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「これ、由紀に似合うと思って。」
「え?」
差し出された袋の中身はTシャツだった。
祐一さんはこうやってしょっちゅう僕にプレゼントをくれる。
「ありがとう。でもこの間ももらったばかりなのに…。」
「良いんだ。俺がしたくてしてるんだから。」
この間は僕が好きなアニメの中に出てくるネコのキャラクター『ぬこニャン』のぬいぐるみをもらった。その前は今使っているリュックでその前はぬこニャンのペン、さらにその前は…。もう数えきれないほどもらっている。
「こんなにもらってばっかりじゃ悪いよ。」
「気にしないで。由紀に似合いそうだなとか由紀が好きそうだなとか考えながら選ぶのが好きなんだ。ほら、次の問題。」
「え?あ、うん。」
週に二、三回は勉強まで見てもらっている。祐一さんの教え方が上手なので僕の成績は右肩上がりだ。このまま頑張れば志望校もいけそうだ。
夏休みも出来るだけ勉強を見てくれると言っている。
僕たちはキス以上のことはしていない。祐一さんが我慢してくれているのかな、と思ってたけどもしかしたらそういうことをする気がないのかもしれない。僕には魅力がないのかな。…いや、したいわけじゃないけど。
今日もみっちり勉強して家まで送ってもらった。
「ただいま~。」
「おかえり。今日駅前で真紘くん見たよ。元気そうで良かった。あ、そうだ由紀、何か荷物届いてたよ。」
「うん。」
玄関に置いてあった段ボール箱を持って自分の部屋に上がった。
二つもある。
開けるとひとつはぬこにゃんのナイトライトでもうひとつはぬいぐるみだった。
「可愛い…。」
ナイトライトはベッドサイドに置いてぬいぐるみは前にもらった物の隣に飾った。
そうだ、お礼をいわないと。
『ぬこニャン、ありがとう。』
『どういたしまして。ちょっと重かったから郵送にした』
すぐに返信があった。
ナイトライトを付けたり消したりしてしばらく眺めていた。
真紘から着信があった。彼はメールやメッセージアプリより通話派だ。打ってるのかまどろっこしいと言っている。
「もしもし。」
「あ、由紀。明日なんだけど駅の本屋に集合でいい?」
「うん。本屋に何時?何か買うの?」
「うーん。悩んでる。」
同じビルの雑貨屋でトシくんのご両親のお見舞い返しに何を買おうか悩んでいるみたいだ。最近はトシくんが送り迎えをしてるのであまり真紘と話す機会がない。と言っても昼休みは一緒にご飯を食べている。
僕と祐一さんに進展がないことを相談しようか…。でも、そのままトシくんに話がいって祐一さんに知られるのも恥ずかしいし。
真紘の話を聞きながら考えていたけど相談はしなかった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
新しい問題集買おうかな。今やってるのはもうそろそろ二周目が終わりそうだ。でも祐一さんが選んでくれるって言ってたし。どうしようかな。
真紘を待ちながら参考書を見ていた。
「由紀くん、久しぶり。」
「千聖さん…。」
デートを断ってから連絡がなかった。
何か気まずいな。
「あの、この間はごめんなさい。」
「いや、俺も返事しなくてごめん。すごくショックで…。」
「え?」
「あはは。冗談だよ。ちょっと忙しくてね。参考書?一緒に選ぼうか?」
僕が手に持っている参考書を見ながら言った。
良かった。あまり気にしてないみたいだ。
「でも本当に良く会うね。運命かな。」
「あ、えっと…。」
ぐいっと近づいてじーっと見られる。
整った顔だ。ドキドキする。
「由紀くん、ドキドキしてる?すごく良い匂い。」
千聖さんはすんっと匂いを嗅いでうっとりしている。
匂い?どうしよう。ヒートはまだ先なはずなのに…。
「匂いますか?」
「うん。ものすごく良い匂い。美味しそうだ。」
するりと頬を撫でられた。
え…。何で。動けない。千聖さんはじっと見つめてくる。
「由紀!」
突然の真紘の声にハッとした。走って僕のそばに来る。
「ま、真紘…。」
「千聖さん。こんにちは。」
真紘が僕と千聖さんの間に入るように立つ。その顔は青褪めていた。
「こんにちは。」
千聖さんは穏やかに真紘を見た。
「由紀、行こう。授業に遅れるよ。」
えっ、まだ時間は充分あるのに…。真紘が僕の腕を引っ張った。
「あ、じゃあ。さようなら。」
「またね。由紀くん。」
ぐいぐい引っ張られながら真紘に引き摺られるように本屋を出た。
そのまま駅ビルの外に出るとやっと手を離してくれた。
「千聖さんとまた偶然に会ったの?」
「…うん。」
「あの人フェロモン使ったね。」
フェロモン…?何かぼーっとするような力が抜けるような感じがしたのはそれか。
「恋人でもないオメガにあんなフェロモン使うなんて。」
真紘がすごく怒っている。
身体がじーんと熱いままだ。
「え?」
差し出された袋の中身はTシャツだった。
祐一さんはこうやってしょっちゅう僕にプレゼントをくれる。
「ありがとう。でもこの間ももらったばかりなのに…。」
「良いんだ。俺がしたくてしてるんだから。」
この間は僕が好きなアニメの中に出てくるネコのキャラクター『ぬこニャン』のぬいぐるみをもらった。その前は今使っているリュックでその前はぬこニャンのペン、さらにその前は…。もう数えきれないほどもらっている。
「こんなにもらってばっかりじゃ悪いよ。」
「気にしないで。由紀に似合いそうだなとか由紀が好きそうだなとか考えながら選ぶのが好きなんだ。ほら、次の問題。」
「え?あ、うん。」
週に二、三回は勉強まで見てもらっている。祐一さんの教え方が上手なので僕の成績は右肩上がりだ。このまま頑張れば志望校もいけそうだ。
夏休みも出来るだけ勉強を見てくれると言っている。
僕たちはキス以上のことはしていない。祐一さんが我慢してくれているのかな、と思ってたけどもしかしたらそういうことをする気がないのかもしれない。僕には魅力がないのかな。…いや、したいわけじゃないけど。
今日もみっちり勉強して家まで送ってもらった。
「ただいま~。」
「おかえり。今日駅前で真紘くん見たよ。元気そうで良かった。あ、そうだ由紀、何か荷物届いてたよ。」
「うん。」
玄関に置いてあった段ボール箱を持って自分の部屋に上がった。
二つもある。
開けるとひとつはぬこにゃんのナイトライトでもうひとつはぬいぐるみだった。
「可愛い…。」
ナイトライトはベッドサイドに置いてぬいぐるみは前にもらった物の隣に飾った。
そうだ、お礼をいわないと。
『ぬこニャン、ありがとう。』
『どういたしまして。ちょっと重かったから郵送にした』
すぐに返信があった。
ナイトライトを付けたり消したりしてしばらく眺めていた。
真紘から着信があった。彼はメールやメッセージアプリより通話派だ。打ってるのかまどろっこしいと言っている。
「もしもし。」
「あ、由紀。明日なんだけど駅の本屋に集合でいい?」
「うん。本屋に何時?何か買うの?」
「うーん。悩んでる。」
同じビルの雑貨屋でトシくんのご両親のお見舞い返しに何を買おうか悩んでいるみたいだ。最近はトシくんが送り迎えをしてるのであまり真紘と話す機会がない。と言っても昼休みは一緒にご飯を食べている。
僕と祐一さんに進展がないことを相談しようか…。でも、そのままトシくんに話がいって祐一さんに知られるのも恥ずかしいし。
真紘の話を聞きながら考えていたけど相談はしなかった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
新しい問題集買おうかな。今やってるのはもうそろそろ二周目が終わりそうだ。でも祐一さんが選んでくれるって言ってたし。どうしようかな。
真紘を待ちながら参考書を見ていた。
「由紀くん、久しぶり。」
「千聖さん…。」
デートを断ってから連絡がなかった。
何か気まずいな。
「あの、この間はごめんなさい。」
「いや、俺も返事しなくてごめん。すごくショックで…。」
「え?」
「あはは。冗談だよ。ちょっと忙しくてね。参考書?一緒に選ぼうか?」
僕が手に持っている参考書を見ながら言った。
良かった。あまり気にしてないみたいだ。
「でも本当に良く会うね。運命かな。」
「あ、えっと…。」
ぐいっと近づいてじーっと見られる。
整った顔だ。ドキドキする。
「由紀くん、ドキドキしてる?すごく良い匂い。」
千聖さんはすんっと匂いを嗅いでうっとりしている。
匂い?どうしよう。ヒートはまだ先なはずなのに…。
「匂いますか?」
「うん。ものすごく良い匂い。美味しそうだ。」
するりと頬を撫でられた。
え…。何で。動けない。千聖さんはじっと見つめてくる。
「由紀!」
突然の真紘の声にハッとした。走って僕のそばに来る。
「ま、真紘…。」
「千聖さん。こんにちは。」
真紘が僕と千聖さんの間に入るように立つ。その顔は青褪めていた。
「こんにちは。」
千聖さんは穏やかに真紘を見た。
「由紀、行こう。授業に遅れるよ。」
えっ、まだ時間は充分あるのに…。真紘が僕の腕を引っ張った。
「あ、じゃあ。さようなら。」
「またね。由紀くん。」
ぐいぐい引っ張られながら真紘に引き摺られるように本屋を出た。
そのまま駅ビルの外に出るとやっと手を離してくれた。
「千聖さんとまた偶然に会ったの?」
「…うん。」
「あの人フェロモン使ったね。」
フェロモン…?何かぼーっとするような力が抜けるような感じがしたのはそれか。
「恋人でもないオメガにあんなフェロモン使うなんて。」
真紘がすごく怒っている。
身体がじーんと熱いままだ。
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