ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

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第五章 アンダーグラウンド

174.遠い日の記憶2

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 今度は前の集団に混ざり歩くヴァラロスとガレス。先ほどまでのトラップだらけの通路に比べ若干道は広いがその代わりに魔物が出始めた。

「くそっ!さっきまでトラップばっかで魔物出てこなかったじゃ無いか!?なんで交代してから急に出てくるんだよ!?」
「恐らく、あのトラップに魔物もかかるんだろ。昔の地図見て思ったけど、入り口からさっきの広場までもっと広い道として書かれていたんだが実際はかなり狭かった。たぶん意図的に通路を狭くして魔物がトラップの道に入りにくくしてるんだと思う。」
「どうせなら全部トラップにしろよな!」

 ガレスが文句を言いながらモンスターを屠る。数は多いがモンスターの種類が今のところ限られているのが救いだろう。コウモリの魔物、蜘蛛の魔物、スライムである。
 コウモリは空を飛び厄介ではあるが、ある程度大きさがあるのと、狭い通路である事からうまく逃げられず比較的容易に討伐できる。蜘蛛の魔物に関しては糸を吐き動きを封じてくるのが厄介ではあるがコウモリの魔物同様に比較的大きい為討伐が出来ていた。
 問題はスライムである。他の魔物と比べて数は少ないがコアを攻撃しない事にはダメージを与えられない。そのコアが小さい為なかなか攻撃を当てられずにいた。それでも何度も攻撃するうちにコアに攻撃を当てることができなんとか倒せている現状である。

「ガレス!押されるなよ!広場まで戻されたらそれこそ袋叩きだ」
「そんなこと分かっとるわ!くそっ!数が多すぎる!……おい!ヴァラロス!お前魔法でなんとか出来ないか!?」
「出来なくはないが、こうひっきりなしに来られると準備ができない!」
「分かった!俺たちでどうにかするからお前は魔法の準備でもしてろ!……おい!お前たち!しばらく踏ん張るぞ!」

 ガレスはそう言うともっていた斧を先ほどよりも大振りで振り回し、ヴァラロスが担当していた場所まで移動する。他の冒険者もその穴を埋めそうと協力しているのが分かった。
 それをみたヴァラロスはすぐに大きく一歩下がり手を前に出して自身の生命力を魔力へと変換していく。

「みんな下がれ!」

 ガレスがそう言うと冒険者たちは一斉にヴァラロスの後ろへと下がる。その瞬間を狙ってヴァラロスは魔法を放った。

「アイスボール!」

 ヴァラロスが魔法を唱えると通路の大きさギリギリの大きな氷の球が現れた。巻き込まれた魔物は氷の中で固まっている。

「さて、地図によるとこの先の大広間に出るまでは緩やかなくだり坂になってるはずなんだわ」

 ヴァラロスはそう言うと目の前の巨大な氷の球を思いっきり蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた氷の球はゆっくりと、しかしすぐにスピードを上げて転がり始めた。


キェェエエエエ!?

 魔物が逃げ始めるがすぐに氷の球に追いつかれ押しつぶされる。目の前の通路にいた魔物がほとんど潰されていなくなっていた。

「なんかえげつねぇな……」
「袋叩きに合うよりマシだろ。ほら、隙間から抜けてきた魔物が少しはいるから休んでる暇はないぞ?」

 そう言うとヴァラロスは残った魔物を相手にするのだった。

「まぁ、楽になったのは助かった。……足元が魔物だらけで歩き辛いな……」

 ガレスと後ろに続く冒険者たちは目の前に広がる惨事を若干引きながら歩き進む。魔物が氷の重みで押し潰され地面にめり込んでいるのだ。その上を歩くしかないのだが躊躇してしまう光景であった。



 一本道をしばらく進むとヴァラロスが呟いた。

「結局俺しか戦ってない……まぁいいけど……」

 氷の球が魔物をほとんど押し潰してしまった為魔物はほとんど残っていなかった。残っていたとしても数体が襲いかかってくるだけなのでヴァラロス1人で十分のようだった。

「そんなら先頭変わるか?なんか足元歩きやすくなってきたから問題ないぞ……ん?なんで歩きやすくなってるんだ?」

 ガレスが自分でそう言うとそのまま疑問に思う。先ほどまで魔物の上を歩いていた筈だが、普通に歩いているような感覚になっていたのだ。
 ヴァラロスも気付いたのか足元をよく見てみる。

「これは……魔物が地面に飲み込まれてる……?」
「どうなってるんだこれ?まるでダンジョンが生きてるみたいじゃないか?」
「……これは要調査だな」

 後ろから声がしたと思えばドミニクも先頭に来ていたようだ。今までダンジョンに挑んだ冒険者が行方不明になっていたようだが、もしかするとこの魔物のようにダンジョンに吸収されていたのかもしれない。




 そのまままたしばらく歩くと大きな広間に出た。そこは広すぎて灯りが届かないのか先がよく見えないでいた。

「暗くて見えないな……ちょっと危ないけど……ライト」

 ヴァラロスが光の球を生み出し天井に向けて打ち出す。その球は天井に着くと辺りを明るく照らし始めた。

「……えーと……」
「あー……さっきのあれでか……」
「…….なんだこの化け物は……」

 目の前には巨大な蜘蛛の魔物がうずくまっている。……そして、その頭には先ほどの氷の塊がめりこんでいた。ヴァラロスが転がした氷の球が通路を転がるうちにものすごいスピードになったようで、そのまま直線上にいた巨大蜘蛛の魔物の頭を直撃したらしい。そして、そのまま意図せずに倒してしまったようだ。

 普通に戦っていたらいくらか犠牲が出ていたであろう相手に思わず何人かの冒険者が腰を抜かしていた。

「まぁ、なんだ。結果問題ないからいいだろ。それよりこの蜘蛛、何かを守ってそうな形をしてるが……なんだこれ」
「ん?穴がある……?うわ、これ卵じゃないか……」

 ヴァラロスとガレスは蜘蛛の胴下にある穴を覗く。すると、そこには蜘蛛の魔物の卵のようなものが詰まっていた。

「ここで卵を産んで増えていたのか……普通にパーティで攻略しようとしてたら道中の魔物で疲弊してここまで来れなかっただろう」
「来れたとしてもコイツの餌食だろうな。そもそもこの狭いダンジョンにこんな馬鹿でかい蜘蛛の魔物がいるなんて思わねえし」

 ヴァラロスとガレスは思ったことをそのまま声に出した。それこそがこのダンジョンから行方不明者が出た理由だろう。少し離れたところで話を聞いていたドミニクもこればかりは想定出来ないといった顔をしていた。

「……ん?天井に何か吊るされてないか?」

 ドミニクが天井を指差すと何かが糸でぐるぐる巻きになっている。それは大きさ的にちょうど人の大きさであった。

「……助けられずすまん。せめて連れて帰ってやろう。だれか!?あの糸の塊を下ろせるか!?」

 ドミニクが冒険者の亡き骸であろう物を下ろせないか他の冒険者に確認する。基本的に冒険者は自己責任で活動するため、連れて帰ってもらうことはなかなかない。ただ、事態が事態なだけにせめて地上へ運んで埋葬出来ればと考えたのだ。行方不明者の中にはベテラン冒険者もいた。苦楽を共にした仲間もいたと考えた為そのような考えに至ったのだ。

「でも、それだと一回戻ることになりますが?」
「構わん。コイツはもう復活はしないだろう。卵も処理すれば魔物も増えないはずだ。一回地上へ戻りまた改めて挑むとしよう」

 ドミニクがそう言うと糸で吊るされた被害者を地面へ下ろす作業が始まるのだった。



 その作業が始まろうとしていた時ヴァラロスは何かに気付いた。

「……ん?なぁガレス。卵の穴の中央に何かないか?」
「あぁ?なんだって?……ありゃあ魔法陣じゃないか?なんだってあんなところに……」
「……よし。ちょっといってくるわ」
「は?」
「戻るまで卵のところ火を放ったりしないように言っといてくれ」
「おい!?待てって!ヴァラロス!?」

 ヴァラロスはガレスの言うことも聞かずに穴へと飛び込む。穴の中の卵はまだ孵化していないようでまだ安全なようであった。
 そしてヴァラロスが魔法陣に触れた瞬間その姿が消えるのだった。
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