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19 ~解放せよ!~
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約10メートル。ヤツの見た目からしてスピード系の敵だろう。ならばこの距離は無いに等しい。踏み込まれれば長槍の射程内となりその刃は俺たちの身を裂くか貫くかのどちらかだ。
左手の剣でヤツを牽制しつつ右手でマリナを後方へ促す。
ジリジリと距離をとっているとヤツが構えた。柔軟な足腰で滑らかに踏み込みの姿勢に入るとその脚が膨らむ。
「来るっ…!」
咄嗟に彼女を後ろに押す。一歩前へ進むと同時に剣を下段に構える。どっちだ?突きか、薙か?
一瞬の思考。そして、、ドンっ!!踏み込む度に土が舞う。ヤツの身体が大きくなる。槍を引いた。突きだ…!
ギュン!と放たれた矛先を斬り上げで弾く。刹那、ヤツの瞳が大きくなった気がした。だがその目もまた直ぐ鋭くなり弾かれた槍がコの字を描く。刃が俺の脇腹を裂くように狙う。
「く…うぉぉ!」
気合いの咆哮と共に剣を振り下ろす。ガキィン!金属音が森に響く。そのまま左脚で思い切り地面を蹴り右肩をヤツの胸元にねじ込む。
「ぐぅっ!」
体格の割に軽い。ヤツが数メートルすっ飛ぶ。しかし軽快なステップで体制を立て直し、キッと俺を睨む。
ヤツと目があった。心臓が掴まれたように縮こまる。ゴクリと恐怖を飲み下し、再び構える。
だがヤツはニヤッと笑みを浮かべると槍を立て、戦闘体制を解除した。
「オメェ、やるなぁ!これまでの経験上。今ので皆んな死んでるんだけどな~」
「…」
警戒を緩めず、ヤツを見ていると後方にいたマリナがゆっくりと俺の方へ近づいていくのを感じた。右手を出し留まるよう指示する。しかしその手を彼女の左手が包み下ろされた。驚きのあまり一瞬彼女を見た。
「どうしたの…?」
その端正な顔には恐怖ではなく驚きが含まれていた。一呼吸置き、口を開く。
「喋れるの?あなた…」
虎は「ああ」とだけ答えた。失念していたが深淵の生物達は基本的に殺戮以外の能力は無い。故に言葉を使うことなど全くもって想像できなかった。
「オメェら。結構な実力者なんだろ?だったら聞きてえことがあんだけど」
俺とマリナを交互に指を刺しながら流暢に話す。
「オレらはよ、偉大なる王から大事な大事な任務を受けてこっちの世界に来てんのよ」
「大事な任務?」
口調は軽いが、どこか油断できない圧力を持った声で答えた。
「揺るがぬ輝き。そいつを探してんだよ。どこにあるんだ?」
しばし沈黙が流れる。風の音が聞こえる。黙り続けていると次いでヤツが口を開いた。
「なら特別サービスだ。教えてくれたら二人とも見逃してやってもいいぜ~?」
話を聞くに、ヤツらの王とやらが求めるそれを、彼らの誰もどんなものか知らないそうだ。実体がある物なのか概念なのか。ヤツ曰く、仲間内で揺るがぬ輝きは、宝石の一種ではないかという意見が多くをし占めているらしい。それを何十年も何百年も探しいているそうだ。
この世界に来たばかりの俺は勿論知らない。マリナに視線を送るも、彼女は小さくかぶりを振った。
「知らねえか。やっぱもっと上の身分の奴らに聞かねえと分かんねぇか。なら…」
ヤツの右腕が槍を地面から引っ張り上げた。それを器用に回すと例の突きの構えに入った。
「とりあえず、、オメェらを殺すぜ!!」
先程とは比べ物にならない殺気が俺の体を突き刺した。悪寒が駆け抜ける。
ヤツの脚が再び膨れ上がり、ダンッ!とロケットスタートで飛び出す。槍の先は俺の心臓を狙っている。当たれば即死か。どうする?雷光の如きスピードで思考が巡る。
「くっ…!」
ほぼ無意識のうちに左へ飛んでいた。長槍は俺のいた空間を貫いた。間一髪。と思った瞬間、マリナの叫びが耳を震わす。
「ライムくん!!」
躱した筈が、俺の右脇腹から血が出ていた。予想よりずっと速い…!思わずよろめく、後方へ二歩、三歩と倒れそうになりながら土を踏む。ヤツと目が合った。まずい…。さっきと同じ切り返しがきたら回避できない。
「くらえやぁー!」
想定通り、再び刃が迫る。しかし躱すことはできない。倒れないように地面を踏み締めるので精一杯だ。万事休す。そう思いながら喉元へ向かう鈍色の殺意を見続けた。
「…!」
突如として刃が消えた。ヤツが少し仰反る。と同時に衝撃音が鼓膜へ届く。
ドスンと尻もちをついた。見上げるとマリナが振り上げた剣でヤツ目掛けて斬り込んだ。
「ちぃ」バックステップで躱された。
「はぁー!!」
ものすごい気迫と共にマリナの剣が縦横無尽に線を描く。速い!だがそれはヤツとて同じ、いや、ヤツの方が高レベル。回避は容易だろう。ならばその差を埋める為には…。
マリナの剣技がとめどなく襲うも全て避けられている。だが、それでも大丈夫。なぜなら。
「解放せよ!ソウルオブオリジン!!」
マリナの剣が炎に包まれた。この状態ならある程度のレベル差は埋められる。
「くっ…」
「まだまだ!」
マリナの剣速が徐々に上がっていく。その火が少しずつヤツの体に火花となって消える、その前にまた新たな火花を散らす。剣を振る度に彼女の剣が更に熱を上げていく。気づけば小さな太陽のように強い光を放っていた。眩い光を携え、彼女が低く構える。
「これで…!」
斬り上げと同時に彼女の体が火柱を作りながら宙を舞った。
「決める!!」
目視できない程の速度で突きを繰り出す。その剣先から鋭い炎の雨が降り注ぐ。
「炎舞陣 刺紅蓮!!!」
「ぐおぉーーー!」
ヤツの体を貫く度、爆散する炎。最後に大きな爆発を起こし、マリナは地に着いた。
「凄い…」
思わず漏れた声に振り返り彼女は微笑んだ。これが修練を積んだ者の奥義か。守る筈が守られていた不甲斐なさを笑いとともに吐き出した。
気づけば空は暗闇に包まれていた。
左手の剣でヤツを牽制しつつ右手でマリナを後方へ促す。
ジリジリと距離をとっているとヤツが構えた。柔軟な足腰で滑らかに踏み込みの姿勢に入るとその脚が膨らむ。
「来るっ…!」
咄嗟に彼女を後ろに押す。一歩前へ進むと同時に剣を下段に構える。どっちだ?突きか、薙か?
一瞬の思考。そして、、ドンっ!!踏み込む度に土が舞う。ヤツの身体が大きくなる。槍を引いた。突きだ…!
ギュン!と放たれた矛先を斬り上げで弾く。刹那、ヤツの瞳が大きくなった気がした。だがその目もまた直ぐ鋭くなり弾かれた槍がコの字を描く。刃が俺の脇腹を裂くように狙う。
「く…うぉぉ!」
気合いの咆哮と共に剣を振り下ろす。ガキィン!金属音が森に響く。そのまま左脚で思い切り地面を蹴り右肩をヤツの胸元にねじ込む。
「ぐぅっ!」
体格の割に軽い。ヤツが数メートルすっ飛ぶ。しかし軽快なステップで体制を立て直し、キッと俺を睨む。
ヤツと目があった。心臓が掴まれたように縮こまる。ゴクリと恐怖を飲み下し、再び構える。
だがヤツはニヤッと笑みを浮かべると槍を立て、戦闘体制を解除した。
「オメェ、やるなぁ!これまでの経験上。今ので皆んな死んでるんだけどな~」
「…」
警戒を緩めず、ヤツを見ていると後方にいたマリナがゆっくりと俺の方へ近づいていくのを感じた。右手を出し留まるよう指示する。しかしその手を彼女の左手が包み下ろされた。驚きのあまり一瞬彼女を見た。
「どうしたの…?」
その端正な顔には恐怖ではなく驚きが含まれていた。一呼吸置き、口を開く。
「喋れるの?あなた…」
虎は「ああ」とだけ答えた。失念していたが深淵の生物達は基本的に殺戮以外の能力は無い。故に言葉を使うことなど全くもって想像できなかった。
「オメェら。結構な実力者なんだろ?だったら聞きてえことがあんだけど」
俺とマリナを交互に指を刺しながら流暢に話す。
「オレらはよ、偉大なる王から大事な大事な任務を受けてこっちの世界に来てんのよ」
「大事な任務?」
口調は軽いが、どこか油断できない圧力を持った声で答えた。
「揺るがぬ輝き。そいつを探してんだよ。どこにあるんだ?」
しばし沈黙が流れる。風の音が聞こえる。黙り続けていると次いでヤツが口を開いた。
「なら特別サービスだ。教えてくれたら二人とも見逃してやってもいいぜ~?」
話を聞くに、ヤツらの王とやらが求めるそれを、彼らの誰もどんなものか知らないそうだ。実体がある物なのか概念なのか。ヤツ曰く、仲間内で揺るがぬ輝きは、宝石の一種ではないかという意見が多くをし占めているらしい。それを何十年も何百年も探しいているそうだ。
この世界に来たばかりの俺は勿論知らない。マリナに視線を送るも、彼女は小さくかぶりを振った。
「知らねえか。やっぱもっと上の身分の奴らに聞かねえと分かんねぇか。なら…」
ヤツの右腕が槍を地面から引っ張り上げた。それを器用に回すと例の突きの構えに入った。
「とりあえず、、オメェらを殺すぜ!!」
先程とは比べ物にならない殺気が俺の体を突き刺した。悪寒が駆け抜ける。
ヤツの脚が再び膨れ上がり、ダンッ!とロケットスタートで飛び出す。槍の先は俺の心臓を狙っている。当たれば即死か。どうする?雷光の如きスピードで思考が巡る。
「くっ…!」
ほぼ無意識のうちに左へ飛んでいた。長槍は俺のいた空間を貫いた。間一髪。と思った瞬間、マリナの叫びが耳を震わす。
「ライムくん!!」
躱した筈が、俺の右脇腹から血が出ていた。予想よりずっと速い…!思わずよろめく、後方へ二歩、三歩と倒れそうになりながら土を踏む。ヤツと目が合った。まずい…。さっきと同じ切り返しがきたら回避できない。
「くらえやぁー!」
想定通り、再び刃が迫る。しかし躱すことはできない。倒れないように地面を踏み締めるので精一杯だ。万事休す。そう思いながら喉元へ向かう鈍色の殺意を見続けた。
「…!」
突如として刃が消えた。ヤツが少し仰反る。と同時に衝撃音が鼓膜へ届く。
ドスンと尻もちをついた。見上げるとマリナが振り上げた剣でヤツ目掛けて斬り込んだ。
「ちぃ」バックステップで躱された。
「はぁー!!」
ものすごい気迫と共にマリナの剣が縦横無尽に線を描く。速い!だがそれはヤツとて同じ、いや、ヤツの方が高レベル。回避は容易だろう。ならばその差を埋める為には…。
マリナの剣技がとめどなく襲うも全て避けられている。だが、それでも大丈夫。なぜなら。
「解放せよ!ソウルオブオリジン!!」
マリナの剣が炎に包まれた。この状態ならある程度のレベル差は埋められる。
「くっ…」
「まだまだ!」
マリナの剣速が徐々に上がっていく。その火が少しずつヤツの体に火花となって消える、その前にまた新たな火花を散らす。剣を振る度に彼女の剣が更に熱を上げていく。気づけば小さな太陽のように強い光を放っていた。眩い光を携え、彼女が低く構える。
「これで…!」
斬り上げと同時に彼女の体が火柱を作りながら宙を舞った。
「決める!!」
目視できない程の速度で突きを繰り出す。その剣先から鋭い炎の雨が降り注ぐ。
「炎舞陣 刺紅蓮!!!」
「ぐおぉーーー!」
ヤツの体を貫く度、爆散する炎。最後に大きな爆発を起こし、マリナは地に着いた。
「凄い…」
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気づけば空は暗闇に包まれていた。
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