ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

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第五章 アンダーグラウンド

166.八方塞がり

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 アリス達が城の門を抜けようとした時に目の前に誰かいるのが見えた。

「おーい。大丈夫だったー?ってなんで走ってるの?」

 悠長にこちらに手を振っているのはディアである。

「話は後だ。まずここから逃げるぞ」
「あ、なんかやばい状況なのね」

 ディアの近くまで来たエイシェルがそう言うとディアも状況を察して並走をする。状況からして逃げていることは伝わっただろう。

「それで、どこにいく予定かしら?」
「正直、まだ当てがない。逆に何処か隠れられる場所を知らないか?」
「そんな事1000年ぶりに蘇った人に聞かないでよ」

 当てもなく、とにかく城から離れようとしていた5人だったが、いよいよ逃げる先が見当もつかず困っていた。

「うちに隠れるのはどうかな?」
「ダメね。パパもあんな状態だし、まず最初に調べに来るでしょう」
「だよねー」
「……ごめんなさい」

 フルームが行き先として自身の家を提案するがフラムが却下する。潜伏先として真っ先に疑われるのは間違いない。その様子を見ていたアリスは申し訳なさのあまりつい声に出た。

「自分でも何であんなことしたのか分からないの……気付いたら叫んでたと言うか……」

 アリスが自分に起きた事を話すとディアが「あー」と言いつつ話を引き継いだ。

「それ、多分私の記憶のせいね。途中でもの凄い怒りの感情が湧き上がってきて、心配になって入り口まで来てみたのよね。なんか私の悪口でも言われた?」
「……あの時は頭がイライラで一杯だったからよく覚えてないのだけど、確か勇者が魔王を道連れにしたとか……勇者が死んだお陰で平和になったとか、そんな風に聞こえたわね」
「……なにそれ、城ごと壊しちゃえばいいんじゃない?今からやる?」
「やめてくれ。本当に魔王の復活と思われる。それに、城の中ではフェルスさんをはじめ騎士団のみんな、ギルドの3人がオレ達を流してくれたんだ。みんなまで巻き込んじゃダメだろ」

 アリスの説明を聞いて物騒な事を言うディア。このままでは逃がしてくれたみんなも巻き込んでしまう恐れがあるためエイシェルが落ち着かせる。

「……そう言う事なら仕方ないわね。でも、当てがないんでしょ?この後どうするのよ。南に行っても船もしばらくは使えないでしょうし、西は山だし、北はこの前の魔物襲撃の件で封鎖されてるし。東側からパエニンスラの港町を目指す?」
「でも、馬車を使ったとしても1ヶ月はかかるんじゃ……」
「……しかも、馬車を使ったらばっちり行き先バレるわね。それこそ船を臨時で出されたら先回りされちゃう」
「なら、ほとぼり覚めるまで何処かに隠れてるとかか?」

 ひたすら真っ直ぐ、城から離れるように走りながら話しているが行き先がまとまらない。北は魔物の襲撃があったことから封鎖されており、もし、その先に行けたとしても森は爆発で無くなり隠れられる場所はない。さらに先の町は魔物に襲われ壊滅状態。そこを超えて進もうにも追手に追い付かれるのが関の山。そうなると北に逃げる案はない。
 西は山で隠れるのは出来るかもしれないが道が険しく移動できる範囲も限られていそうであり、逆に追い詰められる恐れがある。そうなった時に西も難しい。南はポルトゥスの港街があり、その先は海である。一応、ポルトゥスから東へ行けば海沿いを通ってパエニンスラの港町へ行くことは出来るが王都から東へ向かい、フラム達の故郷を経由するのとほぼ変わりはない。南に向かったとしてもそこから東に向かうことは明確であるため、わざわざ南へ移動する必要はなさそうである。そうなった時にフラム達の故郷を経由することになるが東へ向かった方が無難のようにも思える。ただ、そうすると間違いなくフラム達の実家に捜査の手が届き迷惑をかけることになるが……

「考えてても仕方がない。まずこのまま南門から王都を出よう。ポルトゥスに行ってステラも探さないといけないし」
「……そうね。このまま出て行ったら次にいつあの道具屋に行けるかわからないし」

 エイシェルとアリスがそういうと、フラム、フルーム、ディアは揃って頷き、そのまま南門へ向かうのだった。








「……まずいな」

 エイシェルが呟く。南門に着いたはいいものの既にウンブラ配下と思われる兵士の姿があった。
 城から逃げられることも折り込み済みで対策していたのだろう。でなければこんなに早く先回ることなんて出来ない。

「これ(ぜぇぜぇ)……外に(ぜぇぜぇ)……出れないんじゃ(ぜぇぜぇ)……」

 アリスは息がきれながらも発言する。城から南門までもそこそこ距離があったため体力の無いアリスが息切れするのも仕方のないことであった。問題はその結果が徒労に終わったことだ。

「これ、そのまま通過できないし、馬車に乗ったら確実にバレるよね……」
「この調子なら東門も封鎖されてるわね。あっちは見晴らしが良くなってる分見つかる可能性が高いから先にこっちに来ておいて正解だっわ」

 東門は先日のドラゴンの襲撃の影響で壊滅状態になっている。門自体はそのまま残っているため東から王都を出るためには門をくぐらなければならない。南門同様に当然ウンブラの配下の兵士がいるだろう。隠れる場所も無いため誰かが近づいてきたらすぐに分かってしまう。偶然にも南門へ来たことでエイシェル達は自分達の置かれている状況をバレずに知ることができた。

「……どうしよっか」
「兵士がいなさそうな西を目指す……とか?」
「ほぼ崖のような場所ばかりだから危険だけど……行くしかないか?」
「でも、公園の入口に兵士いそうじゃない?」
「確かに……他に山に入れそうな道あったか?」

 エイシェル達が議論しているところ南門に着いてから無言で何かを考えていたディアが声をかける。

「ねぇ、一回ギルドに行ってみるのはどう?匿ってくれるんじゃないの?」
「ギルドか……でも、これ以上迷惑をかけるわけには……」
「というかさ」

 息を整えたアリスが気付いたことを指摘する。それは今後の逃避行を考えると必ず必要になるものだった。

「逃げるにもお金が必要じゃない?逃げた先のギルドで依頼を受けられるかも分からないし、受け取りも兼ねて一度ギルドに行くのがいいんじゃないかな。アイトネさん達の感じだと味方してくれそうだし」
「何か情報くれるかもしれないしね」
「……確かに途中で馬車にも乗れなくなったら危ないな。まずギルドに行ってみよう」

 アリスとディアの発言を受けてエイシェル、フラム、フルームは頷きギルドへと向かうことにした。




 ギルドに到着するとエイシェルが窓から中を覗く。どうやらウンブラ配下の兵士はいないようだった。ただ、どうしても気になることがある。

「中は大丈夫そうだが……ここに来るまでに誰にも会わなかったよな……?」
「それわたしも気になってた。南門には兵士がいたけど、他に誰にも会わなかったよね」
「中には人はいたの?」
「……受付に人がいたけど、言われてみたら他に人は見当たらなかったな。いつもなら依頼を受けた冒険者がいてもおかしくないんだが」

 不思議に思いつつも今がチャンスとばかりにエイシェル達はギルドに入った。


カラン

「今ギルドは臨時対応中で……ってあなた達は!?」
「あ、えっと……」

 しまった。アイトネの反応から安心していたが入ったのは不味かっただろうか。そう思った矢先に受付があわてて訂正し始めた。

「あ、大丈夫です!ギルドはあなた達の味方ですから。安心して下さい。ただ、こちらですと人目に付くので奥の部屋に移動をお願いします」
「分かりました」

 少々不安はあるものの、ギルドの受付の言葉を信じ奥の部屋へと向かう。そこは裏口が近い比較的小さな部屋だった。

「狭くてすみません。万が一があった時にすぐに外に出られる方がいいと思って裏口が近いところにしました」
「万が一って?」

 受付の話に不穏な空気を感じ取りエイシェルが突っ込む。そこから受付は順を追って話し始めた。

「まず、ギルドには遠隔で音声を伝える装置があるのですが、王都のギルドには予備があってサフさんが持って行ってたんです。それで何があったかマスターに説明いただき対応を依頼されていました」
「アイトネさん……」
「みんなに助けられてるな……」
「ところでその依頼された内容って?」

 アリスとエイシェルがアイトネ達に感謝しているとディアが声をかける。支援の内容次第ではここを拠点にできるかもしれない。

「はい。……私達が受けたのは3つ。まずお城からの依頼は出来るだけ断ること。もし拘束されるような事態になりそうならやむを得ず受ける。……ここは、実は先ほどまで兵隊の方が来ました。今代の魔王の討伐依頼です」
「……っ!」

 魔王の討伐という単語にアリスは胸が締め付けられるような思いをした。今までただの少女として過ごしてきたのに急に世界の敵のような扱いである。バレた時の事は考えたこともあったがここまで精神的に来るとは思っていなかった。

「安心して下さい。依頼内容が不明確ということにして受理していません。……先に進みますね。次に住民の外出自粛の徹底。……信じがたい話ですが国王が乱心されたと話があり、住民の安全を考え外出を控えるようにと案内を出していました。そもそも先日あんなことがあったばかりなのでみなさんほとんど外出していないのと、東から北にかけての復興作業をされる方々が集まっているくらいなのでさほど影響はなさそうです」

 途中で人が見当たらなかったのはそういう事だったのか。言われてみれば確かに朝からも少ししか人を見かけなかった。

「最後に、あなた達のサポートを頼まれました。考え付く事を片っ端から対応してほしいと。まずこれを受け取って下さい」

 受付がそう言うと部屋の隅に置かれた袋を机に置いた。

「お預かりしていたお金です。……ただ、申し訳ございません。まだ用意出来てない分があり、それは準備が出来ておらず……」

 それはここ数日で急に稼いだ報奨金の一部であった。金貨2万枚が手に入る予定でいるがそんなに持ち運ぶ事は出来ない。用意された分だけでもとても持ち運べそうにない。

「十分です。用意いただきありがとうございます。…….といっても全部持てないので持てそうな数だけ持って行きます。残りはまた来た時にお願いします」

 エイシェルがそう言うと受付は申し訳なさそうな、寂しそうな表情を浮かべながらも「分かりました」と返事をしてくれた。
 また戻って来れる保証はない。むしろ戻って来られない可能性の方が高い。それでもまた来た時と言われたてしまうと希望を持ってしまう。そんな受付の気持ちの変化が見てとれた。

 結局ひとり金貨100枚ずつ持ち、合計500枚を追加で受け取った。その後すぐに受付が話を続ける。

「次に、王都からの脱出を手助けしてくれるという協力の申し出がありました。みなさんも探していた人ですよ」

 受付はそう言うと一度部屋を出て行く。そして、すぐに戻ってきた。

「こちらです。どうぞ」

 そう言われて後ろから現れたのは確かに探していた人物であった。
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