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18 ~解放せよ~
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文字通り教会を飛び出し、メインストリートを抜け、門を出る。首都から出て森に入るとすぐに先日同様のモンスター達と遭遇した。応戦すべくすぐさま剣を抜こうとしたが。
「無視して!」
前を走る彼女が檄を飛ばす。尚も疾走し続ける。その後ろ姿を追いながら俺は少し恐れを抱いた。一瞬だけ見えた彼女の表情、その際の声色。それだけじゃ無い。焦燥感のようなものが彼女から感じられる。それが彼女の挙動に冷たい鋭さを与え、彼女自身さえ傷つけてしまうかのような、そんな恐怖が。
ゴクリと唾を飲み込み、胸の奥のモヤモヤを無理やり落とし込む。
闇色の光と街の中間まで走った所です再びモンスター群が行く手を阻む。その数、約10匹。猪型、狼型、竜人型などが臨戦体制で待ち構えている。
「戦うよ!」
今回は剣を抜いた。俺もそれに倣って構える。数は多いがレベルはせいぜい30。俺達の敵では無い。
この戦いでも彼女は以前見せた炎の剣舞を披露した。対して俺はあの時のような氷の技を放つこと無く己のステータスに任せてがむしゃらに素剣を振い続けた。
残り二匹まで減らした所で彼女からついに技のレクチャーが入った。
属性技を使うにはある条件を満たす必要がある。彼女で言う炎属性、ソル系の力は攻撃を多くしたり敵の攻撃をタイミング良く回避すれば力が溜まっていき、それを解放することで技が使えるらしい。
アクティブな要素をと求めるソル系に対し、俺の持つルナ系の力を出すには逆に攻撃をもらったり、武器等で防ぐことで力を溜められるそうだ。
防御力を上げていない俺はとりあえずはガードに徹した。たまに攻撃をくらうがレベルの差があるため大したダメージにはならない。が、しかし。
「な、なにも感じないぞ…?」
力が湧いてくる感覚も剣が光ったりすることもなく、ただ目の前にいる竜人が放つ剣を受け続けていた。そうこうしている内に。
「炎舞陣 五月乱れ!!」
最後の一匹をマリナの剣が焼き尽くした。
「あ、ありが…」
「行くよ!」
再び彼女の背中を追いながらさっきの戦いでのことを聞いた。なぜ技が出ないのか。
速度を保ちながらもしばし考え、自信なさげに答えた。
「イメージが足りないからかな?」
どの属性でどんな風に技を放つか。自分だけの技であるから使用者の意思を具現化した形の技になるという。
"使用者の意思"が必要な為、殺戮以外の意思を持たない深淵からの魔物達は技を出すことはない。故に慣れれば造作もなく退治できるのだが、一般人以上のステータスを持っているのでレベルが上がればか上がる程対処が困難になり、騎士団の連中や首都圏で活動する自警団のような連中が撃退し、賞金を得て生活している。
マリナもその一人だ。だが彼女の実力は首都圏からろくに出ない"自称ソルルの英雄達"とは比べ物にならない。
彼女が素通りしたモンスター群の平均レベルは約15といったところで自警団でも十分戦える。光の出所へ一秒でも早く向かう為可能な限り戦闘を回避したかったのだろう。
話しながらも飛翔するかの如く進んでいると、ついに光の柱が手に届きそうなところまできた。
彼女が更にギアを上げる。レベルでは俺の方が高い筈だが気を抜いたら見失いそうな速度にまで加速している。
数秒後、木々に満たされていた視界がはれた。見晴らしの良い平地に入った所で全身に緊張の糸が走った。彼女の同じなのだろう。急停止し、周囲へ注意を払う。
「なんか少しヤバい気配がする」
「キミも感じるの?これは今までとは違う…」
自然と背中合わせになり死角をカバーし合う。たとえ短期間でも戦闘を重ねたことによる連帯感だろう。辺りの気配を探るように目線を動かす。
すると、ハッとしたように二人が同じ方に目をやった。視界の先には何も無い。瞬きをするまでは。
闇の柱から同じく闇色の小さな霧のような、光のような何かがゆらゆらと漂いながらこちらへ流れる。
やがてそれは目の前で止まり徐々に実体を現してきた。
浅く息を吸って、素早く吐いた。
「あれは、虎…?」
色や模様はまさしく虎といった黄色と黒で配色されている。だがそいつは二本の脚で立っている。意外と背も高い。170センチ後半か。そして右手、というべきか。その手にあるのは二足歩行虎とほぼ同じ長さの槍だ。
「そんな…」
しかし驚いたのはそんなことじゃ無い。奴の頭上にある数字。
「マリナ、君は逃げた方がいい」
抗議を送ろうとする彼女を目線で制し、ゆっくりと首を振る。
俺の予想が正しければマリナのレベルは高くても50。しかしやつのレベルは。
「80…か」
一度。ゆっくり、深く呼吸をして戦闘態勢に入る。彼女から教わった呪文のようなものを唱えて。
「ベイルザジェイル」
現れた頼りない剣を握りしめ虎を睨む。
「絶対守ってみせる…」
「無視して!」
前を走る彼女が檄を飛ばす。尚も疾走し続ける。その後ろ姿を追いながら俺は少し恐れを抱いた。一瞬だけ見えた彼女の表情、その際の声色。それだけじゃ無い。焦燥感のようなものが彼女から感じられる。それが彼女の挙動に冷たい鋭さを与え、彼女自身さえ傷つけてしまうかのような、そんな恐怖が。
ゴクリと唾を飲み込み、胸の奥のモヤモヤを無理やり落とし込む。
闇色の光と街の中間まで走った所です再びモンスター群が行く手を阻む。その数、約10匹。猪型、狼型、竜人型などが臨戦体制で待ち構えている。
「戦うよ!」
今回は剣を抜いた。俺もそれに倣って構える。数は多いがレベルはせいぜい30。俺達の敵では無い。
この戦いでも彼女は以前見せた炎の剣舞を披露した。対して俺はあの時のような氷の技を放つこと無く己のステータスに任せてがむしゃらに素剣を振い続けた。
残り二匹まで減らした所で彼女からついに技のレクチャーが入った。
属性技を使うにはある条件を満たす必要がある。彼女で言う炎属性、ソル系の力は攻撃を多くしたり敵の攻撃をタイミング良く回避すれば力が溜まっていき、それを解放することで技が使えるらしい。
アクティブな要素をと求めるソル系に対し、俺の持つルナ系の力を出すには逆に攻撃をもらったり、武器等で防ぐことで力を溜められるそうだ。
防御力を上げていない俺はとりあえずはガードに徹した。たまに攻撃をくらうがレベルの差があるため大したダメージにはならない。が、しかし。
「な、なにも感じないぞ…?」
力が湧いてくる感覚も剣が光ったりすることもなく、ただ目の前にいる竜人が放つ剣を受け続けていた。そうこうしている内に。
「炎舞陣 五月乱れ!!」
最後の一匹をマリナの剣が焼き尽くした。
「あ、ありが…」
「行くよ!」
再び彼女の背中を追いながらさっきの戦いでのことを聞いた。なぜ技が出ないのか。
速度を保ちながらもしばし考え、自信なさげに答えた。
「イメージが足りないからかな?」
どの属性でどんな風に技を放つか。自分だけの技であるから使用者の意思を具現化した形の技になるという。
"使用者の意思"が必要な為、殺戮以外の意思を持たない深淵からの魔物達は技を出すことはない。故に慣れれば造作もなく退治できるのだが、一般人以上のステータスを持っているのでレベルが上がればか上がる程対処が困難になり、騎士団の連中や首都圏で活動する自警団のような連中が撃退し、賞金を得て生活している。
マリナもその一人だ。だが彼女の実力は首都圏からろくに出ない"自称ソルルの英雄達"とは比べ物にならない。
彼女が素通りしたモンスター群の平均レベルは約15といったところで自警団でも十分戦える。光の出所へ一秒でも早く向かう為可能な限り戦闘を回避したかったのだろう。
話しながらも飛翔するかの如く進んでいると、ついに光の柱が手に届きそうなところまできた。
彼女が更にギアを上げる。レベルでは俺の方が高い筈だが気を抜いたら見失いそうな速度にまで加速している。
数秒後、木々に満たされていた視界がはれた。見晴らしの良い平地に入った所で全身に緊張の糸が走った。彼女の同じなのだろう。急停止し、周囲へ注意を払う。
「なんか少しヤバい気配がする」
「キミも感じるの?これは今までとは違う…」
自然と背中合わせになり死角をカバーし合う。たとえ短期間でも戦闘を重ねたことによる連帯感だろう。辺りの気配を探るように目線を動かす。
すると、ハッとしたように二人が同じ方に目をやった。視界の先には何も無い。瞬きをするまでは。
闇の柱から同じく闇色の小さな霧のような、光のような何かがゆらゆらと漂いながらこちらへ流れる。
やがてそれは目の前で止まり徐々に実体を現してきた。
浅く息を吸って、素早く吐いた。
「あれは、虎…?」
色や模様はまさしく虎といった黄色と黒で配色されている。だがそいつは二本の脚で立っている。意外と背も高い。170センチ後半か。そして右手、というべきか。その手にあるのは二足歩行虎とほぼ同じ長さの槍だ。
「そんな…」
しかし驚いたのはそんなことじゃ無い。奴の頭上にある数字。
「マリナ、君は逃げた方がいい」
抗議を送ろうとする彼女を目線で制し、ゆっくりと首を振る。
俺の予想が正しければマリナのレベルは高くても50。しかしやつのレベルは。
「80…か」
一度。ゆっくり、深く呼吸をして戦闘態勢に入る。彼女から教わった呪文のようなものを唱えて。
「ベイルザジェイル」
現れた頼りない剣を握りしめ虎を睨む。
「絶対守ってみせる…」
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