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第二章 出会い
6.村での目覚め
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真っ暗だ。何もない。無という言葉がふさわしい。
(…………)
考えるとはどういうことだったか、感覚とはどういうものだったか。全て無くした。
いや、無くすということはどういうことだったか。もう何も感じない。何も救いがない。
後悔からの諦め。
諦めからの絶望。
絶望からの無。
そんなところにエイシェルは投げ出されていた。
(なんだ、ここは……?何もない。いや、何も認識してない。俺は死んだのか?……最期に仇を打つことは出来たが、ここで終わるのか……?いや、何か手はないのか?)
(…………)
誰かの意思、その残滓を感じる。その意思のカケラから不思議と感情が流れ込んでくる。
(そうか、お前は諦めたのか。諦めたからこんな何もないような空間に閉じこもっているのか)
(…………)
(期待、希望、信念。全てに裏切られて終わった。そんなところか)
(…………)
(……諦めたくなかった、というところか?なら……その想いぶつけてみろ)
(…………!)
(俺だってやっと親の仇をとったんだ。これからは何にも縛られず自由に生きる。お前はもう終わりかもしれないが、誰かがお前の希望や願いを持っていっても構わないんじゃないか?)
(………ぅか……)
(なんか他人事に感じないんだ。吐いて楽になっちまえ)
何もなかったはずの空間にぽつぽつと光が現れる
気づいた時にはまるで夜空の中にいるような幻想的な空間となっていた
(想いを繋げよう。この星を頼んだぞ)
(え?)
すると今度は光が溢れて辺り一面真っ白になって意識が薄れていく
(わたしの願いは……)
「うーん……ここは……?」
エイシェルは自分の家のベッドの上で覚醒した。
「おっちゃんが運んでくれたのか……?まず、普通に生きてるよな……?」
自分の身体を見回し異常がないか確認する
「よし、生命力がかなり減ってる気がするけど……それ以外はいつも通りだな。……ん?いつも通り?」
あわててお腹を確認するもいつも通りのお腹だった
一時は呼吸ができなくなるほどの蹴りを食らったにもかかわらずアザひとつないお腹がそこにはあった
「昨日のは夢だったのか……?」
釈然としないが村を歩いてみることにする
家を出ると大きなイノシシの魔物が切り分けられ配給されていた
「あれがあるってことは夢じゃないってことか」
「おぅ!エイシェル!思ったより元気そうだな!もう昼ってのになかなか起きてこなくて心配したぜ」
「おっちゃん!」
どうやら本当に夢じゃなかったらしい。
「身体の調子はどうだ?まだ多少痛むと思うが……腹に思いっきり食らってただろ?」
「俺は大丈夫だ。何故か痛みどころか傷ひとつない」
「はぁ?そんなわけあるか、結構なアザがあったはず……ないな」
エイシェルを家に送った時に一通りの怪我の具合は確認している。その時は確かにアザがあった。アザはあったものの安静にしていれば問題ないと判断したためベッドに寝かせて……後始末してたのだ……後始末の為帰っていないのだ……!!
「それよりもおっちゃんだ!おっちゃんも蹴り飛ばされてただろ!?」
「はっはっは!安心しろ。柔な鍛え方はしていない。あんなのダメージに入らんわ」
「いや、それ道具屋主人のセリフじゃないだろ……」
エイシェルはオージンの言葉に呆れながらもいつもと変わらない姿に心底安堵していた。
「……ところで、エイシェル。昨晩のことなんだが、猿の魔物を葬ったお前の魔法、ありゃ一体なんだ?」
オージンが神妙な面持ちで聞いてきた
「正直、俺にもわからないんだ……。急に声が聞こえて、あの魔法の使い方のイメージが流れ込んできて……気付いたら魔法を使ってた」
「……他に変わったことはないか?」
「他にって言ってもな……あ、窓から空を見てたらいきなり鼻とおでこをぶつけたような痛みが起きた」
「はぁ?寝ぼけてぶつけたんじゃないか?」
「いや、流石にそんなボケてねぇよ。」
いつもと変わらない綺麗な夜空を眺めていたのをよく覚えている
「……ふむ。あの魔物が言っていたことと何か関係があるのかもな……あいつ、お前を見た時"見つけた"って言ってたぜ?」
「……俺が目当て……だったってことか?2年前も……?」
「そう考えるのが自然だろうな。それに、あのイノシシに描かれていたのは恐らく魔法陣。誰かがお前にご執心なのは間違いねぇ」
「でも……なんで俺なんだ?!ただの村の狩人だぞ」
「……十中八九、昨日の力が原因だろうな」
「っ!……」
魔物襲撃の原因が自分であることにショックを隠せないエイシェル。身に覚えがなさすぎて怒りすら感じていた。
ただ、自分が原因で2度も村に迷惑をかけた事は事実だ。このまま知りませんでしたとはいかない
まず自分の力を知ることから始めなければならない。うすうす考えていた事だ。早く行動に移すことに越したことはない。
しばらくの沈黙の後、エイシェルは考え決意した。
「俺……明日村を出る」
「なんだよ突然。別にお前が悪いことしたわけじゃないだろ?」
「そうだけど、このままいたらまた魔物が来るかも知れない。そうなった時もっと被害が大きくなるのは間違いない。」
……2年前はエイシェルの両親が犠牲になった。今回はオージンが、危険な目にあった。
今回俺が逃げていたら?一歩間違えていたら村が滅んでいたかも知れない。
今後また魔族が現れるかもしれない。
そんな状態で村に居続けるのはエイシェルにとって苦痛でしかない。
村に恩返し出来ないのが心残りではあるが、エイシェルは決意した。
「まずは俺の力について知らなきゃ。その為に俺、王都に行こうと思う。王都に行けば魔法に関する情報も豊富だろうし何かわかるかも知れない」
「……理屈は分かるけどよぉ、明日出発って急すぎないか?」
「本当は今すぐにでも行きたいんだ。でもお世話になった人たちに一通り挨拶しておきたくて……だから明日に出発するよ」
「ったくよぉ……お前は昔から言い出したら他人の言うことなんざ聞かねぇからなぁ……わかったよ。明日出かけるのに必要なものあるだろ?必要なものは言え。用意しておいてやる」
「っ!!おっちゃん!ありがとう!!」
「ただし、無茶はするなよ?いつでも帰ってこい。この村がお前の家だ。」
オージンの言葉にじーんとしてしまったエイシェルであった。
これからの旅は大変そうである。
何しろヒントが何もない目標が2つあるからだ。
一つは自身の力を知ること。
二つ目は託された夢。"この世から魔法を消し去る"という目標だ。
あの場では質問時間なんて無かった。何がしたくてそんな夢を託したのかは今は分からない。
ただなんとなく、旅をすることで答えが出てくる気がした。
(…………)
考えるとはどういうことだったか、感覚とはどういうものだったか。全て無くした。
いや、無くすということはどういうことだったか。もう何も感じない。何も救いがない。
後悔からの諦め。
諦めからの絶望。
絶望からの無。
そんなところにエイシェルは投げ出されていた。
(なんだ、ここは……?何もない。いや、何も認識してない。俺は死んだのか?……最期に仇を打つことは出来たが、ここで終わるのか……?いや、何か手はないのか?)
(…………)
誰かの意思、その残滓を感じる。その意思のカケラから不思議と感情が流れ込んでくる。
(そうか、お前は諦めたのか。諦めたからこんな何もないような空間に閉じこもっているのか)
(…………)
(期待、希望、信念。全てに裏切られて終わった。そんなところか)
(…………)
(……諦めたくなかった、というところか?なら……その想いぶつけてみろ)
(…………!)
(俺だってやっと親の仇をとったんだ。これからは何にも縛られず自由に生きる。お前はもう終わりかもしれないが、誰かがお前の希望や願いを持っていっても構わないんじゃないか?)
(………ぅか……)
(なんか他人事に感じないんだ。吐いて楽になっちまえ)
何もなかったはずの空間にぽつぽつと光が現れる
気づいた時にはまるで夜空の中にいるような幻想的な空間となっていた
(想いを繋げよう。この星を頼んだぞ)
(え?)
すると今度は光が溢れて辺り一面真っ白になって意識が薄れていく
(わたしの願いは……)
「うーん……ここは……?」
エイシェルは自分の家のベッドの上で覚醒した。
「おっちゃんが運んでくれたのか……?まず、普通に生きてるよな……?」
自分の身体を見回し異常がないか確認する
「よし、生命力がかなり減ってる気がするけど……それ以外はいつも通りだな。……ん?いつも通り?」
あわててお腹を確認するもいつも通りのお腹だった
一時は呼吸ができなくなるほどの蹴りを食らったにもかかわらずアザひとつないお腹がそこにはあった
「昨日のは夢だったのか……?」
釈然としないが村を歩いてみることにする
家を出ると大きなイノシシの魔物が切り分けられ配給されていた
「あれがあるってことは夢じゃないってことか」
「おぅ!エイシェル!思ったより元気そうだな!もう昼ってのになかなか起きてこなくて心配したぜ」
「おっちゃん!」
どうやら本当に夢じゃなかったらしい。
「身体の調子はどうだ?まだ多少痛むと思うが……腹に思いっきり食らってただろ?」
「俺は大丈夫だ。何故か痛みどころか傷ひとつない」
「はぁ?そんなわけあるか、結構なアザがあったはず……ないな」
エイシェルを家に送った時に一通りの怪我の具合は確認している。その時は確かにアザがあった。アザはあったものの安静にしていれば問題ないと判断したためベッドに寝かせて……後始末してたのだ……後始末の為帰っていないのだ……!!
「それよりもおっちゃんだ!おっちゃんも蹴り飛ばされてただろ!?」
「はっはっは!安心しろ。柔な鍛え方はしていない。あんなのダメージに入らんわ」
「いや、それ道具屋主人のセリフじゃないだろ……」
エイシェルはオージンの言葉に呆れながらもいつもと変わらない姿に心底安堵していた。
「……ところで、エイシェル。昨晩のことなんだが、猿の魔物を葬ったお前の魔法、ありゃ一体なんだ?」
オージンが神妙な面持ちで聞いてきた
「正直、俺にもわからないんだ……。急に声が聞こえて、あの魔法の使い方のイメージが流れ込んできて……気付いたら魔法を使ってた」
「……他に変わったことはないか?」
「他にって言ってもな……あ、窓から空を見てたらいきなり鼻とおでこをぶつけたような痛みが起きた」
「はぁ?寝ぼけてぶつけたんじゃないか?」
「いや、流石にそんなボケてねぇよ。」
いつもと変わらない綺麗な夜空を眺めていたのをよく覚えている
「……ふむ。あの魔物が言っていたことと何か関係があるのかもな……あいつ、お前を見た時"見つけた"って言ってたぜ?」
「……俺が目当て……だったってことか?2年前も……?」
「そう考えるのが自然だろうな。それに、あのイノシシに描かれていたのは恐らく魔法陣。誰かがお前にご執心なのは間違いねぇ」
「でも……なんで俺なんだ?!ただの村の狩人だぞ」
「……十中八九、昨日の力が原因だろうな」
「っ!……」
魔物襲撃の原因が自分であることにショックを隠せないエイシェル。身に覚えがなさすぎて怒りすら感じていた。
ただ、自分が原因で2度も村に迷惑をかけた事は事実だ。このまま知りませんでしたとはいかない
まず自分の力を知ることから始めなければならない。うすうす考えていた事だ。早く行動に移すことに越したことはない。
しばらくの沈黙の後、エイシェルは考え決意した。
「俺……明日村を出る」
「なんだよ突然。別にお前が悪いことしたわけじゃないだろ?」
「そうだけど、このままいたらまた魔物が来るかも知れない。そうなった時もっと被害が大きくなるのは間違いない。」
……2年前はエイシェルの両親が犠牲になった。今回はオージンが、危険な目にあった。
今回俺が逃げていたら?一歩間違えていたら村が滅んでいたかも知れない。
今後また魔族が現れるかもしれない。
そんな状態で村に居続けるのはエイシェルにとって苦痛でしかない。
村に恩返し出来ないのが心残りではあるが、エイシェルは決意した。
「まずは俺の力について知らなきゃ。その為に俺、王都に行こうと思う。王都に行けば魔法に関する情報も豊富だろうし何かわかるかも知れない」
「……理屈は分かるけどよぉ、明日出発って急すぎないか?」
「本当は今すぐにでも行きたいんだ。でもお世話になった人たちに一通り挨拶しておきたくて……だから明日に出発するよ」
「ったくよぉ……お前は昔から言い出したら他人の言うことなんざ聞かねぇからなぁ……わかったよ。明日出かけるのに必要なものあるだろ?必要なものは言え。用意しておいてやる」
「っ!!おっちゃん!ありがとう!!」
「ただし、無茶はするなよ?いつでも帰ってこい。この村がお前の家だ。」
オージンの言葉にじーんとしてしまったエイシェルであった。
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何しろヒントが何もない目標が2つあるからだ。
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