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拓実のフェロモンが濃く強く溢れ出している。
薬を使ったな。
フェロモンが漏れ出しているドアの前に立った。
この中にアルファが何人いるか分からない。
でもそんなのどうでもいい。行くぞ…。
バンっと思いっきりドアを開けるとそこは薄暗い小劇場のような部屋だった。
観客席の椅子に座り奇妙な仮面を着けたアルファたちが一斉に振り返って俺を見た。
部屋の中は拓実のフェロモンが充満している。
「何だ!おまえ…」
真正面のステージの上の男が叫んだ。
観客のアルファたちがざわめく。
ステージの上のベッドに拓実が括り付けられているのが見えた。その周りを三人のアルファが囲んでいる。
クソっ!
怒りのフェロモンを爆発させながらステージまで走り飛び乗った。
「拓実…。おい、おまえ拓実から離れろ。今すぐ死ぬか?」
拓実を押さえ付けていた二人がサッと手を離した。
「亮平…亮平…助けて、亮平。」
側に寄って頭を抱きしめた。
啜り泣く拓実が俺の名前を呼んでいる。
薬のせいで朦朧としている。
「てめーら全員生きてここを出られると思うなよ!」
「な、何を…おまえ一人で、ぐぁっ!」
俺に話しかけた男を思いっきりぶん殴った。
ぐしゃりと良い音がした。顎が割れたな。泡を吹いて倒れている。
他のアルファは俺のフェロモンで動けない。震えているヤツもいる。下等アルファどもめ。
拓実の腕のロープを解いて抱き上げた。
「拓実、俺だ。分かるか?」
優しく話しかけた。
「亮平…亮平?」
「あぁ、俺だ。ごめんな、遅くなって。もう大丈夫だからな。」
「う、うぅ、ひっ、亮平、亮平。怖いよっ!亮平。」
拓実が泣きながら抱きついてきた。
拓実のフェロモン…。間に合って良かった…。
足が傷だらけだ。それを見てまた怒りが込み上げてくる。
ガタンと音がした方を見ると逃げ出そうとするヤツがいる。それを見た他のアルファも立ち上がって逃げようとし始めた。
まぁ良い。必ず見つけて制裁を与える。
それよりも…。男のアルファしか居ない。
クソババアは居ないのか?
拓実を抱いたまま外に出た。騒がしいと思ったら警察車両やら救急車やらが来ていた。何人か捕まっている。それ以外は倒れているヤツもいる。
そうだ、満は?満はどうなった?
「亮平くんっ!」
「孝太郎さん、みんなは?」
「みんな無事だ。満も大丈夫だ。」
そうか、良かった。
「拓実のフェロモンがキツいな。薬か?でも番いになっていない証拠だ。」
「はい。」
「救急車で応急処置をしてもらおう。」
拓実を救急車に乗せて抑制剤の点滴をしてもらう。少しづつフェロモンが治まってきた。それに比例するように拓実の意識も戻ってくる。
「…亮平?」
「ああ。遅くなってごめんな。」
「お、俺、どうなった?」
「大丈夫だよ。薬を使われただけだ。拓実は俺の番いだ。」
「本当に?」
「うん。俺の番いだよ。」
声を上げて泣く拓実を抱きしめた。
「亮平、みんなは?弘海兄ちゃんと満もいるんだ!」
「みんな無事だ。」
「本当?良かった、良かった…。」
そのあと満と弘海さんが救急車の中に入ってきて三人は抱き合って泣いていた。
念の為みんな検査入院することになったので救急車で病院に向かった。
「拓実、よく頑張ったな。」
「うん。怖かった…。本当に怖かったよ。亮平以外のアルファに番いされるって言われて。みんなで死ぬ気で逃げた。」
「本当に…本当に良かった。」
一緒に救急車に乗って病院に向かう。入院先は特別な場所を茂山が手配してくれた。
「俺、入院するの?」
「念の為な?俺がずっと一緒にいるから大丈夫だよ。」
その後は警察に話を聞かれたり、弘海さんの母親が来たりとバタバタしていた。
「拓実のご両親は明日来るって?」
「うん。今から来るって言ってたけど、もうこんな時間だし。亮平によろしくお願いしますって。」
「そうか。拓実、疲れただろ?少し休んだ方いい。」
「亮平は?」
「ここに居るよ。」
そう言って拓実が寝ているベッドに潜り込んだ。
「俺、臭いだろ?すごい汗かいたし。」
拓実は足の怪我もあるので身体を拭いて着替えをしただけだった。
「ううん。良い匂い。明日、俺が風呂に入れてあげるからな。」
「うん。」
抱きしめて優しく背中叩いていると寝息が聞こえた。
スマホの画面が光ったので見てみると孝太郎さんからだった。
そっと拓実から離れて部屋を出ると孝太郎さんと平林がいた。
拓実たちはこの同じフロアに入院している。個室が四つあるだけの特別なフロアだ。このフロアへの出入りは厳戒態勢を強いている。
「拓実は?」
「寝たよ。満はどうだ?」
「うん。薬を飲んですぐに寝た。」
池に飛び込んだ満は水中でじっと隠れていた。池が汚かったのと池の周りが雑草だらけだったのが功を奏して見つからなかったみたいだ。
「弘海さんは?」
「さっきまで泣いてたけど安定剤を打ってもらって寝たよ。」
みんなを守りきれなかったと言って泣いて不安定になっているようだ。
「医者がしばらく入院って言ってたな。」
「はい。傷からの感染のリスクが高いから治療するって言ってました。」
エレベーターが開いて星崎さんと茂山と男がもう一人入ってきた。
「宝来さん、みんな見つかったって。」
「はい。星崎さんに協力していただいたお陰です。」
「とんでもないです。でも本当に良かった。スタッフ通用口の監視カメラが壊されていてホテルを出てからの足取りは分かりませんでしたし…。」
「茂山、犯人は?」
「あそこに来ていたほとんどのアルファは捕まったようです。ただ、あの会を主催していたグループのヤツらがまだ捕まって居ない。」
会場にいた二十人近くのアルファはほとんど捕まり事情聴取を受けている。
マスコミにも漏れて大騒ぎになっていた。
薬を使ったな。
フェロモンが漏れ出しているドアの前に立った。
この中にアルファが何人いるか分からない。
でもそんなのどうでもいい。行くぞ…。
バンっと思いっきりドアを開けるとそこは薄暗い小劇場のような部屋だった。
観客席の椅子に座り奇妙な仮面を着けたアルファたちが一斉に振り返って俺を見た。
部屋の中は拓実のフェロモンが充満している。
「何だ!おまえ…」
真正面のステージの上の男が叫んだ。
観客のアルファたちがざわめく。
ステージの上のベッドに拓実が括り付けられているのが見えた。その周りを三人のアルファが囲んでいる。
クソっ!
怒りのフェロモンを爆発させながらステージまで走り飛び乗った。
「拓実…。おい、おまえ拓実から離れろ。今すぐ死ぬか?」
拓実を押さえ付けていた二人がサッと手を離した。
「亮平…亮平…助けて、亮平。」
側に寄って頭を抱きしめた。
啜り泣く拓実が俺の名前を呼んでいる。
薬のせいで朦朧としている。
「てめーら全員生きてここを出られると思うなよ!」
「な、何を…おまえ一人で、ぐぁっ!」
俺に話しかけた男を思いっきりぶん殴った。
ぐしゃりと良い音がした。顎が割れたな。泡を吹いて倒れている。
他のアルファは俺のフェロモンで動けない。震えているヤツもいる。下等アルファどもめ。
拓実の腕のロープを解いて抱き上げた。
「拓実、俺だ。分かるか?」
優しく話しかけた。
「亮平…亮平?」
「あぁ、俺だ。ごめんな、遅くなって。もう大丈夫だからな。」
「う、うぅ、ひっ、亮平、亮平。怖いよっ!亮平。」
拓実が泣きながら抱きついてきた。
拓実のフェロモン…。間に合って良かった…。
足が傷だらけだ。それを見てまた怒りが込み上げてくる。
ガタンと音がした方を見ると逃げ出そうとするヤツがいる。それを見た他のアルファも立ち上がって逃げようとし始めた。
まぁ良い。必ず見つけて制裁を与える。
それよりも…。男のアルファしか居ない。
クソババアは居ないのか?
拓実を抱いたまま外に出た。騒がしいと思ったら警察車両やら救急車やらが来ていた。何人か捕まっている。それ以外は倒れているヤツもいる。
そうだ、満は?満はどうなった?
「亮平くんっ!」
「孝太郎さん、みんなは?」
「みんな無事だ。満も大丈夫だ。」
そうか、良かった。
「拓実のフェロモンがキツいな。薬か?でも番いになっていない証拠だ。」
「はい。」
「救急車で応急処置をしてもらおう。」
拓実を救急車に乗せて抑制剤の点滴をしてもらう。少しづつフェロモンが治まってきた。それに比例するように拓実の意識も戻ってくる。
「…亮平?」
「ああ。遅くなってごめんな。」
「お、俺、どうなった?」
「大丈夫だよ。薬を使われただけだ。拓実は俺の番いだ。」
「本当に?」
「うん。俺の番いだよ。」
声を上げて泣く拓実を抱きしめた。
「亮平、みんなは?弘海兄ちゃんと満もいるんだ!」
「みんな無事だ。」
「本当?良かった、良かった…。」
そのあと満と弘海さんが救急車の中に入ってきて三人は抱き合って泣いていた。
念の為みんな検査入院することになったので救急車で病院に向かった。
「拓実、よく頑張ったな。」
「うん。怖かった…。本当に怖かったよ。亮平以外のアルファに番いされるって言われて。みんなで死ぬ気で逃げた。」
「本当に…本当に良かった。」
一緒に救急車に乗って病院に向かう。入院先は特別な場所を茂山が手配してくれた。
「俺、入院するの?」
「念の為な?俺がずっと一緒にいるから大丈夫だよ。」
その後は警察に話を聞かれたり、弘海さんの母親が来たりとバタバタしていた。
「拓実のご両親は明日来るって?」
「うん。今から来るって言ってたけど、もうこんな時間だし。亮平によろしくお願いしますって。」
「そうか。拓実、疲れただろ?少し休んだ方いい。」
「亮平は?」
「ここに居るよ。」
そう言って拓実が寝ているベッドに潜り込んだ。
「俺、臭いだろ?すごい汗かいたし。」
拓実は足の怪我もあるので身体を拭いて着替えをしただけだった。
「ううん。良い匂い。明日、俺が風呂に入れてあげるからな。」
「うん。」
抱きしめて優しく背中叩いていると寝息が聞こえた。
スマホの画面が光ったので見てみると孝太郎さんからだった。
そっと拓実から離れて部屋を出ると孝太郎さんと平林がいた。
拓実たちはこの同じフロアに入院している。個室が四つあるだけの特別なフロアだ。このフロアへの出入りは厳戒態勢を強いている。
「拓実は?」
「寝たよ。満はどうだ?」
「うん。薬を飲んですぐに寝た。」
池に飛び込んだ満は水中でじっと隠れていた。池が汚かったのと池の周りが雑草だらけだったのが功を奏して見つからなかったみたいだ。
「弘海さんは?」
「さっきまで泣いてたけど安定剤を打ってもらって寝たよ。」
みんなを守りきれなかったと言って泣いて不安定になっているようだ。
「医者がしばらく入院って言ってたな。」
「はい。傷からの感染のリスクが高いから治療するって言ってました。」
エレベーターが開いて星崎さんと茂山と男がもう一人入ってきた。
「宝来さん、みんな見つかったって。」
「はい。星崎さんに協力していただいたお陰です。」
「とんでもないです。でも本当に良かった。スタッフ通用口の監視カメラが壊されていてホテルを出てからの足取りは分かりませんでしたし…。」
「茂山、犯人は?」
「あそこに来ていたほとんどのアルファは捕まったようです。ただ、あの会を主催していたグループのヤツらがまだ捕まって居ない。」
会場にいた二十人近くのアルファはほとんど捕まり事情聴取を受けている。
マスコミにも漏れて大騒ぎになっていた。
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