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第五章 アンダーグラウンド
167.脱出
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「やぁ、キミ達また会ったね」
「!?」
「ステラ!」
「え?この子がステラ!?」
「お、覚えててくれてありがとう。アリスと……え?」
ステラが現れアリスとディアが驚きの声をあげる。そのふたりの姿を見たステラは違和感を感じ言葉が止まった。
「……えーっと、どういうこと?というかそちらの方……は!?」
「……ディアよ。よろしく」
「う、うん。ボクの方こそよろしく……」
ステラは魂の色が分かる。アリスの中にあったふたつの魂が分かれていることに驚いたステラだったが、よくディアの顔を見てさらに驚いた表情を見せる。
ディアも最初こそ驚いていたもののすぐにいつも通りの表情になり簡素な挨拶で終わらせていた。
2人の様子がおかしい事に気付く余裕もないエイシェルは単刀直入に話し始める。
「ステラ。早速で悪いんだが王都を出たいんだ。協力してもらえると助かる」
「あ、そうだね。その為に来たんだ」
ディアの態度に煮え切らない表情を浮かべるステラだったが、エイシェルの言葉に頭を切り替えて話し始める。
「詳しい話は移動しながらでいいかな?……すぐにでも移動した方が良さそうだから」
『誰もいないのか!?』
ステラがそう言うと入り口から聞いたことのある怒鳴り声が聞こえる。声の主はウンブラだろう。即席氷の檻から抜け出し追ってきたに違いない。
「はーい!ただいま行きますー!……皆さんご無事で……!」
そう言うと受付は入り口へ走っていった。きっと出来るだけ足止めをしようと考えているのだろう。
「今のうちにボク達も行こう。……と、その前にこれ被って」
「これは?」
「ただのフード付きマント。万が一見られてもパッと見で分からないようにしようと思って。……予備を用意しておいてよかったよ」
部屋に残された5人はステラからマントを受け取り頭から被る。そしてそのままステラを先頭にギルドの裏口から出ていくのだった。
ギルドの裏口から出た6人は人目に付かないよう注意しながら東側へ進んでいた。
東側の廃墟となってしまった辺りを歩いているとフルームとフラムが痺れを切らした。
「ねぇ、これどうやって脱出するの?」
「まさか……兵士に引き渡したりなんてことはないわよね?」
「そんなことしないよ!大切なお客様だもん!というかボク信用なさすぎない?いや、確かにそこまで親しい間柄じゃないけどさ……。まぁ、そのくらい慎重の方がボクとしても都合がいいか。うん、そうだね」
フルームとフラムが半信半疑で質問する。少し失礼な質問かもしれないが2人は騎士としてエイシェルとアリスを守ると決めている。その為、妥協出来ないのだ。
最初こそ軽くショックを受けていたステラではあったが、すぐに気持ちを切り替えて説明を始める。
「まず、これから起こることは他言無用ね。ここだけの話にしてほしいってこと。ちょっと信じられないかも知れないんだけど、遠い場所を瞬間的に移動出来る方法があるんだ。今回東側の廃墟に仕掛けて置いたからそこに向かってる」
「それって転移紋のこと?」
「ちょっ!?」
ステラが懇切丁寧に説明しているところにディアが割り込んで話す。ステラはその言葉を聞いて慌て始めた。
「大丈夫よ。私達は転移経験済みだから。転移紋自体はそこの2人にも説明はしてある。こっちでは魔法陣とも言われてたわね」
「え、ちょっと待って。経験済み?なんで?」
「あなたなら空山って言えば分かるんじゃないの?」
「!?……それ、ちょっと詳しく……」
『おい!お前らなんだ?ちょっとそっちに行くから待ってろ!』
「「「「「!?」」」」」
「走って!!」
『逃げるな!誰か!誰かいるか!?いたぞ!あそこだ!』
ステラとディアが話しているとウンブラの配下の兵士らしき人物が叫び始めた。声の方を見ると無人であるはずの家から出てきた所のようだ。荷物が多いことからきっと金目のものを集めていたのだろう。恐らく持ち場を離れて勝手な行動をしていたのだろうが、その為予測することは出来ず、結果的に見つかることとなってしまった。
「あそこの兵士って火事場泥棒までするの!?」
「国王直属の部隊じゃなかったのかよ!?」
「腕っぷし強いやつばかり集めるからならず者も入ってくるんだよ!……そもそも部隊の目的って表沙汰に出来ないような事ばかりだし!」
「嘘でしょ……」
「お姉ちゃん……」
ウンブラ配下の兵士が盗みを働いていたことにショックを受けるフラム。王国の騎士に憧れて今まで鍛錬を続けてきた。信じるものがあったから頑張れた。それを根底から覆えすような事が立て続けに起こったのだ。ショックを受けても仕方ない。
青い顔をするフラム。フルームもなんて声をかけて良いのか分からずにいた。それを見かねたディアが走りながら声をかける。
「はぁ、フラム。あなたは何なの?」
「え?」
「王国の騎士?それとも国王の手足となって働く駒?……ううん、違うでしょ?今のあなたはこの娘達の守護騎士」
「!!」
「この娘達を守るって決めたんなら他のものに浮気しないの。最初からこの国を相手取る覚悟なんでしょ?シャキッとしなさい」
「ディア……」
「……そうだよ。お姉ちゃん。私ももう迷わない。どう考えてもおかしいもん!私は私の信じる道をいく!」
「かっこいいこと言うじゃないの。妹がここまで言ったんだから姉であるあなたも腹括りなさい」
「…….そうね。ごめん。少し弱気になってた。私ももう迷わない。この2人は私達が守るわ」
「よろしい!……で、まだつかないのかしら?喋ったせいで息が上がってきたのだけれど」
「もうすぐだから!あそこの小屋!」
体力がないディアが一仕事したから休ませろとばかりに訴える。それを聞きディアが少し離れた小屋を指差し大声で答える。
「くそっ……思ったより近くに居たんだな。結構集まってきてる」
「はぁ……はぁ……もう……ダメ……」
「アリス頑張れ!もうちょっとだから!」
「だ、だって……ようは……追いつかれなきゃ……いいんでしょ?……それなら……」
アリスは息も途切れ途切れになりながら急に反転して両手をウンブラの兵士達に向かって突き出した。
「アイス……ウォール!」
そう言った瞬間エイシェル達6人とウンブラ配下の兵士との間に氷の壁が生まれる。
その壁は分厚く剣で殴っても簡単には壊れないだろう強度があった。
「ぜぇ……ぜぇ……最初から……こうしとけば……よかったのよ……」
「見つかったのなら目立っても変わらないものね。やるじゃない」
『今の音はなんだ!こっちか!?』
「うわ、東門の人もこっちに来るよ!」
「早く小屋へ!」
アリスが派手に魔法を使ったため近くにいた東門の兵士にも気付かれたようだ。
6人は東門の兵士が来る前に急いで小屋の中へ入るのだった。
小屋へ入るとステラは扉の鍵をかけた。これですぐには小屋にはいれないだろう。
中を見ると中央に布が置かれ、その上にテーブルが置かれていた。テーブルの上に何やら手のひらサイズの物が布に包まれて置かれている。
「ちょっとごめんよ」
ステラがテーブルに近づきそのテーブルをゆっくりどかし、布をどかすと地下へと続く階段が現れた。
「この下はどこに続いてるんだ?」
「あとで説明するよ。みんなその場でいいから手を繋いで」
ステラはそう言うと机の上にあったものを手に取り、布をとってそれを手に持つ。そして、全員手を繋いでいることを確認し近くにいたエイシェルの手を握る。
「じゃあ、ついてきてね」
ステラはそう言うと何かを持った手を上に掲げ、それに魔力を込め始めた。すると、その瞬間視界が暗転し視界が別の部屋へと移った。
そこは狭い空間で部屋の中央には魔法陣のような模様がある。
「もう大丈夫。安心していいよ」
「ここは……?」
「もうちょっと広いところにでてから説明するよ。ここだと落ち着かないからね」
ステラはそう言うと狭い出入り口へ向けて歩き始めた。
しばらく狭い通路を歩くと比較的広い広間に着いた。その広間から複数の入り口がある。恐らく同じように転移紋の部屋があると推測された。
「あともうちょっとだよ。この部屋はね、緊急転移用の部屋なんだ。もし、転移の際に敵が入ってきても、通路を崩すことで侵入を防ぐことになってる。……そうなったら連れてきた人は敵と一緒に生き埋めだから転移は気をつけてやらないといけないんだ」
ステラはみなが気になっているであろうことについて説明した。その言葉を聞いて何人かは納得したような反応を示す。
「ここはどこなんだ?あと、なんでさっき隠し通路を開けたんだ?」
エイシェルはそろそろいいだろうと質問を始める。
それに対してステラは歩きながら答え始めた。
「うーん、ここの事は詳しくは言えないんだけど、隠れ家みたいなものかな?んで、さっきの隠し通路は撹乱のため。あの通路東の街道に繋がってるけど、中は迷路みたいになってるんだ。すぐには抜けられないし、抜けたとしてもそこにボクたちはいないから徒労に終わるってわけ」
エイシェルの質問にクスクスと笑いながら答えるステラ。迷路で迷っている兵士を想像して愉しんでいるようだ。
そこで、アリスがなにやら気付いたように質問する。
「もしかして……最初から小屋の場所をバラすつもりだった?」
「ご明察。もともと大きな音でも立てて小屋を調べさせるつもりだったんだ。東門から近いしね。無駄に走る羽目になったけどね」
ステラの回答に納得した様子のアリス。だが納得していない人もいた。
「でも、転移紋の場所がバレたら今後使いにくいんじゃないの?小屋から出入りしてるのバレたら間違いなく捕まるわよ?」
ディアが気になった事を質問した。
ディアの指摘はもっともである。もし仮に逃げたとしても転移紋の存在を知られるわけにはいかない。こんなに目立ってしまった為、この小屋を出入りしている人物は誰であろうと要注意人物だろう。ステラが出入りしているのを見られた時点ですぐに捕まってしまう。
しかし、それを聞いたステラは悪い笑みのまま指を振る。それは、待ってましたと言わんばかりの態度であった。
「ボクがそんなヘマをするわけないでしょ?ここで使うのは使い捨ての転移紋だよ」
「使い捨て……?」
「そう、例えば転移紋を刻んだ石を手に持って転移するとどうなる?」
「……石だけが残って持っていた位置から地面に落ちるわね」
「そう、それそれ。これは特別製でさ、ちょっとした衝撃で粉々になるから一回しか使えないんだ。裏を返せば足がつかないから安全に逃げられるってわけ。王都に戻る時は別の場所から入ればいいし、この小屋は用済みだよ」
「なるほどね」
ようやく納得したディア。他のメンバーも今の話を聞いて納得したようだった。
そんなこんな話しているとひらけた場所が見えてきた。そこはまるで別世界のように多くの建物が並んでおり、建物の中とは思えないほど明るかった。それはまるで別の文明の世界に入ったかのようであった。
「やっとついた。ようこそボク達の隠れ家、アンダーグラウンドへ!」
案内されたエイシェル達5人はただただ目の前の光景に圧倒されるのだった。
「!?」
「ステラ!」
「え?この子がステラ!?」
「お、覚えててくれてありがとう。アリスと……え?」
ステラが現れアリスとディアが驚きの声をあげる。そのふたりの姿を見たステラは違和感を感じ言葉が止まった。
「……えーっと、どういうこと?というかそちらの方……は!?」
「……ディアよ。よろしく」
「う、うん。ボクの方こそよろしく……」
ステラは魂の色が分かる。アリスの中にあったふたつの魂が分かれていることに驚いたステラだったが、よくディアの顔を見てさらに驚いた表情を見せる。
ディアも最初こそ驚いていたもののすぐにいつも通りの表情になり簡素な挨拶で終わらせていた。
2人の様子がおかしい事に気付く余裕もないエイシェルは単刀直入に話し始める。
「ステラ。早速で悪いんだが王都を出たいんだ。協力してもらえると助かる」
「あ、そうだね。その為に来たんだ」
ディアの態度に煮え切らない表情を浮かべるステラだったが、エイシェルの言葉に頭を切り替えて話し始める。
「詳しい話は移動しながらでいいかな?……すぐにでも移動した方が良さそうだから」
『誰もいないのか!?』
ステラがそう言うと入り口から聞いたことのある怒鳴り声が聞こえる。声の主はウンブラだろう。即席氷の檻から抜け出し追ってきたに違いない。
「はーい!ただいま行きますー!……皆さんご無事で……!」
そう言うと受付は入り口へ走っていった。きっと出来るだけ足止めをしようと考えているのだろう。
「今のうちにボク達も行こう。……と、その前にこれ被って」
「これは?」
「ただのフード付きマント。万が一見られてもパッと見で分からないようにしようと思って。……予備を用意しておいてよかったよ」
部屋に残された5人はステラからマントを受け取り頭から被る。そしてそのままステラを先頭にギルドの裏口から出ていくのだった。
ギルドの裏口から出た6人は人目に付かないよう注意しながら東側へ進んでいた。
東側の廃墟となってしまった辺りを歩いているとフルームとフラムが痺れを切らした。
「ねぇ、これどうやって脱出するの?」
「まさか……兵士に引き渡したりなんてことはないわよね?」
「そんなことしないよ!大切なお客様だもん!というかボク信用なさすぎない?いや、確かにそこまで親しい間柄じゃないけどさ……。まぁ、そのくらい慎重の方がボクとしても都合がいいか。うん、そうだね」
フルームとフラムが半信半疑で質問する。少し失礼な質問かもしれないが2人は騎士としてエイシェルとアリスを守ると決めている。その為、妥協出来ないのだ。
最初こそ軽くショックを受けていたステラではあったが、すぐに気持ちを切り替えて説明を始める。
「まず、これから起こることは他言無用ね。ここだけの話にしてほしいってこと。ちょっと信じられないかも知れないんだけど、遠い場所を瞬間的に移動出来る方法があるんだ。今回東側の廃墟に仕掛けて置いたからそこに向かってる」
「それって転移紋のこと?」
「ちょっ!?」
ステラが懇切丁寧に説明しているところにディアが割り込んで話す。ステラはその言葉を聞いて慌て始めた。
「大丈夫よ。私達は転移経験済みだから。転移紋自体はそこの2人にも説明はしてある。こっちでは魔法陣とも言われてたわね」
「え、ちょっと待って。経験済み?なんで?」
「あなたなら空山って言えば分かるんじゃないの?」
「!?……それ、ちょっと詳しく……」
『おい!お前らなんだ?ちょっとそっちに行くから待ってろ!』
「「「「「!?」」」」」
「走って!!」
『逃げるな!誰か!誰かいるか!?いたぞ!あそこだ!』
ステラとディアが話しているとウンブラの配下の兵士らしき人物が叫び始めた。声の方を見ると無人であるはずの家から出てきた所のようだ。荷物が多いことからきっと金目のものを集めていたのだろう。恐らく持ち場を離れて勝手な行動をしていたのだろうが、その為予測することは出来ず、結果的に見つかることとなってしまった。
「あそこの兵士って火事場泥棒までするの!?」
「国王直属の部隊じゃなかったのかよ!?」
「腕っぷし強いやつばかり集めるからならず者も入ってくるんだよ!……そもそも部隊の目的って表沙汰に出来ないような事ばかりだし!」
「嘘でしょ……」
「お姉ちゃん……」
ウンブラ配下の兵士が盗みを働いていたことにショックを受けるフラム。王国の騎士に憧れて今まで鍛錬を続けてきた。信じるものがあったから頑張れた。それを根底から覆えすような事が立て続けに起こったのだ。ショックを受けても仕方ない。
青い顔をするフラム。フルームもなんて声をかけて良いのか分からずにいた。それを見かねたディアが走りながら声をかける。
「はぁ、フラム。あなたは何なの?」
「え?」
「王国の騎士?それとも国王の手足となって働く駒?……ううん、違うでしょ?今のあなたはこの娘達の守護騎士」
「!!」
「この娘達を守るって決めたんなら他のものに浮気しないの。最初からこの国を相手取る覚悟なんでしょ?シャキッとしなさい」
「ディア……」
「……そうだよ。お姉ちゃん。私ももう迷わない。どう考えてもおかしいもん!私は私の信じる道をいく!」
「かっこいいこと言うじゃないの。妹がここまで言ったんだから姉であるあなたも腹括りなさい」
「…….そうね。ごめん。少し弱気になってた。私ももう迷わない。この2人は私達が守るわ」
「よろしい!……で、まだつかないのかしら?喋ったせいで息が上がってきたのだけれど」
「もうすぐだから!あそこの小屋!」
体力がないディアが一仕事したから休ませろとばかりに訴える。それを聞きディアが少し離れた小屋を指差し大声で答える。
「くそっ……思ったより近くに居たんだな。結構集まってきてる」
「はぁ……はぁ……もう……ダメ……」
「アリス頑張れ!もうちょっとだから!」
「だ、だって……ようは……追いつかれなきゃ……いいんでしょ?……それなら……」
アリスは息も途切れ途切れになりながら急に反転して両手をウンブラの兵士達に向かって突き出した。
「アイス……ウォール!」
そう言った瞬間エイシェル達6人とウンブラ配下の兵士との間に氷の壁が生まれる。
その壁は分厚く剣で殴っても簡単には壊れないだろう強度があった。
「ぜぇ……ぜぇ……最初から……こうしとけば……よかったのよ……」
「見つかったのなら目立っても変わらないものね。やるじゃない」
『今の音はなんだ!こっちか!?』
「うわ、東門の人もこっちに来るよ!」
「早く小屋へ!」
アリスが派手に魔法を使ったため近くにいた東門の兵士にも気付かれたようだ。
6人は東門の兵士が来る前に急いで小屋の中へ入るのだった。
小屋へ入るとステラは扉の鍵をかけた。これですぐには小屋にはいれないだろう。
中を見ると中央に布が置かれ、その上にテーブルが置かれていた。テーブルの上に何やら手のひらサイズの物が布に包まれて置かれている。
「ちょっとごめんよ」
ステラがテーブルに近づきそのテーブルをゆっくりどかし、布をどかすと地下へと続く階段が現れた。
「この下はどこに続いてるんだ?」
「あとで説明するよ。みんなその場でいいから手を繋いで」
ステラはそう言うと机の上にあったものを手に取り、布をとってそれを手に持つ。そして、全員手を繋いでいることを確認し近くにいたエイシェルの手を握る。
「じゃあ、ついてきてね」
ステラはそう言うと何かを持った手を上に掲げ、それに魔力を込め始めた。すると、その瞬間視界が暗転し視界が別の部屋へと移った。
そこは狭い空間で部屋の中央には魔法陣のような模様がある。
「もう大丈夫。安心していいよ」
「ここは……?」
「もうちょっと広いところにでてから説明するよ。ここだと落ち着かないからね」
ステラはそう言うと狭い出入り口へ向けて歩き始めた。
しばらく狭い通路を歩くと比較的広い広間に着いた。その広間から複数の入り口がある。恐らく同じように転移紋の部屋があると推測された。
「あともうちょっとだよ。この部屋はね、緊急転移用の部屋なんだ。もし、転移の際に敵が入ってきても、通路を崩すことで侵入を防ぐことになってる。……そうなったら連れてきた人は敵と一緒に生き埋めだから転移は気をつけてやらないといけないんだ」
ステラはみなが気になっているであろうことについて説明した。その言葉を聞いて何人かは納得したような反応を示す。
「ここはどこなんだ?あと、なんでさっき隠し通路を開けたんだ?」
エイシェルはそろそろいいだろうと質問を始める。
それに対してステラは歩きながら答え始めた。
「うーん、ここの事は詳しくは言えないんだけど、隠れ家みたいなものかな?んで、さっきの隠し通路は撹乱のため。あの通路東の街道に繋がってるけど、中は迷路みたいになってるんだ。すぐには抜けられないし、抜けたとしてもそこにボクたちはいないから徒労に終わるってわけ」
エイシェルの質問にクスクスと笑いながら答えるステラ。迷路で迷っている兵士を想像して愉しんでいるようだ。
そこで、アリスがなにやら気付いたように質問する。
「もしかして……最初から小屋の場所をバラすつもりだった?」
「ご明察。もともと大きな音でも立てて小屋を調べさせるつもりだったんだ。東門から近いしね。無駄に走る羽目になったけどね」
ステラの回答に納得した様子のアリス。だが納得していない人もいた。
「でも、転移紋の場所がバレたら今後使いにくいんじゃないの?小屋から出入りしてるのバレたら間違いなく捕まるわよ?」
ディアが気になった事を質問した。
ディアの指摘はもっともである。もし仮に逃げたとしても転移紋の存在を知られるわけにはいかない。こんなに目立ってしまった為、この小屋を出入りしている人物は誰であろうと要注意人物だろう。ステラが出入りしているのを見られた時点ですぐに捕まってしまう。
しかし、それを聞いたステラは悪い笑みのまま指を振る。それは、待ってましたと言わんばかりの態度であった。
「ボクがそんなヘマをするわけないでしょ?ここで使うのは使い捨ての転移紋だよ」
「使い捨て……?」
「そう、例えば転移紋を刻んだ石を手に持って転移するとどうなる?」
「……石だけが残って持っていた位置から地面に落ちるわね」
「そう、それそれ。これは特別製でさ、ちょっとした衝撃で粉々になるから一回しか使えないんだ。裏を返せば足がつかないから安全に逃げられるってわけ。王都に戻る時は別の場所から入ればいいし、この小屋は用済みだよ」
「なるほどね」
ようやく納得したディア。他のメンバーも今の話を聞いて納得したようだった。
そんなこんな話しているとひらけた場所が見えてきた。そこはまるで別世界のように多くの建物が並んでおり、建物の中とは思えないほど明るかった。それはまるで別の文明の世界に入ったかのようであった。
「やっとついた。ようこそボク達の隠れ家、アンダーグラウンドへ!」
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