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俺はまたいつもの三人でショッピングモールに来ていた。ここのところ毎週だ。
男三人なので特に目的はない。店内を歩いてフードコートで休憩していた。
俺が座っている席から一番離れたところに三人の男が見えた。高校の制服を着ている。
こちら側を向いて座っているのは…。満だ。
高校の制服ってことは普段は普通に高校に通っているってことか。
「あ~。つまんねーな。オメガの発情期もまだまだ先だし。」
比留間が関係を持っているオメガはヒートが二ヶ月に一回のタイプだ。その間が暇だとぼやいている。
「もう一人くらい増やせば?」
澤乃井が冗談めかして言った。
「どこにいんのよ。オメガなら何でも言い訳じゃないの。」
顔があーだとか、身体がこーだとか言っている。
俺はチラチラ視界に入る満を見た。
比留間の家も例に漏れず名家だ。
遊びたいアルファと金が欲しいオメガ。ちょうど良いだろ。
「比留間。俺、いいオメガ知ってるぞ。」
マジで!と食い付いてくる比留間と興味津々の澤乃井を連れて満のテーブルに行った。
教科書やノートを開いている。勉強してたのか。
アルファをもて遊ぶヤツでも勉強するんだな。
「よう。また会ったな。」
満に声をかけると驚いた顔で俺を見た。すぐさま嫌そうな顔をする。
「またあんたか。今、アルファは間に合ってるんだけど。」
「まぁ、そう言うなよ。コイツどう?金持ちだよ。」
隣の比留間の肩に手を乗せた。
「君、オメガなの?」
比留間はまんざらでもなさそうだ。
「そうだけど。」
「可愛いね。俺とどう?」
「は?」
満は眉根を寄せた。
金があれば何だって良いんだろ?
「何?桜沢のお手つき?おまえ、オメガ嫌いって言ってたじゃん。ベータの女しか相手にしなかったろ。」
ニヤニヤした澤乃井が俺を小突いた。
「オメガなんて相手にするかよ。運命だとか言って近づいてマジで胸糞悪い。」
心底うんざりだ。アルファとオメガの運命なんてセックスしたいだけの獣。それを綺麗に言い換えたのが運命だ。
「さっきから君、感じ悪いよ。」
満の前に座っている男が俺に向かって口を開いた。
コイツもオメガか。メガネをかけた気の弱そうな男だ。顔を真っ赤にして震えている。
どうせおまえも満と同じだろ。
何気なくその隣に座っている男を見た。
下を向いて身体を縮めている。顔は見えないがその頸に後頭部に背中に見覚えがあった。
「…拓実。」
丸めた背中がビクッと震えた。
言い合っていた満と比留間、俺の横でニヤニヤする澤乃井、怒りで震えるメガネの男もみんなピタリと止まって俺を見た。
「拓実か?」
拓実は両手を膝の上で握りしめながら顔を上げた。
怯えているような表情だった。
「拓実の知り合い?」
満が驚いている。
「え?あ、うん。」
「へぇ、こんな愛人を斡旋するような碌でもないアルファと?」
「あ、ち、小さい頃の知り合いだよ。」
拓実はチラリと俺を見てすぐに目を逸らした。
知り合いか…。目も合わせてくれない。
「拓実、友達は選べよ。こんな碌でもないオメガ。」
「満は良いヤツだよ…。亮平の友達だって碌でもないだろ。」
消えそうな小さい声でそう言った。
「何だと?」
ダンっと大きな音を立てて比留間がテーブルを叩いた。ペンや消しゴムが床に落ちる。
周りの客がチラチラとこちらを見ている。
「やめろよ。声をかけて来たのはおまえたちだろ?」
満がそれを制した。拓実が床に手を伸ばして落ちたペンや消しゴムを拾っている。
「行こうぜ。騒がれたら面倒だ。」
澤乃井の言葉で俺たちはその場から離れた。
拓実はずっと俯いていた。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「あのオメガ知り合いなの?」
「え?」
「拓実って方。」
澤乃井が帰りの電車で聞いていた。比留間は違う沿線なので二人きりだ。
「子どもの頃近所に住んでた。引っ越してから知らない。」
「ふーん。」
スマホが震えたのでポケットから取り出した。
朋花だ。
『次いつ会える?』
拓実の顔を思い出した。
知り合いか…。
再会を喜んでいる様子は全くなかった。むしろ会いたくないみたいだった。俺が声を掛けなければあのまま下を向いてやり過ごしていただろう。
むしゃくしゃして仕方ない。
『今から良いよ』
そう返事をした。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
一戦終わって寝転んでいる。朋花は機嫌良くくっついてくる。
暑苦しい。
「なぁ。朋花のお兄さん清和大付属だったよな?」
「え?うん。アイツ、クソ真面目だから。」
拓実たちの制服は清和大付属高校のものだ。
朋花の一個上の兄貴が清和大付属だと言っていたことを思い出した。
「そこさ、オメガもたくさんいんの?」
「うん。何かバースに関係なく学べる、を教育方針に挙げてるんだって。え?何?亮平くんオメガ狙ってるの?」
朋花がガバッと起きて俺の顔を見て睨んでくる。
彼女ヅラってこういうことだな。
俺は小さくため息をついた。
「いや、違うよ。知り合いがいるんだ。一年の男のオメガ。満って名前。俺の友達が気に入ってて。」
嘘をついた。拓実のことは言えなかった。
まぁ、言っても分からないだろ。朋花の兄貴は二年だし。
「あぁ、知ってるかも。鴨志田満」
「え?知ってんの?」
「うん。あんま評判良くないよ。桃ヶ丘駅でたまに見かける。」
「あ、そう。何で良くないの?」
「噂だけど、アルファ相手にウリまがいな事やってるって。清和大付属って真面目なイメージじゃん。でも清和大の友達とそんなことやってるみたい。まぁ、あくまで噂だよ?」
その友達…。拓実もか?満は良いヤツって言ってたな。仲が良いんだろうか。
「えー?何?亮平くんの友達って誰?比留間くん?」
「いや、違うよ。クラスのやつ。朋花は知らないやつだよ。」
「ふーん。」
朋花は納得いかない表情で俺を見た。
男三人なので特に目的はない。店内を歩いてフードコートで休憩していた。
俺が座っている席から一番離れたところに三人の男が見えた。高校の制服を着ている。
こちら側を向いて座っているのは…。満だ。
高校の制服ってことは普段は普通に高校に通っているってことか。
「あ~。つまんねーな。オメガの発情期もまだまだ先だし。」
比留間が関係を持っているオメガはヒートが二ヶ月に一回のタイプだ。その間が暇だとぼやいている。
「もう一人くらい増やせば?」
澤乃井が冗談めかして言った。
「どこにいんのよ。オメガなら何でも言い訳じゃないの。」
顔があーだとか、身体がこーだとか言っている。
俺はチラチラ視界に入る満を見た。
比留間の家も例に漏れず名家だ。
遊びたいアルファと金が欲しいオメガ。ちょうど良いだろ。
「比留間。俺、いいオメガ知ってるぞ。」
マジで!と食い付いてくる比留間と興味津々の澤乃井を連れて満のテーブルに行った。
教科書やノートを開いている。勉強してたのか。
アルファをもて遊ぶヤツでも勉強するんだな。
「よう。また会ったな。」
満に声をかけると驚いた顔で俺を見た。すぐさま嫌そうな顔をする。
「またあんたか。今、アルファは間に合ってるんだけど。」
「まぁ、そう言うなよ。コイツどう?金持ちだよ。」
隣の比留間の肩に手を乗せた。
「君、オメガなの?」
比留間はまんざらでもなさそうだ。
「そうだけど。」
「可愛いね。俺とどう?」
「は?」
満は眉根を寄せた。
金があれば何だって良いんだろ?
「何?桜沢のお手つき?おまえ、オメガ嫌いって言ってたじゃん。ベータの女しか相手にしなかったろ。」
ニヤニヤした澤乃井が俺を小突いた。
「オメガなんて相手にするかよ。運命だとか言って近づいてマジで胸糞悪い。」
心底うんざりだ。アルファとオメガの運命なんてセックスしたいだけの獣。それを綺麗に言い換えたのが運命だ。
「さっきから君、感じ悪いよ。」
満の前に座っている男が俺に向かって口を開いた。
コイツもオメガか。メガネをかけた気の弱そうな男だ。顔を真っ赤にして震えている。
どうせおまえも満と同じだろ。
何気なくその隣に座っている男を見た。
下を向いて身体を縮めている。顔は見えないがその頸に後頭部に背中に見覚えがあった。
「…拓実。」
丸めた背中がビクッと震えた。
言い合っていた満と比留間、俺の横でニヤニヤする澤乃井、怒りで震えるメガネの男もみんなピタリと止まって俺を見た。
「拓実か?」
拓実は両手を膝の上で握りしめながら顔を上げた。
怯えているような表情だった。
「拓実の知り合い?」
満が驚いている。
「え?あ、うん。」
「へぇ、こんな愛人を斡旋するような碌でもないアルファと?」
「あ、ち、小さい頃の知り合いだよ。」
拓実はチラリと俺を見てすぐに目を逸らした。
知り合いか…。目も合わせてくれない。
「拓実、友達は選べよ。こんな碌でもないオメガ。」
「満は良いヤツだよ…。亮平の友達だって碌でもないだろ。」
消えそうな小さい声でそう言った。
「何だと?」
ダンっと大きな音を立てて比留間がテーブルを叩いた。ペンや消しゴムが床に落ちる。
周りの客がチラチラとこちらを見ている。
「やめろよ。声をかけて来たのはおまえたちだろ?」
満がそれを制した。拓実が床に手を伸ばして落ちたペンや消しゴムを拾っている。
「行こうぜ。騒がれたら面倒だ。」
澤乃井の言葉で俺たちはその場から離れた。
拓実はずっと俯いていた。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「あのオメガ知り合いなの?」
「え?」
「拓実って方。」
澤乃井が帰りの電車で聞いていた。比留間は違う沿線なので二人きりだ。
「子どもの頃近所に住んでた。引っ越してから知らない。」
「ふーん。」
スマホが震えたのでポケットから取り出した。
朋花だ。
『次いつ会える?』
拓実の顔を思い出した。
知り合いか…。
再会を喜んでいる様子は全くなかった。むしろ会いたくないみたいだった。俺が声を掛けなければあのまま下を向いてやり過ごしていただろう。
むしゃくしゃして仕方ない。
『今から良いよ』
そう返事をした。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
一戦終わって寝転んでいる。朋花は機嫌良くくっついてくる。
暑苦しい。
「なぁ。朋花のお兄さん清和大付属だったよな?」
「え?うん。アイツ、クソ真面目だから。」
拓実たちの制服は清和大付属高校のものだ。
朋花の一個上の兄貴が清和大付属だと言っていたことを思い出した。
「そこさ、オメガもたくさんいんの?」
「うん。何かバースに関係なく学べる、を教育方針に挙げてるんだって。え?何?亮平くんオメガ狙ってるの?」
朋花がガバッと起きて俺の顔を見て睨んでくる。
彼女ヅラってこういうことだな。
俺は小さくため息をついた。
「いや、違うよ。知り合いがいるんだ。一年の男のオメガ。満って名前。俺の友達が気に入ってて。」
嘘をついた。拓実のことは言えなかった。
まぁ、言っても分からないだろ。朋花の兄貴は二年だし。
「あぁ、知ってるかも。鴨志田満」
「え?知ってんの?」
「うん。あんま評判良くないよ。桃ヶ丘駅でたまに見かける。」
「あ、そう。何で良くないの?」
「噂だけど、アルファ相手にウリまがいな事やってるって。清和大付属って真面目なイメージじゃん。でも清和大の友達とそんなことやってるみたい。まぁ、あくまで噂だよ?」
その友達…。拓実もか?満は良いヤツって言ってたな。仲が良いんだろうか。
「えー?何?亮平くんの友達って誰?比留間くん?」
「いや、違うよ。クラスのやつ。朋花は知らないやつだよ。」
「ふーん。」
朋花は納得いかない表情で俺を見た。
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