運命はいつもその手の中に

みこと

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エレベーターの前に立つ二人の男に軽く頭を下げてその横の自販機でコーヒーを買った。拓実にはカフェオレだ。

「おはようございます。早いっすね。」

「おはよう。何か目が覚めて…。」

「警護は任せて下さい。」

「ああ、頼むな。」

俺に話しかけてきたマッチョの若い男は茂山のオメガの息子でみおという名前だ。
ジークンドーの師範でオメガでその名前。頭がバグりそうだ。しかも番いは星崎さんだった。
澪とその弟子たちが交代で警護してくれている。
孝太郎さんの情報で捕まったアルファの中に警官もいたことを聞いた俺たちは、警察は信用できないと自分たちでSPを雇うことにしたのだ。

「俺も格闘技習おうかな。」

「いつでも待ってますよ!うちの道場にはオメガも結構きてます。護身術も教えているんで拓実くんと一緒にどうぞ!」

「考えとく。」

部屋に戻ると拓実が起きていた。

「おはよう拓実。飲むか?」

「おはよう。うん。ありがと。」

缶の蓋を開けて渡してやる。

「澪さんが居るの?」

「ああ。」

「この間ジークンドー教えてくれるって言われた。俺も澪さんみたいなれるかなぁ。」

えぇ⁉︎なりたいのか?頼む!そのままでいてくれ。
俺は曖昧な返事をしておいた。
星崎さんは澪さんのことをみーちゃんみーちゃんと言って可愛がっていた。みーちゃんの方がデカくて逞しいから星崎さんが可愛がられているように見える。
まぁ、好みは人それぞれだからな。
孝太郎さんも驚いていて、こっそり俺に『本当にオメガか?』と何度も聞いてきた。

「拓実、トイレ行くか?」

「…うん。」

「おいで。」

拓実を抱き上げて部屋のトイレに連れて行く。
足の裏の傷が思ったよりもかなり酷くて立つのも辛そうだ。
その時は必死だっただろうしアドレナリンが出てたからはあまり痛みは感じなかったようだ。

「あ、あとは自分でやる。少しなら立てるよ。」

「ダメ。ほら、お尻上げて。」

「え、うん。」

腕の力でお尻を少し上げてもらいズボンと下着を下ろした。
何度もしてるのに恥ずかしがって顔が赤い。
可愛いなと思ってじっと見ていると早く出でいってと言われてしまった。
弘海さんも満も足の裏の怪我が酷くてそれぞれの恋人に面倒を見てもらっている。
午後は誰かの部屋に集まって話をしたり勉強したり、配信サービスで映画を観たりして過ごしていた。



「うわっ!満どーしたの?」

「うん、何か薬が合わなかったみたいで…。」

夏休みの宿題をやろうと言って満が平林に横抱きにされて部屋に入ってきた。
その顔が腫れて赤くなっている。

「えぇ!大丈夫?寝てなくて良いの?」

「うん。じっとしてると痒くて。なんかしてた方が紛れる。」

「うわぁ、酷いね。何の薬?」

弘海さんも顔を顰めて見ている。孝太郎さんはどうしても外せない用事で出かけているので朝から拓実の部屋にいる。

「抗生物質のアレルギーだって。今日から違う薬に変えてもらった。」

「治るの?」

「すぐ引くらしいよ。」

満を置いて出で行った平林が戻ってきた。
売店でアイスやお菓子を買ってきたようで手には大きな袋を持っている。
俺たちは三人で協力して拓実たちから目を離さないようにしている。自分に用事がある時は他のアルファに見ててもらう。

「満、食べたがってたアイスあったよ。」

「本当?やったぁ。」

満がアイスを見て喜んでいる。平林はみんなの分も買ってきてくれていた。

「悪いな。ありがとう。」

結局宿題はせずに三人でアイスを食べながら映画を見始めた。
俺も拓実の隣で映画を観ようとするとポケットのスマホが震えた。

「平林、ちょっと出てもいいか?」

「うん。電話?」

「ああ。頼むな。」

親父からの着信だ。

「もしもし。」

「亮平か?」

「はい。」

「拓実くんの具合はどうだ?」

「まあまあですね。」

「そうか。母さんの行方がまだ分からないんだ。税所も消えた。」

「親父、まだここの病院は使えますか?」

「ああ。いくらでも居て構わない。おまえたちがいる所はお偉いさんが雲隠れするのに使う場所だからな。」

しばらくはここに居た方が良さそうだ。
捜査はなかなか進まず、誰かが邪魔をしているのかもしれない。
部屋に戻ると四人で食い入るように映画を観ている。

「そんなに面白い?」

そう言いながらベッドに座っている拓実を後ろから抱きしめた。

「うわっ!亮平、脅かさないで。」

「ごめん。」

「今、ちょうど怖いところなんだよ。ほら、井戸から…。」

そう言ってまた画面を観ている。
拓実たちはだいぶ元気になってきた。
でも夜は抱きしめていないとなかなか眠れない。
あんなに寝つきが良かったのに。
俺の匂いがないと眠れないと本人も言っていた。
弘海さんは時々夜中にうなされる。抱きしめて優しく声をかけるとまた静かに眠るようだ。
満もずっと平林にくっついている。
今もテレビの画面を観ながら無意識に平林の匂いを嗅いでいる。
カウンセリングもしているがまだまだだ。たぶん時間がかかるだろう。
出来るだけ側にいてやりたい。あとは主犯格のヤツらが捕まれば…。





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