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桃ヶ丘駅前のコーヒーショップでパソコンを広げている。何となく来てしまった。このコーヒーショップからは駅前が良く見える。レポートを書きながら既に一時間はここに座っている。
俺は一体何をしに来たんだろう。レポートもたいして捗らない。そろそろ帰ろうか、と思っているとスマホが震えた。
『今どこ?』
朋花だ。思わず辺りを見渡した。ここに居ることがバレたくない。
『今から会えない?』
『いいよ』
『本当?やったー!今、横田駅。どこにいるの?』
桃ヶ丘駅とは言えない。
『そっちに行く』
『わかった』
ハートのスタンプが送られきた。パソコンの電源を落として立ち上がった。
「亮平くん!」
横田駅の改札口で待っていた朋花が手を振って声をかけてきた。
「どこにいたの?」
「学校。」
「その割には早かったね。」
二駅先の桃ヶ丘駅に居たからな。
やっぱり会うのを止めれば良かったかもしれない。
「悪いかよ。で?何?どこ行く?ホテル?」
「えー?そればっかりじゃん。ちょっと買い物付き合ってよ。」
「えっ、マジで?」
朋花に腕を組まれて駅前の歩く。少しの先のデパートに行くと言っている。
面倒くさい。本当に止めれば良かった。
デパートの入り口の前で思わず立ち止まる。
拓実だ…。向こうも俺に気付いた。
隣には年上の男がいた。アルファの男だ。
俺に気付いた拓実は少し俯いてその男と歩き出した。
やっぱりそういうことか。
満と一緒か。
苛立ちと失望で身体の力が抜けた。
「どうしたの?」
朋花の声で我に返った。
俺も同じか。アイツらは金を、俺は身体を搾取している。
同じだ。
でもあの拓実がそんなことするとは。
あの男と寝るのか?
「ねぇ、亮平くん?」
一歩も動かない俺を朋花が不審がる。
「ごめん、帰る。」
「え?え?ちょっと!亮平くん?」
腕を振り解いて駅に向かった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「どうした?最近機嫌悪いじゃん。生理?」
比留間が揶揄ってくるけどそれを返す余裕がない。
「どうもしねーよ。」
「ふーん。あ、そう言えば俺すごいもの見ちゃったんだ。」
「えー、何?何?」
澤乃井が楽しそうに返事をする。俺はどうでもいいというふうに机に伏せた。
「平林知ってる?七組の平林啓。あいつとあのオメガが一緒にいる所見ちゃったの~。」
え?俺は顔を上げた。拓実?
「あのオメガって、まさか…」
「そのまさか。満って言ったっけ?桜沢の知り合いのオメガ。俺に紹介したオメガだよ。スーパー朝日で見たんだよ。二人で手で繋いでさぁ。楽しそうに買い物してた。」
は?満?拓実じゃなくて?どういうことだ?
平林は満に捨てられたって言ってたよな。ショックで学校も休んで泣いてただろ。
「マジでか?見間違いじゃなく?」
「お?桜沢、興味津々じゃん。間違いねーよ。俺、後付けたもん。」
「おまえ、趣味わりーな。」
二人が楽しそうに言い合いをしている。でも頭に入ってこない。平林とは高校に入ってからクラスが分かれて一度も話をしていない。というか最近は顔も見ていない。
よりを戻したのか?
何が起こっているのか分からず茫然とした。
「平林!」
授業が終わって急いで七組まで行った。七組はちょうど終わった所だった。教室から出てきた平林を捕まえる。
「あ、桜沢。久しぶりだな。」
「えっ、あぁ。」
満面の笑みを向けられて俺の勢いが急速に萎んだ。
人の恋愛だ。俺がどうこう言う事でもない。
ないんだけど…。
「おまえさ、その、満と…。」
「あ、うん。誰かに聞いたの?」
「見たやつがいて。」
「そっか。」
「その、平林は良いのか?」
「うん。満は俺の運命だ。」
え?運命?だってあんな事があったんだぞ。
弄ばれて捨てられたんじゃないのか?
「一緒に来てよ。」
平林は固まる俺を連れて駅に向かった。
「中学の時、噂になるかと思ったんだ。満とのこと。騙されて捨てられたって。でも誰にも何も言われなかった。桜沢、誰にも言わなかったんだな。」
「え、あぁ。」
平林はすごく傷付いてたし、誰かに言う事でもないと思ったからだ。
「すごい助かったよ。本当に感謝してる。」
電車に乗り三駅先の大和駅で降りた。そのまま二人で歩く。
平林は古い二階建のアパートの前で足を止めた。
「ここ。」
そう言って階段を登って一番奥の部屋の前に立ち、レトロなインターホンを押した。
「はーい。」
中から声がしてドアがガチャリと開いた。
ドアを開けた男は満だった。
「ただいま。」
「え、お、おかえり。」
満も驚いているが俺も驚いている。
「友達連れてきた。」
平林は嬉しそうに満に言った。
俺は一体何をしに来たんだろう。レポートもたいして捗らない。そろそろ帰ろうか、と思っているとスマホが震えた。
『今どこ?』
朋花だ。思わず辺りを見渡した。ここに居ることがバレたくない。
『今から会えない?』
『いいよ』
『本当?やったー!今、横田駅。どこにいるの?』
桃ヶ丘駅とは言えない。
『そっちに行く』
『わかった』
ハートのスタンプが送られきた。パソコンの電源を落として立ち上がった。
「亮平くん!」
横田駅の改札口で待っていた朋花が手を振って声をかけてきた。
「どこにいたの?」
「学校。」
「その割には早かったね。」
二駅先の桃ヶ丘駅に居たからな。
やっぱり会うのを止めれば良かったかもしれない。
「悪いかよ。で?何?どこ行く?ホテル?」
「えー?そればっかりじゃん。ちょっと買い物付き合ってよ。」
「えっ、マジで?」
朋花に腕を組まれて駅前の歩く。少しの先のデパートに行くと言っている。
面倒くさい。本当に止めれば良かった。
デパートの入り口の前で思わず立ち止まる。
拓実だ…。向こうも俺に気付いた。
隣には年上の男がいた。アルファの男だ。
俺に気付いた拓実は少し俯いてその男と歩き出した。
やっぱりそういうことか。
満と一緒か。
苛立ちと失望で身体の力が抜けた。
「どうしたの?」
朋花の声で我に返った。
俺も同じか。アイツらは金を、俺は身体を搾取している。
同じだ。
でもあの拓実がそんなことするとは。
あの男と寝るのか?
「ねぇ、亮平くん?」
一歩も動かない俺を朋花が不審がる。
「ごめん、帰る。」
「え?え?ちょっと!亮平くん?」
腕を振り解いて駅に向かった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「どうした?最近機嫌悪いじゃん。生理?」
比留間が揶揄ってくるけどそれを返す余裕がない。
「どうもしねーよ。」
「ふーん。あ、そう言えば俺すごいもの見ちゃったんだ。」
「えー、何?何?」
澤乃井が楽しそうに返事をする。俺はどうでもいいというふうに机に伏せた。
「平林知ってる?七組の平林啓。あいつとあのオメガが一緒にいる所見ちゃったの~。」
え?俺は顔を上げた。拓実?
「あのオメガって、まさか…」
「そのまさか。満って言ったっけ?桜沢の知り合いのオメガ。俺に紹介したオメガだよ。スーパー朝日で見たんだよ。二人で手で繋いでさぁ。楽しそうに買い物してた。」
は?満?拓実じゃなくて?どういうことだ?
平林は満に捨てられたって言ってたよな。ショックで学校も休んで泣いてただろ。
「マジでか?見間違いじゃなく?」
「お?桜沢、興味津々じゃん。間違いねーよ。俺、後付けたもん。」
「おまえ、趣味わりーな。」
二人が楽しそうに言い合いをしている。でも頭に入ってこない。平林とは高校に入ってからクラスが分かれて一度も話をしていない。というか最近は顔も見ていない。
よりを戻したのか?
何が起こっているのか分からず茫然とした。
「平林!」
授業が終わって急いで七組まで行った。七組はちょうど終わった所だった。教室から出てきた平林を捕まえる。
「あ、桜沢。久しぶりだな。」
「えっ、あぁ。」
満面の笑みを向けられて俺の勢いが急速に萎んだ。
人の恋愛だ。俺がどうこう言う事でもない。
ないんだけど…。
「おまえさ、その、満と…。」
「あ、うん。誰かに聞いたの?」
「見たやつがいて。」
「そっか。」
「その、平林は良いのか?」
「うん。満は俺の運命だ。」
え?運命?だってあんな事があったんだぞ。
弄ばれて捨てられたんじゃないのか?
「一緒に来てよ。」
平林は固まる俺を連れて駅に向かった。
「中学の時、噂になるかと思ったんだ。満とのこと。騙されて捨てられたって。でも誰にも何も言われなかった。桜沢、誰にも言わなかったんだな。」
「え、あぁ。」
平林はすごく傷付いてたし、誰かに言う事でもないと思ったからだ。
「すごい助かったよ。本当に感謝してる。」
電車に乗り三駅先の大和駅で降りた。そのまま二人で歩く。
平林は古い二階建のアパートの前で足を止めた。
「ここ。」
そう言って階段を登って一番奥の部屋の前に立ち、レトロなインターホンを押した。
「はーい。」
中から声がしてドアがガチャリと開いた。
ドアを開けた男は満だった。
「ただいま。」
「え、お、おかえり。」
満も驚いているが俺も驚いている。
「友達連れてきた。」
平林は嬉しそうに満に言った。
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