運命はいつもその手の中に

みこと

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拓実

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「楽しみだな。俺、昼抜いてきたんだ。」

「俺もだよ。」

俺と満と弘海兄ちゃんはオメガ限定プランのエステとアフタヌーンティーを満喫するため『スタービューホテル』に来ている。
楽しみだな。満も弘海兄ちゃんも嬉しそうだ。
チケットを手に入れてくれた叔母さんに感謝しなくちゃ。後で三人でお土産を買って帰ろうという話になった。

「じゃあな。弘海、終わったら連絡して。迎えに来る。」

弘海兄ちゃんの恋人の孝太郎さんが車で送り迎えしてくれる。至れり尽くせりだ。
俺は亮平にホテルに着いたとメッセージを送った。
亮平は昔から心配性だ。

俺と亮平は三歳の頃から一緒だ。いろいろあって離れてしまったけど今は恋人ととして側に居られる。もう二度会えないと思ってたのに。
無理して東京に戻ってきて本当に良かった。
亮平は早く番いになりたいって。
でも亮平のお母さんのこともあるし。
まだまだ前途多難だけど、一緒にいられて幸せだ。

「拓実、こっちだって。」

「うん。」

エントランスを抜けると広いロビーがある。
結構人がいるな。お洒落をした人たちで賑わっている。
結婚式かな?

男の人に案内されてエレベーターに乗った。

「先にエステだよね。」

「うん。孝太郎が『身体はダメだ』って言って大変だったよ。」

どこも一緒か。亮平もそんなこと言ってた。
孝太郎さんは弘海兄ちゃんちに居候している。
本当に仲良しだ。たまに孝太郎さんが怒られているところを見かけるけど二人はいつも一緒にいる。
この間は俺が居ないと思ってソファーでイチャイチャしてた。弘海兄ちゃんは嫌がってだけど孝太郎さんが『弘海、弘海』ってしつこく迫っていたんだ。

「こちらの部屋です。」

0821と書かれた部屋の前で止まる。男の人がカードをかざしてドアを開けた。

「え?ここ?」

弘海兄ちゃんが戸惑っている。
そうだよね。何で部屋なんだろう。

「こちらでお着替えをしていただきます。」

「着替え?顔じゃないの?」

「お洋服を汚すといけませんから。」

「あ、そうか。じゃあ。」

俺たちは四人でその部屋の中に入った。



「私は隣の部屋に居ますのでお着替えが終わったら声をかけて下さい。」

「分かりました。」

用意された着替えは薄っぺらで海外ドラマの患者さんが着てる物にそっくりだ。

「これで廊下歩くの?」

「えーっ!恥ずかしいよ。」

三人でお互いの格好を見て顔を赤くする。
奥のドアがガチャリと開いた。

「これで行くんですか?ちょっと恥ずかしい…。」

ドアの方を見ると映画で見たガスマスクをつけた男の人が立っていた。

「え…。」

俺たちは驚いて固まってしまった。その男の人は無言で近づいてきた。
怖いっ!何?

「うわっ!何?え?え?」

「え?怖いっ!やだ!」

俺たちに向かってスプレーを吹き付けた。
何?亮平…助けて…。
そのまま意識を失った。




「拓実、目が覚めた?」

弘海兄ちゃんが青い顔をして覗き込んでいる。
えっと…何が起こったんだ?
そうだ、エステに来て、部屋で着替えをしたら急に…。

「弘海兄ちゃん…。満は⁉︎」

「居るよ。大丈夫だ。」

満と弘海兄ちゃんは無事だ。良かった。
一体何があったんだ?

「何?何が起こった?どうなったの?」

「催眠スプレーだな。」

あのガスマスクの男が吹き付けたスプレー。
何で?エステに来たはずなのに。

「俺たち、騙されたんだ。」

悔しそうに満が言う。
騙された…?何が?どこから? 

「あのチケット自体が偽物だったのかもしれない。ごめん、二人を巻き込んで。」

「そんな…。弘海兄ちゃんのせいじゃないよ。」

「そうだよ。」

弘海兄ちゃんは項垂れている。
誰が何のために?

「ここはどこだろう?」

満がキョロキョロしながら言った。コンクリートの地下室のような部屋だ。窓も何もない。電気は通っている。鉄製の重そうなドアがあるだけた、
此処がどこか分かれば。
あっ!スマホ!
慌てて周りを見るけどスマホも鞄もない。

「何もないよ。此処がどこかも分からない。」

どうしよう。どうしたらいい?亮平、助けて。怖いよ。
弘海兄ちゃんは涙を堪えている。いつも気丈な満もがっくりと項垂れていた。
あれ?満、首にケガしてる?

「満、それ何?」

満の首筋に赤いマジックでNo.3と書かれた文字を見つけた。
あれ、弘海兄ちゃんもだ。No.2
何の番号だ?

「拓実もだよ。No.1って。」

ガチャン!
重い鉄の扉が開く音にびっくりして三人で固まった。
仮面をつけた男の人が入ってきた。オペラ座の怪人に出て来るような仮面だ。
怖くて震えながらその男を見た。

「可愛い仔猫ちゃんたち。今日のショーにようこそ。」

「ショー?」

「そう。ショーだよ。待ちに待ったオメガ狩りのショータイムだ!」

男は気味が悪いくらい上機嫌だ。

「オメガ狩り…?」

「今日、君たちはアルファに狩られるんだよ。久しぶりだから思いっきり楽しませてもらうよ。特にNo.1、君はある人からリクエストがあってね。捕まえるのに苦労した分楽しませてくれ。あ、安心して。発情期は薬で起こさせるから。」

アルファに狩られるって何?
俺をリクエストってどういうこと?

「おい!こんなことしてただで済むと思ってるのか?」

「そうだ!僕たちの恋人が黙ってないぞ!」

満と弘海兄ちゃんが震える声で叫んだ。

「最近のオメガは威勢が良いね。まぁ、それはそれで楽しいんだけどね。君たちのアルファは今頃大勢のアルファたちと楽しく親睦を深めている頃だろ?それに今日、君たちは他のアルファのオメガになるんだからね。いくら恋人が喚いて騒いだところでどうにもならないんだよ。番い契約は一生に一度だけだ。」

「「「えっ…?」」」

「聞こえなかったか?番い契約だよ。今日は君たちの番い契約の日だ!相手は誰だか分からないけどね。さぁ、もうそろそろみんな来るから準備しないと。」

あははと笑いながらその男は部屋を出て行った。

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