ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

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第六章 魔王と勇者のえとせとら

182.魔王と勇者のえとせとら6

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 ディアは手を振りヴァラロスと別れると道具屋へと戻っていく。取り残されたヴァラロスは握手した手を見つめながら考えていた。

(まさか、俺が誰かとパーティを組むことになるなんてな。あの魔法、ただ魅せるだけの魔法のはずなのに洗練されていた。あんな簡単に手に魔力を集めて空に放つなんて……)

 ヴァラロスはディアが放った魔法を賞賛する。ヴァラロス自体魔法をある程度使える事からディアがいかに高度な事をしていたかがわかった。同じことをやれと言われても出来ないだろう。

(それにしても……あの笑顔は反則だろ。第一印象最悪だったけどいつもあんな笑顔を向けられたら……いかんいかん。路銀が集まるまでのパーティだ。余計なことは考えるな。俺としても依頼達成数が増えるのは悪くはない。そう、依頼達成率100%の達成数を増やせると考えればいい)

 少しディアの事が気になったヴァラロスであったが頭を振り雑念を振り払う。冒険者としてより成長出来ると考える事で自身を納得させるのだった。

(……さて、急いでここを離れるか)

 ヴァラロスは少し名残惜しくも思ったが急いでその場を後にする。理由は簡単である。

「何だ今のは!?」
「敵襲か!?魔王が攻めてきたのか!?」
「どこだ!何処にいる!?あの魔法を使ったやつを誰も見てないのか!?」
「うわーん!おかあさんこわいよー!」
「急いで帰るわよ!?いえ、この街を離れる事も……」

 辺りは阿鼻叫喚であった。道具屋の前は人気がなかった為見られてはいないが魔法が放たれた方角を辿ればいづれ道具屋の前へとたどり着く。その場にいたとしたら間違いなく質問攻めにあうだろう。

(………………よし、逃げよ)

 ここは逃げるが正解。人通りの少ない道を選んでその場を離れるヴァラロスであった。

~~~~

 ディアが道具屋に戻ると店主が立っていた。

「あんたねぇ……」
「そう怖い顔すんなって。上手くいっただろ?」
「うっ……助け舟はありがとう。でも、言いたい事は山ほどあるから。覚悟してよ、神オーディーン」
「んなこと言ったってよー」

 そこにはこの世界の神がいた。この時代においてはオーディーンと呼ばれている。

「次から次へと問題ばかり起きるからそっちの対策で忙しいんだ」
「ほぅ……こちとら魔物が増えたせいで集落が襲われてるんだ。……手詰まりだからなんとかして!」
「あー、そういった問題は自力で対処してほしいところだな。一応、おまえさん魔王だろ?」
「対処出来ないからわざわざヒント探しにこんなとこまで来たんでしょ!?」

 一度は落ち着いたディアであったがオーディーンの返答を聞き再度言葉に怒気がこもる。流石に言い過ぎたとオーディーンも素直に謝るのだった。

「あー、すまんすまん。悪かったって。確かに今は異常事態だ。……いつからか分からんが星の生命力が漏れ出ている」
「…………はぁ!?」

 オーディーンの言葉に驚くディア。怒っていたことなど忘れるほどにその事実は衝撃的であった。

「えっ、だって、そんなことになったら……」
「漏れ出てる場所では不死の生き物が生まれててもおかしくないな。もしくは、魔力変換しているのであれば、変換された際に出る残滓が漏れ出て周りの動物が魔物と化すだろう」
「それって……!?」

 ディアもそこまで言われれば気付かない筈がない。

「魔族領の魔物異常発生はそれが原因……?」
「恐らくな」
「……色々調べてたって事は、場所に検討はついてるんじゃない?」

 ディアがオーディーンに問いかける。当然分かっているだろうな。分からないなんて事は許さない。というほどまでの感情が伝わる。幸いオーディーンにて調べていた為ある程度見当はついていた。

「当然だ。これで分からんとかいってたら何されたものかわからんな……。場所は空山だ。あそこの何処かにこれを引き起こす何かがある筈だ」
「空山……」

 ディアはその場所をつぶやくが、特段心当たりはない。ただ、少し気になる事がありオーディーンへ質問をする。

「ちょっと気になることが……、なんでこっち側は被害が出ていない?空島から魔力残渣が漏れ出てるなら当然こっちも被害あるはずでしょ」
「そればっかりは分からんが……風向きか?」
「魔力って風とか物理現象に影響されるんだっけ……。というかあんた神でしょ。なんで分からないの」
「神とて知らない事は知らない!」

 開き直るオーディーンにディアはジト目でその様子を見つめる。そして諦めたようにため息を吐きながら話題を変える。

「はぁ……。まぁ、分からないものはしょうがない。根本原因はそっちでどうにかして欲しいけど、取り急ぎ魔物の被害から村を守る方法を探してるんだ。なんかない?」
「またざっくりだな。魔王自ら魔物を倒せば……その顔はもうやったって顔だな」

 オーディーンの提案に嫌そうな顔をするディア。当然もうやっている。

「当然。村のみんなで出来ることとか、そもそも魔物から村へ攻撃させない方法があればと探してた」
「なるほど……な。その耳あたりでもやもやしてるやつは使えないのか?認識阻害系のまほうだろう?」

 使ってから誰にもバレていなかった認識魔法をいとも簡単に見破るオーディーン。そもそもディアが魔王だと気付いた時点でその効力は無いに等しい。ただ、今回は部分的に認識阻害の魔法をかけている。よほど注意してみないことには気付けないはずだった。

「これ?この魔法で村全体を覆えって?……出来なくは無いけど誰が魔法を維持するんだよ……アタシはずっと一つの村にいるわけにいかないし、そもそも他の町でも被害が出てるんだ。ちょっと現実的じゃ無いかな」
「そうか、そうなると頑張って考えるしか無いな。俺は特に思いつかないが」
「はぁ……ほんと使えない神だこと……」
「うるせぇ。問題が起き過ぎるのがいけない」

 オーディーンと会話してもロクな情報が手に入らなかったディアは、オーディーンに悪態をつく。オーディーンはそれを慣れたようにあしらうのだった。

「根本原因の対処は任せたよ。そっちを対処してる時間は無さそうだからね」
「……単純に遊べる時間が無くなるだけだろ」
「な、なな何をいってるのやら?プロカルへ行って村の防衛の手掛かりを探すだけなんだが?」
「分かったよ。たまには骨休めでもしとけ。もともとこっちでやるつもりだったしな」

 オーディーンはそう言うと今度こそ店を閉めるといい、ディアは店から追い出されてしまった。
 店から出たディアが辺りが騒がしいことに気付き、それが自分の魔法のせいだと気付くと急いで宿へと帰るのであった。







 翌日の朝、時間通りにギルドへ到着するとすでにヴァラロスの姿があった。

「よぅ」
「おはよ。今日からよろしく」

 2人は簡単に挨拶を済ませるとヴァラロスを先頭に受付へと向かう。受付にはまた昨日とは違う人がいた。流石に昨日の夜に対応している人が朝もいるなんて事はないようだ。

「依頼の完了報告を頼む」
「かしこまりました。ギルドカードと依頼達成の証明としてサイン入りの依頼書を提出ください」
「ほら、これだ」
「ありがとうございます。……確かに。依頼達成確認致しました。流石ヴァラロスさんですね」
「どうも」

 一通りのやりとりを終えた後受付係は受付裏手の扉に入り報酬の入った布袋を持ってきてヴァラロスに渡した。オーディーンからの依頼はそこそこ実入りのよい依頼のようだ。

「ついでにパーティの申請も頼むわ」
「え、ついにパーティを組まれるんですか?」
「少しの間だけだ。こい……ごほん……この人とパーティを組むから」
「かしこまりました。そちらの方もギルドカードの提示をお願いします」

 一瞬こいつって言おうとしてなかったか?そんなヴァラロスをジト目で見るディア。そのまま自分のギルドカードを受付へと差し出す。

「はい、……これでいい?」
「確かに……ディアさん……Eランク?」
「うん。昨日登録した。何か問題?」
「い、いえ。問題はないのですが……ヴァラロスさんがパーティを組むなんて珍しいもので……失礼しました。それでは申請を受理させていただきます」

 どうやら本人たちの意思と、本人確認が出来ればそれでパーティが成立するようだ。ただ、ヴァラロスは今までパーティを組まずに活動していたため、受付はその相手がどんな相手なのか気になったようだ。複数人パーティが参加する大規模な魔物の討伐時は他の冒険者と連携して戦うが、基本的にひとりを好んでいた。

「よし、依頼見に行くか」

 そんなヴァラロスが依頼掲示板を見に行こうとディアを誘う。ディアはただ「うん」と頷き跡をついていった。
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