運命はいつもその手の中に

みこと

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旧影山邸に向かう一本道を走っているとちょうど道を塞ぐように車が一台停まっている。
兄貴が車を停めたので退いてもらうのに外に出ようとすると誰かが近づいてきた。

「と、塔子⁉︎」

「遅いわよ。なに車なんかでチンタラ来てるのよ。」 

「おまえ、東京にいたんじゃないのか?」

「そうよ。ヘリでこの近くまで来たのよ。」

ヘリって、ヘリコプターを使ったのか。

「ほら、早く行くわよ。その車置いてこっちに乗って。何でそんなスポーツカーなんかで来るのよ。山の中に行くのよ?」

塔子の車はデカい四駆だった。軍人みたいなやつが運転席に座っている。

「三浦、出して。」

「はい、塔子様。」

四駆が力強く山道を駆け上がって行く。

「拓実たちが旧影山邸に着いたみたいだ。」

位置情報が旧影山邸の場所になっている。
俺たちも塔子の車のお陰でもうすぐ目的地に着く。
平林との通話は切れてしまったので今、拓実たちがどうなっているのか分からない。
そうこうしていると木々の間から古い門が見えた。
その手前で降ろしてもらう。

「三浦。」

「了解致しました。」

軍人のような男は走って行ってしまった。

「さあ、行くわよ。」

塔子は正門の横にある小さな門を開けて中に入って行った。俺たちも急いでその後についた。

「塔子、どこに居るのか分かってるのか?」

「え?知らないわよ。でもここは私の母の持ち物よ。だから私にも入る権利はあるわ。徹底的に探すわよ。」

「亮平!車があるぞ!」

兄貴が指差した方にまだ真新しい大型のワンボックスカーがあった。
車の扉が開きっぱなしになっている。よほど急いでいたのだろう。

「スマホだ!」

孝太郎さんがスマホを見つけた。そのケースに見覚えがある。平林のスマホに間違いない。

「ここだな。間違いない。」

「ああ。」

「亮平、孝太郎くん、行くぞ。」

「私も行くわよ。」

塔子は背負っていた細長い鞄から猟銃のようなものを取り出した。
マジかよ…。

「塔子…。」

「あなたたち丸腰?私はこれで行くわよ。私のオメガに何かしたら迷わずぶっ放すから。お母様であろうと関係ないわ。」

玄関のドアを開けようとすると鍵がかかっていた。

「クソッ!どこか違う入り口か…」

「退いて!」

俺たちが退いた途端、塔子は玄関に向かって迷わずぶっ放た。
取手と鍵が壊れたのでそのまま入る。
拓実は?拓実のフェロモンは?

「いる…。」

「ああ、いるな。」

みんな自分のオメガのフェロモンを感じているようだ。
拓実のフェロモン…。泣いている。

「茂山の調べだと地下に秘密の社交場があったはずだ。」

みんなそれぞれ、番いのフェロモンを感じながら地下を探す。廊下の一番奥のドアからフェロモンがうっすらと流れていた。

「あのドアだ!」

「行くぞ。」



階段を降りると泣き声が聞こえてきた。

「やだ~、亮平!亮平!助けて!」

「孝太郎っ!やだよっ!触るなっ!」

「修くん、修くんっ!やめて、やめて~っ!」

拓実っ!
拓実が泣いてる。階段を降り切ったところのドアを蹴り開けて中を見るとオメガたちがアルファに押さえつけられていた。薬を使ったんだろう、オメガたちのフェロモンでむせ返るようだ。
怒りで血液が逆流する。

「ちょうど良い。自分のオメガが噛まれるところをそこで指を咥えて眺めてろ。」

男が拓実の首元にナイフを突き付けている。拓実は泣きながら両手で懸命に頸を抑えていた。
弘海さんも葵も同じようにされている。

「亮平、亮平、」

「拓実っ!」

急にズドンと大きな音がしてみんなが驚いて固まった。
塔子が天井に向かって銃を撃ったのだ。

「次はあんたたちの脳天にぶち込むわよ。射撃は得意なの。絶対に外さないから。」

塔子が銃を構える。
その気迫にほんの一瞬アルファたちが怯んだのを見逃さなかった。拓実目掛けて突進して押さえつけてアルファに体当たりした。孝太郎さんも兄貴も同じように自分のオメガを押さえつけているアルファに体当たりし殴りつけたり蹴り上げたりしている。

「他のオメガはどこへやったの?私のオメガはどこ?」

ここには三人しか居ない。塔子のオメガや満たちはどこだ?拓実を抱き上げて辺りを見回した。

「塔子さん、残念ね。あなたには期待していたのに。」

ステージの奥から女のアルファが出てきた。
どこかで…あっ!塔子の母親だ。

「あら、お母様。ご期待に添えなくて申し訳ありませんでした。そんなことよりも美穂を返して下さらない?」

「由利恵さん」

塔子の母親はステージの袖に向かって声をかけた。
由利恵。俺の母親だ。
母親は拘束された女のオメガを連れて出てきた。

「美穂!」

塔子がそのオメガを見て叫んだ。

「母さん…。」

「修平に亮平、久しぶりね。」

「母さん、何でこんなこと。」

「何で?そんなの決まってるでしょ。由緒正しい桜沢家と初鹿家にオメガの血を入れるわけにはいかないよの。」

そんな理由で…。狂ってる。

「亮平、せっかく子どもの頃にそのオメガと別れさせてあげたのにまだ一緒にいるの?いい加減目を覚ましなさい。それにまさか修平までオメガに騙されるなんて。私が処分してあげるからそのオメガをよこしなさい。」

母さんは何を言っているんだ。処分?

「母さんこそいい加減に目を覚ましたらどうだ。俺も亮平も葵と拓実を番いにして結婚するつもりだ。もう分かってるだろ?俺たちは運命を見つけたんだ。母さんにオメガを好きなれとは言わない。だからもうほっといてくれ。」

「そういうわけにはいかないのよ。オメガを放って置いたばっかりに落ちぶれてしまった家はたくさんあるのよ。私たちはそうならないように要らないオメガを潰しているのよ。だから苦労して海外から特別な薬を手に入れたの。性行為をしている最中じゃなくても噛めば番いになれる薬。そのオメガたちに投与してあるから試してみましょうよ。」

何だって⁉︎

「亮平っ!危ない!」

拓実の叫び声と同時に頭に衝撃が走った。
殴られたのか…。一瞬目の前が暗くなるが何とか倒れないように踏ん張った。

「拓実っ!」

ふらついて手を離した隙に拓実を奪われてしまい俺は羽交締めにされた。

「拓実、拓実っ!離せっ!クソっ!拓実ーっ!」

「亮平っ!やだっ!やだーっ!」

拓実が泣きながら暴れた。その拓実をアルファが押さえつけている。

「うるさいっ!早くそのオメガの頸を噛みなさい!そうすれば亮平も目が覚めるでしょ。早く噛んで!」

母さんが汚いものを見るような目で拓実を見る。

「やめろ!拓実!拓実!」

「嫌だ~、亮平、亮平っ!」

アルファが拓実の首を押さえつけて咬みつこうと牙を剥いた。
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