運命はいつもその手の中に

みこと

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俺と兄貴で会社の駐車場に置いてあった茂山の社用車を調べた。ダッシュボードの中から俺が頼んでいた塔子の母親の実家に関する報告書と写真が出てきた。

「あ、ここだ!ここで間違いない。俺が子どもの頃に母さんに連れて行かれた場所だ。」

兄貴が写真を見て叫んだ。写真には古い洋館が写っている。
そこは塔子の母親の実家で今は誰も住んでいない旧影山邸。兄貴は幼い頃一度だけここに来たことを覚えていた。
そしてそこで何人かのオメガを見たのだ。
おそらく旧影山邸はオメガ狩りのショーが行われていた場所だ。その後、バレないように転々と開催場所を変えていたのだと思う。
山の中の広大な敷地に建つここなら隠れるのにうってつけな場所だろう。
俺は兄貴の記憶を頼りに、塔子の力を借りてこの場所を突き止めて茂山に調べてもらっていた。

「澪さんたちを連れて行ってみるか?」

「ああ…。」

あ、平林からの着信だ。

「もしもし、平林か?どうした?」

「桜沢!大変だ!病院が火事で今みんな外に出されて…、あっ!…。」

「もしもし?もしもし?」

電話は切れてしまった。何度かかけ直すが繋がらない。

「兄貴…。」

「ああ、聞こえた。とりあえず病院に戻ろう。」

ヤバいな。今日は孝太郎さんもいない。
兄貴が運転する車で病院に戻る。
すぐに孝太郎さんかけるが出なかったのでメッセージを送った。拓実や葵も電話に出ない。

「病院が火事って…。どういうことだ?」

「分からん。葵たちが心配だ。」

病院の前はとんでもないことになっていた。煙も火の手もないが患者やスタッフが出てきて大騒ぎなっていた。
拓実たちはどこだ?
白衣を着たスタッフらしき人を何人か捕まえで聞いたけど分からないと言って拉致があかない。
とにかく人がすごい。入院患者、外来患者、スタッフに近所の人、マスコミまで来て身動きが取れない。

「兄貴!居たか?」

「いや、ダメだ。すごい人だな。本当に火事か?」

「あ、孝太郎さんだ。」

スマホに着信があったので孝太郎さんに伝えた。孝太郎さんはすぐに戻ると言って電話を切った。

「そうだ、GPS。」

拓実の携帯にGPSをインストールしてあるので位置情報を確認する。位置情報はこの病院のままだ。

「まだこの辺りにいるみたいだ。」

「ああ。葵もだ。」

兄貴も携帯で葵の位置情報を確認していた。

「亮平くん!」

孝太郎さんが慌てて走ってきた。

「弘海たちは?」

「分からないんです。」

「弘海のGPSでは位置情報はここなんだが…。」

「はっ!携帯が置きっぱなしだったら?」

三人で顔を見合わせた。やばいな。

「孝太郎くん、その鞄にパソコンが入っているのか?」

「え?ええ。」

「ちょっと貸してもらえないか?」

兄貴はそう言って孝太郎さんからノートパソコンを借りて何やら始めた。

「葵たちはここには居ない…。」

「え?どうして?」

「葵のメガネに超小型GPSが仕込んであるんだ。位置情報がここじゃない。」

「今どこに?」

そう言ってパソコンの画面を確認すると位置情報は高速道路になっている。

「Y県に向かってる…。旧影山邸に向かっているのか?」

「ああ。おそらくな。」

「すぐに行こう。」

「亮平くん、旧影山邸って何のことだ?」

俺たち三人は兄貴の車に乗って葵の位置情報の跡を追いながら孝太郎さんに茂山が調べてさっき分かったことを話した。
車の中で拓実の無事を祈りながら位置情報を確認していると俺のスマホが鳴った。

「あ、平林だ!もしもし?もしもし?平林、どうした?今どこにいる?」

通話を押し話しかけるが応答がない。ゴソゴソと音が聞こえるだけだ。
よく耳を澄ますと話し声が聞こえる。

「もうこれで最後だ。全員俺の番いにしてやる。」

「やめろ!まだ間に合う。自首するんだ。」

平林の声が聞こえる。

「バカか?間に合う訳ないだろ。自首したところで極刑だ。どうせ逃げ切れないなら全員番いにしてやる。おまえたちアルファの泣き喚く顔を見ながら死んだ方がましだ。」

「おまえの番いになるくらいなら舌を噛んで死んでやるよ!」

拓実の声だ!拓実がいる!

「そうだ!このイカれジジイ!」

これは弘海さんの声だ。
バシッと殴られるような音がした。弘海さんが殴られたのかもしれない。

「弘海…クソっ!俺の大事な弘海に。」

孝太郎さんが手から血が滲む程拳を握りしめている。
平林が態と通話状態にしているんだ。
俺たちに場所とみんな無事だと伝えるために。
そのあとは平林や拓実たち以外に数人の声が聞こえた。
こいつらがオメガ狩りのメンバーだ。
旧影山邸に着いたらまた薬を使って発情させられて番いにされてしまう。
その前に拓実たちを助けないと。

「亮平、塔子ちゃんから電話だ。ちょっと出てくれ。」

そう言って兄貴が後部座席に座っている俺にスマホを投げた。

「もしもし。塔子、俺だ、亮平だ。今兄貴は運転中で。」

「良かった。あなたに電話したけど通話中で。美穂が、私のオメガがいないのよ!」

「うちもだ。たぶん旧影山邸にいるかそこに向かっている。あまり大きな声が出せないんだ。」

「旧影山邸…。分かったわ。また連絡する。」

塔子のオメガも行方不明か。
画面の位置情報は旧影山邸に向かって動いていた。



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