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34 ~同じ姿。異なる力~
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空気が変わった。そう感じたのは客席で見守るマリナだけではなかったはずだ。
騎士団最強の男、ヴォルフォス=ガングの剣技と戦略。それに圧倒されていた剣士が放つオーラに異様な期待を抱く。会場の全ての人がゴクリと唾を飲み込んだ気がした。
「力が馴染んでくる。だけど、やっぱりまだ解放のコツが掴めないな」
黒いオーラを纏う剣を見ながら若き剣士は呟く。
「彼もそうだった」
「彼?」
「スロースターター。だがひとたび力が乗れば私をも凌駕する。やはり君もルナルアの系統か」
ライムを見るその目にはどこか寂しさを含んでいる。マリナを含めたこの場の殆どの人はその感情を理解できてしまう。
「隊長…」
いつも強気で高圧的なダリアすらヴォルフォスの言葉に表情を曇らせている。隣のマリナも同じく唇を結んで見守っていた。
「マリナから、ライツという人が俺とそっくりだと聞きました。そうなんですか?」ライムが尋ねる。
「彼も君のように異質なオーラを放っていた。私が今まで出会った人の中で一番強かった」
「けど俺はライツって人とは違いますよ」
剣を構え直し告げるが騎士団長の顔に未だ残る憂いが突撃の一歩を止める。
「君は本当に彼ではないのか?」
違います。とは言い切れない自分がいた。話の流れで恐らくライツという人物はもう亡くなったのだろう。初めてマリナと会った時の彼女の驚きよう、そしてダリア、バッディーラ。色んなピースを集めるとその結論に至る。もしかしたら無垢の領域での時間はこちらの世界よりも短く、死んだライツが天崎来夢として転生し再びこのソルルに戻ったのかもしれない。
「わかりません。そんな記憶がないので…」
ヴォルフォスは一つ息を吐き双剣を握る手に力を込める。
「もしそうであるならとても嬉しいよ。例え瓜二つの別人だとしても、君とこうして戦えることもまた」投擲の構えに入る。
「再開ですね」
「ああ。力を見せてくれ!」
ライムが動くと同時にヴォルフォスも剣を投げる。炎を纏う剣を躱し、上段から斬りかかる。
「遅いですよ!」
「心配無用!」
騎士団長の右脚がガキィンとライムの剣撃を止める。
「ふん!」
そのまま振り切りライムを飛ばす。
「なんだ今の」
「驚いている暇はないよ!」その脚で距離を詰める。
ハッとして辺りを見る。正面から炎の剣が襲いかかる。もう一刀は視界の外。恐らく後方か上空か。この体勢では避けきれない。ならば。
「りゃぁ!」
目の前の一刀を青黒い剣で弾く。瞬時に死角を確認。もう一刀は背後。
「せい!」
蹴りで弾き飛ばすとヴォルフォスは地面を砕きながら迫る。
「これはどうだ!」
「くそ!」横からの蹴りをギリギリ剣で防ぐ。
その瞬間に騎士団長の両手には双剣が戻っていた。
「ナイトメア…!」
燃える双剣と鋼鉄の蹴りを黒いオーラを纏った剣と蹴りで応酬していく。
「流石だ!ならばもう一度この技を見せてあげよう!!」
地面を叩くと上空へ飛んだ。そして双剣を構えると強く光り出した。
「またあれか…」
力を絞り出す。更に黒を増した青い剣を下段で構える。
「今度は撃ち合うか!良い判断だ!」
「アサルトォ!!!」
衝撃が会場を震わせた。土煙がマリナ達を襲う。ほんの数秒して熱がフィールドから消えた時に観客の視線の先は二つに割れた。
剣を握り立つ者と。剣を溢し倒れた者に。
騎士団最強の男、ヴォルフォス=ガングの剣技と戦略。それに圧倒されていた剣士が放つオーラに異様な期待を抱く。会場の全ての人がゴクリと唾を飲み込んだ気がした。
「力が馴染んでくる。だけど、やっぱりまだ解放のコツが掴めないな」
黒いオーラを纏う剣を見ながら若き剣士は呟く。
「彼もそうだった」
「彼?」
「スロースターター。だがひとたび力が乗れば私をも凌駕する。やはり君もルナルアの系統か」
ライムを見るその目にはどこか寂しさを含んでいる。マリナを含めたこの場の殆どの人はその感情を理解できてしまう。
「隊長…」
いつも強気で高圧的なダリアすらヴォルフォスの言葉に表情を曇らせている。隣のマリナも同じく唇を結んで見守っていた。
「マリナから、ライツという人が俺とそっくりだと聞きました。そうなんですか?」ライムが尋ねる。
「彼も君のように異質なオーラを放っていた。私が今まで出会った人の中で一番強かった」
「けど俺はライツって人とは違いますよ」
剣を構え直し告げるが騎士団長の顔に未だ残る憂いが突撃の一歩を止める。
「君は本当に彼ではないのか?」
違います。とは言い切れない自分がいた。話の流れで恐らくライツという人物はもう亡くなったのだろう。初めてマリナと会った時の彼女の驚きよう、そしてダリア、バッディーラ。色んなピースを集めるとその結論に至る。もしかしたら無垢の領域での時間はこちらの世界よりも短く、死んだライツが天崎来夢として転生し再びこのソルルに戻ったのかもしれない。
「わかりません。そんな記憶がないので…」
ヴォルフォスは一つ息を吐き双剣を握る手に力を込める。
「もしそうであるならとても嬉しいよ。例え瓜二つの別人だとしても、君とこうして戦えることもまた」投擲の構えに入る。
「再開ですね」
「ああ。力を見せてくれ!」
ライムが動くと同時にヴォルフォスも剣を投げる。炎を纏う剣を躱し、上段から斬りかかる。
「遅いですよ!」
「心配無用!」
騎士団長の右脚がガキィンとライムの剣撃を止める。
「ふん!」
そのまま振り切りライムを飛ばす。
「なんだ今の」
「驚いている暇はないよ!」その脚で距離を詰める。
ハッとして辺りを見る。正面から炎の剣が襲いかかる。もう一刀は視界の外。恐らく後方か上空か。この体勢では避けきれない。ならば。
「りゃぁ!」
目の前の一刀を青黒い剣で弾く。瞬時に死角を確認。もう一刀は背後。
「せい!」
蹴りで弾き飛ばすとヴォルフォスは地面を砕きながら迫る。
「これはどうだ!」
「くそ!」横からの蹴りをギリギリ剣で防ぐ。
その瞬間に騎士団長の両手には双剣が戻っていた。
「ナイトメア…!」
燃える双剣と鋼鉄の蹴りを黒いオーラを纏った剣と蹴りで応酬していく。
「流石だ!ならばもう一度この技を見せてあげよう!!」
地面を叩くと上空へ飛んだ。そして双剣を構えると強く光り出した。
「またあれか…」
力を絞り出す。更に黒を増した青い剣を下段で構える。
「今度は撃ち合うか!良い判断だ!」
「アサルトォ!!!」
衝撃が会場を震わせた。土煙がマリナ達を襲う。ほんの数秒して熱がフィールドから消えた時に観客の視線の先は二つに割れた。
剣を握り立つ者と。剣を溢し倒れた者に。
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