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「亮平、少し休みなよ。」
「うん。ありがとう。」
状態が安定したため集中治療室から元の部屋に戻ってきた。
俺は病院長の許可をもらって拓実についていた。
この部屋とは違って一緒に寝るわけにはいかないのでずっと座っていたからほとんど寝ていない。
疲れたけど拓実が無事で良かった。
「ほら、拓実も。」
俺はベッドに横になってその隣で座って本を読んでいる拓実を引っ張った。
「俺はちゃんと寝たよ。」
「拓実が添い寝してくれないと俺が寝れない。」
「もう。」
そう言って一緒に横になる。
「具合は平気?」
「うん。」
腕枕をしてちゅっちゅっとキスをした。
拓実が俺の匂いを吸い込んでいる。
本当に可愛いな。
「拓実、ごめんな。」
「なんで謝るの?」
「だって、俺がついていながら…。それにうちの母親かもしれないし。」
「亮平のせいじゃないよ。」
「うん。でも拓実を離してやれない。ごめん。危険に晒すのが分かってても拓実と別れられない。」
「俺だって亮平と離れられないよ。亮平に迷惑かけちゃうけど亮平と一緒に居たい。」
「拓実…。」
何度もキスをして抱き合った。
拓実とこうしていると何にも代え難い幸せな気持ちになる。
母さんは不幸だ。アルファ至上主義の呪いにかかっている。番いのオメガにしか解くことが出来ない呪いだ。
番いに会えないアルファは一生その呪いに侵される。
この幸せを知らずに死ぬのだ。
そういえば兄貴は?兄貴は好きなオメガがいるんだろ?
母さんは知らないのか?
そんなことを考えているうちに拓実の優しい匂いに包まれながら眠りについた。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「兄貴、わざわざ悪いな。」
「拓実は元気か?父さんに聞いたよ。犯人は分からないんだって?」
「ああ。」
「で、俺に聞きたいことって?」
病院の中にあるカフェに兄貴を呼び出した。
兄貴のオメガのことを聞くためだ。好きなオメガが居るなんて言ったらあの母親が黙っていないはずだ。
「好きなオメガがいるって言ってただろ?母さんは知ってるのか?」
「その事か。」
「あと沙羅さんとの離婚。母さんは何て?」
「最初に家を出て行ったのは沙羅の方なんだ。沙羅に好きなオメガできて家を出たんだよ。」
「え?あの沙羅さんが?」
何度か見たことがある兄貴の嫁さんはかなり強固なアルファ至上主義の家の娘だった。
家族は全員アルファ。もちろん皆優秀な人たちだ。
「ああ。俺も知った時は驚いたよ。沙羅は沙羅の親父さんの会社で働いてただろ?帰りがだんだん遅くなって、出張が増えて…って典型的な不倫のパターンだよ。」
「その相手がオメガ?」
「そう。別に放っておいても良かったんだけど世間体が悪いから沙羅と話し合うことにしたんだ。相手も連れて来るように言った。三人で喫茶店で待ち合わせて沙羅が連れてきたのがオメガの女だった。」
「どこで知り合ったんだ?」
「沙羅の職場に入っていた清掃の人。沙羅が本気なのは分かったよ。そのオメガは恐縮していたけどたっぷり沙羅のフェロモンを纏って沙羅は終始俺を威嚇していた。傷付けるなよって。」
「それで?」
「親父と母親に言おうか迷ったけど、言わなかった。とにかくその時の俺は世間体だけが大事だった。オメガに妻を寝取られた男、そう言われる屈辱だけは避けたかったんだ。」
兄貴は母親に良く似ている。アルファ至上主義だ。
「離婚には応じなかった。恥ずかしながら嫌がらせもしたよ。」
「それが何で兄貴まで…。」
「人を雇って調べさせた。沙羅のオメガ、佳奈子さんには小さい弟がいて二人で暮らしているみたいだった。沙羅と三人で買い物に行ったり、遊びに行ったりする写真を見て愕然としたよ。沙羅の初めて見る顔ばかりだったからな。高校で婚約して長い付き合いだったけどあんな沙羅の顔は見たことなかった。別れさせるのは無理だろうと悟ったよ。でも世間体が悪い。俺は婚姻関係は解消しない。ひっそりと目立たないように付き合えと言うしかないと思った。」
そう言って一息置いてコーヒーに口をつけた。
兄貴の性格ならオメガが自分の生活に侵入してきたこと、そしてそれを壊すことに我慢ならないだろう。
そういえば拓実にも冷たかったな。
子ども相手に露骨なことはしなかったけど、そんな兄貴が嫌だったことを思い出した。
次兄の恭平は拓実にも優しかった。
「沙羅のオメガに話をつけるためそのオメガが住んでいるアパートに行ったんだ。古くて貧乏くさいアパートだった。あの沙羅がこんな所に入り浸ってるなんて信じられなかったよ。てっきり良いマンションでも買ってもらってそこに住んでいるのかと思ってた。」
「アパートに乗り込んだのか?」
「ああ。アパートに行ったら佳奈子さんは居なかった。代わりに出てきたのがまだその時中学生だった弟の葵だったんだ。」
そう言って兄貴は俺から目を逸らして顔を赤らめた。
え?まさか…。
「まさか…兄貴。」
「ああ、そのまさかだ。葵が俺の運命だったんだ。」
マジか!!
え?ちょっと待って。去年の話だろ?
中学生って、それはさすがにヤバいだろ。
「言いたいことは分かる。俺だってなかなか受け入れられなかった。今年、高校生になったけどまだ手は出していない。佳奈子さんが厳しいんだ。」
嬉しそうに、恥ずかしそうに笑った。
「うん。ありがとう。」
状態が安定したため集中治療室から元の部屋に戻ってきた。
俺は病院長の許可をもらって拓実についていた。
この部屋とは違って一緒に寝るわけにはいかないのでずっと座っていたからほとんど寝ていない。
疲れたけど拓実が無事で良かった。
「ほら、拓実も。」
俺はベッドに横になってその隣で座って本を読んでいる拓実を引っ張った。
「俺はちゃんと寝たよ。」
「拓実が添い寝してくれないと俺が寝れない。」
「もう。」
そう言って一緒に横になる。
「具合は平気?」
「うん。」
腕枕をしてちゅっちゅっとキスをした。
拓実が俺の匂いを吸い込んでいる。
本当に可愛いな。
「拓実、ごめんな。」
「なんで謝るの?」
「だって、俺がついていながら…。それにうちの母親かもしれないし。」
「亮平のせいじゃないよ。」
「うん。でも拓実を離してやれない。ごめん。危険に晒すのが分かってても拓実と別れられない。」
「俺だって亮平と離れられないよ。亮平に迷惑かけちゃうけど亮平と一緒に居たい。」
「拓実…。」
何度もキスをして抱き合った。
拓実とこうしていると何にも代え難い幸せな気持ちになる。
母さんは不幸だ。アルファ至上主義の呪いにかかっている。番いのオメガにしか解くことが出来ない呪いだ。
番いに会えないアルファは一生その呪いに侵される。
この幸せを知らずに死ぬのだ。
そういえば兄貴は?兄貴は好きなオメガがいるんだろ?
母さんは知らないのか?
そんなことを考えているうちに拓実の優しい匂いに包まれながら眠りについた。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「兄貴、わざわざ悪いな。」
「拓実は元気か?父さんに聞いたよ。犯人は分からないんだって?」
「ああ。」
「で、俺に聞きたいことって?」
病院の中にあるカフェに兄貴を呼び出した。
兄貴のオメガのことを聞くためだ。好きなオメガが居るなんて言ったらあの母親が黙っていないはずだ。
「好きなオメガがいるって言ってただろ?母さんは知ってるのか?」
「その事か。」
「あと沙羅さんとの離婚。母さんは何て?」
「最初に家を出て行ったのは沙羅の方なんだ。沙羅に好きなオメガできて家を出たんだよ。」
「え?あの沙羅さんが?」
何度か見たことがある兄貴の嫁さんはかなり強固なアルファ至上主義の家の娘だった。
家族は全員アルファ。もちろん皆優秀な人たちだ。
「ああ。俺も知った時は驚いたよ。沙羅は沙羅の親父さんの会社で働いてただろ?帰りがだんだん遅くなって、出張が増えて…って典型的な不倫のパターンだよ。」
「その相手がオメガ?」
「そう。別に放っておいても良かったんだけど世間体が悪いから沙羅と話し合うことにしたんだ。相手も連れて来るように言った。三人で喫茶店で待ち合わせて沙羅が連れてきたのがオメガの女だった。」
「どこで知り合ったんだ?」
「沙羅の職場に入っていた清掃の人。沙羅が本気なのは分かったよ。そのオメガは恐縮していたけどたっぷり沙羅のフェロモンを纏って沙羅は終始俺を威嚇していた。傷付けるなよって。」
「それで?」
「親父と母親に言おうか迷ったけど、言わなかった。とにかくその時の俺は世間体だけが大事だった。オメガに妻を寝取られた男、そう言われる屈辱だけは避けたかったんだ。」
兄貴は母親に良く似ている。アルファ至上主義だ。
「離婚には応じなかった。恥ずかしながら嫌がらせもしたよ。」
「それが何で兄貴まで…。」
「人を雇って調べさせた。沙羅のオメガ、佳奈子さんには小さい弟がいて二人で暮らしているみたいだった。沙羅と三人で買い物に行ったり、遊びに行ったりする写真を見て愕然としたよ。沙羅の初めて見る顔ばかりだったからな。高校で婚約して長い付き合いだったけどあんな沙羅の顔は見たことなかった。別れさせるのは無理だろうと悟ったよ。でも世間体が悪い。俺は婚姻関係は解消しない。ひっそりと目立たないように付き合えと言うしかないと思った。」
そう言って一息置いてコーヒーに口をつけた。
兄貴の性格ならオメガが自分の生活に侵入してきたこと、そしてそれを壊すことに我慢ならないだろう。
そういえば拓実にも冷たかったな。
子ども相手に露骨なことはしなかったけど、そんな兄貴が嫌だったことを思い出した。
次兄の恭平は拓実にも優しかった。
「沙羅のオメガに話をつけるためそのオメガが住んでいるアパートに行ったんだ。古くて貧乏くさいアパートだった。あの沙羅がこんな所に入り浸ってるなんて信じられなかったよ。てっきり良いマンションでも買ってもらってそこに住んでいるのかと思ってた。」
「アパートに乗り込んだのか?」
「ああ。アパートに行ったら佳奈子さんは居なかった。代わりに出てきたのがまだその時中学生だった弟の葵だったんだ。」
そう言って兄貴は俺から目を逸らして顔を赤らめた。
え?まさか…。
「まさか…兄貴。」
「ああ、そのまさかだ。葵が俺の運命だったんだ。」
マジか!!
え?ちょっと待って。去年の話だろ?
中学生って、それはさすがにヤバいだろ。
「言いたいことは分かる。俺だってなかなか受け入れられなかった。今年、高校生になったけどまだ手は出していない。佳奈子さんが厳しいんだ。」
嬉しそうに、恥ずかしそうに笑った。
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