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それから警察が来て皆事情聴取を受けた。石田があらかじめ通報していたのだ。
マスコミにも漏れて大騒ぎとなり、妹尾大臣は更迭、正隆も逮捕された。
それとは真逆に、総司と俊哉は厳重注意で済んだ。世間には自分のオメガを助けようとしたという美談として広かったからだ。
世間の人たちはそういった話が好きなのだ。おそらく青田が情報操作したのだろう。
それでも俊哉はペナルティを負った。高額な罰金とケガが治ったら社会奉仕活動への参加だ。
連日マスコミで取り上げられて一条家の前にも記者たちが待ち構えている。
もちろん俊哉の父は俊哉と律のことは快く思って居ない。オメガなんかのために馬鹿なことを…と腹立たしい気持ちだった。
しかし俊哉が英雄扱いを受けてしまったため、大っぴらに反対できなくなった。それどころか、一条はオメガを擁護し、大事にしていると言わざるを得なくなってしまっていた。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「明日、会見するって言ってました。」
「この騒ぎだ。兄貴も出てくるしなかっただろうな。」
ホテルのロビーで俊哉と総司が話をしている。
家の前にはマスコミ連中が群がっているので家に帰るのは諦めた。代わりに一条が経営するホテルに滞在している。
「そうか。律くんは?」
「疲れたみたいで寝てます。律は身体が丈夫じゃないから。」
「なら俊哉が側に居てやれ。そうすれば律くんの身体の調子も良くなるはずだ。」
「え?そうなんですか?」
総司が笑顔で頷く。
美裕も出会った頃は身体が丈夫ではなかった。しょっちゅうオメガ熱に罹り、寝ていることが多かったのだ。それが今では健康体そのものだ。総司と出会ってから身体の不調は少しずつ回復し今ではオメガ熱に罹ることもなくなった。
「運命だからな。」
「そうか…。ならもっと早くに…。」
俊哉は自分のしてきたことをずっと後悔していた。律に寂しく惨めな思いをさせ、さらにこの間の一件。
危うくあんな危険なアルファと番いにさせてしまうところだった。
そればかりか身体までも…。
「俊哉、過去には戻れない。おまえのオメガへの偏見は私たちの一条家全員の責任だ。子どもは生まれてくる家や家族は選べないからな。だがおまえは目を覚ますことが出来た。もちろん私もだ。だからこれからどうするかを考えていこう。」
「はい。」
総司の強い言葉に俊哉は大きく頷く。
「そういえば学園から連絡はあったか?」
「いいえまだ。捜査はかなり難航しているようです。」
「みたいだな。私のところにもその連絡はあったよ。」
今回の騒動でオメガ学園も立ち入りが入ったのだ。
石田たちが中心となってオメガ学園の実態が暴かれることとなった。アルファが収めていた金のほとんどがオメガに使われることはなく、一定の人物たちの懐へ流れていたようだ。驚くことにその者たちは皆ベータだった。
番いやフェロモンとは無関係のベータが大きく関わっていたのだ。
学園は無期限休校となり、オメガたちは保護者やそれに準ずる者の所へ保護されることになった。
親のいない律と楓は俊哉と潤がそれぞれ保護している。潤は楓とずっと過ごせることにかなり興奮し浮き足立っていた。各自オメガを迎えに行く日に俊哉と偶然会ったのだが、簡単に挨拶を済ませるとそそくさと楓を連れて行ってしまった。
律はもちろん俊哉と一緒だ。
俊哉も潤と同じように嬉しくて仕方ない。ホテルからほとんど出ることなく二人で過ごしている。
律は体力があまりなく疲れやすい。あまり無理をさせないようにしたいのだが…。
「律くんとは仲良くやってるか?」
「もちろんです。午前中は律の勉強を見てやって、ちょっと疲れたみたいで今は少し眠っています。」
「どうせおまえが疲れさせているんだろ?」
「え?いや、その…。」
総司がニヤニヤと悪い笑みを浮かべながら俊哉を揶揄う。
総司の言う通りだ。早めにランチを済ますと休憩と言う名のイチャイチャタイムが始まってしまい、律が気を失うまで可愛がってしまった。
一応規則を守り最後まではしていないが…。
「気持ちは分かるけど手加減してやれよ?そのうち嬉しい通知が届くぞ。」
「え?何ですか?」
「まあそれは届いてからのお楽しみだ。」
総司は時計を見ると徐に立ち上がった。どうやらこの後、美裕と約束があるようだ。
「総司さん、ありがとうございました。」
俊哉も立ち上がり、深々と頭を下げる。総司は軽く手を上げ笑顔でラウンジから出て行った。
総司を見送った俊哉はエレベーターに乗り自分の部屋に戻る。
キーをかざしてドアを開けるとふわりとフェロモンが流れて来た。
その匂いだけで幸せになれる。
うっとりとフェロモンを吸い込みそっと中に入る。
ロイヤルスイートの一番奥にマスターベットルームがある。そのドアを開けるとくらくらするくらいフェロモンが濃くなった。
キングサイズのベッドの端っこに小さく丸まって眠る可愛いフェロモンの主を覗き込んだ。
出てくる時はベッドの真ん中に寝かせたのだが、律はかなり寝相が悪いようだ。俊哉がぎゅっと抱きしめて眠らないといつもとんでもないところで寝ている。
俊哉はベッドの脇にしゃがみ込み律を覗き込んだ。
緩くカールした長いまつ毛。小さな鼻とプックリとした可愛い唇。絹のような手触りの黒髪にそれと対照的な真っ白な肌。
「はぁ…。」
その可愛らしさに俊哉の口からため息が漏れる。
目元の小さなホクロも可愛い。律はこれがあるから自分は泣き虫だと言って取りたがっていたが、俊哉が断固反対した。こんなに可愛いホクロは見たことがない。潤も楓の口元のホクロに対してそんなようなことを言っていた。しかし俊哉は潤にそれを言われるまで楓にホクロがあったことすら気が付かなかった。
「可愛い…。」
すやすや眠る律の目元のホクロをペロリと舐める。
それだけで身体中がぞわぞわした。
マスコミにも漏れて大騒ぎとなり、妹尾大臣は更迭、正隆も逮捕された。
それとは真逆に、総司と俊哉は厳重注意で済んだ。世間には自分のオメガを助けようとしたという美談として広かったからだ。
世間の人たちはそういった話が好きなのだ。おそらく青田が情報操作したのだろう。
それでも俊哉はペナルティを負った。高額な罰金とケガが治ったら社会奉仕活動への参加だ。
連日マスコミで取り上げられて一条家の前にも記者たちが待ち構えている。
もちろん俊哉の父は俊哉と律のことは快く思って居ない。オメガなんかのために馬鹿なことを…と腹立たしい気持ちだった。
しかし俊哉が英雄扱いを受けてしまったため、大っぴらに反対できなくなった。それどころか、一条はオメガを擁護し、大事にしていると言わざるを得なくなってしまっていた。
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「明日、会見するって言ってました。」
「この騒ぎだ。兄貴も出てくるしなかっただろうな。」
ホテルのロビーで俊哉と総司が話をしている。
家の前にはマスコミ連中が群がっているので家に帰るのは諦めた。代わりに一条が経営するホテルに滞在している。
「そうか。律くんは?」
「疲れたみたいで寝てます。律は身体が丈夫じゃないから。」
「なら俊哉が側に居てやれ。そうすれば律くんの身体の調子も良くなるはずだ。」
「え?そうなんですか?」
総司が笑顔で頷く。
美裕も出会った頃は身体が丈夫ではなかった。しょっちゅうオメガ熱に罹り、寝ていることが多かったのだ。それが今では健康体そのものだ。総司と出会ってから身体の不調は少しずつ回復し今ではオメガ熱に罹ることもなくなった。
「運命だからな。」
「そうか…。ならもっと早くに…。」
俊哉は自分のしてきたことをずっと後悔していた。律に寂しく惨めな思いをさせ、さらにこの間の一件。
危うくあんな危険なアルファと番いにさせてしまうところだった。
そればかりか身体までも…。
「俊哉、過去には戻れない。おまえのオメガへの偏見は私たちの一条家全員の責任だ。子どもは生まれてくる家や家族は選べないからな。だがおまえは目を覚ますことが出来た。もちろん私もだ。だからこれからどうするかを考えていこう。」
「はい。」
総司の強い言葉に俊哉は大きく頷く。
「そういえば学園から連絡はあったか?」
「いいえまだ。捜査はかなり難航しているようです。」
「みたいだな。私のところにもその連絡はあったよ。」
今回の騒動でオメガ学園も立ち入りが入ったのだ。
石田たちが中心となってオメガ学園の実態が暴かれることとなった。アルファが収めていた金のほとんどがオメガに使われることはなく、一定の人物たちの懐へ流れていたようだ。驚くことにその者たちは皆ベータだった。
番いやフェロモンとは無関係のベータが大きく関わっていたのだ。
学園は無期限休校となり、オメガたちは保護者やそれに準ずる者の所へ保護されることになった。
親のいない律と楓は俊哉と潤がそれぞれ保護している。潤は楓とずっと過ごせることにかなり興奮し浮き足立っていた。各自オメガを迎えに行く日に俊哉と偶然会ったのだが、簡単に挨拶を済ませるとそそくさと楓を連れて行ってしまった。
律はもちろん俊哉と一緒だ。
俊哉も潤と同じように嬉しくて仕方ない。ホテルからほとんど出ることなく二人で過ごしている。
律は体力があまりなく疲れやすい。あまり無理をさせないようにしたいのだが…。
「律くんとは仲良くやってるか?」
「もちろんです。午前中は律の勉強を見てやって、ちょっと疲れたみたいで今は少し眠っています。」
「どうせおまえが疲れさせているんだろ?」
「え?いや、その…。」
総司がニヤニヤと悪い笑みを浮かべながら俊哉を揶揄う。
総司の言う通りだ。早めにランチを済ますと休憩と言う名のイチャイチャタイムが始まってしまい、律が気を失うまで可愛がってしまった。
一応規則を守り最後まではしていないが…。
「気持ちは分かるけど手加減してやれよ?そのうち嬉しい通知が届くぞ。」
「え?何ですか?」
「まあそれは届いてからのお楽しみだ。」
総司は時計を見ると徐に立ち上がった。どうやらこの後、美裕と約束があるようだ。
「総司さん、ありがとうございました。」
俊哉も立ち上がり、深々と頭を下げる。総司は軽く手を上げ笑顔でラウンジから出て行った。
総司を見送った俊哉はエレベーターに乗り自分の部屋に戻る。
キーをかざしてドアを開けるとふわりとフェロモンが流れて来た。
その匂いだけで幸せになれる。
うっとりとフェロモンを吸い込みそっと中に入る。
ロイヤルスイートの一番奥にマスターベットルームがある。そのドアを開けるとくらくらするくらいフェロモンが濃くなった。
キングサイズのベッドの端っこに小さく丸まって眠る可愛いフェロモンの主を覗き込んだ。
出てくる時はベッドの真ん中に寝かせたのだが、律はかなり寝相が悪いようだ。俊哉がぎゅっと抱きしめて眠らないといつもとんでもないところで寝ている。
俊哉はベッドの脇にしゃがみ込み律を覗き込んだ。
緩くカールした長いまつ毛。小さな鼻とプックリとした可愛い唇。絹のような手触りの黒髪にそれと対照的な真っ白な肌。
「はぁ…。」
その可愛らしさに俊哉の口からため息が漏れる。
目元の小さなホクロも可愛い。律はこれがあるから自分は泣き虫だと言って取りたがっていたが、俊哉が断固反対した。こんなに可愛いホクロは見たことがない。潤も楓の口元のホクロに対してそんなようなことを言っていた。しかし俊哉は潤にそれを言われるまで楓にホクロがあったことすら気が付かなかった。
「可愛い…。」
すやすや眠る律の目元のホクロをペロリと舐める。
それだけで身体中がぞわぞわした。
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