虚ろな光と揺るがぬ輝き

新宮シロ

文字の大きさ
39 / 42

34 ~同じ姿。異なる力~

しおりを挟む
 空気が変わった。そう感じたのは客席で見守るマリナだけではなかったはずだ。
 騎士団最強の男、ヴォルフォス=ガングの剣技と戦略。それに圧倒されていた剣士が放つオーラに異様な期待を抱く。会場の全ての人がゴクリと唾を飲み込んだ気がした。
「力が馴染んでくる。だけど、やっぱりまだ解放のコツが掴めないな」
 黒いオーラを纏う剣を見ながら若き剣士は呟く。
「彼もそうだった」
「彼?」
「スロースターター。だがひとたび力が乗れば私をも凌駕する。やはり君もルナルアの系統か」
 ライムを見るその目にはどこか寂しさを含んでいる。マリナを含めたこの場の殆どの人はその感情を理解できてしまう。
「隊長…」
 いつも強気で高圧的なダリアすらヴォルフォスの言葉に表情を曇らせている。隣のマリナも同じく唇を結んで見守っていた。
「マリナから、ライツという人が俺とそっくりだと聞きました。そうなんですか?」ライムが尋ねる。
「彼も君のように異質なオーラを放っていた。私が今まで出会った人の中で一番強かった」
「けど俺はライツって人とは違いますよ」
 剣を構え直し告げるが騎士団長の顔に未だ残る憂いが突撃の一歩を止める。
「君は本当に彼ではないのか?」
 違います。とは言い切れない自分がいた。話の流れで恐らくライツという人物はもう亡くなったのだろう。初めてマリナと会った時の彼女の驚きよう、そしてダリア、バッディーラ。色んなピースを集めるとその結論に至る。もしかしたら無垢の領域での時間はこちらの世界よりも短く、死んだライツが天崎来夢として転生し再びこのソルルに戻ったのかもしれない。
「わかりません。そんな記憶がないので…」
 ヴォルフォスは一つ息を吐き双剣を握る手に力を込める。
「もしそうであるならとても嬉しいよ。例え瓜二つの別人だとしても、君とこうして戦えることもまた」投擲の構えに入る。
「再開ですね」
「ああ。力を見せてくれ!」
 ライムが動くと同時にヴォルフォスも剣を投げる。炎を纏う剣を躱し、上段から斬りかかる。
「遅いですよ!」
「心配無用!」
 騎士団長の右脚がガキィンとライムの剣撃を止める。
「ふん!」
 そのまま振り切りライムを飛ばす。
「なんだ今の」
「驚いている暇はないよ!」その脚で距離を詰める。
 ハッとして辺りを見る。正面から炎の剣が襲いかかる。もう一刀は視界の外。恐らく後方か上空か。この体勢では避けきれない。ならば。
「りゃぁ!」
 目の前の一刀を青黒い剣で弾く。瞬時に死角を確認。もう一刀は背後。
「せい!」
 蹴りで弾き飛ばすとヴォルフォスは地面を砕きながら迫る。
「これはどうだ!」
「くそ!」横からの蹴りをギリギリ剣で防ぐ。
 その瞬間に騎士団長の両手には双剣が戻っていた。
「ナイトメア…!」
 燃える双剣と鋼鉄の蹴りを黒いオーラを纏った剣と蹴りで応酬していく。
「流石だ!ならばもう一度この技を見せてあげよう!!」
 地面を叩くと上空へ飛んだ。そして双剣を構えると強く光り出した。
「またあれか…」
 力を絞り出す。更に黒を増した青い剣を下段で構える。
「今度は撃ち合うか!良い判断だ!」
「アサルトォ!!!」
 衝撃が会場を震わせた。土煙がマリナ達を襲う。ほんの数秒して熱がフィールドから消えた時に観客の視線の先は二つに割れた。
 剣を握り立つ者と。剣を溢し倒れた者に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...