運命はいつもその手の中に

みこと

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「それで?葵って子とは?」

「その日はそこで少し話をして帰った。両親はすでに亡くなっていること、佳奈子さんが葵の親代わりと言うこと。ご両親が亡くなって佳奈子さんは高校を中退してアルバイトを掛け持ちしながら葵を育てていた。オメガ二人、ひっそりと寄り添って暮らしていたんだ。」

オメガが二人で暮らすなんて本当に大変だったと思う。ましてや佳奈子さんは女オメガだ。危険過ぎる。

「帰ってからも葵のことで頭がいっぱいだった。おまえならわかるだろ?葵は俺のオメガだ。会いたくて、話がしたくてたまらなかった。同じ屋根の下に沙羅というアルファがいることも我慢できない。そんなことを考えていたら夜に沙羅から電話があった。葵から俺が来たことを聞いて何しに来たんだ!と怒り狂ってたよ。でも俺の反応がいつもと違うことに気付いた。」

沙羅さんと兄貴の口ケンカはすごいって父さんが言ってたな。

「それからの俺はどうすることも出来なくて。でも葵のことは気になって仕方ない。その…変装して後をつけたり、こっそり様子を見に行ったりしていた。」

あの兄貴が?プライドが高い兄貴が変装してストーカーまがいなことをやってたのか。

「どうやって葵に近づいたんだ?」

「沙羅に頼んだんだよ。薄々勘づいてた。俺がアパートにきた日から葵の様子がおかしかったみたいで…。それに電話での俺の反応もいつもと全然違う。」

女ってやつは本当に感が鋭いな。
俺だったら全く気が付かないだろう。

「改めて四人で会った。もう葵しか目に入らなかった。でもまだ中学生だし節度を持ったお付き合いを、と佳奈子さんから釘を刺された。」

今はほぼ四人で暮らしている。しかも佳奈子さんのアパートでだ。ウチと沙羅さんとの両親にバレないようにしているらしいが、最近兄貴がオメガにご執心という噂が立ってきて困っているらしい。

「亮平、うちの母さんはダメだ。」

「分かってるよ。拓実は殺されそうになったからな。兄貴も沙羅さんも腹を括ってオメガを守った方がいい。」

「ああ。」

「母さんの行きそうなところを知らないか?」

兄貴と母さんは仲が良かった。何か知っているかもしれない。

「うーん、分からんな。思い出したら連絡する。」

「葵って子、俺と同じ歳なのか?」

「ああそうだ。まだ手は出してない。葵は恥ずかしがり屋だからな。あと葵は佳奈子さんのいう事は絶対だ。だから佳奈子さんの許可が出るまではダメなんだ。」

その後は葵との惚気話に散々付き合わされた。
手を繋いだとか高校生になったからキスまでOKになったとか、デレデレしながら話をしている。
母さんのことを聞こうと思って呼び出したのにとんでもない話を聞かされた。



「拓実。」

弘海さんの部屋に預けていた拓実を迎えに行く。
ノックして中に入ると三人で海外ドラマを観ていた。

「あ、戻ってきた。」

「お兄さん、どうだった?」

「母さんの行く所に心当たりはないって言ってました。」

「そうか。」

「拓実、まだドラマ観てるか?」

「ううん。部屋に帰る。」

二人に礼を言ってから拓実を抱き上げて部屋に戻った。




「修兄ちゃん、何か言ってた?」

「拓実のこと?」

「うん。」

「心配してたよ。」

「そっか。」

俯いて元気がない。あまり気に入られていなかったのをわかっていたのかもしれない。
ベッドの上で横抱きにして目元にキスをする。

「大丈夫。兄貴は味方だよ。兄貴、好きなオメガがいるんだ。運命だって言ってる。」

「え?本当?」

「ああ。ちょっと複雑で詳しくは言えないけど。だからオメガに対して偏見はないよ。」

「結婚してるもんな。大変そうだね。」

「うん。」

拓実が聞いたらひっくり返りそうな話だ。
妻にオメガの愛人がいてその弟が自分のオメガ。昼ドラもびっくりだ。

俺は物心つく前から拓実が好きで好きで堪らなかった。
オメガを嫌うヤツらの気持ちは分からない。
こんなに可愛くて愛おしいのに。
オメガが憎かった時もあった。でもそれは可愛さ余ってってやつだ。拓実に置いてかれてオメガどころか何もかも嫌になったのだ。
でも今は幸せだ。兄貴の気持ちは分かる。分かるけど複雑だ。

じっと俺の顔を見ている拓実にちゅっと音を立ててキスをした。
俺の拓実。俺のオメガ。可愛くて堪らない。

「拓実、大好き。愛してるよ。」

「うん。俺も大好き。」

そっとベッドに押し倒して覆い被さった。

「可愛い。食べちゃいたい。いい?」

顔中にキスしながら身体を撫で回す。

「やだよ。食べちゃダメ…。あっ!」

「美味しい。」

身体中を舐めて吸い付き跡を残す。
匂いが濃い。そろそろ発情期が来るのかもしれない。
甘い匂いにめちゃくちゃ興奮する。
俺はその後狂ったように、拓実の熱くて絡みつく中に何度も射精した。




スマホの着信の音で目を覚ました。
午前一時、誰だこんな時間に。

「亮平?電話?」

「うん。兄貴だ。どうしたんだろう…。起こしてごめんな。拓実は寝てて良いよ。」

心配そうな拓実の頭を撫でた。
こんな時間にくる電話なんて碌な内容じゃないはずだ。
嫌な予感がする。

「もしもし。」

「亮平か?すまない、こんな時間に。ちょっと大変なんだ。」

電話に出ると切羽詰まった兄貴の声が聞こえた。

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