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第四章 王都防衛戦
146.総力戦
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「おいおい……こんなの聞いてないぞ……」
ドラゴンの成体を目の前にしジレトニーが愕然とする。今まで傷を負わせていたドラゴンが突然成体に進化し、切断した尻尾まで回復しているではないか。進化したてでうまく動けないのか体の動きを確認している様だが誰ひとりとして動き出すものはいなかった。
多くの冒険者を犠牲にしやっと追い詰めたと思った矢先の出来事。戦意を失うには十分すぎる出来事である。
「なんだよ……こんなのってないだろ!?」
ディルもこの理不尽な相手に怒りを感じていた。アニスを失い、共に戦った冒険者も多く失った。残っている方が少ないだろう。それなのにも関わらず、その傷が無かったことになる。そんなのは許せるはずがなかった。
グォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
復活したドラゴンは雄叫びを上げる。これまでとは比べ物にならないほどの振動を感じる。ただそれだけ、ただそれだけなのに生き残った冒険者のほとんどは生きる事を諦めてしまうほどであった。
「おい!お前ら諦めんな!立て!立ってもう一度戦うんだ!」
ディルが声を荒げる。このままではまずい。少しでも戦えるものを残さねばならない。協力者が必要なのはさっきまでの結果で明らかだ。
しかし、答える声は無かった。もうダメなのか?これでおしまいなのか?敵討ちも出来ずに終わるのか?悪い思考がぐるぐると頭を巡る。どんなに考えても勝てる未来が見えない。さっきまでの幼体ですら多くの犠牲の上で追い込んだ。成体が相手となれば勝ち目なんてない。
「……それでも!」
アニスとの思い出が蘇る。その笑顔が脳裏に焼き付く。ずっと一緒にいた。これからも一緒だと思っていた。多少危ない事もあったが実力相応の依頼だけ受けるようにしアニスに怪我をさせない様にとずっと気を遣っていた。それなのに、簡単にその命は奪われる。最愛の思い出は強い意志となり心を奮い立たせる。こんなところで終わるわけにはいかない。例え死ぬとしても一太刀くらい浴びせてやろう。その決意は固かった。
「……戦う意志のないやつは逃げろ。いても無駄死にするだけだ。……だけどな、俺は立ち向かうぞ!何度だって立ち向かってやる!例え死んだとしてもあいつに立ち向かう!!」
ディルの叫びが、意志が辺りに響き渡る。すると、予想だにしない声が聞こえた。
「その意気やよし!……こんなに遅れて何が王国騎士団か……!生き残ったものを救出せよ!回復薬を出し惜しむな!息があるものを救え!」
「……組織の長という立ち位置をこんなにも疎ましく思ったのは初めてですよ。冒険者の皆さん!ここが正念場です!これ以上好きにさせてはいけません!」
「ひどい……これが王都だなんて……」
「……許せないね」
そこには王国騎士団の面々と団長のフェルス。多くの冒険者を連れたギルドマスターのアイトネ。そしてフラム、フルームの姿があった。
フェルスとアイトネはそれぞれ団員や冒険者をかき集めるのに奔走していた為に到着が遅れてしまった。大きな作戦が成功した翌日にこの大事件である。休暇をとったものが多くなかなか人が集まらなかった。
フラムとフルームは西の公園に向かって坂を登っているところに大きな音と共にワイバーンが現れたのを目撃した為急いで引き返してきた。場所が場所であった為気が気では無い。
「気合のある子がいるみたいだけど……エイシェルとアリスは……?」
「……ここにはいないみたいね。……それにあれはドラゴンの成体よね……?あのワイバーンはドラゴンの幼体だったって事?ふたりとも無事だといいんだけど……」
フラム達がワイバーンを目撃した時、その場所は街の北側だった。そこはまさかのエイシェルとアリスが歩いて行った先である。
もし、近くでワイバーンが現れたとしたら、あのふたりなら真っ先に戦いに行くだろう。
しかし、実際にはワイバーンは街の北から南東へ街を破壊して回っていた。
考えられる事はふたつ。ひとつ目はふたりが何らかの理由でワイバーンの討伐に向かえない状態にあること。そしてふたつ目は……考えたくない事だが既に死んでいること。
エイシェルとアリスはジェミニの魔法で生命力を共有している。その影響でどちらかが肉体的に死ねばもう片方も死ぬのだ。その為死ぬリスクが他の人よりも高い状態にある。
ふたりの実力を考えれば負ける事はないと思うがこの世に絶対などない。
フラムとフルームは不安を抱えながら戦うことになるのであった。
ディルの戦意は先程よりも溢れていた。奇跡と言えよう。こんな不利な状況下で援軍が来てくれたのだ。このチャンスを逃すまいと援軍の到着を確認するや否やドラゴンに向かって走り出す。まだ新しい体に慣れていないドラゴンに少しでも傷を負わすことが出来ればと思ったのだ。
黒と白の炎を纏った剣を振るいドラゴンの足を斬った。しかし、先程までとはいかずその傷は浅い。流石に成体の身体は幼体とは比べ物にならない様だ。それでも"傷"は付いた。それなら希望はある。何千回でも何万回でも繰り返してやる。
攻撃をされてドラゴンは忌々しそうに足元を見る。しかしまだうまく体を動かせないようだ。
その間に何度も切り刻む。少しでもダメージを与えられるようにと何度も何度も。そのうち体の自由が効くようになったのかドラゴンが足を持ち上げる。ディルは踏み潰されないよう距離を取った。様子を見ても大したダメージが入っていないことがわかり悔しく思う。ドラゴンに決定打を与えるためにチカラが足りない。もはやひとりではどうしようもない状況である。
そしてふと気づくとドラゴンがこちらを見ているではないか。よくもやってくれたな。今度はこちらの番だ。と言わんばかりに睨みつけてくる。
ディルはその目に少しだけ怯んでしまった。しかし、その少しの隙が命取りである。一瞬の隙をつきドラゴンはディルに向かいブレスを吐き、同時に魔法を実行する。正面からは炎が、左右からはウィンドカッターが迫る。
「しまった!」
ディルが気付いた時には逃げ場が無くなっていた。後ろに下がってもブレスが届くから意味はない。横や斜めに避けようにもウィンドカッターの餌食となる。空高く飛べれば助かるがそのような芸当は出来ない。
完全に詰みである。それなのにも関わらずディルの身体は自然と動いていた。剣を大きく上に構えて前へと踏み込んだのだ。
しかし、踏み込んだのが遅くこのままではブレスもウィンドカッターも当たってしまう。だが、踏み込んだ時に救いの手が届いた。
「ウォーターカッター!」
「こっちを向けえええ!」
フルームが魔法を使いウィンドカッターを弾く。そしてあらかじめフルームの魔法剣を吸収させたフラムの剣が青白く伸びてドラゴンの首を狙う。
危険を感じたドラゴンはフラムの方へ向き直りブレスを吐いた。するとフラムの剣の青白い炎がブレスで相殺される。しかし、ディルを攻撃した直後に慌てて攻撃を相殺した為完全には相殺出来ていない。相殺が間に合わなかった場所にはくっきりと傷が付いている。もし相殺出来なければ首が飛んでいただろう。
「惜しい!」
「もともと気をひくのが目的だからこれでいいんだけれど……私達が言うのもなんだけど、あの子無茶苦茶じゃないの」
フラムの目線の先には剣を振りおろした姿のディルが立っていた。土壇場で剣の先に魔力を集めて迫ってくる炎を斬ったようだ。
フラムが注意を逸らしたことによってブレスは火球となり、火球を斬ることでなんとか攻撃を防ぐことが出来た。もしフラムが注意を逸らさなかったら、もしフルームがウィンドカッターを弾かなかったら、もしディルが火球を斬らなかったら、ディルはそこに立っていなかっただろう。
「すまん!助かった!」
「無事でよかったよ!キミも早く避難して!」
一足先に到着したフルームがディルに避難するように促す。きっと幼体だった時から戦っていたに違いない。それに、どういうわけか剣に魔力を纏わせている。その状態で戦えば生命力をかなり消費しているはずと考え避難を促したのだ。
しかし、ディルの答えは決まっている。
「俺にもやらせてくれ。……俺が原因なんだ。俺のせいで街が、みんなが、……アニスが……。だから俺がやらなくちゃいけないんだ」
「うーん……生命力危ないんじゃないの?」
「そんなの関係ない。死んでもあいつを殺る」
ディルの固い決意にフルームは困っていた。このままでは確実に生命力が尽きるだろう。そうなればせっかく助けたのに死なれてしまう。
仕方がないとばかりにフルームが自分のカバンから球を取り出してディルに渡す。
「後で返してよ?話も聞かせてもらうから」
「これは……?」
「魔力を溜められる球って言えばいいかな?この中に詰まってる魔力を自分の魔力のように使える。生命力を使わないで済むってわけ」
「そ、そんなすごいものが……!でも、それだとあんたの分が……」
「フルーム」
「え?」
「あんたじゃなくてフルームって名前。ここまで来れればあとは剣で戦えばいいからそれ無くても大丈夫。だからキミが使って」
「でも、あいつに普通の剣は効かないんだ!魔力を付与した剣じゃないと!」
「よくわかってるじゃん。アクアソード!」
フルームは自分の剣を引き抜き魔法を使う。そこには水を纏った綺麗な剣があった。
ディルはその様子を見て驚いた。ディルは土壇場に自力で魔力付与をした。幼体と戦った場にいた人しか魔力付与について知らないはずである。それが、ぽっと現れた冒険者、しかもさほど年も離れていないであらう女の子が使ったのだ。驚くのも無理はない。
「キミも自力で使ってるじゃん。私も"剣に纏わせる"くらいならよゆーよ」
そう言いながら持っている剣をぶんぶん振り回すフルーム。今まで何回練習してきたか分からない。魔法だけで剣を生成できる彼女にとって剣に魔力を纏わせるなんて大した事ではなくなっていたのだった。
ディルは目の前にいる青髪の少女が只者ではないと悟る。その彼女が貴重な球を貸してくれたのだ。ここは素直に使わせて貰うべきだろう。
「ありがとうフルーム。俺はディルだ」
「ディルね。ちゃんと返してよー?」
「もうそろそろいいかしらー!?さっきから私に向かって炎吐かれてるの!!」
離れた場所にいるフラムがフルームへ叫ぶ。先程の攻撃でドラゴンから目をつけられたフラムはずっとブレスの攻撃を受けていた。その攻撃を青白い炎の剣で相殺しているのだが一向に終わる気配がない。
いい加減どうにかしたいフラムはフルームに助けを求めるのだった。
幸いフラムが囮になっていたおかげでフェルスやアイトネの救出活動はスムーズに進むのだった。
ドラゴンの成体を目の前にしジレトニーが愕然とする。今まで傷を負わせていたドラゴンが突然成体に進化し、切断した尻尾まで回復しているではないか。進化したてでうまく動けないのか体の動きを確認している様だが誰ひとりとして動き出すものはいなかった。
多くの冒険者を犠牲にしやっと追い詰めたと思った矢先の出来事。戦意を失うには十分すぎる出来事である。
「なんだよ……こんなのってないだろ!?」
ディルもこの理不尽な相手に怒りを感じていた。アニスを失い、共に戦った冒険者も多く失った。残っている方が少ないだろう。それなのにも関わらず、その傷が無かったことになる。そんなのは許せるはずがなかった。
グォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
復活したドラゴンは雄叫びを上げる。これまでとは比べ物にならないほどの振動を感じる。ただそれだけ、ただそれだけなのに生き残った冒険者のほとんどは生きる事を諦めてしまうほどであった。
「おい!お前ら諦めんな!立て!立ってもう一度戦うんだ!」
ディルが声を荒げる。このままではまずい。少しでも戦えるものを残さねばならない。協力者が必要なのはさっきまでの結果で明らかだ。
しかし、答える声は無かった。もうダメなのか?これでおしまいなのか?敵討ちも出来ずに終わるのか?悪い思考がぐるぐると頭を巡る。どんなに考えても勝てる未来が見えない。さっきまでの幼体ですら多くの犠牲の上で追い込んだ。成体が相手となれば勝ち目なんてない。
「……それでも!」
アニスとの思い出が蘇る。その笑顔が脳裏に焼き付く。ずっと一緒にいた。これからも一緒だと思っていた。多少危ない事もあったが実力相応の依頼だけ受けるようにしアニスに怪我をさせない様にとずっと気を遣っていた。それなのに、簡単にその命は奪われる。最愛の思い出は強い意志となり心を奮い立たせる。こんなところで終わるわけにはいかない。例え死ぬとしても一太刀くらい浴びせてやろう。その決意は固かった。
「……戦う意志のないやつは逃げろ。いても無駄死にするだけだ。……だけどな、俺は立ち向かうぞ!何度だって立ち向かってやる!例え死んだとしてもあいつに立ち向かう!!」
ディルの叫びが、意志が辺りに響き渡る。すると、予想だにしない声が聞こえた。
「その意気やよし!……こんなに遅れて何が王国騎士団か……!生き残ったものを救出せよ!回復薬を出し惜しむな!息があるものを救え!」
「……組織の長という立ち位置をこんなにも疎ましく思ったのは初めてですよ。冒険者の皆さん!ここが正念場です!これ以上好きにさせてはいけません!」
「ひどい……これが王都だなんて……」
「……許せないね」
そこには王国騎士団の面々と団長のフェルス。多くの冒険者を連れたギルドマスターのアイトネ。そしてフラム、フルームの姿があった。
フェルスとアイトネはそれぞれ団員や冒険者をかき集めるのに奔走していた為に到着が遅れてしまった。大きな作戦が成功した翌日にこの大事件である。休暇をとったものが多くなかなか人が集まらなかった。
フラムとフルームは西の公園に向かって坂を登っているところに大きな音と共にワイバーンが現れたのを目撃した為急いで引き返してきた。場所が場所であった為気が気では無い。
「気合のある子がいるみたいだけど……エイシェルとアリスは……?」
「……ここにはいないみたいね。……それにあれはドラゴンの成体よね……?あのワイバーンはドラゴンの幼体だったって事?ふたりとも無事だといいんだけど……」
フラム達がワイバーンを目撃した時、その場所は街の北側だった。そこはまさかのエイシェルとアリスが歩いて行った先である。
もし、近くでワイバーンが現れたとしたら、あのふたりなら真っ先に戦いに行くだろう。
しかし、実際にはワイバーンは街の北から南東へ街を破壊して回っていた。
考えられる事はふたつ。ひとつ目はふたりが何らかの理由でワイバーンの討伐に向かえない状態にあること。そしてふたつ目は……考えたくない事だが既に死んでいること。
エイシェルとアリスはジェミニの魔法で生命力を共有している。その影響でどちらかが肉体的に死ねばもう片方も死ぬのだ。その為死ぬリスクが他の人よりも高い状態にある。
ふたりの実力を考えれば負ける事はないと思うがこの世に絶対などない。
フラムとフルームは不安を抱えながら戦うことになるのであった。
ディルの戦意は先程よりも溢れていた。奇跡と言えよう。こんな不利な状況下で援軍が来てくれたのだ。このチャンスを逃すまいと援軍の到着を確認するや否やドラゴンに向かって走り出す。まだ新しい体に慣れていないドラゴンに少しでも傷を負わすことが出来ればと思ったのだ。
黒と白の炎を纏った剣を振るいドラゴンの足を斬った。しかし、先程までとはいかずその傷は浅い。流石に成体の身体は幼体とは比べ物にならない様だ。それでも"傷"は付いた。それなら希望はある。何千回でも何万回でも繰り返してやる。
攻撃をされてドラゴンは忌々しそうに足元を見る。しかしまだうまく体を動かせないようだ。
その間に何度も切り刻む。少しでもダメージを与えられるようにと何度も何度も。そのうち体の自由が効くようになったのかドラゴンが足を持ち上げる。ディルは踏み潰されないよう距離を取った。様子を見ても大したダメージが入っていないことがわかり悔しく思う。ドラゴンに決定打を与えるためにチカラが足りない。もはやひとりではどうしようもない状況である。
そしてふと気づくとドラゴンがこちらを見ているではないか。よくもやってくれたな。今度はこちらの番だ。と言わんばかりに睨みつけてくる。
ディルはその目に少しだけ怯んでしまった。しかし、その少しの隙が命取りである。一瞬の隙をつきドラゴンはディルに向かいブレスを吐き、同時に魔法を実行する。正面からは炎が、左右からはウィンドカッターが迫る。
「しまった!」
ディルが気付いた時には逃げ場が無くなっていた。後ろに下がってもブレスが届くから意味はない。横や斜めに避けようにもウィンドカッターの餌食となる。空高く飛べれば助かるがそのような芸当は出来ない。
完全に詰みである。それなのにも関わらずディルの身体は自然と動いていた。剣を大きく上に構えて前へと踏み込んだのだ。
しかし、踏み込んだのが遅くこのままではブレスもウィンドカッターも当たってしまう。だが、踏み込んだ時に救いの手が届いた。
「ウォーターカッター!」
「こっちを向けえええ!」
フルームが魔法を使いウィンドカッターを弾く。そしてあらかじめフルームの魔法剣を吸収させたフラムの剣が青白く伸びてドラゴンの首を狙う。
危険を感じたドラゴンはフラムの方へ向き直りブレスを吐いた。するとフラムの剣の青白い炎がブレスで相殺される。しかし、ディルを攻撃した直後に慌てて攻撃を相殺した為完全には相殺出来ていない。相殺が間に合わなかった場所にはくっきりと傷が付いている。もし相殺出来なければ首が飛んでいただろう。
「惜しい!」
「もともと気をひくのが目的だからこれでいいんだけれど……私達が言うのもなんだけど、あの子無茶苦茶じゃないの」
フラムの目線の先には剣を振りおろした姿のディルが立っていた。土壇場で剣の先に魔力を集めて迫ってくる炎を斬ったようだ。
フラムが注意を逸らしたことによってブレスは火球となり、火球を斬ることでなんとか攻撃を防ぐことが出来た。もしフラムが注意を逸らさなかったら、もしフルームがウィンドカッターを弾かなかったら、もしディルが火球を斬らなかったら、ディルはそこに立っていなかっただろう。
「すまん!助かった!」
「無事でよかったよ!キミも早く避難して!」
一足先に到着したフルームがディルに避難するように促す。きっと幼体だった時から戦っていたに違いない。それに、どういうわけか剣に魔力を纏わせている。その状態で戦えば生命力をかなり消費しているはずと考え避難を促したのだ。
しかし、ディルの答えは決まっている。
「俺にもやらせてくれ。……俺が原因なんだ。俺のせいで街が、みんなが、……アニスが……。だから俺がやらなくちゃいけないんだ」
「うーん……生命力危ないんじゃないの?」
「そんなの関係ない。死んでもあいつを殺る」
ディルの固い決意にフルームは困っていた。このままでは確実に生命力が尽きるだろう。そうなればせっかく助けたのに死なれてしまう。
仕方がないとばかりにフルームが自分のカバンから球を取り出してディルに渡す。
「後で返してよ?話も聞かせてもらうから」
「これは……?」
「魔力を溜められる球って言えばいいかな?この中に詰まってる魔力を自分の魔力のように使える。生命力を使わないで済むってわけ」
「そ、そんなすごいものが……!でも、それだとあんたの分が……」
「フルーム」
「え?」
「あんたじゃなくてフルームって名前。ここまで来れればあとは剣で戦えばいいからそれ無くても大丈夫。だからキミが使って」
「でも、あいつに普通の剣は効かないんだ!魔力を付与した剣じゃないと!」
「よくわかってるじゃん。アクアソード!」
フルームは自分の剣を引き抜き魔法を使う。そこには水を纏った綺麗な剣があった。
ディルはその様子を見て驚いた。ディルは土壇場に自力で魔力付与をした。幼体と戦った場にいた人しか魔力付与について知らないはずである。それが、ぽっと現れた冒険者、しかもさほど年も離れていないであらう女の子が使ったのだ。驚くのも無理はない。
「キミも自力で使ってるじゃん。私も"剣に纏わせる"くらいならよゆーよ」
そう言いながら持っている剣をぶんぶん振り回すフルーム。今まで何回練習してきたか分からない。魔法だけで剣を生成できる彼女にとって剣に魔力を纏わせるなんて大した事ではなくなっていたのだった。
ディルは目の前にいる青髪の少女が只者ではないと悟る。その彼女が貴重な球を貸してくれたのだ。ここは素直に使わせて貰うべきだろう。
「ありがとうフルーム。俺はディルだ」
「ディルね。ちゃんと返してよー?」
「もうそろそろいいかしらー!?さっきから私に向かって炎吐かれてるの!!」
離れた場所にいるフラムがフルームへ叫ぶ。先程の攻撃でドラゴンから目をつけられたフラムはずっとブレスの攻撃を受けていた。その攻撃を青白い炎の剣で相殺しているのだが一向に終わる気配がない。
いい加減どうにかしたいフラムはフルームに助けを求めるのだった。
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