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「何か必要なものかありましたらおっしゃって下さい。」
「茂山、ありがとう。本当に助かった。」
「いえ、専務。では私はこれで。澪、後は頼んだぞ。」
「はーい。」
茂山を乗せたエレベーターの扉が閉まった。
大きなボストンバッグを二つ抱えた兄貴とそのオメガ。
オメガはパジャマ姿だ。
「一つ部屋が空いてて良かったな。」
「ああ。本当に助かったよ。」
「護衛は二人だけか?」
エレベーターの入り口に立つ二人をチラリと見ながら兄貴が言った。
「でも死ぬほど強いから。特に茂山の息子。六秒以内に相手を殺せるように鍛えられてる。」
「そ、そうか。」
「で?この人が?」
兄貴に隠れるようにして俯いて立っているオメガを見た。
「ああ。ほら葵、俺の一番下の弟だよ。」
怯えるオメガに兄貴が優しく声をかけると葵が俺の方を見た。そして驚いて目を丸くしている。
そのメガネに見覚えがあった。
「あーっ!」
「あ!おまえっ!あの時の!」
俺と葵はお互いを指差して驚いた。
兄貴はポカンとした顔をしている。
「あの時はすまなかった。」
「別にいいよ。アルファなんてみんなあんな態度だよ。」
「まさか葵が修兄ちゃんのオメガだったなんて。」
葵は拓実と満の友達だった。
ショッピングモールで俺が満に絡んだ時にいたメガネのオメガが葵だったのだ。
驚いた俺はまだ起きていた拓実を呼んだ。
「明日、満が驚くよ。あの手前の部屋にいるんだ。」
「どうりで誘っても断られたはずだ。二人ともこんな所にいたんだね。」
「うん。いろいろあってね。」
二人の話が長くなりそうなので切り上げてそれぞれの部屋に戻った。
拓実は興奮していて眠れないかと思っていたけどベッドに入った途端寝息を立て始めた。
良かった。最近は寝付きも良くなってきた。
俺はTシャツを脱いで拓実の顔の近くに置いた。ふにゃふにゃ言いながら匂いを嗅いでいる。
可愛い…。
新しいTシャツを着て、拓実の頭にキスをして部屋を出た。
部屋の前の長椅子に兄貴が座っていた。
「葵は寝たのか?」
「ああ。疲れたみたいだ。」
「母さんか?」
「そうだ。」
兄貴の噂を聞いた母親が兄貴をつけて葵との関係を突き止めたのだ。
今日はたまたま沙羅さんと佳奈子さんは二人で旅行に行っていて葵はアパートで一人きりだった。茂山から葵が危ないと聞いてすぐにアパートに戻り二人でホテルに逃げた。ホテルにいても全てが怪しく見えてしまい、俺に連絡してきたのだ。
「分かるよ。自分以外信じられなくなる。」
「ああ。本当にな。」
兄貴は疲れきったようでがっくりと項垂れた。
「沙羅さんたちは?」
「連絡してある。当分帰ってくるなと言った。葵がマメに連絡してくれている。」
「まさか拓実の友達とはな。」
「全く、驚いたよ。おまえ、絡んだんだって?」
「えっ、まぁ。そのいろいろあって…。」
「まあ、いいさ。俺も人のこと言えないからな。オメガ全員に頭を下げて歩きたいよ。」
ぎょっとして兄貴を見たが、孝太郎さんも同じようなこと言ってたな。俺だって拓実に会わなければ二人と大して変わらない人間になっていただろう。
現に拓実に捨てられたと思っていた期間の俺は酷かったもんな。
「番いってすごいな。兄貴、まるで別人だよ。」
「まあな。でも出会えて幸せだよ。葵は本当に可愛いんだ。」
あ、それ長くなるやつ。
『詳しいことはまた明日』と言って部屋に逃げた。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「えーーっ!どういうこと?」
朝、葵の姿を見た満が絶叫している。
「声が大きいよ。僕、修平さんと付き合ってるんだ…。」
「何で黙ってたんだよ~。」
「本当だよ!水臭いなぁ。」
二人に詰られた葵は申し訳なさそうにしている。
俺と兄貴が兄弟ってことは知らなかった。
「俺のせいだよ。俺と沙羅が秘密にするように言ったんだ。母さんのこともあるしな。」
そう言われて二人は納得したようだった。
「そっかぁ。修兄ちゃんと葵がかぁ。」
「拓実。いろいろすまなかった。母さんもそれから俺も…。」
兄貴が拓実に頭を下げている。
「え?いいよ。そんなっ!そんなことしないで。」
「兄貴、葵もしばらくここにいるのか?」
「そうさせて欲しい。俺は仕事があるから亮平たちみたいに付きっきりって訳にはいかないんだ。頼めるか?」
もちろん、と皆んな頷いた。
それにしても早く母さんと税所を捕まえないと。
厄介ごとが増えるばっかりだ。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
夜になって俺と拓実はたっぷり愛し合ってベッドに寝転んでいた。拓実の柔らかい髪に顔を埋めている。
「拓実、シャワー浴びようか?」
「うん。」
そう返事が返ってきたけどぐずぐずと俺の胸に顔を押し付けて眠そうにしている。
「少し寝る?」
「ううん。」
でもまだぐずぐずしている。
本当に可愛い。堪らない。
そういえば兄貴たちはまだプラトニックって言ってたな。
手を繋いだとかキスしたとか小学生みたいなことを言っていて孝太郎さんがちょっと引いてた。
拓実は結局そのまま寝てしまったので身体を拭いてパジャマを着せた。
明日の朝、風呂に入れてやろう。
全く起きる気配のない拓実の顔にキスしたり唇に吸い付いたりしているとスマホに兄貴からメッセージが届いた。
「茂山、ありがとう。本当に助かった。」
「いえ、専務。では私はこれで。澪、後は頼んだぞ。」
「はーい。」
茂山を乗せたエレベーターの扉が閉まった。
大きなボストンバッグを二つ抱えた兄貴とそのオメガ。
オメガはパジャマ姿だ。
「一つ部屋が空いてて良かったな。」
「ああ。本当に助かったよ。」
「護衛は二人だけか?」
エレベーターの入り口に立つ二人をチラリと見ながら兄貴が言った。
「でも死ぬほど強いから。特に茂山の息子。六秒以内に相手を殺せるように鍛えられてる。」
「そ、そうか。」
「で?この人が?」
兄貴に隠れるようにして俯いて立っているオメガを見た。
「ああ。ほら葵、俺の一番下の弟だよ。」
怯えるオメガに兄貴が優しく声をかけると葵が俺の方を見た。そして驚いて目を丸くしている。
そのメガネに見覚えがあった。
「あーっ!」
「あ!おまえっ!あの時の!」
俺と葵はお互いを指差して驚いた。
兄貴はポカンとした顔をしている。
「あの時はすまなかった。」
「別にいいよ。アルファなんてみんなあんな態度だよ。」
「まさか葵が修兄ちゃんのオメガだったなんて。」
葵は拓実と満の友達だった。
ショッピングモールで俺が満に絡んだ時にいたメガネのオメガが葵だったのだ。
驚いた俺はまだ起きていた拓実を呼んだ。
「明日、満が驚くよ。あの手前の部屋にいるんだ。」
「どうりで誘っても断られたはずだ。二人ともこんな所にいたんだね。」
「うん。いろいろあってね。」
二人の話が長くなりそうなので切り上げてそれぞれの部屋に戻った。
拓実は興奮していて眠れないかと思っていたけどベッドに入った途端寝息を立て始めた。
良かった。最近は寝付きも良くなってきた。
俺はTシャツを脱いで拓実の顔の近くに置いた。ふにゃふにゃ言いながら匂いを嗅いでいる。
可愛い…。
新しいTシャツを着て、拓実の頭にキスをして部屋を出た。
部屋の前の長椅子に兄貴が座っていた。
「葵は寝たのか?」
「ああ。疲れたみたいだ。」
「母さんか?」
「そうだ。」
兄貴の噂を聞いた母親が兄貴をつけて葵との関係を突き止めたのだ。
今日はたまたま沙羅さんと佳奈子さんは二人で旅行に行っていて葵はアパートで一人きりだった。茂山から葵が危ないと聞いてすぐにアパートに戻り二人でホテルに逃げた。ホテルにいても全てが怪しく見えてしまい、俺に連絡してきたのだ。
「分かるよ。自分以外信じられなくなる。」
「ああ。本当にな。」
兄貴は疲れきったようでがっくりと項垂れた。
「沙羅さんたちは?」
「連絡してある。当分帰ってくるなと言った。葵がマメに連絡してくれている。」
「まさか拓実の友達とはな。」
「全く、驚いたよ。おまえ、絡んだんだって?」
「えっ、まぁ。そのいろいろあって…。」
「まあ、いいさ。俺も人のこと言えないからな。オメガ全員に頭を下げて歩きたいよ。」
ぎょっとして兄貴を見たが、孝太郎さんも同じようなこと言ってたな。俺だって拓実に会わなければ二人と大して変わらない人間になっていただろう。
現に拓実に捨てられたと思っていた期間の俺は酷かったもんな。
「番いってすごいな。兄貴、まるで別人だよ。」
「まあな。でも出会えて幸せだよ。葵は本当に可愛いんだ。」
あ、それ長くなるやつ。
『詳しいことはまた明日』と言って部屋に逃げた。
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「えーーっ!どういうこと?」
朝、葵の姿を見た満が絶叫している。
「声が大きいよ。僕、修平さんと付き合ってるんだ…。」
「何で黙ってたんだよ~。」
「本当だよ!水臭いなぁ。」
二人に詰られた葵は申し訳なさそうにしている。
俺と兄貴が兄弟ってことは知らなかった。
「俺のせいだよ。俺と沙羅が秘密にするように言ったんだ。母さんのこともあるしな。」
そう言われて二人は納得したようだった。
「そっかぁ。修兄ちゃんと葵がかぁ。」
「拓実。いろいろすまなかった。母さんもそれから俺も…。」
兄貴が拓実に頭を下げている。
「え?いいよ。そんなっ!そんなことしないで。」
「兄貴、葵もしばらくここにいるのか?」
「そうさせて欲しい。俺は仕事があるから亮平たちみたいに付きっきりって訳にはいかないんだ。頼めるか?」
もちろん、と皆んな頷いた。
それにしても早く母さんと税所を捕まえないと。
厄介ごとが増えるばっかりだ。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
夜になって俺と拓実はたっぷり愛し合ってベッドに寝転んでいた。拓実の柔らかい髪に顔を埋めている。
「拓実、シャワー浴びようか?」
「うん。」
そう返事が返ってきたけどぐずぐずと俺の胸に顔を押し付けて眠そうにしている。
「少し寝る?」
「ううん。」
でもまだぐずぐずしている。
本当に可愛い。堪らない。
そういえば兄貴たちはまだプラトニックって言ってたな。
手を繋いだとかキスしたとか小学生みたいなことを言っていて孝太郎さんがちょっと引いてた。
拓実は結局そのまま寝てしまったので身体を拭いてパジャマを着せた。
明日の朝、風呂に入れてやろう。
全く起きる気配のない拓実の顔にキスしたり唇に吸い付いたりしているとスマホに兄貴からメッセージが届いた。
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