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第三章 王都への旅
83.夢
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ずっとひとりだった。生まれてからずっと。幸い食べるものには困らなかったが安心して寝られるような場所なんてどこにもなかった。
誰かが襲ってくるんじゃないかと恐怖を感じておちおち寝ていられないのだ。
だから狭い隙間を好んだ。誰も気付かないと思える場所でなら少し安心出来たから。
しかし、それも長くは続かない。狭い場所だからといって完全に誰も来ないわけではないのだ。
見つかると棒で叩かれる。動かなくなるまで叩かれる。
……誰かがそうなるところに出くわしたことがある。
恐ろしい。ただ、恐ろしい。だから出来るだけ気付かれないように、隠れて過ごしていた。
そんな生活を何年も続けていたのだ。
そう、何年も。
100年が経ち身体が大きくなった。10m程はあるだろう。
ここまで来ると、小さかった頃は怯えていただけだったが、もうただ怯えて過ごさなくても良くなっていた。
逆に食べれるものが増え、今度は自分が狭い隙間にいるものを探し、追いかけ、食らう。
捕食側に変わっていた。
この100年の間に何度も棒を振り回すものが現れた。
最初は逃げていただけ。動かなくならないようにひたすらに逃げていただけ。
それが悔しくて、悔しくて悔しくて。
いつしか棒を振り回してくるものを食べられるようになっていた。
ひとつ、ふたつ食べた後、しばらくの間は棒を持ったものが現れなくなった。
やっと安心して寝れる。何も気にしないで寝れる。とても幸せな気持ちだった。
「……そして棒は剣に変わりこの様か。野生の世界なら弱肉強食。弱いものが食われ強いものが生き残る。それが当たり前だ。だがヒト族相手だとそう単純ではないぞ?この私とて困り果てておるのだからな」
喋りかけるものがいる。向かっているのは血だらけになって逃げた大きな白いヘビだ。
虫の息となっていたヘビだが、話を聞いて項垂れていた。
「……」
「ん?ヒトの言葉が分かるのか?……いや、思考を読んだ時に少し繋がったか。……これも何かの縁だろう。私の元で働いてみないか?大したことはしなくていい。時々バランスが崩れた時に魔物を食って貰うだけだ。……このまま朽ちるか、私の下に来るかだ。……早く決めないと本当に朽ちてしまうぞ」
白いヘビはもう限界だった。身体を動かす余裕など本来なかったのだ。
しかし、初めて語りかけてきた相手に興味を持った。
知りたい、その相手を。知りたい、この気持ちを。死にたくない。ついて行きたい。
そう心から思った。
「少し繋がったと言っただろう。お前の気持ちは分かった。ヒール」
そのものは白いヘビに手をかざしヘビの身体を癒す。
もう助からないと思えるほどのキズがどんどん癒えていく。
柔らかな光に包まれているその姿はもともとの白い色も相まって幻想的だった。
「これで大丈夫だろう。どうだ?動けるか?」
白いヘビは今まで動かなかった身体を動かし頭を地面から浮かせる。
そして、そのまま首を垂れた。
「ん?こちらの記憶も少し流れたか……。なんか賢くなったみたいだしちょうどいい。礼なら今後の働きで頼む。……と、そうだ。お前のことはなんて呼べばいいんだ?」
「……」
ヘビは質問に対して首を傾げた。
それもそうである。この100年間誰とも会話などしたことが無い。名前など無いのだ。
「む……。このままだと不便だな。勝手に名付けるぞ。そうだな……さきほど見た真っ白なイメージが強いな。しろへび……はそのままだし、しろ……はペットみたいだな。これでもいい気がするがあいつが来た時にバカにされる未来が見えるな。うん、癪だな。そうなると……ハク、なんてどうだ?たいして変わらないがしっくりこないか?いや、間違いない。今日からお前はハクだ。よろしく頼むぞ」
そのものは誰かを気にしながらも白へびにハクと名付けた。
名付けられたハクは嬉しそうに尻尾を振る。
まるで犬のような姿に名付け親は自然と笑みをこぼした。
それから数年間そのものと過ごし多くのことを学んだ。
どうやら100年間で食べたものの中に魔物が多くいたらしく、身体に魔力が溜まっているらしい。
そのおかげで身体がここまで大きくなれたのだと言う。
そのものが言うには通常はここまで大きくなる前に寿命で死ぬか太りすぎて死ぬとの事だ。
さらに、蓄えた魔力を使って魔法が使えるのではないかと言うことで魔法を試した。
一番印象に残っていたのは大雨の中で目の前に落ちたカミナリである。
カミナリをイメージし魔力を込める。
込めた魔力を解放する様に前に放つとイナズマが現れたのだ。
建物の壁に放った為壁が焦げたのと、あわや火事になりかけたが、そのものは怒るどころか笑ってハクを褒めた。
大したものだと褒めてくれた。それがとても嬉しくてもっと役に立とうと、頑張ろうと思った。
ヘビは魔物の間引きだけでなく、身体の大きさからヒト族の通る道を塞ぎ、迂回させるなど様々な役をこなした。
出会う前と比べると比較しようがないほど日々充実していた。
そんなある日、そのものからいきなりの解雇宣告がきた。
「今日までよくやってくれた。十分役をこなしてくれたと思っている。今をもってお前は自由だ。今のお前なら前みたいにやられることもないだろう。好きに生きるが良い」
何故、そればかりが頭に浮かぶ。
困惑、焦り、不安。様々な感情が流れ込んでくる。
「あぁ、すまん。別にお前がいらなくなったからと言うわけではない。……ただ、私自身が……いや、なんとなくだ。お前のその魔力量、まだまだ長生きするだろう。もっと世界をみてまわり、やりたい事を見つけると良い。……もし、100年まわってみてどうしてもやりたい事をが見つからないのであれば……娘のサポートを頼む。これから苦労をかけるだろうしな。そうならない方がいいんだが、その時は頼む」
何故だろう。ずっと長く生きてきたはずなのに、これからも生き続けるはずなのにもう会えないような言い方。
問いただしたかった。しかし出来なかった。
話をしている時の顔が、とても寂しそうだったからだ。
何か事情があるのかもしれないし、困らせたくない。そう思い何も言えなかったのだ。
『ソロソロジカンデス』
ハクが何で答えればいいのか迷っているとそばに居た猿の魔物が時間切れを告げる。
『ハク、イウトオリニセカイヲマワレ。モットマナンデ、モウイチドモドッテコイ。タマシイノイロガミエルナカマトシテマッテイル』
「私には魂の色と言われても分からないがな……しかし、プルートよ。その話し方はどうにかならないのか?聞き取りづらくて仕方がない」
『ケモノユエ、ゴヨウシャクダサイ』
「お前はケモノって感じがしないからな。頑張れ」
『……キチクノショギョウ……』
「まぁそう言うな、なんなら手伝うぞ?」
『ソンナコトヨリモジカンデス。ユウシャガオウトニカエリツクコロカト……』
「分かっている。そのために準備を進めたのだ」
そのものはプルートと呼ばれる猿の魔物にやれやれとばかりに話した。
そのあと突然真面目な顔をして2匹に向かって話す。
「プルート。万が一の時は娘を頼む」
『ギョイ』
「そして、ハクよ。自由にしろと言ったがひとつだけ頼まれてくれるか?」
ふたりのやりとりを見ていたハクだったが、急に名前を呼ばれて姿勢を正す。
「お前は魂の色が分かるのだろう?もし、もしもの話だが、私が世界を滅ぼそうとしていたら全力で止めよ」
何を言っているのか分からなかったが、真剣なことは分かった。
ただ頷くことしかできなかったのだ。
この言葉の意味を理解するのに1000年ほどかかったがこの時のハクは知るよしもなかった。
「いい子だ。……では行くかの、プルート」
『ハイ、マオウサマ』
不思議な夢を見た気がする。
ひどく懐かしい。でもなんだか切ない。
そんな気持ちになる夢。
「……夢って起きると覚えてないのよね……」
夢の内容が気になって布団の中でゴロゴロしているアリス。
ふと部屋にある時計が目に入る。
「ヤバっ!もうこんな時間!?」
コンッコンッ
「アリスー起きてるー?もう集合時間なるよー」
「はーい!起きてる!起きてるー!先に行っててー!」
急いで出かける準備をするアリスだった。
誰かが襲ってくるんじゃないかと恐怖を感じておちおち寝ていられないのだ。
だから狭い隙間を好んだ。誰も気付かないと思える場所でなら少し安心出来たから。
しかし、それも長くは続かない。狭い場所だからといって完全に誰も来ないわけではないのだ。
見つかると棒で叩かれる。動かなくなるまで叩かれる。
……誰かがそうなるところに出くわしたことがある。
恐ろしい。ただ、恐ろしい。だから出来るだけ気付かれないように、隠れて過ごしていた。
そんな生活を何年も続けていたのだ。
そう、何年も。
100年が経ち身体が大きくなった。10m程はあるだろう。
ここまで来ると、小さかった頃は怯えていただけだったが、もうただ怯えて過ごさなくても良くなっていた。
逆に食べれるものが増え、今度は自分が狭い隙間にいるものを探し、追いかけ、食らう。
捕食側に変わっていた。
この100年の間に何度も棒を振り回すものが現れた。
最初は逃げていただけ。動かなくならないようにひたすらに逃げていただけ。
それが悔しくて、悔しくて悔しくて。
いつしか棒を振り回してくるものを食べられるようになっていた。
ひとつ、ふたつ食べた後、しばらくの間は棒を持ったものが現れなくなった。
やっと安心して寝れる。何も気にしないで寝れる。とても幸せな気持ちだった。
「……そして棒は剣に変わりこの様か。野生の世界なら弱肉強食。弱いものが食われ強いものが生き残る。それが当たり前だ。だがヒト族相手だとそう単純ではないぞ?この私とて困り果てておるのだからな」
喋りかけるものがいる。向かっているのは血だらけになって逃げた大きな白いヘビだ。
虫の息となっていたヘビだが、話を聞いて項垂れていた。
「……」
「ん?ヒトの言葉が分かるのか?……いや、思考を読んだ時に少し繋がったか。……これも何かの縁だろう。私の元で働いてみないか?大したことはしなくていい。時々バランスが崩れた時に魔物を食って貰うだけだ。……このまま朽ちるか、私の下に来るかだ。……早く決めないと本当に朽ちてしまうぞ」
白いヘビはもう限界だった。身体を動かす余裕など本来なかったのだ。
しかし、初めて語りかけてきた相手に興味を持った。
知りたい、その相手を。知りたい、この気持ちを。死にたくない。ついて行きたい。
そう心から思った。
「少し繋がったと言っただろう。お前の気持ちは分かった。ヒール」
そのものは白いヘビに手をかざしヘビの身体を癒す。
もう助からないと思えるほどのキズがどんどん癒えていく。
柔らかな光に包まれているその姿はもともとの白い色も相まって幻想的だった。
「これで大丈夫だろう。どうだ?動けるか?」
白いヘビは今まで動かなかった身体を動かし頭を地面から浮かせる。
そして、そのまま首を垂れた。
「ん?こちらの記憶も少し流れたか……。なんか賢くなったみたいだしちょうどいい。礼なら今後の働きで頼む。……と、そうだ。お前のことはなんて呼べばいいんだ?」
「……」
ヘビは質問に対して首を傾げた。
それもそうである。この100年間誰とも会話などしたことが無い。名前など無いのだ。
「む……。このままだと不便だな。勝手に名付けるぞ。そうだな……さきほど見た真っ白なイメージが強いな。しろへび……はそのままだし、しろ……はペットみたいだな。これでもいい気がするがあいつが来た時にバカにされる未来が見えるな。うん、癪だな。そうなると……ハク、なんてどうだ?たいして変わらないがしっくりこないか?いや、間違いない。今日からお前はハクだ。よろしく頼むぞ」
そのものは誰かを気にしながらも白へびにハクと名付けた。
名付けられたハクは嬉しそうに尻尾を振る。
まるで犬のような姿に名付け親は自然と笑みをこぼした。
それから数年間そのものと過ごし多くのことを学んだ。
どうやら100年間で食べたものの中に魔物が多くいたらしく、身体に魔力が溜まっているらしい。
そのおかげで身体がここまで大きくなれたのだと言う。
そのものが言うには通常はここまで大きくなる前に寿命で死ぬか太りすぎて死ぬとの事だ。
さらに、蓄えた魔力を使って魔法が使えるのではないかと言うことで魔法を試した。
一番印象に残っていたのは大雨の中で目の前に落ちたカミナリである。
カミナリをイメージし魔力を込める。
込めた魔力を解放する様に前に放つとイナズマが現れたのだ。
建物の壁に放った為壁が焦げたのと、あわや火事になりかけたが、そのものは怒るどころか笑ってハクを褒めた。
大したものだと褒めてくれた。それがとても嬉しくてもっと役に立とうと、頑張ろうと思った。
ヘビは魔物の間引きだけでなく、身体の大きさからヒト族の通る道を塞ぎ、迂回させるなど様々な役をこなした。
出会う前と比べると比較しようがないほど日々充実していた。
そんなある日、そのものからいきなりの解雇宣告がきた。
「今日までよくやってくれた。十分役をこなしてくれたと思っている。今をもってお前は自由だ。今のお前なら前みたいにやられることもないだろう。好きに生きるが良い」
何故、そればかりが頭に浮かぶ。
困惑、焦り、不安。様々な感情が流れ込んでくる。
「あぁ、すまん。別にお前がいらなくなったからと言うわけではない。……ただ、私自身が……いや、なんとなくだ。お前のその魔力量、まだまだ長生きするだろう。もっと世界をみてまわり、やりたい事を見つけると良い。……もし、100年まわってみてどうしてもやりたい事をが見つからないのであれば……娘のサポートを頼む。これから苦労をかけるだろうしな。そうならない方がいいんだが、その時は頼む」
何故だろう。ずっと長く生きてきたはずなのに、これからも生き続けるはずなのにもう会えないような言い方。
問いただしたかった。しかし出来なかった。
話をしている時の顔が、とても寂しそうだったからだ。
何か事情があるのかもしれないし、困らせたくない。そう思い何も言えなかったのだ。
『ソロソロジカンデス』
ハクが何で答えればいいのか迷っているとそばに居た猿の魔物が時間切れを告げる。
『ハク、イウトオリニセカイヲマワレ。モットマナンデ、モウイチドモドッテコイ。タマシイノイロガミエルナカマトシテマッテイル』
「私には魂の色と言われても分からないがな……しかし、プルートよ。その話し方はどうにかならないのか?聞き取りづらくて仕方がない」
『ケモノユエ、ゴヨウシャクダサイ』
「お前はケモノって感じがしないからな。頑張れ」
『……キチクノショギョウ……』
「まぁそう言うな、なんなら手伝うぞ?」
『ソンナコトヨリモジカンデス。ユウシャガオウトニカエリツクコロカト……』
「分かっている。そのために準備を進めたのだ」
そのものはプルートと呼ばれる猿の魔物にやれやれとばかりに話した。
そのあと突然真面目な顔をして2匹に向かって話す。
「プルート。万が一の時は娘を頼む」
『ギョイ』
「そして、ハクよ。自由にしろと言ったがひとつだけ頼まれてくれるか?」
ふたりのやりとりを見ていたハクだったが、急に名前を呼ばれて姿勢を正す。
「お前は魂の色が分かるのだろう?もし、もしもの話だが、私が世界を滅ぼそうとしていたら全力で止めよ」
何を言っているのか分からなかったが、真剣なことは分かった。
ただ頷くことしかできなかったのだ。
この言葉の意味を理解するのに1000年ほどかかったがこの時のハクは知るよしもなかった。
「いい子だ。……では行くかの、プルート」
『ハイ、マオウサマ』
不思議な夢を見た気がする。
ひどく懐かしい。でもなんだか切ない。
そんな気持ちになる夢。
「……夢って起きると覚えてないのよね……」
夢の内容が気になって布団の中でゴロゴロしているアリス。
ふと部屋にある時計が目に入る。
「ヤバっ!もうこんな時間!?」
コンッコンッ
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