ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

文字の大きさ
121 / 226
第四章 王都防衛戦

121.王都

しおりを挟む
 結局、兵士2人に連れられて王都に向かうことになってしまった4人。どうせなら行った先でギルドに寄ってステラを探すことにした。
 そのまま流れるように馬車に案内され出発する。王都の中でもいい馬車なのか揺れが少ない気がした。さらに言うと引いている馬も力強そうな馬が引いており普通の馬車よりかはスピードが早いようだ。

「この馬車すごく早い!」

「すごいわね……この調子なら夕方には着いちゃうんじゃないかしら?」

 いつも王都と港街とを行き来していたフラムとフルームですら驚いている。それ程に早いペースで街道を進むのだった。

 結果、道中で数回休憩を入れた以外はほとんど止まることなく街道を進むことができ、太陽が完全に沈む前には王都ウルブスへ到着できた。その街並みは綺麗に区分けされており到着する前に遠目で見ただけでも美しいと分かる程に整えられている。

「ほら、王都に着いたぞ。宿の手配をしておくから少ししたらここにきてくれ。あぁ、夕飯と朝飯は出るから心配しなくていい」

 ひょろっとした兵士はそう言うと街の地図を渡す。その地図を見ると中央にある城から少し離れた位置に丸印がされていた。

「ん?ここって!?」

「どうしたの?フルーム……ってここはまさか!?」

 その丸印の位置を確認したフラムとフルームが驚く。2人の話を聞くとどうやら王都営の宿泊施設のようだ。来賓が泊まるような場所の為かなり豪華だそうで他国の要人やAランク冒険者くらいしか泊まれないところらしい。

「知っていたか。王様が来てくれって頼んだんだ。これくらいの待遇は当然だろう。今夜はゆっくりしてくれ。明日の朝8時にまた迎えに来る。」

 体格の良い兵士もそう言ってくれた為4人はせっかくなので好意に甘えることにした。

「じゃあなー」

「元気でな」

 4人が手を振り兵士2人が見えなくなったところで声が聞こえた。

『まったく窮屈ね。人がいたら私喋れないじゃないの』

「そういえばいたわね」

『そういえばじゃないわよ!また街の中入ったら喋れないじゃない……』

 実は魔王はおしゃべり好きなのかもしれない。黙っているのが退屈で仕方がないようだ。とはいいつつも喋られたらそれはそれでアリスがまた変な目で見られてしまう為諦めるしかない。魔王としては王都で目立つ行為は避けたいのだ。……かつての敵地ど真ん中である。慎重になるのは仕方が無かった。
 

「それで、これからどうする?」

「少ししたら宿に行けって言ってたから、まずはギルドよね」

「あの道具屋探さないとね」

「馬車が早かったから途中追い越してるかもしれないけど、セラスさんから預かった手紙も渡したいしね」

 話し合った結果、この街の冒険者ギルドへ向かう事にした。ステラの件もあるが、セラスから預かった手紙を王都のギルドマスターに届ける用事もあるのだ。ほんの少しだけ王都の冒険者ギルドで恩恵にあずかれる特典が気になったことも理由にある。セラスに王都のギルドは設備が良いと言われてから気になってはいたのだ。方針が決まった為4人はすぐに冒険者ギルドへと向かうことにした。

 しばらく歩くと立派な建物が目に入る。それはカスース町の冒険者ギルドが何個もすっぽり入るのでは無いかと思えるくらい大きい。それほど格が違うのだ。

「……大きすぎないか?」

「この建物全部冒険者ギルドなの……?」

 あまりの大きさに驚き言葉を失うエイシェルとアリス。2人が今まで見たどの建物よりも大きかった。

「いやー久しぶりに見るけどやっぱり大きいねー」

「お城の次に大きいんじゃないかしら?私達もまだ入ったことないのよね。どんな感じなのか楽しみね」

 フラムとフルームが冒険者登録しているのはカスース町の冒険者ギルドである為、王都の冒険者ギルドは外から見たことしかなかった。その為、中に入るのが楽しみでしょうがないようだ。フラムとフルームはあまりの大きさに呆けていたエイシェルとアリスに声をかけ4人でギルドへと入るのだった。

「おぉ……」

「すごい人……」

「受付が何個もあるよ?全員ギルマスかな?」

「んなわけないでしょ?セラスさん泣くわよ?」

 中に入ると人で溢れていた。陽が沈む頃の為依頼達成報告の冒険者が集中しているようだ。それでも長い列が出来るわけでもなく複数用意された受付できちんと処理される。それはしっかりとした体制が組まれている事を意味する。流石、王都のギルドと言えよう。
 4人はギルドマスターに手紙を渡す為受付に並んだ。いくつか物珍しそうな視線を向けてくる人がいたが無視である。実はアリス、フラム、フルーム3人は比較的整った容姿をしている。その為、その3人が固まって並んでいるとどうしても周りの視線を集めてしまうのだ。一部エイシェルに向けられる視線もあったがそれは羨ましいと言わんばかりの男どもの視線である。
 しばらく並んでいるとようやく順番が回ってきた。受付の女性が話しかけてくる。

「お待たせしました。ご用件を伺います」

 その対応は砕ける前のセラスのようであり、しっかりした大人の女性という印象だ。セラスが言っていたようにきっと喋り方も決められているのだろうと4人は思った。

「あの、これをギルドマスターにお願いします。カスース町のセラスさんからの手紙です」

「はい。確認します……ね!?」

 受付は手紙を預かると驚いていた。それもそのはず手紙を入れた封筒の封にはカスース町のギルドマスターの印が押されている。この時点でこの手紙は簡単に扱える書類ではなくなるのだ。そんなことは知らないアリスはかばんの中に適当に突っ込んでいたが知らぬが仏である。

「し、少々お待ち下さい!この手紙は一度お返しします!」

 受付の女性はそう言って手紙を返すと慌ててどこかへ行ってしまった。……この時受付の女性は知らなかったのだ。カスース町の通信機が使えなくて連絡の全てが書面でのやりとりになっていた事に。
 通常、各ギルド間の連絡は通信機で行っており書面でのやり取りは周りに聞こえてはならない機密情報を伝える場合に限られていた。その際に各ギルドはそれぞれのギルドに所属するパーティのうち最も信頼するパーティにその書類を預ける事がある。今回はまさにそのパターンに当てはまるのだと考えるのが自然だった。……余談だが、カスース町の連絡書類は荷物に纏められて一緒に別の部署へ届く為クエスト関連の受付に届くことはないのだ。

 数分待っていると受付の女性が戻ってきた。

「お待たせ致しました。案内しますので着いてきてください」

 当然、重要書類の受け渡しは当人同士の手渡しとなる。途中で受付など第三者が介入してしまうと紛失や情報漏洩などのリスクがある為、4人はギルドマスターの部屋へ案内されるのだった。



「……ねぇ、この前もこんな事なかった?」

「……まさか、この人がギルドマスターか?」

「そのくだりはもうフルームがやったわよ」

 セラスは泣いていいと思う。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...