28 / 41
26
しおりを挟む
エレベーターの前に立つ二人の男に軽く頭を下げてその横の自販機でコーヒーを買った。拓実にはカフェオレだ。
「おはようございます。早いっすね。」
「おはよう。何か目が覚めて…。」
「警護は任せて下さい。」
「ああ、頼むな。」
俺に話しかけてきたマッチョの若い男は茂山のオメガの息子で澪という名前だ。
ジークンドーの師範でオメガでその名前。頭がバグりそうだ。しかも番いは星崎さんだった。
澪とその弟子たちが交代で警護してくれている。
孝太郎さんの情報で捕まったアルファの中に警官もいたことを聞いた俺たちは、警察は信用できないと自分たちでSPを雇うことにしたのだ。
「俺も格闘技習おうかな。」
「いつでも待ってますよ!うちの道場にはオメガも結構きてます。護身術も教えているんで拓実くんと一緒にどうぞ!」
「考えとく。」
部屋に戻ると拓実が起きていた。
「おはよう拓実。飲むか?」
「おはよう。うん。ありがと。」
缶の蓋を開けて渡してやる。
「澪さんが居るの?」
「ああ。」
「この間ジークンドー教えてくれるって言われた。俺も澪さんみたいなれるかなぁ。」
えぇ⁉︎なりたいのか?頼む!そのままでいてくれ。
俺は曖昧な返事をしておいた。
星崎さんは澪さんのことをみーちゃんみーちゃんと言って可愛がっていた。みーちゃんの方がデカくて逞しいから星崎さんが可愛がられているように見える。
まぁ、好みは人それぞれだからな。
孝太郎さんも驚いていて、こっそり俺に『本当にオメガか?』と何度も聞いてきた。
「拓実、トイレ行くか?」
「…うん。」
「おいで。」
拓実を抱き上げて部屋のトイレに連れて行く。
足の裏の傷が思ったよりもかなり酷くて立つのも辛そうだ。
その時は必死だっただろうしアドレナリンが出てたからはあまり痛みは感じなかったようだ。
「あ、あとは自分でやる。少しなら立てるよ。」
「ダメ。ほら、お尻上げて。」
「え、うん。」
腕の力でお尻を少し上げてもらいズボンと下着を下ろした。
何度もしてるのに恥ずかしがって顔が赤い。
可愛いなと思ってじっと見ていると早く出でいってと言われてしまった。
弘海さんも満も足の裏の怪我が酷くてそれぞれの恋人に面倒を見てもらっている。
午後は誰かの部屋に集まって話をしたり勉強したり、配信サービスで映画を観たりして過ごしていた。
「うわっ!満どーしたの?」
「うん、何か薬が合わなかったみたいで…。」
夏休みの宿題をやろうと言って満が平林に横抱きにされて部屋に入ってきた。
その顔が腫れて赤くなっている。
「えぇ!大丈夫?寝てなくて良いの?」
「うん。じっとしてると痒くて。なんかしてた方が紛れる。」
「うわぁ、酷いね。何の薬?」
弘海さんも顔を顰めて見ている。孝太郎さんはどうしても外せない用事で出かけているので朝から拓実の部屋にいる。
「抗生物質のアレルギーだって。今日から違う薬に変えてもらった。」
「治るの?」
「すぐ引くらしいよ。」
満を置いて出で行った平林が戻ってきた。
売店でアイスやお菓子を買ってきたようで手には大きな袋を持っている。
俺たちは三人で協力して拓実たちから目を離さないようにしている。自分に用事がある時は他のアルファに見ててもらう。
「満、食べたがってたアイスあったよ。」
「本当?やったぁ。」
満がアイスを見て喜んでいる。平林はみんなの分も買ってきてくれていた。
「悪いな。ありがとう。」
結局宿題はせずに三人でアイスを食べながら映画を見始めた。
俺も拓実の隣で映画を観ようとするとポケットのスマホが震えた。
「平林、ちょっと出てもいいか?」
「うん。電話?」
「ああ。頼むな。」
親父からの着信だ。
「もしもし。」
「亮平か?」
「はい。」
「拓実くんの具合はどうだ?」
「まあまあですね。」
「そうか。母さんの行方がまだ分からないんだ。税所も消えた。」
「親父、まだここの病院は使えますか?」
「ああ。いくらでも居て構わない。おまえたちがいる所はお偉いさんが雲隠れするのに使う場所だからな。」
しばらくはここに居た方が良さそうだ。
捜査はなかなか進まず、誰かが邪魔をしているのかもしれない。
部屋に戻ると四人で食い入るように映画を観ている。
「そんなに面白い?」
そう言いながらベッドに座っている拓実を後ろから抱きしめた。
「うわっ!亮平、脅かさないで。」
「ごめん。」
「今、ちょうど怖いところなんだよ。ほら、井戸から…。」
そう言ってまた画面を観ている。
拓実たちはだいぶ元気になってきた。
でも夜は抱きしめていないとなかなか眠れない。
あんなに寝つきが良かったのに。
俺の匂いがないと眠れないと本人も言っていた。
弘海さんは時々夜中にうなされる。抱きしめて優しく声をかけるとまた静かに眠るようだ。
満もずっと平林にくっついている。
今もテレビの画面を観ながら無意識に平林の匂いを嗅いでいる。
カウンセリングもしているがまだまだだ。たぶん時間がかかるだろう。
出来るだけ側にいてやりたい。あとは主犯格のヤツらが捕まれば…。
「おはようございます。早いっすね。」
「おはよう。何か目が覚めて…。」
「警護は任せて下さい。」
「ああ、頼むな。」
俺に話しかけてきたマッチョの若い男は茂山のオメガの息子で澪という名前だ。
ジークンドーの師範でオメガでその名前。頭がバグりそうだ。しかも番いは星崎さんだった。
澪とその弟子たちが交代で警護してくれている。
孝太郎さんの情報で捕まったアルファの中に警官もいたことを聞いた俺たちは、警察は信用できないと自分たちでSPを雇うことにしたのだ。
「俺も格闘技習おうかな。」
「いつでも待ってますよ!うちの道場にはオメガも結構きてます。護身術も教えているんで拓実くんと一緒にどうぞ!」
「考えとく。」
部屋に戻ると拓実が起きていた。
「おはよう拓実。飲むか?」
「おはよう。うん。ありがと。」
缶の蓋を開けて渡してやる。
「澪さんが居るの?」
「ああ。」
「この間ジークンドー教えてくれるって言われた。俺も澪さんみたいなれるかなぁ。」
えぇ⁉︎なりたいのか?頼む!そのままでいてくれ。
俺は曖昧な返事をしておいた。
星崎さんは澪さんのことをみーちゃんみーちゃんと言って可愛がっていた。みーちゃんの方がデカくて逞しいから星崎さんが可愛がられているように見える。
まぁ、好みは人それぞれだからな。
孝太郎さんも驚いていて、こっそり俺に『本当にオメガか?』と何度も聞いてきた。
「拓実、トイレ行くか?」
「…うん。」
「おいで。」
拓実を抱き上げて部屋のトイレに連れて行く。
足の裏の傷が思ったよりもかなり酷くて立つのも辛そうだ。
その時は必死だっただろうしアドレナリンが出てたからはあまり痛みは感じなかったようだ。
「あ、あとは自分でやる。少しなら立てるよ。」
「ダメ。ほら、お尻上げて。」
「え、うん。」
腕の力でお尻を少し上げてもらいズボンと下着を下ろした。
何度もしてるのに恥ずかしがって顔が赤い。
可愛いなと思ってじっと見ていると早く出でいってと言われてしまった。
弘海さんも満も足の裏の怪我が酷くてそれぞれの恋人に面倒を見てもらっている。
午後は誰かの部屋に集まって話をしたり勉強したり、配信サービスで映画を観たりして過ごしていた。
「うわっ!満どーしたの?」
「うん、何か薬が合わなかったみたいで…。」
夏休みの宿題をやろうと言って満が平林に横抱きにされて部屋に入ってきた。
その顔が腫れて赤くなっている。
「えぇ!大丈夫?寝てなくて良いの?」
「うん。じっとしてると痒くて。なんかしてた方が紛れる。」
「うわぁ、酷いね。何の薬?」
弘海さんも顔を顰めて見ている。孝太郎さんはどうしても外せない用事で出かけているので朝から拓実の部屋にいる。
「抗生物質のアレルギーだって。今日から違う薬に変えてもらった。」
「治るの?」
「すぐ引くらしいよ。」
満を置いて出で行った平林が戻ってきた。
売店でアイスやお菓子を買ってきたようで手には大きな袋を持っている。
俺たちは三人で協力して拓実たちから目を離さないようにしている。自分に用事がある時は他のアルファに見ててもらう。
「満、食べたがってたアイスあったよ。」
「本当?やったぁ。」
満がアイスを見て喜んでいる。平林はみんなの分も買ってきてくれていた。
「悪いな。ありがとう。」
結局宿題はせずに三人でアイスを食べながら映画を見始めた。
俺も拓実の隣で映画を観ようとするとポケットのスマホが震えた。
「平林、ちょっと出てもいいか?」
「うん。電話?」
「ああ。頼むな。」
親父からの着信だ。
「もしもし。」
「亮平か?」
「はい。」
「拓実くんの具合はどうだ?」
「まあまあですね。」
「そうか。母さんの行方がまだ分からないんだ。税所も消えた。」
「親父、まだここの病院は使えますか?」
「ああ。いくらでも居て構わない。おまえたちがいる所はお偉いさんが雲隠れするのに使う場所だからな。」
しばらくはここに居た方が良さそうだ。
捜査はなかなか進まず、誰かが邪魔をしているのかもしれない。
部屋に戻ると四人で食い入るように映画を観ている。
「そんなに面白い?」
そう言いながらベッドに座っている拓実を後ろから抱きしめた。
「うわっ!亮平、脅かさないで。」
「ごめん。」
「今、ちょうど怖いところなんだよ。ほら、井戸から…。」
そう言ってまた画面を観ている。
拓実たちはだいぶ元気になってきた。
でも夜は抱きしめていないとなかなか眠れない。
あんなに寝つきが良かったのに。
俺の匂いがないと眠れないと本人も言っていた。
弘海さんは時々夜中にうなされる。抱きしめて優しく声をかけるとまた静かに眠るようだ。
満もずっと平林にくっついている。
今もテレビの画面を観ながら無意識に平林の匂いを嗅いでいる。
カウンセリングもしているがまだまだだ。たぶん時間がかかるだろう。
出来るだけ側にいてやりたい。あとは主犯格のヤツらが捕まれば…。
54
あなたにおすすめの小説
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った
こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。
人気者の幼馴染が俺の番
蒸しケーキ
BL
佐伯淳太は、中学生の時、自分がオメガだと判明するが、ある日幼馴染である成瀬恭弥はオメガが苦手という事実を耳にしてしまう。そこから淳太は恭弥と距離を置き始めるが、実は恭弥は淳太のことがずっと好きで、、、
※「二人で過ごす発情期の話」の二人が高校生のときのお話です。どちらから読んでも問題なくお読みいただけます。二人のことが書きたくなったのでだらだらと書いていきます。お付き合い頂けましたら幸いです。
クローゼットは宝箱
織緒こん
BL
てんつぶさん主催、オメガの巣作りアンソロジー参加作品です。
初めてのオメガバースです。
前後編8000文字強のSS。
◇ ◇ ◇
番であるオメガの穣太郎のヒートに合わせて休暇をもぎ取ったアルファの将臣。ほんの少し帰宅が遅れた彼を出迎えたのは、溢れかえるフェロモンの香気とクローゼットに籠城する番だった。狭いクローゼットに隠れるように巣作りする穣太郎を見つけて、出会ってから想いを通じ合わせるまでの数年間を思い出す。
美しく有能で、努力によってアルファと同等の能力を得た穣太郎。正気のときは決して甘えない彼が、ヒート期間中は将臣だけにぐずぐずに溺れる……。
年下わんこアルファ×年上美人オメガ。
ノエルの結婚
仁茂田もに
BL
オメガのノエルは顔も知らないアルファと結婚することになった。
お相手のヴィンセントは旦那さまの部下で、階級は中尉。東方司令部に勤めているらしい。
生まれ育った帝都を離れ、ノエルはヴィンセントとふたり東部の街で新婚生活を送ることになる。
無表情だが穏やかで優しい帝国軍人(アルファ)×明るいがトラウマ持ちのオメガ
過去につらい経験をしたオメガのノエルが、ヴィンセントと結婚して幸せになる話です。
J.GARDEN58にて本編+書き下ろしで頒布する予定です。
詳しくは後日、活動報告またはXにてご告知します。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
愛に変わるのに劇的なキッカケは必要ない
かんだ
BL
オメガバ/α×Ω/見知らぬαの勘違いにより、不安定だった性が完全なΩになってしまった受け。αの攻めから責任を取ると言われたので金銭や仕事、生活等、面倒を見てもらうことになるが、それでもΩになりたくなかった受けは絶望しかない。
攻めを恨むことしか出来ない受けと、段々と受けが気になってしまい振り回される攻めの話。
ハピエン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる