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第五章 アンダーグラウンド
168.アンダーグラウンド
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ステラに連れられて歩いていた5人は周りの様子を窺いながら歩いている。途轍もなく広い空間に見た事もない建物が整然と並ぶその光景は圧巻である。
そのまま連れられてひとつの建物の前に到着する。中に入るとカウンターがあり、壁にはフロアの状況を示しているのだろうか、フロア毎に部屋の番号が振られた絵が描かれている。それは宿泊施設のように見えた。
「みんな、ちょっと待っててね」
ステラはそう言うとカウンターへ向かい受付の人と話し始めた。
遠目で受付が驚いたり不思議がったりしている様子が見て取れる。何を話しているのか気になるが話がまとまったのかステラが戻ってきた。受付の人は深々とお辞儀をしている。
「お待たせ。5部屋空いてそうだったから取っといたよ」
「ここって……宿ってことであってる?」
さも当然かのようなステラの反応に念のため確認を入れるフラム。他の4人も不思議そうにステラを見る。
「ん?……あぁ!そうそう。ここ宿泊施設だから、しばらくはここがみんなの家ってことで」
「で、でも……ここって高いんじゃないのか?1泊いくらなのか……」
「しばらくは泊まれると思うけど……値段次第で泊まる場所変えなきゃ……」
壁も床もツルツルしてて見た事もない綺麗な宿に警戒するエイシェルとアリス。今までの経験からかなり高い宿だと想像がつく。
そんな様子を見てステラが笑いながら答える。
「大丈夫。ここは来訪者向けの宿だからお金なんて取らないよ。その代わりちょっとお手伝いをお願いするかもだけど」
「そのちょっとの手伝いがすごく怖いんだけど……」
「わたし達に拒否権はないって事ね……」
ステラの答えに身構えるフルーム。アリスが諦めたように呟くとステラは慌てて訂正する。
「ちょっと!勝手に変な誤解しないでよね!無理にお願いするつもりは無いし断ってくれても構わない。でも、多分聞いたら手伝ってくれると思ってるだけだよ」
「そう……それなら。ところでそろそろ聞いてもいいかしら。ここってなんなの?どういった場所なの?……ステラってここではどういう人なの?」
ステラの話が終わったところでアリスが気になっていた事をステラに聞いた。全員が圧倒され聞くに聞けずにいた。
「うーん、詳しい場所までは話せないけど……ある程度は話しても大丈夫そう。というか話しておいた方がよさそうだね。場所を移そうか」
ステラはディアを見ながらそう話す。ディア以外の4人はなんのことかと疑問に思うがディアは何やら心当たりがあるようだった。
ステラに連れられてエイシェル達5人は宿の一室に案内される。中央に大きめの机があり、両端にそれぞれ3人ほど座れそうな長椅子が置かれており、それは応接間のようであった。
「適当にかけてよ」
ステラに言われるがまま椅子に腰掛ける5人。扉から離れた椅子にディア、アリス、エイシェルが座り、扉側の椅子にフラム、フルームが座る。ステラは扉を閉めた後空いていたフルームの隣に座った。
「さて、まずこの隠れ家についてだけど……どこかの大陸の地下にあるってだけ伝えておこうかな」
「地下?」
「そう、地面の下。ここでボク達は暮らしているんだ。そしてボクはここの代表みたいな感じ」
「待って、達っていう事は結構人数いるの?なんで地下で暮らしてるの?」
「実は……」
アリスの質問にステラが答えようとする。しかし横から回答が回答が返ってきた。
「ここに住んでるのは全員魔族。違う?だから地上では住めない。地上で生活するとまた争いが生まれるから」
ディアがそう言うとエイシェル達4人は驚きの表情を浮かべる。肝心のステラはやれやれといった表情で続きを答える。
「正解。ボク達魔族は地上では住めない。もちろん地下だけでは手に入らないものとかあるから地上との接点はあるけど、地上でそのまま生活している魔族は少ないんだ」
「ちょ、ちょっと待って。魔族って滅んだんじゃないの?」
「それに、ステラは耳尖ってないよね。魔族って耳尖ってるんじゃないの?」
ステラの説明にアリスとフルームが質問する。この1000年の間に姿を消した魔族が地下で暮らしていると言うのだ。ステラの見た目も他のヒトと変わらない。魔族の特徴である尖った耳がない為、魔族と言われても実感が持てないでいた。
「魔族は1000年前から避難場所を探して彷徨ってたんだ。そして、安全に隠れられるところを地下に作ったってわけ。……耳については人によるかな……」
言いにくそうにしているステラにディアが突っ込んだ。
「あなた……耳を切ったわね?」
「え?」
「……まぁ、そう言う事」
「え、どういうこと……?だって耳の形切ったにしてはすごく綺麗じゃない?」
ディアとステラのやり取りを聞いていた4人は驚く。今の話で何となく勘付いたが、耳の違和感のなさに奥にいたフラムが思わず質問をした。
「今は技術が発達していて不自然にならないように出来るんだ。……まぁ古い考えの人はあまり良くは思わないみたいだけどね」
そう言うとステラはディアの方を見る。今までのやり取りから考えてステラにはディアの耳が見えているであろうことは容易に想像ができた。
「こっちもそろそろ聞いていいかな?そちらのディアさんは……もともとアリスの中にいたんじゃないの?」
ステラの言葉に目を見開くディア。しかし、聞き流していたはずの言葉が蘇る。祖龍との遭遇の後に確かエイシェル達が何か話していたような……。そして同時にハクの事が思い出された。そこから呼び起こされる記憶がディアの頭を巡る。そして、ディアはなにやら腑に落ちたかのような表情に変わり確認する。
「あってるわ。ちなみに根拠は魂の色かしら?」
「……そう」
「それは……誰かから教えてもらったんじゃないの?」
「……あってる。先生がいた」
「そう……」
ディアはそう言うと目を閉じて大きく深呼吸をした。深呼吸を終えたディアの表情はなにやら満足気である。
「私のことはいいからこの子達の話を聞いてちょうだい」
「でも!」
「いいから。こっち優先でしょ?」
「……わかった」
ディアの言葉に渋々ながら応じるステラ。2人のやりとりについて行けてない他の4人であったが、アリスが「知り合いなの?」と聞いても「先に要件を話しなさい」と言われてはぐらかされてしまった。……アリスが聞いてしまった時点でディアに回答権は無いわけだがステラも応じる気はないようだった。
仕方がないので当初の予定通り転魂箱について確認するのだった。
「実は、ずっと転魂箱について確認したくてステラのことを探してたの」
アリスはそう言うと鞄から転魂箱を取り出して机に置いた。ステラはその箱をまじまじと見て視線をディアへ移す。
「……なるほど。転魂箱の原理を応用して新しい身体に魂を移したと……あれ?その身体ってどう用意したの?他の人の死体は使えないと思うんだけど……そもそも見た目魔族だし……?」
やっぱりバレていたという表情を浮かべるエイシェル達4人に構わずディアは淡々と会話を続ける。
「エイシェルの魔法でドラゴンの被害者を蘇生したのは知ってる?」
「そせ…え?なにそれ?」
「勇者の魔法の一つらしいんだけど感じたことの無い魔力だったのよね。妙に身体を創り上げるのに特化した魔力というか……。その魔力を感じ取ってみたら記憶から身体を再現出来るみたいだったからちょっと魔力を拝借して身体を作ってみたってわけ」
「いや、作ってみたって……なんかもういろいろ摂理に反してる気が……」
「出来たんだからそれが全てよ。そしてここからが本題」
ディアはアリスは目配せするとアリスがここからは自分の仕事というかのように話を引き継いだ。
「今こんな状態なんだけど、わたしが質問した内容にディアが答えると身体を残して魂がわたしの中に戻っちゃうみたいなの。どうにかしてその制約を解除出来ないかな。……もっというと、このまま完全に切り離せないかなって」
アリスの申し出にうんうんと頷くディア。それをみて何やら考えるステラ。意を決したようにアリスに確認した。
「……ちなみに、それだとディアさんが自由になるけどいいの?自由になった途端に悪さとかしない?」
「……」
ステラがアリスにそう問いかける。ディアはまっすぐステラを見てアリスの反応を待った。
最初は何を言っているのか分からないと言ったようにキョトンとしたアリスだったが、質問の内容が頭に入ってくると手を左右に振り笑いながら答えた。
「あはは……ないない。ディアはそんなことしないよ」
「なんで言い切れるの?」
アリスがあまりにもハッキリ答えるものだからステラは意外そうな顔をしながら質問を続ける。だが、その質問もアリスにとって答えは決まっていた。
「なんかね、同じ身体にずっといたからかディアの気持ちがなんとなく分かるの。ご飯食べてる時にどれだけ幸せかとか、勇者さんの話をしてる時なんだか切ないとか」
「余計なこと言わないの」
「ごめん。だから、ディアはもう悪いことはしないって分かるから。自由にしてあげたいな」
アリスがそう言うとステラはやれやれといった表情を浮かべる。そして安心したように話し始めた。
「杞憂だったみたいだね。ディアさんもごめん。必要な確認だったんだ」
「気にしてないわよ。私も同じことしたと思う」
ステラとディアはそう言うとお互い緊張が解けたように表情が和らいだ。
「それじゃあ、ちょっと箱を一晩借りてもいい?今の状態を確認しないとできるとも言えないから。あ、今日は僕もここに泊まるか近くにいるよ」
「そういうことなら……」
「まぁ、大丈夫じゃない?」
アリスとディアがそれぞれ反応する。箱から距離を取りすぎると精神が不安定になるし、離れすぎるとどうなるか分からない。それを知ってかステラがすぐに補足してきたのだった。
「それじゃあ借りてくね。明日の朝には分かると思うから、まず結果だけ伝えるよ」
ステラはそう言うと転魂箱を手に取り自身の荷物へ仕舞った。
「それと、もう一つ。転魂箱をもう一つ売ってくれない?」
「転魂箱を?……あー、ごめん。それ一点物なんだ。材料も無くてすぐには用意できなさそう」
「そうなんだ……」
アリスは残念そうに呟く。勇者と会話できるのはまだまだ先になりそうだ。
「ちなみに、材料って何が必要なんだ?オレ達で用意できるなら手伝うが」
「うーん、今足りないのは、金とタングステンかなー」
「金とたん……なんだって?」
「あー……なんかすごく硬い金属が欲しい。鉱山から採掘されるんだけど希少な金属だからなかなか流通しないんだよね」
「採掘……何か特徴はあるのか?」
「うーん、ちょっと素人に判別は難しいかな……」
「そうか……」
エイシェルはどうにか手伝えないかと申し出たが、どうやら材料が特殊なようでエイシェル達では用意が難しいという事だけわかった。
それを聞いていたディアがそれとなく声を上げる。
「別に、質問が終わったら魂が戻るんでしょ?それなら鉄屑でもよくない?」
「いやいやいや……流石に鉄屑はダメでしょ。」
「なんか急に扱いが雑なんだけど!?もし使用中に壊れたらどうなるか分からないからね!?」
ディアの言葉に抗議するアリスとステラ。魂をしまっておく箱なのだから頑丈にしなければならない。鉄屑を使うなんて論外である。
だが、ディアは尚も続ける。
「そんなの壊れないように動けばいいじゃない。逃げればいいのよ逃げれば」
「箱にそんな事を求めないで!?……ん?」
ふとステラが何かに気づく。
「まって……。なるほど……。エイシェルの方もこうやって使うって事でいいんだよね?」
「あ、あぁ……」
ステラが新しいおもちゃを見つけたかのように目を輝かせる。何のことか分からないエイシェルは若干引きつつもアリスとディアの事だと理解し肯定した。
「ふむふむ……。わかった。材料を変てみる。ちょっと時間かかるけど任せてくれないかな?」
「できるの?」
「材料を変えたらすぐ壊れるとかはない?」
「ふっふっふ。ちょっと閃いたから出来てからのお楽しみって事で。聞きたかったことってこの2つ?」
ステラが思いつきに不安の声を上げるフルームとフラム。だが、ステラは悪戯を企んでる顔で秘密にするのだった。
ひと通り話し終わったステラは要件が終わったかを確認する。しかし、まだ大切な話題が残っていた。
「あとひとつだけお願い。……ステラは神様って知ってる?」
アリスのそのひと言にステラが真面目な顔になるのだった。
そのまま連れられてひとつの建物の前に到着する。中に入るとカウンターがあり、壁にはフロアの状況を示しているのだろうか、フロア毎に部屋の番号が振られた絵が描かれている。それは宿泊施設のように見えた。
「みんな、ちょっと待っててね」
ステラはそう言うとカウンターへ向かい受付の人と話し始めた。
遠目で受付が驚いたり不思議がったりしている様子が見て取れる。何を話しているのか気になるが話がまとまったのかステラが戻ってきた。受付の人は深々とお辞儀をしている。
「お待たせ。5部屋空いてそうだったから取っといたよ」
「ここって……宿ってことであってる?」
さも当然かのようなステラの反応に念のため確認を入れるフラム。他の4人も不思議そうにステラを見る。
「ん?……あぁ!そうそう。ここ宿泊施設だから、しばらくはここがみんなの家ってことで」
「で、でも……ここって高いんじゃないのか?1泊いくらなのか……」
「しばらくは泊まれると思うけど……値段次第で泊まる場所変えなきゃ……」
壁も床もツルツルしてて見た事もない綺麗な宿に警戒するエイシェルとアリス。今までの経験からかなり高い宿だと想像がつく。
そんな様子を見てステラが笑いながら答える。
「大丈夫。ここは来訪者向けの宿だからお金なんて取らないよ。その代わりちょっとお手伝いをお願いするかもだけど」
「そのちょっとの手伝いがすごく怖いんだけど……」
「わたし達に拒否権はないって事ね……」
ステラの答えに身構えるフルーム。アリスが諦めたように呟くとステラは慌てて訂正する。
「ちょっと!勝手に変な誤解しないでよね!無理にお願いするつもりは無いし断ってくれても構わない。でも、多分聞いたら手伝ってくれると思ってるだけだよ」
「そう……それなら。ところでそろそろ聞いてもいいかしら。ここってなんなの?どういった場所なの?……ステラってここではどういう人なの?」
ステラの話が終わったところでアリスが気になっていた事をステラに聞いた。全員が圧倒され聞くに聞けずにいた。
「うーん、詳しい場所までは話せないけど……ある程度は話しても大丈夫そう。というか話しておいた方がよさそうだね。場所を移そうか」
ステラはディアを見ながらそう話す。ディア以外の4人はなんのことかと疑問に思うがディアは何やら心当たりがあるようだった。
ステラに連れられてエイシェル達5人は宿の一室に案内される。中央に大きめの机があり、両端にそれぞれ3人ほど座れそうな長椅子が置かれており、それは応接間のようであった。
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ステラに言われるがまま椅子に腰掛ける5人。扉から離れた椅子にディア、アリス、エイシェルが座り、扉側の椅子にフラム、フルームが座る。ステラは扉を閉めた後空いていたフルームの隣に座った。
「さて、まずこの隠れ家についてだけど……どこかの大陸の地下にあるってだけ伝えておこうかな」
「地下?」
「そう、地面の下。ここでボク達は暮らしているんだ。そしてボクはここの代表みたいな感じ」
「待って、達っていう事は結構人数いるの?なんで地下で暮らしてるの?」
「実は……」
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「ここに住んでるのは全員魔族。違う?だから地上では住めない。地上で生活するとまた争いが生まれるから」
ディアがそう言うとエイシェル達4人は驚きの表情を浮かべる。肝心のステラはやれやれといった表情で続きを答える。
「正解。ボク達魔族は地上では住めない。もちろん地下だけでは手に入らないものとかあるから地上との接点はあるけど、地上でそのまま生活している魔族は少ないんだ」
「ちょ、ちょっと待って。魔族って滅んだんじゃないの?」
「それに、ステラは耳尖ってないよね。魔族って耳尖ってるんじゃないの?」
ステラの説明にアリスとフルームが質問する。この1000年の間に姿を消した魔族が地下で暮らしていると言うのだ。ステラの見た目も他のヒトと変わらない。魔族の特徴である尖った耳がない為、魔族と言われても実感が持てないでいた。
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言いにくそうにしているステラにディアが突っ込んだ。
「あなた……耳を切ったわね?」
「え?」
「……まぁ、そう言う事」
「え、どういうこと……?だって耳の形切ったにしてはすごく綺麗じゃない?」
ディアとステラのやり取りを聞いていた4人は驚く。今の話で何となく勘付いたが、耳の違和感のなさに奥にいたフラムが思わず質問をした。
「今は技術が発達していて不自然にならないように出来るんだ。……まぁ古い考えの人はあまり良くは思わないみたいだけどね」
そう言うとステラはディアの方を見る。今までのやり取りから考えてステラにはディアの耳が見えているであろうことは容易に想像ができた。
「こっちもそろそろ聞いていいかな?そちらのディアさんは……もともとアリスの中にいたんじゃないの?」
ステラの言葉に目を見開くディア。しかし、聞き流していたはずの言葉が蘇る。祖龍との遭遇の後に確かエイシェル達が何か話していたような……。そして同時にハクの事が思い出された。そこから呼び起こされる記憶がディアの頭を巡る。そして、ディアはなにやら腑に落ちたかのような表情に変わり確認する。
「あってるわ。ちなみに根拠は魂の色かしら?」
「……そう」
「それは……誰かから教えてもらったんじゃないの?」
「……あってる。先生がいた」
「そう……」
ディアはそう言うと目を閉じて大きく深呼吸をした。深呼吸を終えたディアの表情はなにやら満足気である。
「私のことはいいからこの子達の話を聞いてちょうだい」
「でも!」
「いいから。こっち優先でしょ?」
「……わかった」
ディアの言葉に渋々ながら応じるステラ。2人のやりとりについて行けてない他の4人であったが、アリスが「知り合いなの?」と聞いても「先に要件を話しなさい」と言われてはぐらかされてしまった。……アリスが聞いてしまった時点でディアに回答権は無いわけだがステラも応じる気はないようだった。
仕方がないので当初の予定通り転魂箱について確認するのだった。
「実は、ずっと転魂箱について確認したくてステラのことを探してたの」
アリスはそう言うと鞄から転魂箱を取り出して机に置いた。ステラはその箱をまじまじと見て視線をディアへ移す。
「……なるほど。転魂箱の原理を応用して新しい身体に魂を移したと……あれ?その身体ってどう用意したの?他の人の死体は使えないと思うんだけど……そもそも見た目魔族だし……?」
やっぱりバレていたという表情を浮かべるエイシェル達4人に構わずディアは淡々と会話を続ける。
「エイシェルの魔法でドラゴンの被害者を蘇生したのは知ってる?」
「そせ…え?なにそれ?」
「勇者の魔法の一つらしいんだけど感じたことの無い魔力だったのよね。妙に身体を創り上げるのに特化した魔力というか……。その魔力を感じ取ってみたら記憶から身体を再現出来るみたいだったからちょっと魔力を拝借して身体を作ってみたってわけ」
「いや、作ってみたって……なんかもういろいろ摂理に反してる気が……」
「出来たんだからそれが全てよ。そしてここからが本題」
ディアはアリスは目配せするとアリスがここからは自分の仕事というかのように話を引き継いだ。
「今こんな状態なんだけど、わたしが質問した内容にディアが答えると身体を残して魂がわたしの中に戻っちゃうみたいなの。どうにかしてその制約を解除出来ないかな。……もっというと、このまま完全に切り離せないかなって」
アリスの申し出にうんうんと頷くディア。それをみて何やら考えるステラ。意を決したようにアリスに確認した。
「……ちなみに、それだとディアさんが自由になるけどいいの?自由になった途端に悪さとかしない?」
「……」
ステラがアリスにそう問いかける。ディアはまっすぐステラを見てアリスの反応を待った。
最初は何を言っているのか分からないと言ったようにキョトンとしたアリスだったが、質問の内容が頭に入ってくると手を左右に振り笑いながら答えた。
「あはは……ないない。ディアはそんなことしないよ」
「なんで言い切れるの?」
アリスがあまりにもハッキリ答えるものだからステラは意外そうな顔をしながら質問を続ける。だが、その質問もアリスにとって答えは決まっていた。
「なんかね、同じ身体にずっといたからかディアの気持ちがなんとなく分かるの。ご飯食べてる時にどれだけ幸せかとか、勇者さんの話をしてる時なんだか切ないとか」
「余計なこと言わないの」
「ごめん。だから、ディアはもう悪いことはしないって分かるから。自由にしてあげたいな」
アリスがそう言うとステラはやれやれといった表情を浮かべる。そして安心したように話し始めた。
「杞憂だったみたいだね。ディアさんもごめん。必要な確認だったんだ」
「気にしてないわよ。私も同じことしたと思う」
ステラとディアはそう言うとお互い緊張が解けたように表情が和らいだ。
「それじゃあ、ちょっと箱を一晩借りてもいい?今の状態を確認しないとできるとも言えないから。あ、今日は僕もここに泊まるか近くにいるよ」
「そういうことなら……」
「まぁ、大丈夫じゃない?」
アリスとディアがそれぞれ反応する。箱から距離を取りすぎると精神が不安定になるし、離れすぎるとどうなるか分からない。それを知ってかステラがすぐに補足してきたのだった。
「それじゃあ借りてくね。明日の朝には分かると思うから、まず結果だけ伝えるよ」
ステラはそう言うと転魂箱を手に取り自身の荷物へ仕舞った。
「それと、もう一つ。転魂箱をもう一つ売ってくれない?」
「転魂箱を?……あー、ごめん。それ一点物なんだ。材料も無くてすぐには用意できなさそう」
「そうなんだ……」
アリスは残念そうに呟く。勇者と会話できるのはまだまだ先になりそうだ。
「ちなみに、材料って何が必要なんだ?オレ達で用意できるなら手伝うが」
「うーん、今足りないのは、金とタングステンかなー」
「金とたん……なんだって?」
「あー……なんかすごく硬い金属が欲しい。鉱山から採掘されるんだけど希少な金属だからなかなか流通しないんだよね」
「採掘……何か特徴はあるのか?」
「うーん、ちょっと素人に判別は難しいかな……」
「そうか……」
エイシェルはどうにか手伝えないかと申し出たが、どうやら材料が特殊なようでエイシェル達では用意が難しいという事だけわかった。
それを聞いていたディアがそれとなく声を上げる。
「別に、質問が終わったら魂が戻るんでしょ?それなら鉄屑でもよくない?」
「いやいやいや……流石に鉄屑はダメでしょ。」
「なんか急に扱いが雑なんだけど!?もし使用中に壊れたらどうなるか分からないからね!?」
ディアの言葉に抗議するアリスとステラ。魂をしまっておく箱なのだから頑丈にしなければならない。鉄屑を使うなんて論外である。
だが、ディアは尚も続ける。
「そんなの壊れないように動けばいいじゃない。逃げればいいのよ逃げれば」
「箱にそんな事を求めないで!?……ん?」
ふとステラが何かに気づく。
「まって……。なるほど……。エイシェルの方もこうやって使うって事でいいんだよね?」
「あ、あぁ……」
ステラが新しいおもちゃを見つけたかのように目を輝かせる。何のことか分からないエイシェルは若干引きつつもアリスとディアの事だと理解し肯定した。
「ふむふむ……。わかった。材料を変てみる。ちょっと時間かかるけど任せてくれないかな?」
「できるの?」
「材料を変えたらすぐ壊れるとかはない?」
「ふっふっふ。ちょっと閃いたから出来てからのお楽しみって事で。聞きたかったことってこの2つ?」
ステラが思いつきに不安の声を上げるフルームとフラム。だが、ステラは悪戯を企んでる顔で秘密にするのだった。
ひと通り話し終わったステラは要件が終わったかを確認する。しかし、まだ大切な話題が残っていた。
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※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
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