっているんだろう?」
私はその二頭が気になって、付いて行った。
「こら! 勝手なことをするな」
オリオンはまた、不機嫌に怒鳴ったけど。
「いいじゃん。気になるんだもの」
私は母子鹿を追って……オリオンも渋々、彼らを追う私に付いて来た。
鹿は森の奥の泉に辿り着き、二匹してその水で喉を潤していた。
その時にはもう、空を夕陽が真っ赤に染めて……泉もそれを反射して、オレンジ色にキラキラと輝いていた。
そして、その夕陽の少し上。ほんのりと藍色に染まっている空には、美しい……白色に輝く三日月が昇りかけていて。
「わぁ。綺麗……」
私は思わず、煌びやかさと静けさの共存した、その神秘的な美しさに見惚れた。
「お前……勝手なことはするなと言っているだろう」
「あら? でも、そんな私に付いてきたのも、あなたの勝手じゃない?」
私達は鹿に気付かれないよう、ひそひそとそんな言い合いをしていた。
そんな時だった。泉に、透き通るほどに美しい女性が現れたのは。
「あれ……誰?」
金色の長い髪に、吸い込まれるような碧い瞳。そして……白く透き通るような肌をした彼女は、翡翠色をしたシルクの衣装を身に纏っていて。そっとその素足で泉から上がった。
母子鹿はそんな彼女に逃げる様子もなく、子鹿はそっと近づいて。
見惚れるほどに綺麗な微笑みを浮かべて屈んだ彼女は子鹿を優しく抱いて……まるで美しい自然の息吹と一体となっているようだった。
オリオンが制したような気がしたけれど……私は思わず、茂みから出て彼女の前に立った。
「あなたは誰……?」
会話をして……できれば親しくなりたかった。
だって、私は迷い込んだこの世界では、今まで人間はオリオンしかいなくって。まさか、こんなに綺麗な女性がいるとは思っていなくて……少しだけでもいい。お話をしたかったんだ。
すると、彼女もまるで意外なように、碧い瞳の目を丸くして私を見た。
「あなたは……」
「私はセナ。異世界からこの世界に迷い込んで……オリオンと一緒に暮らしているの」
私が言うと、オリオンも仕方なく観念したように、隠れていた茂みの裏から出てきた。
すると彼女はさらに意外そうな顔をした。
「えっ、オリオン。あなたが、この娘を?」
「えっ……」
今度は私が驚いた。
彼女のその反応……まさか、二人は知り合い?
しかし、オリオンはブスッとしてそっぽを向いて。そんな彼と私を交互に見た彼女は、丸くなっていた目を細めた。
「セナ。オリオンは、あなたのことをいたく気に入っているみたいよ」
「えっ?」
状況をよく飲み込めずに首を傾げる私に、彼女はにっこりと微笑んだ。
「私は、アルテミス」
「アルテミス……」
「ええ。月の女神よ」
アルテミス……その名前も、幼い頃によく聞いていた。
アポロン神の妹で、月の女神……それと同時に狩猟の女神でもある。
オリオンは狩猟の女神アルテミスと一緒に狩りをするようになった。いつしかアルテミスはオリオンに惹かれるになり……それを聞いた兄のアポロンは止めるよう言ったが、彼女は従わなかった。
だから、アポロンは一計を講じて、アルテミスの放つ矢でオリオンを射殺すよう仕組んだ。
自らの手でオリオンを殺してしまったアルテミスはひどく嘆き悲しみ……父であるゼウス神に訴え、オリオンを空の星座にした。
これがギリシャ神話での、オリオンにまつわるもう一つの説。
その説を思い出した途端、私の顔からはサァっと血の気が引いた。
このアルテミスが、オリオンを射殺す女性……そんなの、嫌だ。
だってオリオンは、この世界で私を救ってくれた。それに、怖くて粗野で無骨だけれど……でも実は、優しくて温かくて。
彼がこのアルテミスの手にかかって殺される。そんなことを考えただけで、まるで身を引き裂かれるように辛かったんだ。
しかし、そんな私の心の内に構うことなく……顔に深く刻まれた皺を寄せて、オリオンはアルテミスに尋ねた。
「アルテミス。お前、今はこんな所に住んでいるのか?」
「ええ、そうよ。私はこの子達……鹿とかウサギとか、弱いけれど優しくて温かい動物達と一緒に暮らしているの」
にっこりと微笑むアルテミスを、オリオンは睨んで……深く溜息を吐いた。
「狩猟の女神が……そんなことでは、形無しだな」
「あら、狩猟の女神? そんなこと……言われていたこともあるけど。もう、狩りなんてやめたのよ。こんなに可愛い動物達を殺したくないし。あなたも知ってるでしょ?」
えっ……どういうこと?
狩猟の女神が狩りをやめた……動物を殺したくないから?
いや、それよりも何よりも……この二人って一体、どういう関係なのよ!?
オリオンとアルテミス……その二人の会話の内容に理解が追いつかず、私はひたすら混乱しながら聞いていた。
「ふん。狩猟を捨てたお前なぞに用はない。さっさと立ち去れ」
オリオンがぶっきら棒にそう言うと、アルテミスはクスッと笑った。
「あら、昔の恋人に対して、その言い草はないんじゃない? オリオン」
「えっ……」
彼女のその言葉に……私は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
えーー! オリオンとアルテミスが……恋人だった!?
粗野で無骨でぶっきら棒なオリオンと、こんなに綺麗で素敵な女神様が?
そりゃあ、オリオンも優しくて温かくて……可愛いところもあるけれど。私には俄かに信じがたかった。
「所詮は昔話だ。もう、お前になぞ興味はない。行くぞ、セナ」
オリオンは不機嫌に踵を返した。
「えっ、でも……」
そんな二人の様子に狼狽えていると……アルテミスは私を見てにっこりと笑った。
「セナさん。お茶を用意しますし、いつでも、私とお話しましょうね。ずっとオリオンと一緒だと、息も詰まるでしょうし」
「え、ええ……」
そんな私達に、オリオンはさらに不機嫌そうに言った。
「セナ! 置いて行くぞ」
「あ……ちょっと、オリオン。待ってよ!」
ムスッとして立ち去る彼を、私は必死で追いかけた。オレンジ色の夕焼け空は薄っすらと紺色に染まり始めていた。
『グーーー……』
もう何度目だろう……オリオンのお腹から鳴るその音に、私は眉をひそめた。
「もう……オリオン。うるさい!」
そんな私に、彼は苛立った声を上げた。
「お前……誰の所為で! 明日は絶対に連れて行かんからな」
「いいもん。やっぱり私には、狩りなんて向かないから」
「……ったく」
そう言って彼は、ゴロンと寝返りをうった。
結局、その日の晩飯は蓄えていた燻製の肉と木の実の残りで乗り切った。私の腹はそれでも充分に満たされたんだけれど、オリオンはそうはいかなかったらしい。
腹が満たされない彼は、今日は不機嫌にさっさと寝床についたのだけれど……今、私の隣で寝ているのは、さながら腹をペコペコに空かせた狼だ。ずっとグーグーお腹を鳴らして、まるで取って食われそうで。でもそんな彼は何だか可笑しくて可愛くて、私の顔は自然と綻んだ。
でも、食われるといえば……
私はそっと、隣のオリオンを見た。
一緒に住んでいるのに、彼は私には一切、手を出さない。いや、それは私にとってはすごくありがたいんだけど……私に全く興味がないようにも思える。
昨日までは、私に……というか女性全般に興味がないんだと思っていたんだけれど、あのアルテミスとは恋人同士だったんだよな。
それって、私がアルテミスに比べて魅力がないから?
私は子供だし……そりゃあまぁ、昔から可愛いとは言われてきて、男子からも何度も告られてきたけれど、アルテミスのあの美しさに比べたら全然、見劣るし。
そんなことを考えていたら、何だか私の中ではモヤモヤとしたものが渦巻いていた。
こんな気持ち、初めてだ。今までは火の粉を振り払うように男子からの告りを断ってきたのに……今の私はオリオンから相手にされないのが悔しい。
(あ~、もう!)
整理もつかないそんな気持ちに苛立って、私もオリオンと反対方向に寝返りを打った。
翌朝になってもオリオンの機嫌は直らず、仏頂面だった。
「お前のその肉もよこせ。これだけじゃ、狩りで体が動けん」
「何、言ってるのよ。私の食い分がなくなるでしょ」
「お前は今日は動かんでいい。ここでずっと寝ていろ」
「もう……」
私がか弱い女の子だということを分かっていないようなオリオンに、渋々と燻製の肉を渡した。食料がないのは私の所為なんだけど……何だか彼の苛立ちは、子供っぽい感情を含んでいるような気がする。
「狩りに出る」
その肉をさっさと口に放り込み、彼はやっぱりムスッとした顔で洞窟を出て行った。
*
「お腹……空いたなぁ」
もうそろそろお昼。
燻製にしていた肉は朝に全部、オリオンが食べ尽くしてしまったし。数少ない木の実を齧りながら、私はぶつくさ呟いていた。
全く……あいつ、私を女だと思ってない。食べ物を取り上げられるし、今まで男からこんな仕打ちを受けたことはなかった。
だけど……私はふと、考える。
今まで私が、男からされてきた扱いって?
誰も彼も、私のご機嫌を伺って、変に優しくしてきて。
だけど、そいつらの考えていることなんて……ただ、一つ。私と付き合って、あわよくばヤリたいって。それだけだった。
そんな男達に比べたら、オリオンは全ての言動に嘘はないし正直だ。最初は怖くて何考えてるか分からなかったけれど、実のところはその言動の通りのことしか考えていない。一緒に暮らしていて、そのことはよく分かっていた。
だけれども一つだけ、よく分からないことがある。それは、私には全く興味もなさげなのに、私を置いてくれて、一緒に暮らしてくれていること。
まぁそりゃあ、いくら奴でも、異世界から来て怖がっている女子を無下に追い出す気にはならないのかも知れないけど。
そう言えば……私はアルテミスの言ってたことを思い出した。
「オリオンは、あなたのことをいたく気に入ってるみたいよ」
彼女はそう、言っていた。
あれって、どういう意味だったんだろう?
オリオンが私を気に入ってる……少なくとも、私は彼の言動にそんな素振りを感じない。
でも、彼の元恋人でないと分からない何かがあるんだろうか?
そんなことを考えていたら、彼女……アルテミスのことが気になって。会って話をしたくなった。
彼女は帰り際、いつでもお話をしましょうって言ってくれた。じゃあ……今からでも。昨日のあの場所に行ったら会えるのかな?
私は思わず洞窟を出て、朧げな記憶を頼りにアルテミスに会った泉に向かった。
森の中を、昨日の帰り道を辿りながら歩いた。オリオンは全然迷わずに進んでいたけれど、私は茂みをガサゴソとする音や鳥の鳴き声なんかに一々、ビクッとなって。
「やっぱり……じっとしておくべきだったかなぁ」
森の中で一人、不安になった。
考えてみたら、昼間とはいえ武器も何も持ってきていなくって。狼か……猛獣なんかに襲われたら一たまりもない。
「引き返そっか……」
何をしているのか分からないけれど。取り敢えず、今来た道を帰ろうとした時だった。
私の体はビクッと強張った。
(何……?)
引き返す先の茂みがガサゴソと動いていて。
(何か、いる?)
正体の分からないそれに、私の顔からはさぁっと血の気が引いた。
『ガサッ……』
「きゃっ!」
茂みから飛び出したそれに一瞬、目を瞑った。
けれども……恐る恐る、目を開けて。真っ先に目に飛び込んできたその小動物に、私の顔は思わず綻んだ。
「まぁ……可愛い!」
それは目が大きく、くりっと輝かせた可愛い野ウサギだったのだ。
その野ウサギは鼻をひくひくさせて、私の方をうかがうかのようにこちらを見て。すぐに方向を変えて獣道を走って行った。
「あ、ちょっと。待って!」
私は思わず、野ウサギを追いかけた。
野ウサギってもっとすばしっこいかと思っていたけれど、案外、私でも付いて行けた。
野ウサギが案内してくれているような気がする……私は何だか、そう思ってしまうほどだった。
「え、ここって……」
野ウサギを追って着いた先は、あの綺麗な泉だった。そう……昨日、アルテミスと会ったあの泉。
野ウサギは、泉に口を付けてその水を飲んでいた。
茫然として泉を見ていると……
「あら、セナさん」
背後から声を掛けられた。
振り返って目に入ったのは、金髪に透き通るような白い肌。吸い込まれるような碧い瞳……。
「アルテミス……」
私がまた会って……オリオンのことを色々と聞きたいと思っていた、その女神だった。
*
アルテミスに案内されたのは森の中の小屋で……それは外装内装ともに、この世界の森の中にあるとは思えないほどにアンティークでお洒落だった。
「ハーブティーでいいかしら」
「あっ……ありがとうございます」
ハーブティーなんて、この世界にもあったんだ。それは、小さなカップに注がれて、アルテミスが私のもとに運んでくれた。
いつもオリオンと一緒に飲食していたのはもっと原始的な肉とか魚とか……沸かした水とかだったので、久しぶりに匂うその香りはとても新鮮だった。
「それで……オリオンの話かしら?」
「えっ……」
「あなた。今日、早速来てくれたのは、オリオンについて聞きたいことがあるんでしょ?」
「え、えぇ……」
アルテミスには、私の考えていることはお見通しのようだ。
そして、目を細める彼女は美しく、キラキラと輝いているように見えて。私はドキドキして、タジタジだった。
驚いた……少し話すだけで、こんなにドキドキする女の人がいるだなんて。流石は女神様、というべきなのかも知れない。
私はおずおずと口を開いた。
「あの……昨日、言って下さいましたよね」
「えっ?」
「オリオンは、私をいたく気に入ってるって。その……あれはどういう意味なんでしょうか?」
ちょっと唐突すぎるかも知れないのだけれど……私の口からは、一番気になっている疑問が出た。
すると、彼女はふわっと笑った。
「何だ、そんなこと。そのまんまの意味よ」
「いや、そのまんまの意味って……彼が私のことを気に入ってくれているようには見えないんですけど」
そう……オリオンの私に対する態度からは、どうも気に入っているという言葉は結びつかなかった。
しかし、アルテミスは碧い瞳の目をニーっと横に細めた。
「あいつ……オリオンは、猛獣よ」
「も……猛獣!?」
その言葉に私は目を丸くした。
「そう。触れたら噛み付く。そして……バラバラにする。本来なら、あいつに会った時点であなたもただじゃあすまないわよ」
「ただじゃあすまないって……」
私はその言葉に震え上がった。
するとアルテミスは、少し顔を曇らせた。
「オリオンはね、自分以外を信じていないの。昔……ちょっと酷い目に合って、それからなんだけどね。だから、自分に近づく奴には絶対に心を許さないし、追い払うか……最悪、殺してしまうこともあるの。でもね、あなたのことは何も言わずに側に置いて、一緒に暮らしているでしょ?」
「それは……」
私は呟いて……思い出した。初めて会った時、狼達から助けてくれた時の、オリオンのあの瞳。まるで私を突き刺すように鋭いあの眼光は未だに忘れることができず、恐ろしくて。私はブルッと身震いをした。
しかし、それ以上に。私は気になったことがあった。
「あの……酷い目って。オリオンは一体……過去に何があったんですか?」
するとアルテミスはさらに顔を曇らせて、遠い目をした。
「そうね。これからも、あいつと一緒に暮らしていくのなら……あなたに話しておく必要はあるわよね」
そして……彼女はゆっくりと話し始めた。
「あれは、私がまだ、オリオンと一緒に暮らしていた時のことだった……」
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