運命はいつもその手の中に

みこと

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拓実2

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「オメガ狩り…。」

亮平以外のアルファと番いにされちゃうってこと?
嫌だ、せっかく再会できたのに。亮平も俺と番いになりたいって…。

「うぅ、う…孝太郎…助けて…」

「啓、うっ、うぇっ、嫌だよ…」

二人とも泣き出した。俺も堪えてた涙が出てきた。
しばらく三人で泣いていた。
三人とも番いになりたいアルファがいる。そのアルファ以外と番いになるくらいなら死んだほうがましだ。 
どうにかして逃げないと。

「俺…俺をリクエストって言ってた。」

「え?うん。言ってたな。」

満が服の裾で涙を拭きながら答えた。

「拓実、思い当たる節はある?」

え…思い当たる節。ある、あるけどここまでするかな?

「亮平のお母さん…。でもここまでする?」

「きっとするよ。お母さんアルファだろ?アルファの執着だよ。悪い方に働いている。」

「ああ。きっとそうだな。」

二人は妙に納得している。
やっぱりそうなのか。そんなに恨まれてるんだ。

「とにかく逃げないと。迎えの電話がなければ孝太郎がおかしいと思うはずだ。」

「「うん。」」

部屋の中を改めて見渡す。布団が一組と古い簡易トイレがあるだけだ。きっと今までも誰がここで監禁されていた。
怖い…亮平…。
溢れる涙を袖で拭った。

「ここを出される時に逃げるしかないな。武器になるようなものはない。」

満が便座の蓋を持ち上げた。中蓋を開けたり閉めたりしている。

「これ、使えるかも。」

そう言って中蓋を外すと足で踏んで割った。
小さく割って鋭利になった破片を僕たちに見せた。

「何もないよりはマシだ。」

満が作ったプラスチックの破片を下着に忍ばせて粉々の破片をトイレに捨てた。

「いつ出されるんだろう…。」

「『今日は』って言ってたからすぐだよ。そろそろかもしれない。」

途端に緊張が走る。
弘海兄ちゃんは涙をこぼした。

「孝太郎以外のやつに番いされるくらいなら死んだほうがマシだ。」

俺と満は頷く。

「だったら死ぬ気で逃げよう。」

また俺たちは頷いた。

ガチャン

鉄の扉の開く音がした。さっきの男が立っている。

「泣いたのか?いいねぇ。泣き叫ぶオメガが好きってやつが多いんだよ。」

マスクで隠れていない口元がニヤリと笑った。

「さあ、行こうか。」




手を前にして手錠をかけられて男の後ろを歩く。まるで犯罪者だ。
階段を登って廊下のような所に出た。
天窓からの空が少しだけ見えた。
夕方になったのかな。もう孝太郎さんが気付いてくれたかもしれない。だとしたら亮平にも連絡がいくはずだ。

満が歩きながら僕の肩に自分の肩を触れた。
三人で目配せする。
手錠のついた手を下着に忍ばせてプラスチックを手に取った。
肌が露出しているのは腕だけだ。
亮平…。
僕はそのプラスチックを構えて男の腕に向かって体当たりをした。

「痛ぇ!!何すんだ!」

こちらを振り返った男の顎を弘海兄ちゃんが切りつける。
満も腕人向かって体当たりした。
男は顎を押さえて倒れた。
満がその顔を蹴り上げ僕たちは走って逃げた。

「うぅ、クソっクソっ!!待て!」

どこが出口かもわからないけど、とにかく走った。

「外だ!」

満が叫んだ。窓が見える。
窓が開きますように…。祈りながら走った。

「待て!クソオメガども!!」

遠くから叫ぶ声が聞こえる。
開いた!窓が開いて僕たちは外に出た。



外に出てからもとにかく走った。膝くらいまで伸びた草が邪魔して走りづらい。手錠も邪魔だ。靴を履いてないので足の裏も痛い。
でもそんなこといってられない。俺は亮平と番いになるんだ。
みんなも同じ気持ちだ。

「あそこに何かあるよ!」

小さな小屋を見つけた。
中を覗くと納屋のようだ。

「どうする?入ってみる?」

「うん。」

納屋はだいぶ長い間使われていないようだった。
埃っぽくてカビ臭い。

「隠れられそうだね。」

「うん。」

「怖かった…。」

「うん。怖かった。」

僕たちはまた泣き出した。足は傷だらけだし、着ているものもボロボロだ。

「何時だろう?」

「五時くらい?まだ陽は落ちてないよ。」

窓から外を見た。

「孝太郎、気付いたかな?」

「気付いたよ。きっと啓たちと必死で探してくれてる。」

「これからどうする?ここに隠れてた方が良い?」

「そうだね。ここが何処かも分からないし。」

僕たちはぐったりして埃まみれの床に座る。
僕のところから工具箱が見えた。
手錠が切れる物があるかもしれない。
中には錆びたレンチや金槌が入っていた。

「手錠を切るものはないね。」

「うん。」

細い釘や針金みたいなものもある。

「満、手貸して。」

何かスパイ映画でみた。ダメ元で手錠の鍵穴に針金を突っ込んでガチャガチャしてみた。

「開くの?」

「分かんない。」

無心でガチャガチャ針金を動かす。
何かやってないと怖くてどうにかなりそうだ。

「俺たちどうなるんだろう。」

「大丈夫。どうにもならないよ。孝太郎たちが来てくれる。」

言葉とは裏腹に弘海兄ちゃんの声は震えていた。

「…うん。」

カチャン

「あ、外れた…。」

「うわっ!本当だ…。すごいよ、拓実。」

適当にガチャガチしてだけなのに。
でも手錠がなければ逃げやすい。

「弘海兄ちゃんのも…。」

「待って!静かに…外が騒がしい。」

弘海兄ちゃんが口に人差し指を当てた。
微かに人の声が聞こえる。
見つかったら終わりだ。

「ここで見つかったらとにかく走って逃げるんだ。誰かが捕まっても助けに戻るな。振り返らず逃げろ。いいね。一人でも助かれば可能性はある。二人とも約束だよ?」

「「うん。」」

誰が捕まっても振り返らず逃げろ…。
外に人がいるようだ。
工具箱のレンチと金槌を取り出した。
拓実はスコップを持っている。
三人で震えながら小さくなって固まった。

すぐ外に人の気配がする。
納屋のドアが開いて人が入ってきた。
農耕車の影から除くと男が二人いるのが見えた。

「居ねーな。逃げられたか?」

「いや、門の方には居なかった。まだこの辺りにいるはずだ。」

「おい、これ…。」

満の手錠を見つけられしまった。

「いるんだろ?出て来いよ!!」

男たちの声が聞こえる。
俺たちは顔を合わせて頷いた。

満が飛び出して一人の男をスコップ殴りかかった。
俺と弘海兄ちゃんも飛び出してレンチと金槌を振り回す。
男たちが怯んだ隙に外へ出て走った。

「うわっ!」

足がもつれて転んでしまった!
満と弘海兄ちゃんが止まって振り返る。

「走れ!!逃げろ!満、弘海兄ちゃん、逃げて!」

二人は一瞬戸惑った顔をしたが泣きながら走っていった。
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